第三部

農林団地の秘密

其の弐

 

農林団地のもう一つの目的、そして、食糧生産施設の裏に隠された秘密施設とは、生物兵器生産プラントと、化学兵器生産プラントである。

バイオテクノロジーの研究を行っているのは「農業生物資源研究所」である。先にも述べたが、つくばには、生物兵器の研究などを行う所が3箇所あると述べた。その中でもここが一番大規模のものだ。いや、ここは、研究開発はもとより生産のための大規模な施設でもある。

さらにここでは、化学兵器の研究開発を行っている。「農業工業研究所」等がそれである。ここは肥料や農薬の研究も行っている。農薬が人体、生命に深刻なダメージを与えるのや周知の事実である。そして、ここはその研究のため大量の化学物質なども保管している。そう、「化学兵器製造開発」のために。この施設にはもう一つ重要な使命がある。「爆薬」の研究、開発、生産である。通常の戦闘は、未だに火薬を使った兵器が主力である。「爆弾」しかり、「銃砲」しかり、肥料をちょっといじれば火薬にできるのは有名な話である。平時は農薬、肥料、の研究を隠れ蓑に、化学兵器、高性能爆薬の研究を行い、有事には、「化学兵器」、「爆薬」の製造プラントとなるのである。

「爆薬」、「生物兵器」、「化学兵器」。そう、農林団地は、研究施設ばかりでなく、その広大な敷地の地下に、実は広大な兵器製造プラントを備えているのである。

これも盲点をついた一種のおとり作戦である。通常兵器などは、当然工業系の研究所、そう、工技院のほうで生産されていると誰もが考える。

しかし、工技院の敷地はさほど広大ではない。あちらもある程度の生産施設は備えているであろうが、あくまでも主力は農林団地なのである。また農林団地の研究所にも、「研究施設」がある。しかし、主力は工技院である。そう、農林団地と工業団地は、相互補完をしている施設同士なのである。

「農業」=「食糧生産」は考えるが、「農業系の研究所」=「兵器生産施設」などとは考えまい。また、「研究開発施設」=「工技院」、「生産施設」=「農林団地」、「保守点検施設」=「筑波大学」とそれぞれ分散することで、また、補助の施設をそれぞれに置くことにより、一箇所が壊滅的な打撃を受けても、兵器などの研究生産に支障がきたさないようにもしているのである。そう、こうすることで一箇所に集中させるリスクを軽減しているのである。

そして、近隣の農民やら、高校生やらを動員し有事には兵器製造に従事させるのである。

農林団地中央はつくば一の櫻の名所である。そして、農林団地全体は、農業を研究しているだけあって、非常に牧歌的な雰囲気である。しかし、そののどかな外見すら、敵の目を欺くための計算し尽くされた国家の策略なのである。

気象研究所、高層気象台