鶴といで湯の里
ラジウム温泉 呼鶴温泉

 山陽自動車道熊毛ICを降りてすぐの田園の中にある一軒宿の湯治温泉です。地元の人たちとの素朴な触れあいが楽しめます


呼鶴温泉周辺田園風景 突撃!入湯リポート

  ここは昔からの温泉らしく建物はかなり古い。持って帰ったパンフレットの建物全景にはソフト・フォーカスがかけてある…。(笑)

 「呼鶴」の名が示すように熊毛町は鶴の飛来地となっていて山間の八代地区に毎年シベリアから飛んでくる。町を挙げて飛来数に目の色を変えているが年々減って今年は確か17羽。

 この呼鶴温泉は田圃の中、中村川沿いに立つ1軒宿の温泉で旅館部分の隣に大衆浴場が併設されている。私は入っていないが家族湯もあるらしいから介助が必要な人は貸し切りで利用することもできるだろう。

 お湯に入れるのは朝の9時から。私が行ったのは10時を過ぎていたと思うが町内や近隣の人で賑わい、浴槽の中はおじさん、お爺さんたちのごった煮であった。{^_^;}

 温泉棟にも入り口はあるのだが30センチ近い段差があるので旅館の方から入る。脱衣場は板張りなので引き戸を開けて車イスでそのまま入る。ロッカーの鍵が閉まらないのでよく見たら100円要るのだった。別に扉のない脱衣棚もあるので貴重品は車に置いてきて100円はこれから節約しよう。入浴料は500円だ。

 まず身体を洗う。洗い場のカランは昔ながらのもので湯と水1対になっている。湯は熱いのがそのまま出るので水と微妙に混ぜ合わせなくてはならないのもレトロで良い。石鹸箱に入れた石鹸が置いてあるが2個しかないのでタオルで拭きながら誰ぞが「もちっと置きゃエエのにノ…」などと話している。{^_^;}

 泉質はラジウムの含有量が高い放射能線。無色透明、無味無臭の弱アルカリで浴用、飲用、吸入ができるらしい。ということはこの「呼鶴温泉」は湯治用の旅館なのだ…と、やっと気づく。鶴の観察地は、はるかに離れた山の中だし、他には何もない熊毛に2階建てのアパートみたいな観光ホテルがどうしてあるのか?と不思議に思っていたのだが納得。

 浴室は浴槽も洗い場もあまり広くない。入ったときに中に10人くらいは居ただろうか。

 湯船に入ればうっかりすると他の人の肩にふれそうだったりする。浴槽のふちが30センチくらいとかなり高い。腰掛けがわりに腰を下ろして話し込んでいる人たちがいる。一人のおじさんは軽石か何かでせっせと足の裏をこすっている。{^_^;}

 「日曜は多いですのう」温泉棟の入り口
 「ええ…」

 見ず知らずの人と否応なしに会話を促されるような狭さというのも、またいいのかもしれない。まあ田舎の人というのは話好きでもあるが。

 最近の標準から言えば小さい方に属する浴室だが狭さを感じないのは2階半くらいに相当する吹き抜けになっているからだ。天井は磨りガラスか塩ビの天窓になっているし横の窓もそうで、戸外の景色こそ見えないものの柔らかな日差しが差し込み開放感がある。

 やはり風呂屋の天井は高くなくてはいけない…そしてもやもやと湯気が漂っていなくてはいけないのだ。{^_^}

 壁は一応岩風呂という趣向か石垣状になっている。浴槽の中は泡風呂、ジェット・バスふうになっている部分もあり洗い場の床も綺麗だから1度くらいは中を改装しているのかもしれない。注意しなければならないのは場所によっては沸かした熱い湯が出ているのでうっかりすると尻を茹でそうになることだ。(笑) 知覚に障害がある人の場合、壁際は避けた方がいいかも知れない。

 天井は隣の女風呂と一緒らしいが、仕切り壁の上から隣の声が聞こえた覚えがない…間がもしかしたら貸し切りの家族湯になっているのかも知れない。

 やや長めに湯船に浸かり、脱衣所でゆっくりと着替えながら汗が引くのを待つ。

 「扇風機が有りゃ、エエのにノ…」

 知り合いらしい二人が話している…同感だ。
 ベンチの上に団扇が2つ置いてあるきりで1つを手にとって扇ぐ。今日は雨になるらしいし風呂上がりはなかなか汗が引かない。

 「景気はどうかね?」
 「(損益)つうつう(五分五分)でちょこっと残るくらいかねぇ…」
 「ちょこっと残りゃ、ええいね!」

 地元の人同士、話に花が咲く呼鶴温泉は〈お先に…〉と、一足早く立ち去るとき自然に口から挨拶の出る、そんな素朴な田園の温泉であった。

 おいでませ呼鶴温泉…山陽自動車道熊毛ICを降りてすぐです。{^_^}

リポート/1999年3月  


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