京都

京都は街の雰囲気を味わう。夕景と打ち水とざわめきと。

毎年少なくとも一度、多いときには何度も京都を訪ねる金子さんは、街の雰囲気を味わうために裏道を歩いてみることを勧める。
「京都は修学旅行で行くような、誰でも知っているところに行くのがいいんです。清水寺、三十三間堂、二条城……。有名だからいいんじゃなくて、周辺の雰囲気がいいからです」
金子さんがこだわるのは訪ねる寺社ではなく、訪ねる時刻だ。
夏の祗園の夕刻。打ち水が撒かれ、刻々変わっていく空の色。そして遠くに浮かぶ塔のシルエット。周囲では夕餉の仕度らしいざわめきが……。
「食べものは、夏ならなんといっても無花果(いちじく)。京都の無花果は世界一おいしい。日本料理は目で食べる、といっても、京風弁当を食べるくらいならうどんのほうがいい」
金子さんが立ち寄る店は、そういう訳で器に凝る高級な店か、反対にうんと安い店が多い。
祗園のうどんの店「権兵衛」(рO75・561・3350)は京都に行けば必ず立ち寄る。
「ときたま舞妓さんが食べていたりするのが気分ですね」
その隣には、おでん会席の店「おいと」(рO75・561・3575)が。こちらは逆に高級で、1人前約2万円のコースは日本料理らしい器に凝ったもの。
小径を歩く途中でふと立ち寄るのが円山公園の先の「紅葉庵」(рO75・561・2933)。名物はあずきが付いているお薄(400円)。この店には金子さんが行くと必ず座る指定席があるらしい。
そして「鍵善良房」(рO75・561・8743)では、夏は竹に入った水羊羹がおいしい。
カウンターで食べる会席料理の「なか一」(рO75・531・2778)はコースで約1万5000円。ごはんの代わりに最後にお寿司が出てくる。
「季節はやはり夏がいいですね。暑さが厳しいところがいい。京都はちょっとパリに似てます。自分たちがいちばんと思っているようなところが……。私はそれが嫌いではなくむしろ憧れています。お洒落だと思う。そして街を大切にしているところも……」

注意・データは、1988年当時のものです。
京都の地図

エル・ジャポン1988年7月20日号(No.111)
「お洒落リーダー100人に質問! 4人のデザイナーに聞いた、”あなたが大切にしている街”」より

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