「しぇ・もと」(立川)
平成13年秋に、フランス料理店から転身した異色の手打ち蕎麦屋である。店名はフランス料理店時代のまま、店内の雰囲気もあまり蕎麦屋らしからぬ、気軽なビストロのような感じである。テーブル席と若干のカウンター席合わせて15人ほど入ればいっぱいだろう。
ソバがとても好きで転向したという若い店主の打つソバはこだわりの味。玄蕎麦は、長野県黒姫産の有機・自家栽培のもの、福島県会津産の有機・契約栽培のものなどを使用。これを石臼自家製粉して、風味豊かなソバを打っている。
冷製の「せいろ」は800円(大盛り1100円)。みずみずしい細打ちのソバで、蕎麦本来の香りが際立ち、喉ごしもよい。合わせるツユは、やや甘味が気になるが、上品な味で、ソバとの相性はよい。
夜は、元フランス料理人の面目躍如たる、オリジナリティあふれる酒の肴を味わいながら、「飛露喜」、「奥播磨」、「王禄」などの日本酒や各種ワインを楽しむことができる。中でも、「フォワグラのふろふき大根」は絶品。やわらかく茹でられた大根の上にコッテリとしたフォワグラ、香ばしい蕎麦の実がのっている。もちろん、蕎麦屋らしい焼き味噌、卵焼き、生ゆばの刺身などの肴も用意されている。
料理に対する熱意あふれるソバ打ちシェフの今後が楽しみな店である。
味4、雰囲気3、対応3、CP4 計14
評価時期 平成16年3月22日
データ 立川市曙町2−20−5 042−529−5468 11:30〜14:30 17:30〜21:30 日曜・祝日休み
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アカデミックな国立の街並みにふさわしい、喫茶店のようなこぎれいな蕎麦屋である。入口脇にはソバ打ち場、静かにジャズのかかる店内は、テーブル席のみ14人ほどが入れる。
メニューを見ると、酒の肴が豊富に載っているので、一杯飲みたくなる。日本酒のほうも、「東北泉」、「明鏡止水」、「奥播磨」、「飛露喜」、「墨廼江」など銘酒揃い。酒は、テーブルで、一升瓶からコップになみなみと注いでもらえる。お通しは揚げソバである。
肴は、「出汁巻き玉子」、「板わさ」、「焼き味噌」、「湯葉刺し」、「鴨ロース」など定番のものの他、クリームチーズを豆腐の代わりに使った和風「チーズやっこ」や「じゃことそばの実カリカリサラダ」、「アボガドと海老のそば屋和え」といったオリジナルメニューもある。蔵王産の「鴨ロース」は燻製風味が絶品、これを粒マスタードと白髪ネギでいただく。気仙沼直送の「塩うに」は、まったりとした味わいで、酒がスイスイと進む。土日・祝日限定の「そば屋の角煮」は、ソバツユで煮込んでいるようで色はかなり黒いが、よい味を出している。美味しいしみうま煮玉子付きである。
ソバは、「せいろ」が680円(大盛り830円、おかわりはプラス500円)。みずみずしい細打ちで、喉越しのよいソバ。蕎麦の香りもなかなかである。ツユはやや濃い目だが、甘辛バランスがよい。
もちろん、蔵王産鴨使用の「つけ鴨せいろ」(1300円)もお薦めである。鴨肉と鴨つくねの野趣ある味わいが印象的、鴨脂の旨味がしみ出した汁がまたおいしい。蕎麦湯で割ってたっぷりと味わうことができる。
平成13年に開店した新しい店だが、しだいに実力を上げてきている。気軽にソバと酒を楽しむことができる店である。
味4、雰囲気3、対応4、CP4 計15
評価時期 平成17年10月16日
データ 国立市東2−3−5 042−577−8141 11:30〜14:30 17:30〜21:00 日曜は11:30〜16:00 17:00〜20:00 月曜・第2火曜休み
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JR南武線の西国立駅から数分、外観はごく普通の住宅のようだが、店の入口に掲げられている「手打ちそば」の幟や緑地に白抜き文字の暖簾で、蕎麦屋であることがわかる。店内へ入ると、右側の座敷席、左側の10人分のテーブル席とに別れている。BGMはなく、明るく、静かで小ぎれいな雰囲気である。
「もりそば」は750円(大盛1000円)。まん丸い笊に盛られたみずみずしいソバは、長さのある中細打ち。香りはおとなしいが、コシがあって、喉越しもよい。東京の蕎麦屋としては、ボリュームも十分である。合わせるツユは、鰹風味がきいていて、やや甘いが、洗練されている。
また、新蕎麦の時期から半年ほど出すという「小菅そば」は1200円(大盛1500円)。山梨県小菅村から仕入れた蕎麦粉で打っているとのことで、黒っぽい中細打ち。少しゴワついた舌ざわりで、野趣に富んだ田舎ソバである。蕎麦の香りがとても強いので印象深い。
このソバが茹で上がる前に、猪口1杯の酒とお通しが付く。
