無意根山紅葉 (むいねやま・1464m

 

2001109日 「薄別コース」 元山コースはこちら

 

「無意根山」を札幌市街から見ることはなかなか出来ない。余市岳に次ぐ札幌近郊第2の標高を持ちながら、奥座敷でひっそりと息を潜めているような奥ゆかしさがある。それでも定山渓温泉に行く途中にピンポイント的にだが、あの鯨のような「無意根山」を見ることが出来る場所がある。四季折々で変化のある山容を見せてくれるのだが、その中でも私は山菜採りシーズンに入っても、まだ多くの雪を残して真っ白に輝いている「無意根山」が気に入っている。わたしの住んでいる北区からはちょうど手稲山の真後ろあたりに位置するのだから見える訳がないのだが、なぜかあの白鯨のような「無意根山」が気になりだして無性に登りたくなる時がある。今回は紅葉時期を狙って登って見たのだが、真紅のナナカマドが実に見事で、予想通り素晴らしい紅葉を満喫できた。

 

登り(1時間55分)  「宝来小屋」登山口 ←45分→ 無意根尻小屋 ←1時間10分→ 山頂

下り(1時間40分)    山頂 ←1時間→ 無意根尻小屋 ←40分→ 「宝来小屋」登山口

 

 

定山渓温泉を抜けて「薄別」まで行くと、右手に「無意根山登山口」と書かれた立派な標識が目に入る。昔はここから林道をエッチラ・オッチラと1時間半も歩いたものだが、最近は林道入口のゲートが開放されて、5キロ程の道を車で入れるようになった。林道工事中は「自然破壊」だと怒っていたが、登山道として開放されたと知ると手のひらを返したように有難がるおじさんは、なんと身勝手な人間なんだと猛反省。

「薄別コース」入口の林道ゲート

 

 

「宝来小屋」登山口へと伸びる林道

 

 林道が開放された「薄別コース」は2時間足らずで山頂に立てる初級コースになってしまった。しかしこのコースの唯一の弱点はぬかるみが多いことである。晴天の日でも面倒がらずに最初からスパッツを付けることをお薦めする。林道が入り込んだために、もう「電光坂」と呼ばれた登りも無くなってしまった。便利なことは寂しいことにもつながるのだとしみじみ思うおじさんだった。

「宝来小屋」登山口と紅葉

 

 

登山道は極彩色のプロムナード

 

アカエゾマツに囲まれた明るい「大蛇ヶ原湿原」。春から夏にかけて様々な花が見られる。最近は登山者の踏み跡がだんだんと湿原に入り込み、池塘の近くまで及んでいる。湿原を保護するために是非「木道」の敷設を望みたい所だ。一度破壊された湿原が元に戻るまでは気の遠くなる歳月が必要なのだ。登山者も湿原に入り込まず、悪路を歩こう

 

 

「大蛇ヶ原湿原」を過ぎる頃には大分足元が汚れていることだろう。このコースはそんなことを気にしてはいけないのだからどんどん歩こう。湿原を過ぎて少し歩くと突然というか唐突というのか、まあそんな感じで「無意根尻小屋」が現れる。小屋からしばらく歩くと行く手を遮るように尾根が現れる。ここから通称「シャンテ」までの登りがこのコースの核心部となる。とは言っても露岩個所とロープの張られた滑り易い個所があるだけで、注意をすればたいしたことは無い。

一度泊まってみたい「無意根尻小屋」

 右の木が「チョッとだけよ」に見えるのは、おじさんの脳細胞がイカレテいるからなのか

 

 

 「シャンテ」まで登る途中、後ろを振り返ると白いダケカンバ林の中に真紅のナナカマドが点在しているのが美しい。その林の向こうに「定山渓天狗岳」が1峰・2峰・3峰と並んでいる姿が目に入って来る。普段は1峰(本峰)だけが目立つ姿しか目にしないので、なぜか新鮮に映る。汗をかきかき「シャンテ」まで上がると前方に長く横たわる無意根山が目に入る。まさに巨大な鯨が横たわっているようだ。これで山頂付近から潮でも噴けば最高なんだけれども。

「シャンテ」から見る無意根山

 

登山道から「シャンテ」を見下ろす

 

 シャンテから山頂へ向かう途中で「元山コース」と合流する。「薄別コース」が短縮された今、3時間かかる「元山コース」は生き残れるのだろうか。登山者の減少による登山道の荒廃が心配だ。山頂の尾根は無意根山名物「ハイマツのトンネル」が延々と続く。これを抜けると小石を積み上げた山頂に出る。「えっ!ここが山頂?」と最初は誰でも思ってしまう。それでも札幌近郊で最高の展望(私が勝手に決めた)を誇る山頂なのである。

無意根山名物「ハイマツのトンネル」

 

山頂風景・山頂が低く見えます

 

札幌近郊で最高の展望を誇る山頂も、この日は晴天が災いしてかシルクのカーテンを掛けたようにもやってしまった。羊蹄山も余市岳も札幌岳も薄いシルエットだけが見えた。静かな山頂にたたずんでアメリカの「同時多発テロ事件」に対する報復攻撃に苦しむアフガン市民を思う。悪の暴力に対する正義の暴力、奇麗事では済まない政治の力学。いとも簡単に戦争に突入する現実をまざまざと見せ付けられ、おじさんの頭の中は何が正義なのかを知るために脳細胞がフル回転している。

 歩きながら紅葉に酔いしれ、山頂では弁当を食べながら難題に苦しむ。複雑な心境は帰りに寄った小金湯温泉「まつの湯」で洗い流す。そんな簡単な問題ではないのだろうが、いまのおじさんは何とも無力だ。