-HiroさんのサイトのBiographyに、人生を決定したと書かれているウェスモンゴメリーとの出会いについて、もう少しお聞かせ願えませんか

人生を決定したというのは大げさかもしれませんが、所謂ジャズ・ギターの良さを体感できたのはやはりウエスを聞いたときが最初ですね。 アルバムは「ボス・ギター」でした。滑らかに繰り出される太いギターサウンド から、それまで聞いていたロックやクロスオーバーとは全く違う何かを感じ取っ たのかもしれません。それまでもケニー・バレルやジム・ホール等を聴き始めて いたんですが、ただ「ふ〜ん、これがジャズ・ギターかあ。」といった程度の印 象でした。しかし「ボス・ギター」を聴いたときはもっと広い意味での「ジャズ ・ミュージック」が聴こえてきた感じでした。初めて聞いたレコードなのに、懐 かしさや安心感といった感じの印象を持ったことを今でも思い出すことが出来ま す。その時に「こういう音楽ができたらいいなあ」と思ったわけです。 しかしどういうわけかウエスの演奏をコピーしたり、そのように弾きたいと思っ たことはあまりありませんでした。むしろウエスを聴いたときに感じる「何か」 を自分の音楽で再現できたらと、きっと無意識ですが既に考えていたのかもしれ ません。

-僕はクルセイダーズとの出会いを、最近、運命的な「縁」と考えるようになったのですが 、Hiroさんは、ウェスモンゴメリーとの出会いを人生の必然(縁)だと思われますか ?

ジャズ・ギターを学ぼうという人は好き嫌いにかかわらずウエスは必ず聞くと思い ます。ですからその意味では必然であったといえるでしょう。 しかし先程お話ししましたように僕は特に熱狂的なウエスのフォローワーという わけではありませんでしたし、今でもそうではありません。 高校卒業後、上京した時に宮之上貴昭氏に師事することになるわけですが、宮之 上さんは強くウエスの影響を受けたギタリストのお一人です。そうしたギタリス トに出会うことが出来、今でも親交を持つことができているということは、ウエ スに深く関連した「縁」といえるかもしれません。 蛇足ですが、LAに住んでいたときにはウエスの実弟であるバディ・モンゴメリー 氏とも親交をもつことが出来ました。

Boss Guitar
Personnel: Wes Montgomery (guitar); Mel Rhyne (organ); Jimmy Cobb (drums)
Recorded at Plaza Studios, New York, April 22, 1963



-日本をひとり旅立つHiroさんを駆り立てたもの、背中を押してくれた「力」とは、何だったのでしょう?

確かにだれでも母国を飛び出し外国に新天地を求めるときには、なんらか強い動 機や力が働くものでしょう。 で、僕の場合は・・・・一言では上手くいえませんが、振り返ってみて思えるこ とは、「期待・希望・挑戦」といった積極的な思いと同時に「幻滅・諦め・自失」 といった消極的な思いも同時に混在していた複雑な状態に置かれていた中で迷っ た結果「夢」をとったということかもしれません。 「夢」を追うということは大きな力になります。しかしこのときに持っていた 「夢」は何かをしたいというものではなく、前に向かうための衝動と同義といえ るとても抽象的なものです。

-当時、Hiroさんのハートを奮い立たせるような言葉がありましたか、もしあったら教 えて下さい

そのような劇的なものは特になかったと思います。 あえて言うならばやはり「夢」ですね。それだけが自分を奮い立たせたといえる でしょう。数年後には、今とは違う環境で、今とは違う自分が、今とは違う何か しているだろう・・・・それは何だろうか・・・・という楽しみを含んだ夢です。

-現在、座右の銘とされている言葉があったら教えて下さい

だれでも「座右の銘」って持っているものなのでしょうか・・・。残念ながら僕 は特に持っていません。 僕は元来弱い人間ですし、今もそのままです。だからこそ将来に期待したいとい う思いは強く持っています。こうした思いが言わば「座右の銘」に取って代わっ ているのかもしれません。

-海外でハートを揺さぶられるような感動的な出来事が何かありましたか?

節目となる大きな出来事はいくつかありますが、このCDを作ったことは勿論最大の出来事のひとつですね。 何よりも一番好きなギタリストであるラリー・カールトンを見い出した人でもあ るWayne Hendersonに認めてもらいプロデュースしてもらえたというのは嬉しい ことです。 Wayneと会う前にマーカス・ミラーとも会ってるんですが、マーカスの自宅で彼 のベースとお互い生音でセッション出来たときも凄く感動しましたよ。その時僕 が弾いたストラトがエリック・クラプトンのストラトだと聞いたたときも、さら に驚かされましたね。