-「My Dear Kobe」は大好きな曲で、聴いていて、居ても立ってもいられないほど旅立ちの衝動に駆られてしまいますが、Hiroさんの神戸への想い、この曲に込められた思いをお聞かせ願えませんか

小学校入学前から卒業までの6年間強を過ごした神戸は日本で一番思い入れの強 い街です。少し歩けば山で、少し歩けば海といった立地や環境も好きな理由です。 遊びまわっていた記憶しかありませんが・・・・。 震災で被害を受けましたが力強く復興した街でもあります。そうした力強さがこ の曲にも表現できているのではないかと思っています。

-これも大好きな曲「Bring It On Home」に、Wilton Felderの「way Back Home」や 「Going Home」のような色合いを感じるのですが、Hiroさんのコメントいただけませんか

仰ることはよく分かります。 実は「Bring It On Home」の原曲、すなわち僕が作ったデモはかなり違うものだっ たんです。それがウェインの指示の下、スタジオで演奏し始めるとあのように変 貌していったんです。そしてウィルトンが素晴らしいソロを吹いてくれました。 あのような曲想はウェイン&ウィルトンの街、ヒューストン、テキサスに古くか ら流れている「伝統」のひとつなのかもしれません。そういえばあの曲をミック ス・ダウンしているときにスタジオで「黒人の歴史」「クレオールとは?」といっ た南部故の話題の話になったのですが、やはりあの曲想はそうした黒人の血ゆえ のものだと思います。 レコーディング時には「ゴスペル・ミュージック」の話題になり、オーバーダブ をしながらもうそこは黒人の空気で満たされていたようなものです。 これも蛇足ですが、レコーディングとミックスを通して、僕自身とエンジニア以 外はすべて黒人でした。そうした環境かつ和気あいあいとした雰囲気の中で出来 上がったのが「Bring It On Home」です。

-Wayne Hendersonプロデュースでアルバムを製作する過程で、Hiroさんが当初抱いて おられたイメージと、何か変わったところがありますか

音楽そのもののイメージということであれば、やはりウェインのプロデュース力 ですね。あれはもうマジックといってもいいかもしれません。そのマジックによっ て、 デモ・サウンドが別次元のものへと変貌を遂げたわけです。そしてアルバ ムタイトルになっている「Pieces of Image」というコンセプトはデモの段階か ら僕の中では決まっていたんですが、これは一 曲一曲から違う風景が見えてく るような・・・・、聴くときによっても違って聞 えるようなカレイド・スコー プのようなアルバムを作りたいという思いを言葉にイメージしていたわけです。 結果としては、そのようなアルバムがしっかりと出来たように思えます。

-Wayne Hendersonと今も変わらず親交を暖めていらっしゃるそうですが、Wayne Henderson についての印象をお聞かせください

Wayneというとクルセイダーズのスポークスマンといった感もありますが、早く からプロデューサーとしても成功したビジネスマンでもあります。とても懐の深 い人ですね。 初めてレストランで一緒に食事をしながら話し合った時のことですが、「Hiroに とって音楽とは何だ?」「Good Musicとは?」「今の時代にどんな音楽を作るべ きだと思う?」等々、禅問答のような質問をされました。勿論、自分が考えると ころをしっかり伝えました。そして「GO」となったわけです。 こうした「何を考えているのか」といったところを踏まえたうえでの、また共通 の土台を据えた上でのレコーディングであり、プロデュース作業であったという ことです。 ステージでは希有なエンターテイナーでもあるウェインですが、緻密な考え方を される人ですね。