X子:さて、まず4組のネタが終わりました。

Y美:続いて5組目は、このコンビです!



エントリーNo.040

海洋ブリザード
桃太郎
横田:どうもよろしくお願いします。 早速なんだけど聞いてもらえますか。
   今度友だちの結婚式があって、そこで余興として桃太郎の劇をやろうと思ってるんですよ。

藤林:…これは、結婚式で桃太郎の劇をすることに引っかかっててもしょうがないやつかな?

横田:しょうがないやつですね。

藤林:なるほどね。そういうことなら納得します。

横田:そこでですね、今日はその台本を聞いてもらおうと思いまして。やはりいろいろとアレンジした部分もあるのでね。

藤林:俺がその台本をチェックすればいいのね。

横田:じゃあ読みますね。 「桃太郎」

藤林:うん。

横田:ナレーター「昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。 ある日、おじいさんは山へ柴刈りに、
          おばあさんは川へ洗濯に行きました。」

藤林:劇の台本だから語りだけじゃなく登場人物のセリフもあるってことだよな。

横田:ナレーター「おばあさんが洗濯をしていると・・・」
   おばあさん「なかなか洗濯物がきれいにならないわねぇ・・・(ゴシゴシしながら)」

藤林:おお、なんか台本っぽいね。

横田:おばあさん「きれいにしなきゃね・・・(ダッシュしながら)」
   桃「どんぶらこ、どんぶらこ(激しくスピンしながら)」
   おばあさん「あっ、あれは、桃!?(ランニングマンしながら)」

藤林:ちょ、ちょ、ちょっと!? 何さっきからその“ダッシュしながら”みたいなの。

横田:あ、これですか? これはいわゆる「ト書き」ですよ。 劇に使う台本だから動作も一緒に書いてあるんですよ。
   洗濯の場面で「ゴシゴシしながら」って書いてあったら実際に演じる時やりやすいでしょ?

藤林:いやゴシゴシまでは理解できたんだけどさ、おばあさんが三代目的なダンスしながら桃を見つけるのはおかしくないかと言いたいの。    

横田:まぁよくわかんないですけど、とりあえず先行きましょうよ。
   おばあさん「こんな大きな桃初めて見ました、もちかえっておじいさんと一緒に食べることにしましょう(クロワッサンを食べながら)」

藤林:ちょいちょいちょい!! だからなんなんこれ!?

横田:なんですかさっきから! そんないちいち止められたら最後まで読めませんよ!

藤林:だから! クロワッサンを食べながらってどういうことだよ! クロワッサンとか昔話の世界観ぶち壊しだろうが!
   それ以前にモグモグいっててセリフ聞き取れねぇわ!

横田:結婚式の食事で洋食が出るってことで配慮したんじゃないですか!

藤林:そんな配慮いらんわ! 時代に合わせるのを優先しろよ!

横田:もう先読みますからね。
   ナレーター「おばあさんは、拾った桃を家に持ち帰りました(腹筋しながら)」

藤林:ナレーターもかい! 最初の語りは何もなかったじゃん! せめてナレーターは普通でいてほしかったよ!

横田:ナレーターに関しては客席から見えないんだから別に何しながらでもいいじゃないですか!

藤林:よかねぇわ! 腹筋してたらセリフの途中で「フン!」とか入って聞き取りづらくてしょうがねぇだろうが!

横田:おばあさん「早速、拾ってきた桃を割ってみましょう(泡風呂から足だけ出しながら)」

藤林:なんで急に泡風呂出てきた! お色気シーンなんかいらんというのに!

横田:赤ちゃん「おぎゃあ! おぎゃあ!(日本経済新聞を読みながら)」
   おばあさん「なんと! 桃から赤ちゃんが出てくるとは!(バスローブを着てワインの入ったグラスを回しながら)」

藤林:お前さっきから目まぐるしいな! まず、なんで赤ん坊のくせに日経読んでんだよ! 意識高い赤子だな!
   おばあさんもさっきから何したいんだよ! 風呂入ったりバスローブ着たり! 男子中学生を誘惑させたいんか!

横田:いや、せっかくなので新婦の父親を…

藤林:ダメに決まってんだろ! どんな目的だよ!

横田:おばあさん「この子には“桃太郎”という名前を授けましょう(“桃の錬金術師”と書かれた紙を見せながら)」

藤林:どう読ませたいんだよ! キラキラというかもはやそういう次元でもねぇよ!

横田:ナレーター「桃太郎はすくすく育ち、立派な少年になりました。(泡風呂から足だけ出しながら)」

藤林:なんでナレーターも風呂入ってんだよ! お前どうせ客席から見えないんだから何も誘惑する必要ねぇだろ!

横田:桃太郎「おばあさん、私はこれから鬼退治に行って参ります(こども新聞を読みながら)」

藤林:お前赤ん坊の時は日経読んでたんじゃねぇのか! 日経からこども新聞に至った経緯を教えろ!

横田:おばあさん「そうですか。じゃあこのきびだんごを持って行きなさい(料理の鉄人のテーマを流しながら)」

藤林:多分だけどそんな大層な料理ではないだろ。

横田:桃太郎「ありがとうございます。 それでは、行って参ります!(DVDでアニマルプラネットを鑑賞しながら)」

藤林:行く気ないだろ! どうやってDVD観ながら旅に出るんだよ!

横田:桃太郎「よし、出発したぞ。 絶対鬼を退治してやるからな。(涙を拭きながら)」

藤林:お前絶対動物たちの神秘か何かで感動したろ。

横田:犬「桃太郎さん桃太郎さん、お腰に付けたきびだんご、一つ私に下さいな!(口いっぱいに物を頬張りながら)」

藤林:なんで既になんか食ってんだよ! きびだんご入んねぇだろうが!

横田:桃太郎「いいよ、その代わり僕の仲間になってくれないか!(ルージュを引きながら)」

藤林:なんで桃太郎急に誘惑してんの!? アニマルプラネットの影響!? 

横田:ナレーター「こうして、犬が仲間になりました。(周りをキョロキョロしながら)」

藤林:ん? ナレーター台本に集中しろよ。

横田:猿「桃太郎さん桃太郎さん、お腰に付けたきびだんご、一つ私に下さいな!(3日間絶食しながら)」

藤林:なんで猿は飢え死に寸前なんだよ! 犬とバランス取れなかったのか!

