わんだふるはうす キャンティ飯倉本店に行く

金子さんの自宅や職場(アンアン編集部)が六本木にあった時代、公私共によく利用していた飯倉のイタリアンレストラン「CHIANTI」。2005年10月2日、私ワンダフルハウスはフルコース・ディナーを堪能してきました(^Q^) メニューの数々を順番に紹介いたします。

東京・飯倉片町交差点。イタリア料理店キャンティ。華やかな六本木から一本道を隔てただけで、静かな街並みの飯倉に、キャンティはまるで時間など存在しないかのように建っていました。外苑東通りに面した正面の入口は1階の「アルカフェ キャンティ」。地下にあるレストランの入口は、左の細い路地に面しています。2階は以前はレストランでしたが、2006年9月、バー「キャンティシモ」がオープン。なんとキャンティに日本酒が…高知の老舗日本酒蔵元である司牡丹の日本酒とキャンティの料理が楽しめるようになりました。
私が初めてここへ来たのは16歳の頃。10代の私にとっては、芸能界とか、見たことのない大人の世界がその中にあって、キャンティに行くには、それなりの覚悟をして行かなくてはいけないって感じがありました。そのドアはすごく開けてみたいけれども、少しづつ開けるべきドアなんだろうな、って思いがあるお店でした』と語るのは、高見恭子さん。初めてここに来た時、彼女は16歳。MCシスターの専属モデルをしていました。
PART1では、階段を降りて右側のダイニングルームを紹介いたします。反対側のダイニングルームはオープンキッチンになっています。ワンダフルハウスには、こちらの部屋の方が1960〜70年代の面影を強く感じられるような気がします。照明が暗いのは、ヨーロッパのレストランのように店内を薄暗くしようと、蛍光灯を使わずに、天井から電球をぶら下げてあるだけだからです。電球を覆っている赤やグリーンや黄色のシェードに注目して下さい。これは、初代オーナー川添梶子さんがデザインし、布を縫い上げて作ったものです。

ディナー コースメニュー
8500円 10000円 12000円
前菜3品盛り合わせ 前菜4品盛り合わせ 前菜5品盛り合わせ
(ワゴンから5品選べる)
スパゲッティトマトソース スープまたはスパゲッティバジリコ スープまたはパスタ
(好きなものを選べる)
仔牛とほうれん草のグラタン フローレンス風 本日の鮮魚炭火焼オリーブオイル風味 牛ヒレ肉のソテー ピエモント風
季節のサラダ 季節のサラダ 季節のサラダ
カスタードプディング キャンティ風 季節のデザート デザート
(ワゴンから1品選べる)
コーヒー・エスプレッソ・紅茶 コーヒー・エスプレッソ・紅茶 コーヒー・エスプレッソ・紅茶

PART1では、コースをいただくことにしましょう。わんだふるはうす一行は、前菜とデザートがワゴンから好きなものを選べる12000円のコースにしました(^-^)v 別途消費税5%、サービス料10%、22時以降深夜料金10%加算されます。


