CR(Consciousness Raising)=意識覚醒
CRって何? |
・1960年代の終わり頃、アメリカで女性解放運動の高まりの中から
自然発生的に起こってきたものです
・女性同士の関わりから何かを生み出そうとするときの原点と言われています
・8〜15名前後のメンバーが、1〜2週に1回2時間程度、
自分たちの興味あるテーマについて話し合います
・討論というより、主に感情や情緒についての話し合いです
・メンバーはお互い平等で、誰かが話し合いを支配したり、中断したり、
強制したりすることなく、充分に話し合い、聞き合います
・ライフスタイル、感性、過去の体験や現在していることにとらわれないで、
充分に自分を見つめ、表現する場です
CRの目的 |
@今の社会の中では、重要なところでの決定権や主導権は、
男性が持つ場合が多いのではないでしょうか。
そのような中では、補佐的な立場に置かれることの多い女性の
意識の奥にしみ込み、女性自身も当然だと思っている
女性イメージや女性の態度、行動などがあります。
CRの中でそれらを自覚し、問い直し、
必要ならば変えていくことを目的とします。
A個人が抱える心の問題は、個人的なことだけではなく、
社会的文化的なしくみによって作り出されているという立場から、
性差別社会を変えるための行動をおこすという
社会変革の目的も持ちます。
B自分の内的な世界に目を向け、グループ内での理解、受容、支持などを
与えたり受け取ったりすることを通して、
メンバー一人ひとりが成長することを目指します。
C情報の交換という具体的相互援助も含みます。
話し合いのポイント |
◎ 誰かに向かって話すというより、テーブルの真ん中に出す感じで話します。
それを拾いたい人が拾って、自分の方に持ってきて、
そこで動いた自分の感情をまたテーブルに出す感じで話していきます。
@ 感情を話し合います
・どちらかというと、不安・自信のない部分・あいまいな気持ち・
否定的な感情・引っ込み思案な気持ちなどを話し合います
A 結果でなくて経過を話し合います
・結論を出すのが目的ではありません
・自分の内面の心の動きや意識を掘り下げるのが目的です
・善悪、正邪などの判断を越えた、結論の出ない話し合いです
B 話をした人の気持ちを受容・共感し、それを自分の方に引きつけて
自分の気持ちを語ります
・「受容」とは、相手の話している事柄をそのまま受けとめる態度のことで、
言い終わらない前に、自分勝手な判断をしない心構えのことです
・「共感」には、同感をも含み、同じ感じではないものの、
「あなたの気持ちはわかる」という気持ちも含まれます
CRでの約束事・注意点 |
◎ 「私が〜しなければならない」とか「〜してはいけない」と思うと、
話せなくなることもありますので、
「他の人が私にしてこない」という程度に受けとめてください。
@ 会で話されることは、決して会の外に持ち出さない
(安全な場の確保のため)
A メンバー同士でも、会以外の場所で内容や進行や
個人的好悪などに関して、感想を話し合わない
(サブグループを作ってしまい、会自体が弱体化してしまいます)
B 居心地の悪さを感じたら、それも会の中で出していくことが大切です
C 議論や討論、問題解決の場ではありません
(日本では、話し合いはほとんど討論と理解されることが多いものですが、
CRでの話し合いは、自らの内面をていねいに正直に見据え、
それを言語化する作業です
内面と向き合うことを避ければ、討論に傾きがちになります)
D 批判・中傷・アドバイスはしない、人の話を中断しない、
一般論に流れないなどに気をつける
(人の話を聞いていて「こうしたらいいのに」などと思うこともありますが、
そのときは、そう思う根拠になっている自分の体験や、
そのときの自分の気持ちを表現してみてください)
E 話すことの強制はしない
F 遅刻、退会は報告してください
(一人ひとりが、会を構成する重要な一員であり、
主体的に関わる責任において、きちんと報告することが大切です)
※場の安全の確保と時間の管理のために、
ファシリテーターをおく場合もあります。
テーマについて |
テーマは、その都度、CR開始時にメンバーの話し合いによって決めます。
「何からの解放か」「どう解放されたいか(解放のイメージ)」をふまえ、
次のようなテーマについて、話し合いを進めていきます。
たとえば
「セクシュアリティー」「夫(恋人)との関係」「母(父)と娘の関係」
「母役割」「友情・対人関係」「世間体」「自己評価と他人の評価」
「働くこと」「夢・希望」「情緒・感情の問題」「女のからだ」「女らしさ」
「パワーに関して」「否定的な感情(怒り、悲しみ、孤独など)」
「有能について」 など
CRの展開 |
バーバラ・カーシュは、CRの展開には次の4段階があると言っています。
@ 開始
A 共有
B 分析
C 概念化
以下に各段階の大まかな説明をしてみます。
@ 開始
・お互い同士を知り合う時期
・自分史を語りながら、そのときにどう感じたかを言葉にしていく時期
・この段階の雰囲気は、暖かく親密
・一番必要なことは、“リラックス”していること
A 共有
・「女であること」で感じた差別、偏見、期待される行動、感性について、
メンバーの具体的、感覚的体験に対する同意や共感が広がり、
信頼感が育つ時期
・体験や感情の共通性に対する驚きと安堵が共有されると共に、
感じ方の違いがはっきりしてきますが、その是非を判断しないことが大切
・暖かく親密で、いい雰囲気の段階
B 分析(ここには、なかなか入れないと言われています ※)
・女性のおかれている文化的、社会的状況に目が注がれ、
個人的感性や思考を客観的状況への理解、分析に変えていこうとする
努力の時期
・主体的かどうかが問われる段階
C 概念化
・自己の可能性に対するヴィジョンを育てることが大切にされ、
自らの内面的欲求に従った新しい視点から生きる内容が見直される段階
・肯定的自己イメージによって支えられた精神的自立の段階
※ Bに進むために
・私とあなたは違う、その違いをはっきりさせることが必要です
・その、違うところで起こる気持ちを扱うことが必要です
・批判や非難に関しても、
「あなたはそのつもりでなくても、私には批判に聞こえる」
「あなたはそう思っても、私はそのつもりではなかった」と、
双方がこういうところを話せるようになることが大事です
・@〜Cの間に、個別→普遍→個別→…と螺旋状に上がっていきますが、
「でも違う」を口に出せないと、Bには進めません
・心理に関心がある人たちが集まると、心理深掘り(どうしてあなたは
〜思うのか)が始まってしまいます。
そうなると、社会的視点がなくなるので注意する必要があります
・社会的視点を広げ、他者を了解する回路を広げることが大切です
・パワーへの拒否反応が起きることがあることに注意してください
(女の人は、“あなたもできる、私もできる”を受け入れがたく、
権力、権威、有能、能力など、必要なものでさえも拒否してしまう
ことがあります)
終了の時期 |
・目的が達成されたら
・回数、期間が来たら
・グループとして統制がとれなくなったら
・グループの柔軟性がなくなったら(内、外からの妨害などに対して)
参考文献:『女性のためのグループ・トレーニング』 河野貴代美/学陽書房
『フェミニスト・カウンセリング』 河野貴代美/新水社
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