横田:桃太郎「いいよ、その代わり僕の仲間になってくれないか!(これみよがしに肉を食いながら)」

藤林:桃太郎クズかよ! 飢えてる猿にそんな挑発的なことしてたらそっぽ向かれるぞ!

横田:(カチカチに冷えたビールを飲むなぎら)

藤林:…今のなんだおい! なんでながらの中に紛れてなぎら健壱さん登場してきたんだよ!

横田:ナレーター「こうして、猿が仲間になりました。(結婚式に来ている参加者の財布から金を抜き取りながら)」

藤林:ナレーターもどさくさに紛れて何やってんだ! どうりでさっきキョロキョロしてたわけだな! 何で台本に犯罪仕組まれてんだよ! 

横田:キジ「桃太郎さん桃太郎さん、お腰に付けたきびだんご、一つ私に下さいな!(羽を抜いて機織りしながら)」

藤林:それ違う昔話のやつ! 鶴が既に同じ事やってるから! 完全に二番煎じだよ!

横田:桃太郎「いいよ、その代わり僕の仲間になってくれないか!(魔方陣を描いてきびだんごを創りながら)」

藤林:ガチの錬金術師じゃねぇかよ! キラキラネーム的なやつかと思ったらガチなのかよ!

横田:ナレーター「こうして、キジが仲間になりました。(連行されながら)」

藤林:捕まってんじゃねぇかナレーター! 金抜き取るから捕まっちゃったじゃねぇか!

横田:ナレーター「桃太郎一行は、ついに鬼ヶ島に到着しました(パトカーに乗せられながら)

藤林:最後までナレーターの仕事まっとうしてんじゃねぇよ! 結婚式で逮捕って最悪だな!

横田:桃太郎「これ以上お前らの好きにはさせない! 行くぞ、家来のみんな! うおお!(鬼たちと「恋するフォーチュンクッキー」を踊りながら)」

藤林:戦わないのかよ! 何一緒に踊り狂ってんだ! なんかむしろ楽しそうだよこれ!

横田:ナレーター「こうして、桃太郎は鬼を倒して宝を持ち帰りましたとさ。 めでたしめでたし。(取り調べで犯行の動機を説明しながら)」

藤林:がっつり自供してる… ってなんだこれは! 訳わかんないト書きばっかで全然ダメじゃねーかよ。

横田:そうかなぁ?(自分の書いた台本に心から満足した顔を浮かべながら)

藤林:いや、お前が満足ならもういいよ!


X子:ありがとうございました。うーん、読んでる方も満足ですね!

Y美:KKジハードさん、いかがでしょうか?

 
・面白かったです。台本という設定の活かし方が完璧だと思います。
 よく見るとほとんどボケているのはト書きの部分で、まじめなセリフとのギャップが面白さをしっかり生んでいます。
 頭の中でしっかりと劇の様子が想像できて、情景をしっかりと描けることのできている完成度の高い漫才だと思います。
 序盤のスタートダッシュが若干弱い気もしたので、とどめの肉付けができたら最高ですね。
 

X子:なるほどなるほど。

Y美:ジンガーさん、いかがでしょうか?

 
・(鬼たちと「恋するフォーチュンクッキー」を踊りながら)←ラスボスがダンスバトル・・・!?
 
 ボケ方がしっかり固まっており、ボケの組み立てもしっかり出来てて面白かったです。
 ボケ自体はもっと展開できた気もしますし行数制限的にも余裕あるので、桃太郎や他キャラの台詞を入れてみて嵩増ししてもよかったんじゃないかなと思います。
 あとは、「(泡風呂から足だけ出しながら)」とか良いボケだと思いますし物語前半で重ねて使ってるので、後半にもう数発撃ってもよかったかな等。
 

X子:ふむふむ。ありがとうございます。

Y美:スラガラさん、いかがでしょうか?

 
・今回のなかなかエグさに溢れた決勝9ネタの中で、普通にシンプルに分かりやすく、凄くベーシックに面白かったのがこのネタでした。
 ボケのパターンがどうしても限定されてしまうのはもうしょうがないと思わせたところで、そこからナレーターも侵入してくるなど展開もあり、安心してネタを読むことが出来ました。
 ただ、大きな加点をする笑いどころが僕の中であまりなかったのが、このような点数になった要因です。もう1つ、何かあれば…。
 

X子:なるほど、やはりもうちょい何か欲しかった、と。



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、6組目はこの方たちです!



エントリーNo.012

リリコミンストレルショー
時事漫才・都知事誕生
町々:どうも、リリコミンストレルショーです。

悪原:草津温泉すすりつくし男。

町々:どうした。

悪原:切り株からにゅるにゅる生え男。

町々:久々のMM−1だぞ。

悪原:そして、サンゴ礁男。

町々:なんなんだよ。その異形の男たちは何なんだよ。

悪原:いやー俺さ!! 田舎に住みたいんだよ!! そう!! 田舎に住む!!
   いやむしろ今からここを田舎にしまーーーーす!! すべからくコンビニを燃やします!! 東京タワー、屋久杉にします!!

町々:いや、いきなり何の提案なんだ。犯行予告か?

悪原:俺さ! 俺さ! 都政が凄く心配なんだよ! なんかアレだろ! 女が都知事やるんだろ!!

町々:中途半端にニュースだけ見てるんだな。確かに、選挙で小池百合子さんが当選、東京都知事に決まったな。

悪原:でも俺すげーあの女すげー応援してたんだよ! すっげー応援してる!! こう腕を突き上げてさ!!
   おい小池! おい小池ー!! 小池!? 小池!? おい小池ーーっ!!! おい小池ーーーッ!! 息を吹き返せおい小池ーーーッ!!

町々:その小池は2012年に逃げ切って天寿を全うしたよ。でも、何で応援なんかしてたんだよ。

悪原:ワンチャンあるぞと思って。

町々:お前穴ついてたら何でも良い人かよ。

悪原:いやーでも聞きましたか皆さん! あの女が都知事になったからには、もう皆さん正気でいられませんからね! 脳がスポンジになりますよ!