その他、メニューの品数は少ないが、種物では「鴨南そば」(1200円)がよい。別に煮た鴨を後からのせていて、ソバ汁が油ぎっていないので、あっさり感のある鴨南である。鴨はやや煮すぎだが、焼き目をつけた長ネギが香ばしく、しっとりとしていておいしい。薬味は、七味と一味が供され、好みで選択することができる。
ソバ前の酒は、珍しい高知の「桂月」。辛口で切れがあって、いかにも高知の酒という感じだ。酒と共に、お通しとして家庭的な簡単なつまみがつくが、これがよい。イタドリの茎のおひたしなど珍しい食材も登場する。
老夫婦が二人だけで切り盛りしている店なので、混雑すると対応が遅れたりするが、あまりイライラしてはいけない。そうした素人っぽく家庭的なところがこの蕎麦屋らしい。
アットホームな雰囲気に引かれて、地元の固定客が訪れる蕎麦屋のようである。
味3、雰囲気3、対応3、CP3 計12
評価時期 平成18年1月22日
データ 立川市羽衣町3−2−17 042−524−8101 11:30〜14:30 17:30〜20:00 月曜・第2火曜休み
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しっかりとした職人らしい仕事を見せてくれる蕎麦屋である。最近は、あまり修業経験のない脱サラ組の蕎麦屋も多いが、「進士」のご主人は、荻窪の「本むら庵」で長年にわたって修業を重ねた実力派である。
西武新宿線の田無駅から歩いて5分ほど、西東京市役所庁舎の少し先に、さりげなく暖簾を掲げている。静かな軽音楽が流れる店内は、手挽き石臼と電動石臼が置かれた打ち場があり、客席はテーブル18席のみである。
ご主人の打つソバは3種類。「せいろ」(680円)は、本むら庵と同じ正方形の笊に盛られ、蕎麦の風味が生きている細打ちソバ。冷水でよく締められている。ボリュームも十分である。「田舎」(800円)は、やはり本むら庵で供されるような野趣あふれる太打ちソバ。黒い外皮がかなり入っていて、ゴワつく食感、硬くて噛みごたえがある。
また、10月から3月までの期間、毎日数量限定で打たれる「生粉打ちせいろ(十割)」は、抜群の風味を持った細打ちソバ。挽きたて、打ちたての香りを堪能できて、喉越しもすばらしくよい。合わせるツユは、やや塩分は高いものの、薄口でソバの旨みを引き立てている。薬味が辛味大根おろしというのもソバの香りを生かす配慮だろうか。
ソバを食べる前に、エビス生ビールや「黒龍」、「八海山」、「緑川」などの日本酒を飲みながら、「そば豆腐」、「穴子煮こごり」、「鳥わさ」といった上質な肴を味わうのもよい。先日、一人で数品の肴を頼んだところ、「量が多いので半分づつにしましょうか」と半量半額で供してくれた。こうした配慮はとてもうれしい。
女将さんの接客も、丁寧で気配りがあって、気持ちがよい。おいしく食べて、憩うことのできる蕎麦屋である。
味5、雰囲気4、対応5、CP4 計18
評価時期 平成16年5月24日
データ 西東京市南町5−29−5 0424−68−8388 11:30〜15:00 18:00〜23:00(土日・祝日17:30〜21:00) 火曜休み
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JR南武線の西国立駅から歩いて5分ほど、交通量の多い細い道路沿いに店を構えている。2階建ての立派な和風建築、店の前には車4、5台分の駐車スペースがある。
店内へ入ると、木製のテーブルと椅子が並んでいて、やはり落ち着いた和の空間。照明は落とされ、ジャズの音楽がしっとりと流れている。石臼挽き十割そばの看板を掲げているだけあって、石臼の置かれた広いガラス張りの打ち場スペースもある。
冷製の「せいろ」は750円で、ソバだけのおかわりがプラス450円で食べられる。ソバはやや不揃いだが、全体的には極細打ち。茹で時間はかなり短いようで、コシはしっかりと残っている。噛むほどに蕎麦の風味と味わいが増していくが、水切りが悪いので、素早く食べないと、細いソバどうしがくっ付いてしまい、逆に味わいが落ちる。
ツユは甘味少なく、洗練されているが、やや醤油味が勝っている気がする。
その他のメニューでお薦めは、大きな穴子の天ぷらとおろした穴子の骨の素揚げの付いた「穴子天せいろ」や辛味大根を使用した「おろしそば」、そして定番の「鴨せいろ」など。また昼時は、とろろめしなど日替わりのミニ丼を合わせることもできる。
車で店の前を通らない限り、なかなか見つけにくい場所にあるが、正統派の手打ち蕎麦屋である。
味4、雰囲気4、対応3、CP3 計14
評価時期 平成16年3月27日
データ 立川市羽衣町3−11−16 042−529−3883 11:30〜15:00頃 17:30〜20:00頃(金曜・土曜のみ) 日曜休み
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