パフィオペデイルム(Paphiopedilum)

   属名の由来は、ギリシャ語のPaphos(ビーナスの異名)+pedilon(サンダル)から。英名ではLady's slippersと呼ばれています。

   東南アジアを中心にインドから中国南部、フィリピンからニューギニア、ブーゲンビル島まで分布している地生蘭。品種によっては樹木に着生するものもあります。茎はきわめて短く、葉は摺合して左右に展開し、長楕円形〜長舌形で肉厚、緑または緑と緑白、あるいは紫色の斑点が入ります。

   花は、葉の摺合点から花茎を出し、1〜多花を着けます。背萼片は発達して大きく、一方2個ある側萼片は合着して背萼片と対抗して下方につきます。花弁は広卵形、匙形、細長くたれてねじれるなど変化に富んでいます。唇弁は袋を形成し、巾着形、ヘルメット形など多彩です。花色は白、黄、緑を基調に褐色や紅紫のものや斑入りのものなど多彩です。花の寿命は長く通常1ヶ月以上は開花しています。

1.ローレンセナム(Paph.lawrenceanum)

   ボルネオ原産。葉4〜6枚、長楕円形、長さ20-25cm濃緑色に黄緑色の鮮明な斑模様が入る。

   花茎は長さ25-40cm,直立して1花を付けます。花の基部から7cm前後のところに托用が付きます。背萼片は広卵形、先端は尖る。白色で、基部は緑色、中央に桃紫のぼかし、赤褐色の縦筋が多数入ります。花弁は広線形、基部緑、先端に向かって濃桃紫となり、脈は濃緑色、上縁に黒紫色の疣があり、疣からは毛が生えています。唇弁は開口部が大きく、耳も大きい。桃紫、パイプ形、基部に黒紫色の疣が多数付きます。花径10-12cm。開花期不定。成長は旺盛。

   (花の部分の拡大)             (全体像)

2.インシグネ・サンデナック(Paph. insigne Sandenac) x ムジカ(Paph. Musica)

   交配親はパフィオペデイラム亜続に属し、タイから中国・雲南、ヒマラヤにかけての大陸部に分布。

   写真の品種は、サカタから苗を取り寄せ、育成したもので、花は全体に薄黄色、弁先端が白。背萼片は褐色の斑がかすかに入ります。唇弁は黄色が照り輝きます。冬に葉の摺合部から花茎を出し、その先端に1花を付けます。

   生育は旺盛で、1年で株分け可能なほど育ちます。ただ欠点として、葉が垂れ下がり、乱れることで、この点が改良されれば鑑賞価値の高い品種となるでしょう。

 

3.プリムリヌム(Paph.primurinum=liemianum var.primurinum)

   スマトラ北部の標高500-1,500mの地に自生。形態はリーミアヌムに似て、紫色を含まない。染色体数2n=32。リーミアヌムより葉幅がやや狭く、花茎がやや長い(12-13cm)。葉の基部か花茎を出し、その先に2-3cmの小花柄を出して第1花を咲かし、後順次枝茎を出しながら花を咲かせます。花はやや小振りで黄色、長期間咲き続けます。開花期は不定。背萼片は広卵形、黄色地に薄緑の線が入る。花弁は広線形、やや下向きに張り、捻れ、縁は白色の毛が生え、波打つ。中央部に白線が入る。黄色。唇弁の袋は下部が膨れ、背面は白色。両耳が立ちます。

 

4.リュウコキルム交配種(Paph.leucochilum x leucochilum)

   NS: 7.0cm。 背萼片:3.5 x 2.0cm、ベージュ色地に褐色の筋が入る。花弁は4.0 x 3.2cm、花弁長:8.5cm、ベージュ色地に褐色の斑入り。唇弁は2.2 x1.5 x 1.5cm、ベージュ色、下部がやや褐色になる。花茎長は8.5cm、濃緑色地に褐色の斑が入り、細かい毛が密生。包葉は1.5 x 0.8cm、薄緑地に褐色の細かい斑点。子房は3.0 x 0.7cm、薄緑地に褐色の細かい斑点。葉の展開長は30cm、濃緑地に薄緑の斑が入る。

花期は、11−12月。

 

5.ワイ・エスービー(Paph.Greenspot x Via Exacto'YS-B')

   NS:9.0cm。背萼片6.0 x 5.0cm、黄緑色地に薄緑の筋が目立つ、弁縁は白色で縁取られる。花弁は6.0 x 2.6cm、展開長:9.5cm、黄緑色で、薄緑の筋が入る。唇弁は3.0 x 3.5 x 2.3cm。雄髄の先は濃黄色。包葉は4.0 x 1.5cm、薄緑色。子房は包葉に包まれて見えない。花茎7.0cm、緑、下部にいくにつれ褐色がかる、細かいけが密生。葉の展開は33-35cm、緑色。

花期は11〜12月。

6.デレナテイイ(Paph. delenatii Guillaum)

      石灰石の岩生もしくは地生蘭。種名は、サン・ジェルマン・ライエ(Saint-Germain-en-Laye)植物園長Mr. Delenatに由来。

    近縁種として、アルメニアカム(Paph. armeniacum)、ミクランサム(Paph.micransum)、ヴエトナメンス(Paph. vietnamense)があります。

    葉は、5,7枚つけます。長円で先が尖らない。大きさは11-12cm x 3-4cm、基部に繊毛があります。薄緑地に暗緑の斑が一面に入ります。裏面は黒紫色。

    花は通常1輪、まれに3輪つけるものもあるという。花茎は長さ18-22cm、緑色地に紫色の斑点、白毛が目立ちます。托葉は長円、卵形、1.2-1.3 x 0.7-1.0cm、緑色地に濃紫色の斑点、短毛があります。花の大きさは、径7.5-8cm。背萼片は卵形、鈍形、2.5 x 3.5cm、薄ピンク。両側の萼片も同様で、2 x 3cm。花弁は楕円もしくは半円形、薄ピンクで3.5 x 4.0cm、縁に白毛があります。唇片は2.5 x 2.5cm、紫ピンク、縁は内に曲がり、微細な毛があります。雄蕊は凸型、鋭角、1.5 x 1.3cm、中心部黄色で、両側は紫赤、内外に毛があります。小花柄及び子房は5-6cm x 0.7-0.8cm、緑地に濃紫色の斑点があり、短毛があります。

    南部ベトナムに自生していたものを、1922年フランスの探検家ポアラーヌ(Poilane)が発見、それを輸入したものが普及しています。(当初は、フランスの陸軍士官が北部ベトナムで発見し、1913年から1914年にかけて輸入されたのですが、その株は花が咲かず、枯れてしまったと文献に出ています。)

    育て方としては、急激な温度の低下を嫌うので50%の遮光の下で育てるのがよいようです。冬は20-25℃を保つのが最適です。用土は軽いものがよく、2/3樹皮、1/3泥岩塊で水はけよく育てます。2年毎に植え替えるとよい。水やりは、夏は毎日、冬は控えめで50%程度の湿度を保つのがよい。

 

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