町々:は? 別に誰が知事になったって、人類はそんな劇的に退化はしないだろ。

悪原:するに決まってんだろ! だって、東京が麻薬の町になるんだぜ!?

町々:は?

悪原:あの女、公約で言ってたぜ! みんな大麻吸い放題食べ放題天国になるんだろー!?

町々:大麻ーシティ構想は掲げられていないが。

悪原:ヒュー! すげー! 楽しそう! でも俺は気付いた……大麻は、やめろって言われてるうちが、美味い!

町々:困ったちゃんかよ。

悪原:それで俺は思ったね。このままじゃあ、東京が駄目になる。ちんちんオリンピックも成功しなくなっちまうぜ。

町々:そんなAVみたいな企画は誘致してないよ。

悪原:だから俺は確信した。東京を田舎にしよう!

町々:はあ?

悪原:東京全土を田舎にするぜ! 具体的にはイギリスは湖水地方みたいな感じにするぜ!

町々:ピーターラビットを生んだイングランドの超素敵な田舎じゃん、理想高すぎかよ。
   でも東京を田舎にするって、一体どうするんだよ。お前一人で何が出来るって言うんだよ。

悪原:チッチッチッ、誰が一人だって言った? 俺には……頼れる三人の仲間がいる!

町々:三人の、仲間!? ま、まさか……。

悪原:草津温泉すすりつくし男。

町々:草津温泉すすりつくし男!

悪原:切り株からにゅるにゅる生え男。

町々:切り株からにゅるにゅる生え男!

悪原:そして……サンゴ礁男、こと俺。

町々:サンゴ礁男! 悪原がサンゴ礁男!

悪原:ああ、俺には三人の頼れる仲間がいるんだぜ!

町々:二人だよ! サンゴ礁男がお前なら、仲間の数は二人だよ!

悪原:俺の頼れる仲間を紹介しよう! まずは草津温泉すすりつくし男! その名の通り、草津温泉をすすりつくした猫舌の男だ!

町々:草津温泉をすすりつくした猫舌の、男!

悪原:猫舌だから、95℃以上ある草津温泉の源泉を存分に湯揉みして更にふーふーして限りなく0℃に近づけ、その行為の繰り返しで源泉をすすりつくした、恐ろしい男だ……。

町々:スペックが無茶苦茶でもう訳が分からねえ……。いや、そもそも、俺の知ってる草津温泉は別に枯れ果ててないぞ。

悪原:チッチッチッ、俺の言ってるお前の草津温泉は別物だぜ。
   お前の知ってるβ世界線の草津温泉は無事だが、α世界線、つまりパラレルワールドの草津温泉は、この男にすすりつくされている!!

町々:まさかこいつ、異世界の存在を示唆しているのか……?

悪原:そして、切り株からにゅるにゅる生え男。こいつは、あらゆる切り株から生える事が出来る恐ろしい男だ……。

町々:気持ちが悪い! いや、俺はどんな絵を想像すれば良いんだよ。

悪原:ムーミンのニョロニョロみたいなのが、色んな切り株からわっさーっているのを想像してもらえれば。

町々:気持ちが悪い!! 何だよ、その男、いっぱいいるのかよ!

悪原:いや、切り株からにゅるにゅる生え男は、一人だぞ。

町々:想像の中のそいつはいっぱいいるんだよ! 一人じゃねえんだよ! わっさーっているんだよ!

悪原:ああ、理解の違いはそこにあったんだな! 切り株からにゅるにゅる生え男は、同時に複数個の個体を存在させられるんだ!
   つまりそれぞれ思考と個性を持ちながら、群体として同一の目的の為に動くことの出来る集合生物なんだぜ!
   一個一個の個体を細胞生物とした、一個の生命体、言ってしまえばラブロックのガイア理論における地球のような存在だな!

町々:お前頭良いのか悪いのかいい加減にしろよ! 言ってる事わけわかんねーよ!

悪原:そして俺、サンゴ礁男。海を愛する、熱い男……。年に三度は海に行く……。

町々:普通だよ! それ、ちょっと好きな程度の奴だよ!

悪原:そうさ俺ら三人が力を合わせれば、東京は変えられる! 田舎に出来るんだぜ! イエー!

町々:なんか、本当に何とかなるような気がしてきた……。

悪原:と言う訳で俺達三人は実際に、おい小池と対決してきたんだ。

町々:お前マジのやつかよ。人様の迷惑になる天才だなお前。

悪原:俺はまずおい小池へのアポイントを取りに都庁へと向かった。だが、駄目だった。玄関で、警官から三人ともちんちんをしまえと怒られたんだ。

町々:当たりの前だよ。何で丸出しでアポ取りに行ってんだ。

悪原:対決から逃げるなんて、姑息な女だ! そして俺は、切り株からにゅるにゅる生え男に頼んで、俺も一緒に知事室の切り株から生えさせてくれと頼んだんだ!

町々:いや、知事室の切り株って何なんだよ。

悪原:おやおや知らなかったのかあ? おい小池ってしいたけなんだぜ。しいたけだから、普段は原木から生えてるんだ! おっと! この世界線では公になってなかった情報だっけな!

町々:もう理解が追いつかないよ。俺、小池百合子をしいたけだと思ってるやつ初めて見たけど、意外とリアクション取れないもんなんだな……。

悪原:そして俺は、おい小池の原木を使い、切り株からにゅるにゅる男と一緒に知事室に現われた。この瞬間、俺はこの世界に二人になった……。

町々:あ、移動とかじゃなくて、マジでただ出現するだけなんだ!? そりゃあお前二人になるな!?

悪原:俺は言ったよ。「おい小池! おーーーい小池! 小池ーーー!! おい小池ーーー!!」……ってな!

町々:こんなに都知事を可哀想だと思ったのは初めてだよ。

悪原:おい小池は言ったよ。「……しいたけ」、と。

町々:何で!?

悪原:そりゃあ、しいたけは「しいたけ」か「地井武男」としか喋れないに決まってるだろ。

町々:しいたけは喋らないよ! 一言も!

