椚山(くぬぎやま)でうどんを食べたよ。(^ ^;

   ボク「どう行けばいいんだぃ?」

   Y君「この道どんどん行けばすぐだよぉ」     
                   すぐだよぉ
                  すぐだよぉ
                 すぐだよぉ
                すぐだよぉ
               すぐだよぉ
              すぐだよぉ
             すぐだよぉ
            すぐだよぉ
           すぐだよぉ
          すぐだよぉ
         すぐだよぉ
        すぐだよぉ
       すぐだよぉ
      すぐだよぉ
     すぐだよぉ
    すぐだよぉ
   すぐだよぉ
  すぐだよぉ
 すぐだよぉ
すぐだよぉ
ぐだよぉ
だよぉ
よぉ
ぉ
      S君「遠いですねえ」    
          遠い
           遠い
            遠い
             遠い
              遠い
               遠い
                遠い
                 遠い
                  遠い
                   遠い
                    遠い
                     遠い
                      遠い
                       遠い
                        遠い
                         遠い
                          遠

   ボク「すぐって言ったのに、すぐじゃないじゃん」    
        S君「秘境ですねえ」         
           秘境
          秘境
         秘境
        秘境
       秘境
      秘境
     秘境
    秘境
   秘境
  秘境
 秘境
秘境
境
  ボク「そりゃオーバーじゃん。
     せいぜい藤岡の秘境っつーとこじゃないの」   
               秘境
                秘境
                 秘境
                  秘境
                   秘境
                    秘境
                     秘境
                      秘境
                       秘境
                        秘境
                         秘境
                          秘境
                           秘境
                            秘境
                             秘境
                              秘境
                               秘

   「いらっしゃいませ」    

    ささやくような、蚊の鳴くような小さな声がした。   
 ↑      ↓   カーソル↑をイラストの上に置いて見てね。   ↓   ↑

   やせ形で化粧っ気のない、
   いわゆるひかえめ美人であった。    
   好感度バツグンであった。
   当然、ボクのタイプであった。

   



 
『椚山(くぬぎやま)で椚山(くぬぎやま)のうどんを食べたよ。』 (^ ^; .


 
 










  「高山まで来たんなら、
   みはらし茶屋のうどん、喰ってっとくれよ」」   


     「へぇ、うまいんかぃ?」      


















   「え? みはらし茶屋?
    ……ロマンも、ときめきも、ムードもないねぇ」    















   こんな美人が不幸にあえいではいけない。
   ……いかん、
   うっかり妄想の世界に入り込みそうになった。   


















   んでもって、
   いわゆる コシ がほとんどない、   
   っつー手打ちうどんなのだ。




   もしかして、ボクに好感を抱いたのかも知れない。    











 

 

 地元の人間だからかも知んないが、高山(群馬県藤岡市)にはめったに行かない。
 ましてやその奥の椚山(くぬぎやま)の二千階段には行ったことがなかった。
 去年の五月の第3土曜日。仕事の都合で高山まで来てしまった。
 ひとりじゃない。後輩のS君と二人でだ。
 11時を過ぎたので、食堂のある町まで戻ろうかと思ったら、土手で草刈り機をか
ついだ知り合いのY君を見つけた。車から降りて声をかけた。

ボク「精が出るのぉ」
Y君「土曜日だっちゅうに仕事かい?
   高山まで来たんなら、二千階段のうどん、喰ってっとくれよ」
ボク「へぇ、うまいんかぃ?」
Y君「うめぇよぉ」
ボク「手打ちかぃ?」
Y君「あったりめぇよぉ」
ボク「どう行けばいいんだぃ?」
Y君「この道どんどん行けばすぐだよぉ」

 っつーことで、椚山(くぬぎやま)の二千階段へ向かった。人家がなくなって、未舗装
の細い山道を軽四輪でのろのろ走るのは心細い。
 運転のS君も椚山(くぬぎやま)の二千階段は初めてだと言う。
 天気はいいのに、人恋しくてしんみりしてしまった。山奥っつーのはさびしいもん
だと思った。
 未舗装の細い山道は「いろは坂」状態だからのろのろ走るしかない。なかなか二
千階段にたどり着かない。

S君「遠いですねえ」
ボク「すぐって言ったのに、すぐじゃないじゃん」
S君「秘境ですねえ」
ボク「そりゃオーバーじゃん。せいぜい藤岡の秘境っつーとこじゃないの」
S君「でも、秘境ですよねぇ」
ボク「単なる山奥じゃん、早い話が」
S君「ま、秘境っつーことにしときましょ」
ボク「ま、ここは、町育ちのS君の顔を立てて、百歩譲って、ミニ秘境っつーか、
    身近な秘境っつーことにしとこぉかねぇ。」
S君「ありがとうございます」
ボク「いえいえ、どういたしまして」

 とかなんとか言ってるうちにようやく、たどり着いた、ような気がする。
 小さなプレハブ平屋建て。まるで建築現場の作業所ムード。

ボク「え? ここ? みはらし茶屋?」
S君「でしょう」
ボク「……ま、ここでしょうね。しかし、……ロマンも、ときめきも、ムードもないねぇ」
S君「ないっすねぇ」

 プレハブ平屋建てのアルミサッシをガラガラ開けると、安っぽいテーブルが1つに
安っぽいイスが8つ。
 午前11時40分。いい天気の土曜日、なのに客がいない。(mmm やっぱり、秘境
かなぁ)