今回、同行していただいたのは、マダム・トキでも登場していただいた、キャンティの近く、港区内のドコモショップに勤務する20代半ばのドコモ嬢。最近のお気に入りは、六本木ヒルズ南翔饅頭店(なんしょうまんとうてん)の上海蟹みそ入り小籠包とのこと。キャンティは名前は聞いたことはあるけど、来たのは初めてだそうです。 ウーロンティー(600円)とフレッシュグレープフルーツジュース(1000円)。ワンダフルハウスはお皿を見て、ユリさんが本牧の実家を飛び出して、下北沢の金子さんの部屋に転がり込んで、一緒に棲み始めた時のことを思い出しました。「アパートもずいぶん古ぼけた学生アパート風。でも、いい色合いのペンキを壁に塗ったりして。マリー・アントワネットのトリアノン宮殿みたいに思えて涙が出てしまった。金子さんと近くの市場まで買い物に行って、アジのヒラキを買った。2人とも料理なんて、何も作れない。金子さんがご飯を炊いた。可愛い模様の西洋皿にアジとご飯を盛って、コカコーラで乾杯。あのお皿の模様はブルーダニューブというのだと、後になってから知った。キャンティなどで今も使っている同じ模様の食器を見るたびに、懐かしくて涙が出てしまう。あの頃(1960年代前半)、コカコーラがとってもお洒落な飲み物だったことも忘れられない。」(1987年発行「金子功のプリント絵本」より)
藍色と白のブルーダニューブのお皿は、国産品ですが、戦後、輸出用として作られた品のいいもので、キャンティから始まり、大流行したのです。
前菜が運ばれてきました。全部で15種類あり、ベテランのカメリエーレ(ウェイター)が丁寧に説明してくれます。この中から好きなものを5品選べるのです\(^Q^)/ 前菜やデザートのワゴンサービスは、今では珍しくありませんが、キャンティでは1960年の開店当時から行われていました。
パンが出てきました。ガーリックトースト(左)とトースト(右)の2種類。ワンダフルハウスは、ガーリックトーストの味に感激しました(^Q^) ニンニクが持つ、あの独特の匂いが、焼くことによって香ばしさに変わっています。
ワンダフルハウスが選んだ前菜が調理されて運ばれてきました。左上は「フィノッキオーナ Finocchiona」。イタリア・トスカーナ州の前菜には欠かせない粗挽きの柔らかい大型サラミ。フェンネルシードが中に入っています。口の中でトロけて美味でした。右上「ヒラメのカルパッチョ」、中央「モツァレラチーズのフライ」、左下「クレープ」、右下「とこぶし」。トコブシは、その形状からアワビと比較されることがよくありますが、別の貝です。アワビの貝殻は、ごつごつしています。一方、とこぶしの貝殻は、アワビに比べてツルツルしており、表面に模様があります。食べてみたところ、とこぶしは、とても美味しい貝でした。生で食べるのには向かないようです。キャンティでは貝殻ごと焼いていました。 ドコモ嬢が選んだ前菜5品。「平目のカルパッチョ」がワンダフルハウスとかち合っていました。歯ごたえもやわらかく風味も濃厚で絶品でした(^Q^)
12000円のコースは、スープまたはパスタが以下のメニューから選べます。
Minestrone 田舎風野菜スープ(ミネストローネ)
Stracciatella alla Romana  玉子スープローマ風
Pastine in Consomme パスタ入りコンソメ
Crema di Verdura 野菜のポタージュ
Zuppa di Fagieli うずら豆のスープ
Zuppa di Cipolle al Forno オニオングラタンスープ
Crema di Granchio カニのポタージュ
Spaghetti al Pomodoro スパゲッティ トマトソース(ポモドーロ)
Spaghetti al Basilico スパゲッティ バジリコ
Spaghetti alle Vongole Rossi あさりのスパゲッティ トマトソース
Spaghetti alle Vongole Bianchi あさり入りスパゲッティ
Spaghetti alla Bolognese ボロニア風ミートソース(ボロネーゼ)
Spaghetti alla Panna クリームあえスパゲッティ
Spaghetti alla Napoletana スパゲッティ ナポリ風(ナポリタン)
Tagliatelle Verdi ほうれん草入り手打ち麺
