夢の生成メカニズム
|
ノ
ンレム・レムの両方で夢を見ている。
ノンレムの夢生成は海馬のリップル波で始まる。
夢らしい夢であるレムの夢生成は延髄と橋のP波から始まる。
|

※橋(きょう)はP波
を発生するとともに骨格筋の動きを抑制する。
※延髄のレム誘導神経は、シータ波の生成を「ON」にする。
2024
-10-4 ● 大阪大学 生命科学・医学系医学系研究科教授 望月秀樹 (当時)
|
夢見の脳の情報処理は昼の「視覚情報」の処理と同じ経路を通る。 |
|

|
@
脳幹にある「橋:Pons」は、レム睡眠時にP波を
発生させます。 ※Pontine stroke
P波は外側膝状体を
通り、後頭葉の視覚野へ
と伝わる。
視覚情報が伝わる経路と「橋」が発生させるP波入りの脳波が伝わる経路は似ている。
|
ノンレム時はP波は単発であるが、レム時には集中し、多発する。
|
A昼の脳では網膜から
情報を受け取り、外側膝状体が視覚情報の処理を行い、
視覚野と視覚連合野で「感覚空間」を生成する。
B夜の脳は、
網膜からの情報はないが、脳幹の「橋」から刺激を
受けた外側膝状体が処理を行い、
視覚野と視覚連合野で、「夢見空間」を生成する。
|
MCH神経の活動がレム・ノンレムを切り替える。
|
Cノンレムとレムの切り替えはMCH神経が関与し
ている。
覚醒時、
レム時、(覚醒+レム)時に、それぞれ活動する3種類のMCH神経が
ある。
レム睡眠時に
活動するMCH神経の活動が「夢の記憶」を消去している。
※MCH神経は視床下部外側野に局在し、メラニン凝集ホルモンを産生する。
レム睡眠を誘導することに加え、食欲調整にかかわり、食欲を増進したり、エネルギー消費節約等の機能を発揮する。
|
P波が短期記憶の抑制と増強のシグナルとなっている。 |
DP波のはたらき
ノンレムでは、P波の直前は海馬の
神経活動が高まっている。→
P波の直後に低下→
抑制
→
P波が入ると、海馬のリップル波のパ
ワーは減少する。
レムではP波の直後に、海馬の
神経活動が高まってくる。→ →
増強
→
ノンレム
とレムとで、P波のはたらきが異なる。抑制と増強
という逆の働きを
している。
|
短期記憶の「再構成と長期記憶化」、「消去」
|
E短期記憶の再構成と長期記憶化
ノンレムでは、海馬でリップル波が発生し、覚醒時の神経活動パターンを「再生」する。
再生は圧縮されており、夢は
短時間で終了する。行動の予行は順送りで、行動の回顧は逆送りで再生される。
再生された神経活動パターンは興奮性ニューロンクラスターとして「フラグ」を
立てている。
→P波が入ると、海馬のリップル波は減少し、不要な短期記憶のシナプス結合を解放する。
レムでは、P波が入る
と、海馬のシータ波と協調的に作用し、
記憶の再構成を開始する。
→海馬のリップル波のパワーは増加し、「フラグ」の
立った興奮性ニューロン活動を一様に抑制する。
→結果として、新奇な体験に関連するニューロン活動が相対的に増強される。
→新奇な体験の記憶と「弱いつながり」の記憶が再構成の候補として選択される。
※アストロサイトが関連する「弱いつながり」の記憶ニューロンを同期させている。
→新奇な体験の短期記憶と、関連する「弱いつながり」の長期記憶をもとに、再構成する。
→錐体ニューロンが離れている「弱いつながり」記憶と「新奇な体験」記憶をシナプスで結合する。
→再構成は、内側前頭前皮質のシナリオにそって、夢として「リハーサル」される。
→ネットワークに
組み込まれた「新奇な体験」の記憶は
錐体ニューロンと結合したまま、徐々に大脳皮質へ移動し、「長期記憶」となる。
F短期記憶の消去
ノンレムにおいて、昼の体験が神経活動パターンとして再
生され、一様に短期記憶と
して整理される。 →再生の過程で、ノンレムの夢が生成される。リップル波により圧縮された「短い夢」である。
レムにおいては、新奇な体験に関連しない興奮性ニューロンはP波により抑制され、除外される。
除外された新奇な体験でない短期記憶は、
興奮性が低下し
次のノンレムにおいて、シナプス結合を解かれたままになり、短期記憶は消去される。
G脳のメンテナンス
※脳の毛細血管が「脳内の循環物質」を調整しており、脳内環境のメンテナンスを行っている。
※脳脊髄液が脳内を圧力をともなって流れており、不要な老廃物を除去している。
4〜5回の睡眠サイクルで、記憶は消去、整理され、脳はリフレッシュする。
|
|
記憶の再構成の詳細メカニズムは次のページ
|