岩内岳から雷電山

 

2011925日 晴れ

 

ニセコいわない国際スキー場から岩内岳経由で雷電山の往復

 

目国内岳から岩内岳へはここをクリック!

 

二週間前に朝日温泉から雷電山へ登ろうと登山口へ向かったが、林道が通行止めになっていたために取り止めた。その日の天候は曇りがちで、海岸線から望む雷電山辺りは大きな雲に覆われていた。そんなこともあって雷電山を取り止めたことに悔いはなかったが、日が経つにつれて雷電山への思いが湧き上がって来るのを抑え切れなかった。

前日に羊蹄山を登り太ももや膝に疲れが残っていたが、好天ということもあって岩内岳から雷電山を往復するというロングコースに挑戦した。

案の定、前日の疲れもあって岩内岳への登りでは思いのほか時間を費やした。岩内岳山頂から望む雷電山は広大な丘陵地のような尾根の果てにあり、予定している正午まで着けるかどうか不安だった。

岩内岳から雷電山に通じる登山道はしっかりと刈り分けられていて気持ち良く歩くことが出来た。背丈を越えるササが登山道に覆い被さっていると想像していたが、それはまったくの杞憂だった。登山道の花を残しながらもササはきれいに刈り取られていて、刈り分けの職人技を見せられた思いだった。

先の見通せる登山道は熊の不安も払拭してくれる。万が一のために熊除け鈴を二個ぶら下げたのがうるさいぐらいだった。一日、誰も通らないこともあるに違いない登山道の刈り取り作業に携わった人たちの苦労を思いながら、感謝・感謝と唱えながら歩いた。

岩内岳から雷電山まではまったくの一人旅。雷電山山頂で後から男性が登って来たのと、帰り途中に男女ペアと会ったのが今回会った登山者のすべて。本当に静かな、恐すぎるくらい静かな山歩きだった。

雷電山へ向かう途中、このまま朝日温泉側へ下りようかとも考えたが、長い林道歩きや、スキー場登山口へ戻る交通手段が心配になって、やはり予定通りに岩内岳へ戻ることにした。

下山後はスキー場前にある「いわない高原ホテル」で汗を洗い流した。しかし汗を洗い流すだけの風呂に千円は高かった。この後、気分良く夕暮れのフルーツ街道を通って札幌に戻った。

 

登り・4時間45分(休憩時間含む)  登山口〜2時間45分〜岩内岳〜2時間〜雷電山

下り・3時間50分(休憩時間含む) 雷電山〜2時間05分〜岩内岳〜1時間45分〜登山口

 

 

gps map

 

GPSトラックログ

 

 

 

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「道の駅・いわない」から望む早朝の岩内岳。山頂付近に雲が残っているが、この分ではまずまずの山歩きが期待出来そうだ。

道の駅近くにある「木田金次郎美術館」は管理人のお気に入り。有島武郎の小説「生れ出づる悩み」のモデルにもなった画家・木田金次郎。とかく奔放な筆使いに圧倒される。

 

 

 

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登山口は「ニセコいわない国際スキー場」のロッジ横にある。早朝とあって草は朝露に濡れている。しかし登山道はきれいに刈り分けられて整備されているから、身体が朝露で濡れることはない。

 ここの登山口には登山届け出ポストがないので、仕方なく届け出なしで登り始める。届け出の必要のないレベルの山ということなのだろうか。

 

 

 

003

 

登山道は旧スキー場のリフトに沿って延びている。使われなくなったリフトの最上部ではツタ類が絡み付き、完全に老朽化して廃墟のようになっている。

 

 

 

004

 

廃墟のようになった第3リフトの最上部が6合目。ここから本格的な山登りが始まる。薄っすらと汗をかいた頃、背後に岩内の街や港が見えてくる。「ふりむき坂」と書かれた標識が新しい。

今、「やらせ」で問題になっている北電泊原子力発電所も正面に白く見える。もし福島のような事故が発生すれば岩内町はおろか、周辺の町も人が住めなくなるのだと思うと恐ろしい。

 

 

 

005

 

 背の高いハイマツが庭園のような景観を作り出している辺りは「松風の回廊」という洒落た名前が付けられている。ここの標識は頭に当たりそうな位置に付けられているが、管理人はどんな標識でも受け入れる美的感覚のない人間なので、ピカピカで派手だという野暮は言わない。風雪に晒され、時が経てば味のある標識になるに違いない。

 

 

 

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 視界が大きく開ける9合目から山頂まではガレ場が続く。涼しいと言うより、肌寒い風が吹き抜け、濡れたシャツの冷たさが肌に伝わって来る。ここでレインスーツを羽織って風を凌ぐ。

 眼下には岩内の街から積丹半島の山々までの景観が、澄み切った空の下に広がっている。

 

 

 

007

 

 予定していた時間を大きく上回って岩内岳へ着く。長丁場を考えて少し休み過ぎたようだ。しかしこの後の行程を考えたら、この時点でどこかに痛みを感じさせる訳には行かない。安全第一に歩くことが長距離を歩く秘訣だと管理人は思っている。

 

 

 