悪原:おい小池の鋭い意見だった。だが、俺も政治家の端くれだからな。おい小池に向けて東京を田舎にするプランをとうとうと語ったよ。

町々:いつまでも都知事をおい小池呼ばわりしてる奴に政治家を名乗ってほしくないよ。

悪原:具体的なプランはこうだ。まず、草津温泉すすりつくし男が飲み込んでた草津温泉100億立方キロメートルを、都庁の天辺から一気に吐き出す。

町々:東京の終わりだよ。都庁から海全部の5倍以上の水を浴びせかけるの、それは東京の終わりだよ。

悪原:草津温泉の底に沈んだ東京。これはもはや湖水地方だ……。

町々:異形の男のゲロに沈んだ世界がピーターラビット生み出してたまるか。

悪原:だが、俺がそうして都政の今後についておい小池と語り合っていると、ふいに扉が開いたんだ!

町々:やっと警察の登場かな。警察の登場であってくれ。

悪原:それは、ちんちんを出した、頭にサンゴ礁を乗せた男だった……。

町々:もう一人のお前じゃねーか! 頭にサンゴ礁を乗せた、もう一人のお前じゃねーか!

悪原:俺は思った。これは……ちんちんオリンピックの始まりだ! 俺こそが金メダルだ、と!

町々:お前もう良くわかんないよ!

悪原:そして、俺たちはその場でちんちんオリンピックを始めたよ。棒高飛び、棒幅跳び、棒倒し、棒術……。
   おい小池の前でお互いのちんちんを競い合い、鍛えあい、高めあう、俺と俺。

町々:この世の地獄かよ。

悪原:いや、と言うか、オリンピックは古代ローマでは選手は全員全裸でやってたから、マジでオリンピックはちんちんオリンピックで良いと思う。

町々:知らねえよ! もうお前の言葉の意味をいちいち考えたくないよ!

悪原:そうして俺たちは対決そっちのけでちんちんオリンピックを始めたよ。すると、おい小池が遂にブチ切れたよ。
   しいたけと地井武男以外喋れないはずの、おい小池が、遂に日本語を喋ったんだ。

町々:それ以外喋れないという前提がもうおかしいんだよな。

悪原:「この唯一神小池百合子の知事室でちんちんオリンピックを催すとは、悪原は他人を殺し人類を滅ぼすことに他ならない。腹を切って死ぬべきである」。

町々:いや何で言い回しが又吉イエスなんだよ。いい加減にしろ。

二人:どーもで。


X子:ありがとうございました。

Y美:では、審査員の方々からのコメントをいただきたいと思います。
   けうけげんさん、いかがでしょうか?

 
・やったーボクらのリリコミだー!ヒューッ悪原の第一声から相変わらずクレイジーでやがんぜーっ!
 時事ネタがテーマなワケですが、お構い無しに繰り出されるワードの破壊力がとんでもない。
 「おい小池」「ワンチャンあるぞ」「ちんちんをしまえ」とキラーフレーズを惜しげもなく使われたらそりゃ笑いますわな。
 メインボケである3人の男の使い方も完璧で、ワードセンス頼りじゃないところも流石の一言。
 個人的に気になったのは、「東京を田舎にしたい」というネタの根本である悪原の意見が少しふわふわしていたかなと。
 田舎にしたいと言っているのみで「何故田舎にしたいか」がほぼ語られていないため、そこの補強が欲しかったです。
 また、異世界の下りは理屈や突飛さが先行してゴチャゴチャしてしまった印象を受けました。
 ともあれ全体を通してイカレポンチで大満足です。リリコミ大好きマンの私も大満足です。
 

X子:リリコミ大好きマンがここにいた!

Y美:T.T.さん、いかがでしょうか?

 
・「お前頭いいのか悪いのかいい加減にしろよ!」これに全部詰まってると思います!
 正直最初の3人の男が後々出てくるんだろうなと読めちゃったんですが関係なく面白かったです!
 オチが唐突すぎたのが気になりましたがほぼ一行一行笑いました!
 

X子:ほぼ一行一行笑えたそうです!これは高得点が期待できるかも!?

Y美:マグネッツさん、いかがでしょうか?

 
・ちんちんオリンピック、仲間の数は二人、異世界の存在を示唆、ラブロックのガイア理論、(ここら辺で面白いところを羅列する量がめちゃ増えそうなのでやめました)
 この意味のわからない光景がどんどん押し寄せる感じがリリコミンの真骨頂ですね。いいもの見れました。
 

X子:真骨頂!いいもの見れました!



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、7組目はこの方たちです!



エントリーNo.027

Kevin Haloweld with culture deadness club
NOT GIANT MONSTER Black and Black
????:各社ー!各社ー!「Pokemon Go」の成功で慌てて位置情報利用ゲームの開発に着手してる各社ー!
     無駄ですよー!あれはポケモンだから売れたんですよー!無駄ですよー!各社ー!各社ー!!

ケヴィン:挨拶の前から持論ばらまくのやめてもらっていいですか
     Kevin Haloweld with culture deadness clubです
     僕がケヴィン・ハロウェルドで、こちら、今日の相方は

ポケモン:ポケモンです

ケヴィン:まさかの自画自賛でした

ポケモン:各社が無駄に開発費用を使わないように警告してあげただけだよ

ケヴィン:タチが悪いなお前
     ところであなたはなんて名前のポケモンなんですか?
     あんまり可愛くないと言うか凶悪な見た目ですけど今はこんなポケモンがいるんですか?

ポケモン:あぁ、僕はゲームには出てないよ

ケヴィン:まさかのオリジナルポケモンかよ、雲行きが早くも怪しい

ポケモン:いや、オリジナルポケモンでもないよ
     ポケモンってもはや怪物的に巨大な版権じゃないですか
     その怪物的、の怪物です

ケヴィン:その怪物的、の怪物なのかよ

ポケモン:言うなれば僕は「ポケモン」と言う存在そのもの、かな

ケヴィン:とんでもない奴を相方にしてしまった

ポケモン:で、この大会はどれだけ金を積めば優勝できるんだ?

