徳山の奥座敷
ゆの温泉・芳山園

 

夜市川から見た芳山園温泉棟 突撃!入湯リポート

   夜市川(やじがわ)のほとり建つ芳山園は8軒の温泉宿のうち最も立地に恵まれているかも知れない。目の前の夜市川の両岸は綺麗に整備され遊歩道も出来ているからだ。

 防長三名湯の一つとされる湯野温泉で日帰り入浴の可能な所は湯野荘、元湯小松、紫水園とともにこの芳山園がある。風趣あふれる中庭、本館の客室とともに6軒の離れ家を擁する和風の旅館だから車イスでの宿泊にはあまり向いていないかも知れない。

 だからタオルを持って初めて車イスで乗りこむときはやや臆した。広い建物前の広場がそのまま駐車場で宿泊客用の入り口と日帰り入浴客用の入り口は別になっている。長く車寄せが張り出した入り口の前は舗装の代わりに砂利が敷き詰めてあるから車イスのタイヤが沈み込む…なるべく入り口ぎりぎりにとめる。


芳山園駐車場
 観音開きのドアを開けて入るとすぐさまフロアとの段差が目に飛び込む。10cm余りだから前輪を載せておいて勢いをつければ上がれない高さではない。が、問題は絨毯を敷き詰めたフロアだ。入浴客はそこで履き物を脱ぎスリッパに履き替えて館内に入るわけだから…。

 「お風呂ですか?」と入り口の真向かいの売店付近にいた女性従業員がやや戸惑ったように聞く。たぶんここでも車イスで単独で来た客は私が初めてなのだろう。

 「ええ…このまま上がってもいいですか?」と聞くと「あ、どうぞ、どうぞ!」と慌てて当然だと言わぬばかりの反応。「上がれますか?」と近づいてくる前に私は〈よっこらしょ…〉とフロアに上がっていた。{^_^;}
 第一関門、パス。

 いつも「土足厳禁」の建物に車イスでそのまま入るときに感じる矛盾については別項に譲るとして売店で入浴料を払い浴室の場所を聞く。

 「この廊下の奥を左に曲がって…大丈夫ですか?」

 と、なおも心配そうなのは、この近所のオバサン…という感じの女性従業員。「大丈夫、大丈夫」と私が振りきるとそれ以上追跡してこないのが田舎の宿の(失礼{^_^;})嬉しいところだ。

 これがへたに都会の宿とか障害者受け入れの前例のないオヤクショ関連だったら事は面倒だ。

 少々お待ち下さい…などと支配人を呼んでくる。支配人氏の脳裏には「障害者、ホテルの浴槽で溺死。**署、管理責任追及へ」などの朝刊見出しが踊る。そして「安全性に責任が持てませんので…」などの口実で体よく追い返されるかも知れない。

 もっとも自分の経験から言うと、施設への入館を拒まれた例はごくごく僅かだし昨今の風潮ならは管理責任云々より障害者締め出しの方が世間の糾弾は厳しいのかもしれない。

 拒まれた希なケースの1つが、もう数年前になるが防府市の自由ケ丘健康ランドだった。このときは「車イスはダメです」の一点ばりで頑として入館を拒否され、家族とともに不快な思いをして帰った。

 希でもこういう経験はキツいものだ…だから今でも入館時にいちばんナーバスになる。

                                     続く


リポート/1999年3月  


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