「きょうや」(谷保)

 南武線の谷保駅から富士見台団地方面に歩いて数分の場所、あまり目立たずに暖簾を掲げている。クラシック音楽が静かに流れる店内は、思いのほかゆったりとテーブル席や座席が配置されている。テーブルや椅子、床などはすべて木製で統一され、落ち着いて食事ができる雰囲気である。
 酒の肴が充実しているこの店では、まずは生ビールや日本酒などでソバ前の一杯が飲みたくなる。日本酒は「獺祭」、「王禄」、「佐久の花」、「黒龍」、「吉乃川」など日本各地の銘酒が揃えられている。
 肴には、しっかりと濃厚な味わいの「畑のチーズ(豆腐の味噌漬け)、やはり濃厚で山葵を付けて食べると甘味も感じる「くみ上げ湯葉」、美しく端正で甘味もほどよい「だし巻き」といずれも酒が進む品々。その他、「辛しこんにゃく」、「寄せ豆腐」、「板わさ」、「焼味噌」、「いかの丸干し」なども用意されている。

 酒と肴を楽しんだ後は、やはり冷製の「せいろ」(735円)でしめたい。丸い編み笊に盛られたソバは、見た目にもみずみずしく打たれた細打ち。香りはおとなしいが、喉越しはなかなかよい。合わせるツユは、薄くてやや甘味が気になる。ソバにからめても口の中に甘ったるさが残る感じである。また、土日・祝日のみに打たれる「しそ切り」などの変わりそばでしめるのもよいだろう。
 休日の昼下がり、くつろいで時を過ごすことのできる店である。

味3、雰囲気4、対応4、CP3 計14

評価時期 平成17年10月1日

データ 国立市富士見台1−12−14 042−573−9755 11:30〜14:30 17:30〜21:00 水曜休み

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「蕎廬庵(きょうろあん)」(国立)

 中央線の国立駅南口から富士見通り商店街を歩いて10分ほどのところにこじんまりと店を構える。店内はあまり広くなく、テーブル席と小上がりの板座敷を合わせても20席ほどだろうか。やや狭苦しさも感じるが、木製調度品で統一されているので、落ち着いた雰囲気ではある。近ごろ蕎麦屋ではやりのBGMは流れていない。
 自家製粉、粗挽き手打ち蕎麦の店といういうことで、随所に店主のこだわりがみられる。供されるソバは、純国産粉を使用し、独特の香りや食感を持った粗挽きのみ。それは冷たい「ざるそば」(850円)を食べることで実感できる。外皮が点々と打ち込まれた黒っぽい細打ち、風味豊かで、野趣あふれるざらつく食感が印象的である。

 合わせるツユは、倉敷の三年間天然醸造の醤油、枕崎産の鰹節、三河みりんを使用したまったり濃い口。ツユ自体の味わいは深いが、ソバの風味を生かすには、もう少し薄口でキレがあったほうがよいと思う。
 また、「桜えびのかき揚天ざるそば」(1300円)がお薦め。たっぷりの生桜海老だけを美しく固めたかき揚げは絶品。とても香ばしく上品で、すばらしい出来である。これはソバ前の酒の肴とすることも可能。他にも「黒はんぺん」などの肴もあり、日本酒は「初亀」や「正雪」の純米または純米吟醸と、居ながらにして静岡の食を体感することができる。酒の徳利と猪口が備前焼というのも、こだわりが感じられて気に入った。
 店は夫婦二人で切り盛りしているようで、土日の接客などやや手不足な感じだが、一生懸命対応しているようなので、しばらくは温かく見守りたい。これからもこだわりを持って、料理とサービスに精進してほしい。

味4、雰囲気4、対応4、CP3 計15

評価時期 平成17年10月1日

データ 国立市中2−4−8 042−573−3070 11:30〜14:00 17:30〜20:30 月曜休み(日祝は昼のみ)

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「七 彩」(武蔵小金井)

 中央線の武蔵小金井駅北口から歩いて4分ぐらいのところ、住宅地のマンションの半地下部分に店を構える。道路脇に看板は出ているが、店には暖簾がなく、小さなにじり口があるのみで一瞬戸惑う。ただ蕎麦打ち場がガラス越しに見えるので、蕎麦屋であることがわかる。
 頭をぶつけそうな狭い戸口から店の中に入ると、そこは外とはまったくの別空間。照明を落とした店内にはジャズやポップス音楽が流れ、いかにも隠れ家的な雰囲気が漂っている。テーブル席のみで、16人ほど座ればいっぱいである。

 ここで供されるソバは、細打ちの「せいろ」と太打ちの「田舎」の2種類。「せいろ」(800円)は、エッジが立っていてみずみずしい。香り高く、喉越しもよい。一方「田舎」(900円)は、黒っぽく野趣にあふれる。ざらつく食感で、風味がとても強い。いずれのソバも、味、ボリュームとも十分満足できるものだ。
 合わせるツユは、やや甘めで濃いので、どちらかというと「田舎」との相性が抜群だが、「せいろ」でも決して悪い相性ではない。それだけ、力強い風味を持ったソバということだろう。
 またこの店では、酒の肴の一品料理が充実している。名物は、季節の野菜が添えられた「白和」。茄子や栗などの食材に丁寧な付けが施されているのがよい。その他、やわらかめでたっぷりとダシのしみ込んだ「玉子焼き」や水槽の活き海老を使った「天ぷら」や「海老しんじょ」、「栗豆腐」などの変わり豆腐など、料理のレベルはなかなか高い。メニューは基本的に週変わりなので、季節の旬の素材を堪能することができる。
 酒のほうは、エビスビールやワイン、焼酎もあるが、これらの料理にはやはり日本酒が合いそう。滋賀の「波の音」、埼玉の「神亀」、高知の「美丈夫」など厳選された地酒が用意されている。
 店主はまだ若いようだが、職人らしい料理に対する熱意が感じられる。これからも、おいしいソバと料理を提供してほしい。

味5、雰囲気4、対応3、CP4 計16

評価時期 平成17年10月17日

データ 小金井市本町5−38−13 042−385−0208 11:30〜14:00 17:30〜21:00 木曜休み

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