ケヴィン:とんでもない奴を相方にしてしまった

ポケモン:まあこの大会は面白い奴が勝つんだろ
     全世界が熱狂してるポケモンより面白い奴なんているのかよ

ケヴィン:その面白いじゃないし

ポケモン:少なくともゲーム界には居ないね

ケヴィン:この大会ゲームお前しか出てないんだよ

ポケモン:まあそんなことより聞いてくださいよ
     僕やってみたいことがあるんですよ

ケヴィン:いや急に漫才のテンプレハマり出すのかよ

ポケモン:魔王にさらわれたお姫様を助け出すゲームになってみたいんですよ

ケヴィン:いやお前めちゃくちゃ別のゲームに憧れてんじゃねえか

ポケモン:いやね、つまらないゲームの気持ち、理解してみたいなって

ケヴィン:一度にドラクエとマリオを敵に回すなよ

ポケモン:今なお社会現象起こせるのは俺だけでしょ

ケヴィン:こいつ、調子に乗っていやがる

ポケモン:まあとりあえずポケモンとは違うことをやってみたいんですよ
     ってわけでケヴィンさん主人公やってくださいよ
     僕ゲームシステム全般やるんで

ケヴィン:安心できる

ポケモン:ここ、アカネイア王国はとても平和な国でした。
     しかし、ある日のこと、邪悪な魔王が現れ、姫を自分の城にさらって行ってしまったのです

ケヴィン:ふむふむ

ポケモン:止むを得ず王様は、魔王を倒し姫を救う勇者の公募を始めました
     そのニュースは懲罰房暮らしのケヴィンの元にも届きました

ケヴィン:待って

ポケモン:もっとも、ケヴィンのような罪人には全く関係のない話です
     ケヴィンは特に気にもとめず、今日の拷問はなんなのか考え始めました

ケヴィン:いや今日の夕飯みたいな感覚で拷問を捉えるなよ

ポケモン:それから14ヶ月が経ちました

ケヴィン:動きのない期間が長えよ

ポケモン:拷問がセルフ制度になりました

ケヴィン:そこが動くのかよ、セルフ拷問ってなんだよ

ポケモン:自分の体に懸命に火で炙られた刃を突き立てるケヴィン

ケヴィン:セルフなんだから加減しろよ俺

ポケモン:それから2ヶ月が経ちました

ケヴィン:さっきの描写なんだったんだよ

ポケモン:自分の爪と爪の間にナイフを入れていると、なんと懲罰房に王様が現れました

ケヴィン:だから加減をしろよ

ポケモン:王様は言いました。
     「もうこの国の生き残りはわしとお前だけになってしまった、頼む、魔王を倒しに行ってくれ」

ケヴィン:想像を遥かに超える劣勢だった

ポケモン:そう、すでにすべての国民が魔王に果敢に挑み、そして儚くも敗れてしまった後だったのです

ケヴィン:この国には勇敢なやつしか居ないのかよ
     だから拷問もセルフになったんだな

ポケモン:「人口2名のこの国を救えるのはお前しか居ないんだ、頼む」

ケヴィン:もう諦めろよ

ポケモン:こうしてケヴィンは旅に出ることになったのです

ケヴィン:出るのかよ、なんだよこのあらすじ

ポケモン:ポケモンではとても出来ないダークな世界観に挑戦してみた

ケヴィン:ダーク慣れしてなさすぎて加減が出来てねえよ

ポケモン:ちなみに他の住人は全員死滅してるから魔王の城まで特に街とかイベントとかはないよ

ケヴィン:地獄かよ、中ボスとかはいないのかよ

ポケモン:魔王は単独犯だよ

ケヴィン:たった一人を相手に国民全員が滅ぼされてるのかよ

ポケモン:平和な国の国民の戦闘力なんてそんなもんだよ

ケヴィン:ってか単独犯なら雑魚敵すら居ないんだろ?どうやってレベル上げるんだよ

ポケモン:ポケモンとは違うことがやりたいからレベル上げはないよ

ケヴィン:これポケモンとは違うことがやりたいからクリアもないやつだろ

ポケモン:その代わり懲罰房の拷問器具は自由に使えるから一回捕まえてしまえばお楽しみだよ

ケヴィン:クリア後のお楽しみ要素陰鬱すぎる

ポケモン:とりあえず荒れ果てた国を這いずり回ってなんとか魔王の城についたとしましょう

ケヴィン:もう這いずり回っての時点で勝機を感じないんだよな

ポケモン:まずインターホンを押します

ケヴィン:正々堂々かよ

ポケモン:出てきた魔王に案内されまずは応接間に

ケヴィン:もう魔王相当余裕あるじゃねえか

ポケモン:ケーキと紅茶でおもてなしをしてくれます

ケヴィン:いや、これは罠ってパターンもあるぞ

ポケモン:罠ではありません

ケヴィン:もう魔王相当余裕あるじゃねえか

ポケモン:糖分とカフェインを摂取し脳と体にエネルギーが行き渡ったところで、いざバトル

ケヴィン:焼け石に水だよ、敵が焼け石に水をかけてきたやつだよ

ポケモン:バトルはポケモンとは違うことをしたいので、ダンスバトルです

ケヴィン:急にポップな要素出すぎだろ

ポケモン:曲を選んでください
     「TOMORROW/岡本真夜」
     「LOVE LOVE LOVE/Dreams Come True」
     「ロビンソン/スピッツ」

ケヴィン:ポケモン発売前年のヒット曲並べるなよ、じゃあロビンソンで

ポケモン:じゃあ曲流すんで踊ってください

ケヴィン:えぇ……





  新しい季節は なぜか切ない日々で
  河原の道を 自転車で 走る君を追いかけた
  想い出のレコードと 大袈裟なエピソードを
  疲れた肩にぶら下げて しかめ面まぶしそうに

  同じセリフ 同じ時 思わず口にするような
  ありふれたこの魔法で 作り上げたよ

  誰も触れない 二人だけの国
  君の手を放さぬように
  大きな力で 空に浮かべたら
  ルララ 宇宙の風に乗る


  片隅に捨てられて 呼吸をやめない猫も
  どこか似ている 抱き上げて 無理やりに頬寄せるよ
  いつもの交差点で 見上げた丸い窓は
  薄汚れてる ぎりぎりの三日月も僕を見てた

