第一部
筑波大学の秘密
其の弐
前回、大学建設の真の目的は述べた。
しかし、更なる疑問が残る。
なぜ、大学を新設しなかったのだろうか?
なぜ、「東京教育大学」を移転させたのだろうか?
確かに資金の節約と言う理由もあるだろう、。しかし「移転」と「新設」、両者を比べた場合、節約できるお金は、実はさほど多くはない。
建物はどちらの場合も新設しなければならない。また、移転となると、古くなった機材などは大抵それを理由に一新される。また、移転費用も結構かかるだろう。つまり新設した場合、余計にかかるお金は、人件費と、一部機材の購入費分ぐらいなのである。むしろ、大学を新設することによる教授職などの求人の増加、将来の大学受験者の増加などを考えれば、「先行投資」として決して無駄な物ではないのである。
そう、資金の節約などのほかにも多くの理由があり、「東京教育大学」はつくばに移転されたのである。
どのような理由にようるものだろうか?
考えてもみて欲しい。総合大学を一つ新設するのである。しかも、鉄道沿線や、主要国道から遠く離れた田舎にである。よほど強力な理由がなくては、反対大好きの野党に「税金の無駄遣い」としつこく追及されるだろう。いや、「東京教育大学」の移転すら野党の強固な反対にあったのである。広大なキャンパスを持つ総合大学を新設したら、当然激しく野党に追求されるし、いやでも世間の注目を集めてしまう。下手をすると「研究学園都市」の真の目的まで暴かれてしまうかもしれない。
また、つくばに移転している研究施設は皆、理化学系の研究施設なのである。「新設するなら、理化学系の単科大学で十分だ」と言う理由が出てきたら反論のしようがない。しかし、前にも述べたような理由で、理化学系の単科大学では、「人員補充施設」としては不十分なのである。では、理化学系単科大学のほかに体育大学を新設するか?「研究学園都市」に体育大学では余りにも不自然で、いかがわしさ大爆発である。つくばに建設される大学はやはり総合大学でなくてはならないのである。
しかし、「研究のほかに教育も行う必要がある。だから大学が必要」と言う理由だけでは、とてもではないが、総合大学を新設する理由として周りを納得させることは出来ないだろう。大体、筑波の様な田舎に総合大学を新設して果たして生徒が集まるだろうか?集まったとしても余り質の良い生徒は集まらないだろう。余りに頭が悪い大学生では、補充要因としては役に立たない。また新設大学では、大学としての組織が落ち着くまで、10年はかかるだろう。その間、「人員補充施設」として本当に使用できるかははなはだ疑問である。拠点となる「研究学園都市」にこの様な不安定な要素があるのは好ましくない。
そこで既存の大学を移転させることになったのである。
「研究学園都市の教育施設の充実を図りどうたらこうたら。教育施設を地方に分散させることで、なんたらかんたら。広大なキャンパスとのびのびとした環境下で、うんたらかんたら。」と言う理由をつけて既存の大学を移転させれば、新設に比べれば、反対も少ないだろうし、世間もなんとなく納得するであろう。また、既存の大学を移転させるので大学の組織事態がすでに整っており、「人員補充施設」として移転したその日から使えるし、また、それなりの質の生徒が集まっている大学を移転させれば、たとえ田舎に移転させても、そのレベルより生徒の質が落ちると言うことも余りない。
こうして移転させる大学選びが始まった。