Capellini all’Angelino カッペリーニ アンジェリーノ
(イタリア語で「天使の髪の毛」。極細パスタ)
Spaghetti all’Arrabbiata スパゲッティ アラビアータ
Spaghetti alla Liguria スパゲッティ リグーリア風
Spaghetti al Carbonara スパゲッティ カルボナーラ
この他に日替わりの「本日のおすすめパスタ」や、スパゲッティの代わりにペンネなどのアレンジメニュー多数あり。
パスタが運ばれてきました。 金子さんもお気に入りの「スパゲッティ バジリコ」。キャンティのホームページにレシピが載っていて、バジルの他にパセリと大葉を使っているようです。スパゲティといえばケチャップで和えたナポリタンとミートソースしかなかった1960年代の日本で、キャンティはバジルの葉を自家栽培してバジリコのパスタを出していました。
ドコモ嬢はカルボナーラを選びました。ワンダフルハウスも少し分けていただきました。かなり濃厚なお味でした。 フレッシュオレンジジュース(1000円)。キャンティのオレンジジュースは、ワンダフルハウスが今まで飲んだオレンジジュースの中で一番美味いです(^Q^) 上は透明、下は果実分で濁っています。他の店のとは味が違います。
壁の上方に、梶子夫人が集めた調度品が飾ってあります。日本初のブティック「ベビードール」、日本初のディスコティーク「キャンティシモ」をオープンさせた梶子夫人は、金子功・ユリ夫妻も憧れの女性でした。 ついに、メインディッシュの登場です。サラダも同時に運ばれてきました。
「季節のサラダ」と「Filetto di Manzo alla Piemontese 牛フィレ肉のソテー ピエモンテ風」(単品だと6000円)。「ピエモンテ」とは、イタリア語で”pie”足、”monte”山、つまり 「山の足(山の麓)」という意味。文字通り、アルプス山脈のふところに抱かれた丘陸地帯に位置するピエモンテ州の料理です。服部栄養専門学校校長の服部幸應先生が、キャンティの「牛フィレ肉のソテー ピエモンテ風」について語っていらっしゃる”お言葉”を紹介いたします。「みじん切りのニンニクとローズマリーとデミグラスソースで味付け。なめらかなマッシュポテト。ソースがキリッとしっかりしているのが僕好み。これぞ”大人の味”なんですよ。大人のソースを味わうべし!」「キャンティは週2〜3回行ってるから年間120回、もう5400回は行ったね。ここぞ大人の社交場ですよ!」
待ちに待ったデザートのワゴンサービスです!\(^○^)/ 若くてハンサムなシェフが現われ、「ドラゴンボール豪華版!\(^O^)」などとギャグを飛ばしながら一つ一つ丁寧に紹介してくれました。右の列、向こう側から「ベイクドチーズケーキ」。透明な深皿は果物をシロップ漬けにしたイタリア版フルーツポンチ「マチェドニア(Macedonia)」。「巨峰と巨峰のムース」。白い布に乗った5品は定番品の「カスタードプディング キャンティ風」「チョコレートムース(洋酒入り)」「ポンペルモ(グレープフルーツゼリー)」「クレームブリュレ」 おっ! 端っこしか見えないのがありますね(゚o゚:)\…たぶん「アイスクリーム カルメン風」です(PART2で見れます)。左の列、ケーキ3個乗ったお皿は定番の「フィヤドーネ」「フーレドモカ」「ネスラード」。ブルーダニューブのお皿は、正式名称はわかりませんが「ピーチとアイスが入ったパイ」でございます。手前2つは定番の「ペーラコッタ(焼き洋梨)」、「メラコッタ(焼りんご)」。一瞬、食べ放題かと思って舞い上がるワンダフルハウスとDoCoMo嬢。しかし、この中から選べるのは1品だけで、2品目からはオプション扱いとなり別料金となるのでした。さて、我々が選んだのは…
デザート3種盛り合わせです! 普通より小さくカットしてあるので、これで1種類分。別料金無しでお特です(^‐^)v ハンサムなシェフの粋な計らいで、ケーキ類は小さめにカットして3種類までOKにしてくれたのです。VAIOが置いてあるのは、「わんだふるはうす R134を行く」をシェフにお見せしたから。シェフ行きつけの長者ヶ崎のプラージュスッドの話で盛り上がりました。キャンティのシェフともなると、やはり色々な店のパスタを食べて勉強してるようですね。  紅茶とコーヒーが絶妙なタイミングで登場しました。

