和/練る

 以前、天津のギョーザ専門店で「蟹黄餃子(カニ子ギョーザ)」に出会ってしまった。カニの卵と白身魚のあんで、鮮やかな太陽のようなオレンジ色。幸せな気分になった。
 こんなプロの味は無理としても、蟹黄っぽいものを考えてみるのは楽しい。たとえば、鮭でギョーザのあんを作ってみる。まず、フード・プロセッサーで、鮭のひき肉を作り、ブタひき肉、ニンジン、必要な調味料各種、赤と黄色の食紅を1滴ずつ入れると、想像通りの鮮やかなオレンジ色になり、気分は「蟹黄餃子」。
 せっかくあんがオレンジ色なので、皮はほうれん草入りの緑にしてみる。ほうれん草をフード・プロセッサーで細かくして、ジュースも葉の繊維もいっしょにコムギ粉に混ぜてみる。この練る動作を「和(huo)」といって、メンをこねることは「和面」という。このコムギ粉の塊をメン棒で加工する動作は「扞(gan)」で、ギョーザの皮を作るのは「扞餃皮」、うどんを打つのは「扞面条」になる。ラーメンのラーは「拉(la)」で、メン棒を使わず手で引っ張って伸ばすメンだから。ギョーザの皮を作る場合は、「拉」は使えない。
 さて、ほうれん草だけで「和」して「扞」すると、草もちみたいな皮ができる。その中にオレンジ色のあんを包むと、外は緑で中はオレンジ色。名づけて「翡翠心里紅餃子(外は翡翠で、中が紅いギョーザ)」。でもそう呼ぶのは私だけ。皆からは単に「シャケギョーザ」と呼ばれている。