第二部

工業技術院の秘密

其の弐

「電子技術総合研究所」

10数年前、日本からアメリカの国防省だったかに不正侵入した事件が起こったとき、電総研の研究者が、「うちの研究所なんかはしょっちゅうアメリカからの侵入を受けている。」とい語ったと言う。これは何を意味するのか。アメリカが日本にそれほど関心を覚えるとは思えない。大体よほどの国家機密でない限り、不正に侵入しなくたって、外交圧力を掛ければ良いように思える。つまり電総研のコンピュータには、外交圧力をかけても日本が公開できないもの、もしくは、外交圧力をかけて公開させることが出来ないものが眠っているのである。そう、諜報活動によって得られた国家の最高機密である。

現在の戦争は、情報の戦争である。如何に数多くの情報をいち早く獲得するか?そして、それを有効利用できるように分析するか?この能力が戦争の行方を大きく左右する。そして上の能力に大きく関わってくるのは、電子計算機、コンピュータである。「電子総合研究所」のコンピュータにはその情報が眠っており、そしてそれを処理するためのコンピュータも数多くある。もともと、コンピュータ関係の研究をする研究所なので、数多くのコンピュータが合っても誰も不信には思わない。

有事の際には、筑波大学のコンピュータは主に戦術処理等に、そして「電子総合研究所」のコンピュータは主に情報処理等に使用される。また、近年その重要性が指摘されている敵対国のネットワークへの「サイバーアタック」もここから行われると思われる。

「生命工学技術研究所」

ここはバイオテクノロジーなどの研究を行っている研究所である。

ここは当然NBC兵器のうちB(生物兵器)の研究開発。を行う施設の一つである。元々は、「微生物工業技術研究所」「繊維高分子材料研究所」などの4つの研究所が合併して出来た、筑波の中では比較的新しい研究所である。(なぜ統合されたかその理由は後述する)

ここでは極秘のうちに、危険な生物兵器の研究などが行われいつ部はその置く不覚に隠匿されているということである。

「生物兵器の研究開発を行う研究施設の一」と書いのは、筑波にはまだほかに、生物兵器の研究開発を行う施設が存在するのである。「理化学研究所」と「農業生物資源研究所」の二つである。この二つについては、また後ほど詳しく述べるが、なぜ三ヶ所に分けているのだろうか?それは、生物兵器の大規模作成のためである。

B(生物)、C(化学)兵器は「小国の核兵器」と言われるほど殺傷能力が高い兵器なのである。日本は非核三原則により、表向きは核兵器の研究、開発、所有をできない。大体、いくら敵が責めてきたからと言って、おいそれと核兵器を使うわけには行かない。核兵器を使えば、自分自身も破滅するしかない。しかし怒涛のように攻め寄せてくるソ連軍を引き止めるには大量殺戮兵器が必要となる。そこで、政府は「生物兵器」、特にバイオテクノロジーを用いて人工的に進化させた生物兵器の研究開発に目をつけたのである。化学兵器だとどうしても「毒ガス」と言うことになってしまう。これを隠れて研究するのはいささか難しい。また保管も大変である。

しかし、生物兵器ならばバイオテクノロジーを隠れ蓑にすることができる。また保存も長低温化に保管すればいいわけだし、「元の数は少なくても、常温に戻せば、爆発的に増殖する。」と言うような生物兵器を開発すれば、保管場所にも困らない。こうして、政府は、大量殺戮兵器は、生物兵器を使うと言う方針を決定し、筑波に、三箇所もの研究、開発、製造プラントを置いたのである。

また「工業技術院」の他の研究所は、有事には、通常兵器の研究開発などを行うようになるのは言うまでもない。

農林団地の秘密