金子さん、’80年代を迎えての新たな決意

彼の新たな決意とは、デザインを商品に作り、買う人に届ける過程での、さまざまな問題をもう一度整理して、「ゼロから出発し直す」ことなのだという。
その意味で、かつてないほど燃え立っている金子さんなのだけれど、創り出された服は、やはり金子カラーを守り通したデザインである。
「しつこいかもしれませんが、僕はひとつのことを追い続けていきたい。’80年代は、いままでより一層、流行に関係ない服を創るでしょうね。これまでも僕はえんえんと考えていたのだけれど、服というものはもっと原点に戻るのではないかな。背のびをしないで、ほんとうに好きなもの、いちばん好きなものだけを作りたいですね」
ピンクハウスの服には、今年ふうの恐ろしいほど肩パッドを高くしたデザインなどは1枚もない。が、金子さん自身、そんな他人の話題作は大好きで面白く見ているのだそうだ。
でも、自分の創るデザインには、オーソドックスな品のよさとか、優しい女らしさを一貫して表現。翔びすぎる女はキライらしい。
けれど彼のデザインが古風かというと絶対にNoで、むしろツッパッた新しさをつねに持っている。「いま流行(はや)ってないことがいつも好き」というのは名言だ。誰もフリルに見向きもしないとき、フリルいっぱいの美しいブラウスを作り、ウエスタンブーツが流行ったらそれをスポーティーにではなくデシンのドレスに合わせてしまう。服の奇抜さを断固きらって、発想の新鮮さを重要視する。流行を無視、ではなく正面から見据えて、でももっと違う美しさもあるよ、と静かに問いかけてくる。金子功作品はいつもそんなふうだ。
どんな女(ひと)に着てほしいかの問いに、「かっこいい人よ」と言い、たとえば歌をうたう女でも、スタイリストでもモデルでも、あるいは仕事を持っていない女でも……自分の意志や自分の世界をしっかり持っている人がかっこいいと彼は言う。そしてさらに、そのかっこよさにほんの少し、きゃしゃな女らしさが匂うのが好きとも。ごうまんなほどに反抗的な服装(おしゃれ)をする女も好きだし、バリバリ働く実力派で、でもシルクのブラウスをさりげなく着る、そんな女っぽさを彼は愛してやまない。
型や枠にはまることをきらう、これが彼の女性観であり、創作の理念でもあるようだ。

アンアン1980年2月1日号(No.243)より

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