  待ち伏せた夢のほとり 驚いた君の瞳
  そして僕ら今ここで 生まれ変わるよ

  誰も触れない 二人だけの国
  終わらない歌バラまいて
  大きな力で 空に浮かべたら
  ルララ 宇宙の風に乗る

  大きな力で 空に浮かべたら
  ルララ 宇宙の風に乗る
  ルララ 宇宙の風に乗る





ポケモン:お疲れ様でした

ケヴィン:この時間は一体なんだったんだよ
     踊ってるけど一切見てる人に伝わらねえし、ロビンソンの歌詞ボケなしでずっと並べてるし
     スピッツハマりたての中学生の机の落書きかよ

ポケモン:この勝負魔王の勝ちということで

ケヴィン:わかってたけどなんなんだよ

ポケモン:第二ラウンド!曲を選んでください
     「碧いうさぎ/酒井法子」
     「めぐり逢い/CHAGE&ASKA」
     「友よ/長渕剛」

ケヴィン:ヤクやってねえのCHAGEしか居ねえじゃねえか
     ってか待て、これ以上歌詞で埋められるかよ

ポケモン:リタイアということですか?

ケヴィン:そもそも勝てるわけねえだろ、あっちはダンスで国民全員殺してるんだろ

ポケモン:魔王とのダンスバトルに敗れ、命を落としたケヴィン
     姫はアカネイア王国より将来性のある魔王と結婚し、結果的に幸せに暮らしましたとさ
     めでたしめでたし

ケヴィン:めでたくねえよ、なんだよこのゲーム

ポケモン:ダメでしたか?

ケヴィン:ダメダメだよ

ポケモン:まあ、世界一優れたゲームであるポケモンの要素を封じてしまった以上、仕方ないですね

ケヴィン:いい加減にしろ

ポケモン:ポケットモンスター新作「ポケットモンスターサン・ムーン」は2016年11月18日発売予定!
     みんな、買ってね!!

ケヴィン:いい加減にしろ!!


X子:ありがとうございました。

Y美:では、審査員の方々からのコメントをいただきたいと思います。
   ジンガーさん、いかがでしょうか?

 
・「安心できる」←この返し大好きです。
 何の問題もなく面白かったです。高い位置で安定しすぎでしょ・・・
 拷問がセルフになるとか、そこからの「もうこの国の生き残りはわしとお前だけになってしまった」とか、ダンスバトルとか、予想外のボケがバンバン出てきて笑いっぱなしでした。
 強いて何か言うなら、「ポケモンと違うこと」ばかりでなく、ポケモンの何かしらがもう少し絡んでると良かったかなと。
 

X子:高い位置で安定、いい感じですね!

Y美:T.T.さん、いかがでしょうか?

 
・一番抽象的な存在が相方に来た!
 ロビンソンの一番の歌詞見てめちゃくちゃ笑って、二番の歌詞でてきたところでもめちゃくちゃ笑いました!フルコーラスでロビンソン踊んなよ!!!
 基礎がしっかりしてるんで「懲罰房」とか「インターホン」とか割と見るボケでもしっかり面白いです!「セルフ拷問」は今大会1のキラーフレーズじゃないかと!!
 

X子:「セルフ拷問」、注目ワードよね!

Y美:スラガラさん、いかがでしょうか?

 
・ボケのパンチなどで言えば正直決勝だけ見ると3番目ぐらいに感じたのですが、1番高い点数をつけるならこのネタかなと思いました。ケヴィンがきっちり拾って、ネタに厚みを持たせていたと思います。
 23行歌詞で埋める勇気も素敵。ロビンソンでどう踊るの?という疑問笑いみたいが個人的に好きでした。このロビンソンのくだりでプラス5点ぐらいしました。
 

X子:まさか1曲流しきるとはね!



Y美:さて、どんどん参りましょう。

X子:続いて、8組目はこの方たちです!



エントリーNo.013

クラマエカナエ
パンジー菜々子
金江:はいどうも。クラマエカナエです!久々の挑戦ということでね、気合入れて行きましょう。

   実はですね、僕の姉さんが病院で働いていまして、それを見てああ医者っていいなあって思ったんですよ。

   だから僕医者やるんで、倉前は患者の役をやってもらっていいですか?

倉前:いやあそんなことより聞いてよカナエ!最近倉前はパンジー菜々子の腕が上がったんだ!

   ちょっとやってみてもいい? パンジー菜々子、パンジー菜々子、パンジー菜々子がやって来たレッツゴー!

金江:待って。おい、待って。

倉前:(NHKの人形劇みたいに腕を振る)どこに来たっていうのかね? それはもちろんこの町か宮城!

   パンジー菜々子はパンを噛じり、噛じったパンはレンタルビデオ屋にすぐ返す!美味しくないからすぐ返す!

  (ミュージカルっぽい回転)その後どこに行くのかって?それはもちろんパンジー菜々子、パンジー菜々子はああああ!

金江:待って。ゴメン。分からない。情報量が多すぎる。待って。

ガンジー・ガラメ:(堂々と舞台に上がる)それはきっとねえ

金江:誰だ。おい、テメエ誰だ。

ガンジー:どこか素敵な場所にパンジー菜々子は行くのさあ。誰も触れない所に、行くんだよおお。

倉前:それは本当かい? ならば僕を、パンジー菜々子の所に、連れていってよおおおおお。

金江:なあ、怖い。もう怖いよ俺。

ガンジー:そーれーはー まーだー 無理いいいいいいいいいいいい(ジャン!という音と同時に舞台から消える)

倉前:(ヘタレこむ)ああ!またダメだったかぁ……。ああ、ごめんカナエ。何か言いたい事あった?

金江:……もう最初っからやり直そう?

倉前:なんでだよカナエ!まだ漫才は始まったばかりだろう!

金江:どの口が漫才とほざくか!なんだ今のは!なんなんだよ今のはよおお!!なんで突然ミュージカルっぽいのが始まっちまったんだよ!

倉前:だから今のはパンジー菜々子で……。

金江:そのパンジーが何なんだよおおお!!スタートダッシュから舞台をファンシー一色に染めやがって!俺のお手本のような漫才のツカミを返せボケナス!!

倉前:まあまあ落ち着いてよカナエ。やってみれば分かるよ。せーのっ、パンジー菜々子、パンジー菜々子、パンジー菜々子がやって来たレッツゴー!

