第一部
筑波大学の秘密
其の参
秘密を守るためにも国立大学、しかも総合大学、だが余り遠くの大学を移転させては不自然だし、関東各県の大学もやはり不自然である。つまり東京にある国立総合大学でなくてはならない。
当時、東京にあった総合国立大学といえば、「東京大学」「お茶の水大学」そして「東京教育大学」の三つである。このうち「お茶の水大学」は女子大だから問題外である。しかしいくらなんでも「東京大学」を移転させるわけには行かない。大体「研究学園都市」建設を画策した官僚たちは、殆どが東大出である。自分の母校を危険にさらすわけがない。
こうして消去法により「東京教育大学」の筑波移転が決定したのである。
「東京教育大学」では当然激しい抵抗運動が起こったと言う。政府もある程度の反対は予想してに違いない。反対運動が、政府の予想範囲内だったのか?それとも政府の予想を遥かに超えた物だったのかは、今のところわからない。しかし、「筑波移転」は「決定事項」なのである。反対運動を無視して、いや、反対運動を国策と言う巨大な歯車によってすり潰しながら筑波移転は着々と進んでいった。
こうして、広大なキャンパスと、立派な施設などが与えられた、国策大学「筑波大学」は誕生した。当然田舎に移転した見返りなどと言う理由でこの様な広大なキャンパスが与えられたわけではない。う、ここは有事には総司令部が置かれるのである。有事の時、学生たちは皆駆り出される。当然キャンパスは無人となる。その無人となったキャンパスが「自衛隊の駐屯地」兼「反撃戦のための総司令部」となるのである。
その地下には、「武器弾薬庫」、「兵器の修理施設」「地下司令部」等、が眠っているという。
筑波大学のキャンパスの幾つかには地下に通じる秘密の通路があると言う噂である。そして、その秘密は厳重に守られていると言う。筑波大学には「○○号館」と言う自殺の名所がある。ここは、5月病、友人関係などでノイローゼになった学生がよく自殺を図ったことから有名になったのだが、実はそのうち幾人かは、筑波大学の知ってはいけない秘密、地下施設などを見てしまった、もしくは知ってしまったがために自殺に見せかけて消されたと言う噂である。事実、筑波大学の構内は、常に、警備員らしき人々が巡回している。これもおそらく筑波大学の秘密を守るためであろう。
筑波大学の理化学系は充実した施設を持っている。
また筑波大学は、国立大学の中では、相当スポーツ推薦に力を入れており、体育芸術学群も充実した施設を持っている。加えて、農学系の施設も充実している。
これらにももちろん理由がある。
理化学系の生徒は有事の補給要員としてなくてはならない。充実した施設を用意すれば、自然受験者が集まり、質の高い生徒が集まる。言わば充実した施設は、良質の補充要員を集めるための餌である。
農学系を充実させているのも、有事の食糧生産に欠かせない存在だからであろう。
スポーツ推薦を重視しているのは、当然、質の良い兵隊要員の確保のためである。体育とともに芸術系を充実させているのはなぜか?これは一見無駄のようである。しかし、戦意高揚、プロパガンダなどの目的で芸術は戦争に利用されてきた。当然その目的で芸術系も充実した施設が与えられているのであろう。
また筑波移転に伴い、医学部が新設されて、立派な付属病院も出来た。こんな田舎にこんな立派な病院が必要なのか?と疑いたくなるような立派さである。
医学部を新設し、付属病院が出来たのも、医療施設の充実、医療要員の確保のためである。