 「いらっしゃいませ」
 ささやくような、蚊の鳴くような小さな声がした。
 左手の調理場みたいなところに割烹着の女性が2人いた。

 ボク「あのぅ、うどんください、2つ」
女性A「はい」(と、蚊の鳴くような声)

 mmm 食堂の雰囲気じゃない。建築現場の作業所ムードがただよっている。
 五月晴れのまぶしい陽射しの中で、蚊の鳴くような声、活気がない。
 この店はいつつぶれるんだろうか、と余計な心配をしてしまった。
 割烹着の女性2人のうちひとりは、いやゆる田舎のやさしそうなおばちゃんタイプ
でどうということはない。しかし、もうひとりの、蚊の鳴くような声の女性A(推定年齢
48歳)は、やせ形で化粧っ気のない、いわゆるひかえめ美人であった。好感度バ
ツグンであった。当然、ボクのタイプであった。こんないい人の店がつぶれてはいけ
ない。こんな美人が不幸にあえいではいけない。
 ……いかん、うっかり妄想の世界に入り込みそうになった。

 出されたお茶を飲んでると、ジャアアアっという音がした。蚊の鳴くような声の女性
Aが天ぷらを揚げている。
 mmm 揚げたての天ぷらが出て来るのかな?
 だとしたら、午前11時40分っつーのは大正解じゃぁないの? むふふふ。

 天ぷらを揚げている女性Aのうしろ姿をボーッと見ているうちに、おばちゃんタイプ
に運ばれてうどんが出て来た、揚げたての天ぷらを従えて。

ボク「舞茸かねぇ」
S君「ですねぇ」
ボク「(天ぷら)熱いねぇ」
S君「ですねぇ」
ボク「ズルズル(うどんをすする音)。うむうむ、これこれ、田舎の手打ちうどんじゃぁ」
S君「ズルズル(うどんをすする音)。ふむふむ」

 そうなのだ、昔からの藤岡の家庭の手打ちうどんの舌触りと歯ごたえ、これが
ボクの「おふくろのうどん」とおんなじなので、まい、なのだ。
 町のそば屋・うどん屋のうどんは、ボクにとっては、手打ちじゃなくて「手打ち風」
なのだ。ツルツルしてて、コシがありすぎるのだ。
 ボクの「おふくろのうどん」っつーのは、うどん粉と水だけでできていて、少し黄色
っぽくて、ツルツルしてなくて、表面がわずかにザラついてて、んでもって、いわゆ
るコシがほとんどない、っつー手打ちうどんなのだ。
 小さいときからずうっと食べてるので、この舌触り、この歯ごたえ、このコシのなさ、
この味、こののどごし、がボクには一番うまい、うどん、なのだ。
 ふつうのお店ではたぶん食べられない、家庭の手打ちうどんのうまさが、ここにあ
った。

 「どうぞ」
 と、蚊の鳴くような声。
 ひかえめ美人が、おしんことおやきをサービスしてくれたのだ。
 やっぱりいい人だったのだ。
 もしかして、ボクに好感を抱いたのかも知れない。
 今日はとてもいい日だにゃぁ。
 おしんことおやきはもちろん手作りで、薄味でうまい。
 これで、もりうどん(野菜天ぷら付き)一人前500円は、安い。そして、まい。
 ひかえめ美人のサービスのせいか、ついおみやげのおやきを4袋も買ってしまっ
た。
 12時15分、軽四輪に乗り込んだ時にも、客は1人も来ない。
 「どうかこの店、つぶれないでほしいにゃぁ」
 ボクは、野菜天ぷらもりうどんとひかえめ美人の幸(さち)多かれと祈るのだった。

 山道をのろのろ降りながら、満腹であった、満足であった。
ボク「まかったねぇ」
S君「おいしかったですねぇ」
ボク「野菜天ぷらもりうどん500円は安い!…でも、遠いにゃぁ。
   安くてうまい、でも、遠いにゃぁ。…又来るかぁ?…来ねぇよなぁ」
S君「…ですねぇ」
ボク「やっぱ、藤岡の秘境かなぁ」
S君「…ですねぇ」
             『椚山(くぬぎやま)で椚山(くぬぎやま)のうどんを食べたよ。』(^ ^;
                                           2007.03.25.
                              by 鍋奉行鰹節守助左衛門大喰

 ps.手打ちうどんは、うどん粉をこね、一晩寝かせてから茹でると、小麦粉がグル
   テンに変化して、いわゆるコシのあるうどんができるのだ。
   っつーことを、村の青年からつい最近聴いた。ふ〜ん、知らんかったー。
   つまり、椚山と藤岡市一帯のうどんは、
   うどん粉をこねて、すぐ茹でるから、コシのない手打ちうどんになるのだった。
   ボクは、もちろん、コシのない手打ちうどんの方が、うまい!なのだ。
   たべものの幼児体験は、味覚に多大な影響を与えるのだ。
                                           2009.04.12.

 
 

 

 
   
              
    「どうかこの店、つぶれないでほしいにゃぁ」     
          
   ボクは、野菜天ぷらもりうどんと
   ひかえめ美人の幸(さち)多かれと祈るのだった。     
 
 

  まず言わねばならないことは、
  四国の高松、いわゆる讃岐ですね、
  この一帯はうどんの街であるということ。
  街中うどん屋だらけ、
  交差点の数よりうどん屋の数のほうが多い  
  といわれている。
セルフのうどんの店

    ↑クリックしてネ。






文春文庫「ゴハンの丸かじり」 東海林さだお著。いつもの丸写しです。(^ ^;
                    うどんつながりです。オモロイでっせ。見てネ。(^ ^;
 
 


掲 示 板

←ご意見、ご感想、おたより等お寄せください。



     「やっぱ、藤岡の秘境かなぁ」     

 トップページに戻ります。                                        ♪のどもと過ぎればうどんを忘れる♪