金江:ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダァアアアアアアアアア!!(倉前に金江パンツァーを繰り出している。金江パンツァーを食らった者は必ず十二指腸が潰れ、吹き出物が吹き出す)

倉前:(よろめきながらも確かなステップ)……どこに来たって言うのかね? それはもちろんこの町か御徒町!

金江:……それでもやるのか!思わずお前の十二指腸潰しちまったけど!それでもまだ続けるのか!

倉前:パンジー菜々子は菓子パンを噛じり。貸した菓子を回収するのさああああああ

   その後どこに行くのかって? パンジー菜々子、パンジー菜々子はああああああ

ガンジー:(指を鳴らしながら出てくる)それはね

金江:コイツは誰だ。この外人のオッサンは誰なんだよ!

ガンジー:僕には、分からなああああああい(ジャン!という音と同時に舞台から消える)

倉前:(ヘタレこむ)ああ!分からなかったかあ……ならばもう一度。

金江:(倉前の腕を押さえ込む)やらせねえよ!俺はそこまでお人好しじゃないからよお!

倉前:離すんだカナエ!三回連続でパンジらなければ、パンジニストの名が廃るだろう!

金江:これ以上ワケの分からない言葉を増やすんじゃねえ!

倉前:パンジー菜々子を極めようとする者、総じてパンジニストと呼ぶんだ!さあ、この手を離してパンジニストにパンジらせろ!

金江:オーケイ一旦落ち着いて全て説明してくれよ!今のお前の執念ただただ怖い!

倉前:(一旦落ち着く)……パンジー菜々子は、パンジー菜々子を呼ぶゲームなんだ。

金江:目的が不明すぎる。

倉前:パンジー菜々子への思いを込めた歌を歌いながら踊って、それが上手く行けばパンジー菜々子がどこからともなくやって来るんだ。沖縄なら小学生でも知っている。

金江:沖縄マリファナ吸ってんじゃねえのか。で、それでさっきのオッサンがパンジー菜々子ってヤツなのか?

倉前:いや、彼はガンジー・ガラメだよ。パンジー菜々子の前に立ちふさがる巨大な壁さ。

金江:パンジー菜々子ですら分からないのにそれがもう一人いる絶望。

倉前:ガンジー・ガラメに認められない限りは、パンジー菜々子には絶対に会えないんだ。絶対に……。

   実を言うとクラマエもまだ、パンジー菜々子に会ったことはないんだよ。

金江:えっ、お前パンジニストのクセに、パンジー菜々子に会ったことないの?

倉前:そんな簡単な問題じゃないんだよカナエ!今までパンジー菜々子にまで辿り着けたパンジニストは誰一人いないんだ!誰一人として!

   ガンジー・ガラメにすらたどり着くのに五年のパンジりが必要だった。パンジー菜々子は非常にハードなゲームなんだよ!

金江:単純に教えてくれ。このゲーム何が楽しいんだ。

倉前:最早楽しいとかどうとかの話ではないんだ。パンジー菜々子に惚れ込んじまった者は、その生涯をかけてパンジー菜々子を呼び出すことを止められないんだよ!

金江:もうそれ呪いじゃねえか。

倉前:最近はパンジー菜々子に会えないストレスで、吹き出物が吹き出すんだ。

金江:それは金江パンツァーのせいだ。

倉前:お腹も痛いし……。

金江:それも金江パンツァーのせいだ。

倉前:だけどそれでもクラマエは一人のパンジニストとして、パンジー菜々子を止めることはできないんだ!さあ、カナエもやろう!さあ、さあ!

金江:えっ、今の話を聞いて誰がやろうと思うの。

倉前:ああ、最初の構えはね、まずパンジー菜々子がどこにやってきたのかを思い浮かべて、それを頭の中から外側に放出するイメージで……。

金江:いやそんな太極拳みたいな説明されてもやらないからね!

倉前:頼むよおおおお!このパンジニストと一緒にパンジニストになってパンジー菜々子をパンジろうよ!

   カナエがパンジらないならクラマエは今日ずっと一人でパンジってるよ! せーのっ、パンジー菜々子、パンジー菜々子

金江:ああもうやめろおおお!パンパンうるせえんだよお前はああ!!
 
   分かったよやればいいんだろやればよお!久々に挑戦したのに狂った相方を見せるだけで終わるのは悲しすぎるからな!

倉前:おおおおやってくれるか!いやあ、実はクラマエ、前々からカナエにはパンジー菜々子の才能があると思ったんだよ。

金江:そんなアビリティちぎって捨てるわ。ええと、パンジー菜々子を思い浮かべて、それを頭の中から放出する感じでいいんだよな……。

   (目を瞑って瞑想している)

   ……パンジー菜々子、パンジー菜々子。パンジー菜々子がやってきたレツゴー。

ガンジー:(タップステップを踏みながらやって来る)どこにやって来たってええええ

金江:ええ、もうガンジー出てきたぞおい!

倉前:す……凄い!凄いよカナエ!こんなに早く、しかも一発目でガンジーを呼び出せることなんか今までに類を見ないよ!

   やっぱりカナエには天性のパンジニストの才能があったんだね!

ガンジー:(ミュージカルっぽい回転)どこかにあって、どこにもない。

     パンジー菜々子に会いたいかい?

倉前:ほらほらカナエ!早くネクストパンジーを出さないとガンジー帰っちゃうよ!

金江:なんだよネクストパンジーって!そんなこと言われてもどうしたらいいの……。

ガンジー:(NHKの人形劇みたいな腕の動かし方)会ってみたらビックリするかもね だけどもしかしたらガッガリするかもね

     パンジー菜々子は美しい人おおおお  いや、見方によればそうでもないかもおおおおおお

金江:さっきからぼんやりした事しか言わねえなコイツ。

ガンジー:(金江に詰め寄る)どうして何も答えない? パンジー菜々子を知りたくないのかあああいいい?

倉前:金江!早く!早くガンジーに歌って踊りながらパンジー菜々子の居場所を聞き出すんだ!

金江:そんな事言われても分からねえよ!てかもう別に聞き出したくもないし!

ガンジー:……そう、それが正解いいいいいい。

金江:はっ?