ワンダフルハウスが選んだデザート。
左「ネスラード」。洋酒に漬け込んだ栗を、ココアスポンジで巻き、チョコレートでコーティングしたケーキ。
上「フィアドーネ」。レモンフレーバーのクリームチーズケーキ。下はパイになっています。
下「フーレ・ド・モカ」。コーヒーのムースとスポンジが層になっています。
ドコモ嬢が選んだデザート。フィアドーネが、ワンダフルハウスとかぶっています。他はベイクドチーズケーキと巨峰。巨峰は実とムースが入っていて、それぞれ専用のソースをかけて食べます。

キャンティ物語 Antipast Misto
前菜盛り合わせ
ここで、野地秩嘉さんが書かれたキャンティ物語」(幻冬舎文庫)の一節(114〜115ページ)を紹介いたします。
『開店してすぐの頃、来日していたイタリア人オペラ歌手がキャンティに姿を見せたことがある。彼は前菜から始まり、スパゲティ・バジリコ、フィレステーキと食べ進んだ後、突然、狭い調理場へズカズカと踏み込んできた。そしてコック達に握手を求めると、そのままその場に仁王立ちになり、大音声でアリアを歌い出した。最初はポカーンとしていたコック達も、一曲目が終わった頃には姿勢を正し、頭をたれて直立不動で聴き入った。「めったにないことなんだ、こんなことは。イタリアから来た芸術家が同じ芸術家として、私達の調理技術に敬意を表してくれたんだ」その場に居合わせた川添浩史は、コック達にそう説明した。』
Spaghetti al Basilico
スパゲッティ バジリコ
2200円
Filetto di Manzo alla Chianti
牛フィレ肉ステーキ キャンティ風
12000円
こちらが、イタリア人オペラ歌手が食べた、前菜→スパゲティ・バジリコ→フィレステーキでございます。ご覧のようにステーキにソースはかかっていません。味付けは塩・コショウのみ。肉本来の美味しさを最も贅沢に楽しめると言われている「シャトーブリアン」という、フィレのど真ん中に近い肉です。牛1頭からとれるフィレ約4〜5kgの内、約600〜1000gしかとれない貴重なこの部位は、きめが細かく、脂肪が少なく、さっぱりとした味わい。 まさに”究極のステーキ”です(^Q^) 19世紀初頭のフランスの政治家フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンが料理人に命じて作らせたことから、このように呼ばれるようになりました。
オペラ歌手が厨房でアリアを歌う…(^O^)<♪ ヨーロッパの一流レストランでも、めったにないようなエピソードが40年以上前の東京のレストランで起きていた…ワンダフルハウスは芸術作品ともいえる料理を味わいながら、
感動や喜びを超えた畏敬の念を抱いたのでした。新しさを追求するレストラン業界にあって、半世紀近くもの間、変わらぬ料理を提供している経営者と厨房、変わらぬことを求めている昔からのキャンティの顧客、そして創業者 川添浩史氏と、数々の料理を生み出した川添梶子夫人に対して…。

ここで、この日のディナーの復習をしてみましょう。1993年当時の飯倉キャンティの店内を見れるVTRを紹介いたします。フジテレビで1994年1月14日に放送された「ワーズワースの庭で」。第38話の「懐かしの’70年代大冒険 〜東京・飯倉キャンティ物語〜」で、10代の頃からキャンティのお客さんである高見恭子さんが飯倉キャンティを訪れていました。 ワンダフルハウスたちが座ったのは、一番奥のあの席です! 2007年現在も全く変わっていません。店を改装せずに維持することは、改装するよりもお金がかかるそうです。
左手前の席は、映画監督の奥田瑛二さんが好きな席。左手奥の席は映画監督の伊丹十三さんが好きな席でした。
1987年に発行された「金子功のピンクハウス絵本」。「KHの男たち、発見」の頁に奥田さんがモデルとして出演していて、金子さんが、このように語っていました。
『カールヘルムを発足させた時(1985年)、着る人のイメージとして頭にあったのは彼のような男だった。具体的に名前を挙げてそう説明もした。最初に知った頃の彼は、青年特有のハングリーな翳(かげ)を持つ男で、いかにも現代風な雰囲気を湛えていた。しかし、詰衿や袴など明治の”書生っぽ”の姿も似合いそうな、彼は古き日本のエスプリも併せ持つ。まだ無名の彼を街のとある店で見かけ、その魅力を密かに讃えた。』
”街のとある店”というのが、キャンティ飯倉本店(港区麻布台)のこのフロアだったのでした。時は1980年代前半。ここで金子さん(港区六本木在住)が奥田さん(港区麻布狸穴町在住)を一目見て気に入り、Karl Helmutブランド発足時にイメージキャラクターになってもらうことになります。1985年8月カールヘルム青山店オープン。同じく8月、”金ツマ”の流行語を生み出した’80年代ドラマの代表作「金曜日の妻たちへ3 恋におちて」オンエアー開始。奥田さんは、このドラマでブレイクして、カールヘルムを着て女性誌の誌面を飾ることになります。安藤和津(当時は犬養和)さんも、この頃インゲボルグを着ていました。
左が奥田さんが好きな席。その右側が伊丹十三さんが好きだった席。その右側がワンダフルハウスが好きな席。その手前のブルーのチェックのクロスのテーブルは…金子さんが、ここで奥田さんを”発見”したのかもしれませんね。
ワンダフルハウス一行が食事をした席に立つ高見恭子さん。『「キャンティで待ち合わせしましょう」って言われると、もぅドキドキしちゃって、その頃はやっぱりキャンティで一人で待ち合わせするのができなくて、子供(10代)の時の…なんかこぉ…「あのお店ってカッコよすぎるよねぇー」って話してた思いが、いつまでも私の中に生きていて、あのお店に近づきたい、あのお店の雰囲気な大人になりたいって思いが、いつも私の目標だった気がしますね』

今度は、向こう側のフロア(階段を降りて左側)で、アラカルトでいただきましょう(^Q^) PART2に続きます。
キャンティのホームページはこちら

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