008

 

 岩内岳山頂からこれから向かう雷電山方向を見る。雲のかかっている右奥が「前雷電」。その左が目指す「雷電山」。その少し手前左が「幌別岳」。すべて大きな丘陵地のようだが、地図では尾根上に連なる立派な山である。目を凝らすと広大なササ原に延びる登山道を確認出来る。

 

 

 

009

 

 岩内岳を出発して程なくすると、雷電山と目国内岳を分ける標識に行き当たる。ここから左は以前通った道。ここから右は初めて歩く道である。多少の不安と期待が交差する。

 

 

 

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 きれいに刈り分けられた道は明るく歩き易い。振り返ると岩内岳が遠くに見える。誰もいない登山道には小鳥の声だけが響き渡る。風のないところは暑く、風の吹き抜けるところは肌寒い。なんとも体温調節の難しい山歩きだ。

 

 

 

011

 

 これから向かう幌別岳の中腹に登山道がハッキリと確認出来る。この先の最低部には「水場」の標識があり、きれいに刈り分けられた道が付いているが、水はたっぷりと持って来ているので素通りする。

 

 

 

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 幌別岳への緩い登りから後ろを振り返る。なんだかニセコの「ヴィーナスの丘」をほうふつさせる風景が広がっている。左奥の岩内岳からかなり離れたようだ。

 

 

 

013

 

 幌別岳を過ぎると、いよいよ雷電山(右奥の雲がかかっている台地状の山)が近い。幌別岳の左を巻くように登山道は付けられているが、途中に小規模のお花畑があり、雪解けの頃にはきれいなお花が咲くのだと思われた。

 

 

 

014

 

幌別岳から下るとハイマツに囲まれた沼が現れる。「五ツ沼」と書かれた標識があるから五つの沼があるのだろうか。目視で確認出来る沼は大小二つだけだが、湿地全体はかなり広いようだ。登山道は湿地の中央を抜けているが、大雨の後には通ることが出来るのかと心配になった。

 

 

 

021

 

大きい沼。青空が湖面に映えて輝いていた。

 

 

 

015

 

 「五ツ沼」からの緩い登りを進むと、左手の蘭越町側がなだらかに切れ落ちた斜面に出る。この先の台地状になった山が雷電山。目指す頂上までもう少し。疲れた足に生気が蘇って来るようだ。

 

 

 

019

 

 斜面に付けられた登山道から後ろを振り返ると、目国内岳やシャクナゲ岳、アンヌプリが連なって見える。最後部に見える羊蹄山の山頂は終日雲に囲まれ、大きなすそ野しか見えなかった。前日に登っておいて本当に良かったと思った。

 

 

 

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 斜面上部に付けられた登山道から、ハイマツやササに覆われた平坦な道を進むと雷電山の山頂が現れる。「えっ、ここ!」と声を上げたいくらいの平坦地。でも立派な三角点と風雪に耐えた立派な山頂標識があるから間違いない。目線を高くして初めてニセコ方面の山々が確認出来る程度の眺望。座っていたらササの壁しか見えない。

 蘭越側の斜面近くに山頂を移せば立派な眺望が得られる素晴らしい山頂になると思うが、国土地理院が認めた山頂である以上、そんな無理が通る筈もない。

 

 

 

017

 

 苦労して辿り着いた雷電山の山頂。眺望が悪いなどと文句は言うまい。雷電山に登りたかった理由の一つに、風雪に耐えた貫禄ある山頂標識をこの目で見たいという思いがあった。その山頂標識と記念写真に納まるのだから嬉しくない訳がない。自然と顔もほころぶというものだ。

 大きく濡れ跡が残るシャツにロングコースの苦労が現れている。

 

 

 

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 予定時間より30分ほど早く着いた雷電山。帰りは余裕を持って歩くことが出来た。ササ原に延びた登山道の先にはこれから戻る幌別岳(中央)、岩内岳(左奥)が見える。右奥には目国内岳やシャクナゲ岳、アンヌプリが見える。

 

 

 

022

 

 幌別岳からの下りから目国内岳(右)とパンケメクンナイ湿原を見る。奥にイワオヌプリやアンヌプリが見える。帰路、幌別岳への古びた標識があったので頂上を目指したが、少し進んだ所でハイマツが生い茂って道が分からず途中で戻った。

 

 

 

023

 

 少し高くなった所からニセコ方面をズームアップ。手前から白樺山、シャクナゲ岳、チセヌプリ、イワオヌプリ、アンヌプリ。羊蹄山は相変わらず雲に覆われている。

 

 

 

024

 

 戻った岩内岳からニセコの山々を見る。思っていたよりも登山道が歩き易く、苦労の少ない山歩きだった。しかし、雨やガスになるとチョッと恐いなと思わせる原始的な登山道でもあった。

 ここから登山口までは膝を痛めないように慎重に下った。それでも湿った登山道で滑ること数度、危うく尻餅をつきそうだったが、かろうじて痛い目に遭わずに済んだ。

 充実した山歩きは辛くても余韻が残る。また少しだけ背伸びをした山歩きに挑戦したい。

 

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