拌/和える

  中国では、サラダにしそうな野菜も炒めて食べることが多い。サラダ「沙拉(shala)」はあるにはあるが料理と思われていないらしく、普通の料理店にはまずない。野菜が食べたければ、炒めてもらうのが普通だ。 
 昔、技術指導に中国に招かれた日本人がいて、連日の豪華な炒めものに食欲が失せ痩せてしまったそうだ。本人に何を食べたいか聞いても遠慮して答えない。そこで日本から帰国した中国人が呼ばれ、意見を求められた。材料が揃うということで、決定したメニューとは「豆腐にねぎと醤油をかけたもの」つまり冷奴だった。コックさんは不機嫌だったかもしれないが、皆の心配をよそに、その日本人は大喜びで豆腐を平らげ、中国側を驚かせたという。
 中国に、サラダ風の料理がないかというと、きゅうりの和え物のような料理もある。細切りのきゅうりに、凉粉(ところてんのようなもの‥原料は澱粉)を和え、カラシ・醤油・ごま油・酢・砂糖で味付けしたものだ。このほか、ピータンと豆腐、生の紅大根と黒酢等もおいしい。このように和える料理法を「拌(ban)」といい、料理を「凉拌(liangban)」(冷やした和え物)という。海鮮や蒸鶏などを使えば、豪華な前菜にもなる。「凉拌」は和え物を広く指すので、生野菜とは限らないが、サラダ感覚のお料理がほしければ料理店のメニューに「凉拌〇〇」を探してみよう。