ガンジー:パンジー菜々子は自分で探す。それが、お前の答え。それを選んだお前は正解いいいいい!(ジャン!という音と同時に舞台から消える)

倉前:そうか!ガンジーガラメの問題の正解は、何も答えないことだったのかっ!

   人に答えを聞いてばかりのお前には、とてもパンジー菜々子に会わせられないという、そんな子供から大人へのステップのようなメッセージが込められていたのか!

   クウ〜!こんな単純でいて素晴らしい答えに今まで誰も気付かなかったなんて!感動と悔しさで涙が溢れて止まらないぜ!(泣き崩れる)

金江:……あのさあ、よく分からない涙を流してる所悪いけど、ここから俺はどうすればいいの?

倉前:ああ!ぼんやりしてる場合じゃないカナエ!今すぐ最初のパンジーをやるんだ!

金江:えっ?……パンジー菜々子、パンジー菜々子。パンジー菜々子がやってきたレツゴー。

??:どこにもあって、どこにもない、だけど常にあなたの隣にいいいいいいい

倉前:えっ?ま、まさか!

パンジー菜々子:(舞台の上空からゆっくり降りてくる)私のもとに 来たのはお前だけ

二人:パンジー菜々子だああああああああああ!!

パンジー菜々子:(全身からパンジーを開花させる)どうしてお前は ここへ来たんだ? 答えてくれええええええ

倉前:見とれている場合じゃない!カナエ、早くパンジー菜々子とパンジるんだ!

金江:どうすりゃあいいの!?もうどうすりゃあいいの!?

倉前:ここまで来たらもうカナエの心の中から自然に湧き上がる言葉を、そのまま声に出すんだ!

金江:自然に湧き上がる言葉?そういえば……さっきから頭の中で何かが共鳴している!

   (自然にパンジー菜々子の元に歩み寄る)君に会いに来たのは ただ一つの理由うううう

(爆風が流れる舞台。飛び散るパンジー)

倉前:凄い!カナエの中のパンジニストの力が、今覚醒したあ!

パンジー:それはなんだい 言っておくれええええええええ

(負けじと咲き続けるパンジー)

倉前:おお!だけどパンジー菜々子のパンジニスト能力もハンパない!これは今、スゲエパンジ合戦が行われているぅ!

金江:(ミュージカルっぽい回転)本当に一言だけ パンジー菜々子に 言いたいのさああああああ

    ……何をやっているんだ姉ちゃんっ!!!!!!!!!!!

(風がぴたりと止み、パンジーがひらひらと舞台に落ちる)

パンジー:……まあ、気づいていたのね!

金江:いや、気づくよボケが!色々聞きたいけどなんだこれは!病院で働いているんじゃないのかよコラァ!!!

パンジー:いや、詳しく話すと長くなるんだけどね、これは私が開発したパンジーセラピーっていうパンジーを見るだけで病気が治るってシステムがど派手に暴走しちゃって、パンジーを強く求める人の所に私と部下のガンジー君が飛ばされる仕組みになっちゃったの。それでどうせだったらこれをゲーム化して世間に広めてやろうって計画したのがもう10年も前の話で……

金江:怒涛の伏線回収は止めやがれ!過剰な説明は漫才の毒っ!!

倉前:いやあ、金江ってパンジー菜々子氏の弟さんだったんだね!そりゃあパンジニスト能力も生まれつき高いワケだ!

パンジー:まあ、とりあえずおめでとうクラマエカナエ。これからはあなた達が、次のパンジー菜々子よ。

金江:はい?

パンジー:なんかシステム上私を呼び出した人が次のこの役に成り代わるの。だから、ちょいちょいどこかに転送させるけど、頑張って!んじゃあ!(逃げるように舞台から去る)

倉前:(NHKの人形劇みたいに腕を振る)……やったああああ なんて光栄 僕らが新たなパンジー菜々子おおおおおお

金江:(ミュージカルっぽい回転)嫌だあああああああああ 夢なら覚めてえええええええ もういいよおおおおおおおお

二人:どうも あーりーがーとーうーごーざーいーまーしー   たあああああああああああ(ジャン!という音と同時に舞台から消える)


X子:ありがとうございました。

Y美:では、審査員の方々からのコメントをいただきたいと思います。
   マグネッツさん、いかがでしょうか?

 
・なんなんだよ、この大会。
 

X子:ホントにもうね…!

Y美:主催者が同調しないでよ…

   銀沙灘さん、いかがでしょうか?

 
・なんだなんだ。狂人しかおらんのかこのコンテストは。
 強引でぶっ飛んだツカミに始まり、途中で役割をチェンジして、最後は怒涛の伏線回収。
 一見ハチャメチャなネタでありながら、起承転結がきれいにまとまってました。
 展開や台詞の言い回し等、細かい部分で笑いを拾うことができましたが、
 肝心のパンジー菜々子というワードそのものに強いパワーが無いのが残念でした。
 単語としての面白さもそうですが、本人登場してからも想像よりマトモな人間だったなあと思ってしまいました。
 たぶん、パンジー菜々子より倉前やガンジーのキャラが濃いせいでしょうか。パンジー自体も変人は変人なんですけど、相対的にね。
 

X子:しかも狂人はだいたい決勝で濃縮されて出て来るからね!

Y美:KKジハードさん、いかがでしょうか?

 
・よくぞここまで意味の分からない設定を漫才に仕上げたと称賛してあげたい。
 そもそもミュージカル風のものを文章にするってかなり難しいことだと思うんですが、それをしっかりとやり切ったのはすごいです。
 ガンジーという外国人の使い方も絶妙で、扱いづらい設定を勢いと威力でぶちかましたような気持ちいいネタでした。
 それだけに、突っ走りすぎていてついていくのに大変で、受け入れやすさでいえば少々難を感じました。
 合間合間に雰囲気を緩くするような、アクセントになるようなボケや展開を加えていければ、緩急ができて一つ一つの展開が活きるのではと思います。
 

X子:なるほど、ありがとうございました。















Y美:さて、続いてはの敗者復活を勝ち抜いた組の登場となります。

X子:見事、敗者復活を勝ち抜いたのはこの組です、どうぞ…!!


果たして敗者復活はどの組なのか…!?