金子さんとアンアンの仕事をやっていたのは、もう10年くらい前だよね。僕がほんの駆け出しの頃だったな。とにかく、金子さんて何も言わない人なんだ。最終的に「可愛い写真」ができれば、服の特徴なんてわからなくてもいいわけ。ユリも、金子さんの服が本当に好きだから、生き生きとしてるし。アンアンの編集部も、写真に注文なんかつけないで、まったく自由に撮らせてくれたんだよね。ユリってね、身体がものすごく柔らかくてどんなポーズでもとれるんだ。だからよく、フニャッとしたポーズなんかつけたな。でも、こちらが何もいわなくても、ファインダーを覗くと、すでにその服にぴったりの動きをしてるの。もう完璧だった。理解力があるというか、アタマいいんだろうな。金子さんはそんなユリを黙ってニコニコ見ていたよ。
アンアン1983年9月16日号(No.396)「ピンクハウス・ストーリー」より