戻る

* * * 読書雑記(2003年) * * *



養老孟司著「脳の冒険」読了です。これが今年の読みじまいかもしれ
ません。物の見方、考え方で教えられる所が多いので養老孟司の本は
どれも楽しみです。                      

日高敏隆著「春の数えかた」、星新一著「気まぐれ指数」、藤沢周平
著「小説の周辺」の3冊を読み終えました。「春の数えかた」は動植
物に関するエッセイを生物学者である著者ならではの視点から描いた
軽い読み物ですがほのぼのとした雰囲気の伝わってくる好著です。 

読み終えた3冊の感想です。高任和夫著「告発倒産」はこの作者の他
の作品同様読み応え十分でした。白洲正子著「木」は木編のいろいろ
な木についての著者ならではの薀蓄に溢れた好著です。中野翠著「あ
やしい本棚」にはざっくばらんな語り口と著者の偏った好みがよく現
れていて確かにタイトル通りの本であることに納得しました。紹介さ
れていた本の内の何冊かを見てみたい誘惑にかられました。マニアッ
クな本が多いので内容をよく見てから買いたいと思います。    

アーサー・ヘイリー著「殺人課刑事(上下巻)」を読み終えました。これまでの
著作と同様にスケールの大きな構想のもとに事件をうまく配していま
す。読み応え十分の最新作です。                

向井敏「司馬遼太郎の歳月」は司馬遼太郎全集の第三期の解説として
書かれたものを一冊にまとめたものです。書評については定評のある
著者ならではの広い見識と深い洞察に基づいた評論となっています。

谷沢永一/渡部昇一共著「広辞苑の嘘」は名著「広辞苑」の脇に是非
とも置いておきたい一冊です。広辞苑の足らざる所やいらざる所を余
すところなく網羅して小冊子ながら中身の濃厚な一冊です。    

宮部みゆき著「ブレイブ・ストーリー」は本の帯に「愛と勇気の冒険ファンタジー」
とあるように「ドリームバスター」と同様なファンタジー物です。個人的には時
代物や社会性のある題材を扱ったものの方が好きですが、これはこれ
でなかなか良く出来ています。物語後半に入ってからの展開が眼目で
す。幻界は現世(うつしよ)を映す鏡だというモチーフを中心にさま
ざまな物語が進展していき思わず引き込まれて行くこと請け合いです。

「形を読む」養老孟司著にはすでにして「バカの壁」の用語が出て来
ます。「バカの壁」の方が素人向けに出来ていますが俗耳に入りやす
いのはこちらの本の内容のような気がします。教えられることの多い
本です。                           

「妖女のねむり」泡坂妻夫、「ユーモア革命」阿刀田高の2冊を読み終え
ました。どちらも期待を裏切らない出来栄えの本です。「ユーモア革命」
の参考書で気に入った本があったのでオンラインで早速注文しようと
しましたが紹介されていた本自体は品切れだったのでかわりに「福田
繁雄のトリックア−ト・トリップ」という本を注文しました。   

「論語の新研究」宮崎市定著をやっと読み終えました。前評判どおり
の読み応えのある本です。今では文庫本が出ているので読みたい人は
その第二巻目がお勧めです。                  

小松重男著「川柳侍」はなかなか面白い本です。川柳が題材に盛り込
まれている本は少ないような気がします。時代推理小説といった所で
すが有名な川柳が随所に解説付きで紹介されていてかなり楽しめます。

「シンデレラがいじめられるほんとうの理由」は訳者が竹内久美子である
ことからもわかるように童話に秘められた真実を進化論の立場から解
き明かそうとしたもので、進化論の現在の成果を紹介するシリーズ物
の一冊です。                         

川端康成氏がノーベル文学賞を受賞した時の記念講演の原稿である「
美しい日本の私」講談社現代新書を読んでみました。今では「あいま
いな日本の私」岩波新書の方が有名かもしれません。日本の良き時代
の心の書といった趣が感じられます。文学も変わっていきます。  

養老孟司「手入れ文化と日本」、星新一「おせっかいな神々」、泡坂
妻夫「比翼」、板倉聖宣「白菜のなぞ」の4冊を読み終えて今年累計
100冊読破達成です。しかし、やはり今年も購入した本の数の方が
読み終えた本の数より多くて在庫が増えています。今月は既に2万円
以上購入してしまいました。                  

筑摩書房「羞恥の歴史」をやっと読み終えました。400ページを越
す大著なのでなかなか大変です。出来栄えは労作といっていいと思い
ます。その名の通り「羞恥」というものについての歴史的考察ですの
で口絵につられて助兵衛根性でみるとつまらないかも知れませんが、
さまざまな文献を元にした考察が行き届いていて、学術書としは一級
品だと思います。                       

乙川優三郎「霧の橋」は評判通り一気に読ませる迫力と読後の爽快感
があります。文庫になっている残り2冊も早く読みたいと思います。

養老孟司「ガクモンの壁」、三谷幸喜「気まずい二人」、矢口高雄「
釣れづれの四季」の3冊を読み終えました。それぞれに読了感は爽や
かです。私の一番のお薦めは「釣れづれの四季」です。子どもの頃の
思い出を呼び覚ましてくれるとともにちょっと疲れ気味の心をきっと
癒してくれます。                       

山根爽一「アシナガバチ一億年のドラマ」我々素人向けのアシナガバチの学
術書です。これを読むといろいろなアシナガバチの生活様式、進化の
手がかりなどを知ることができます。主に巣の形態や女王蜂の世代交
代の様子から核心に迫って行きます。              

高任和夫の「粉飾決算」を読み終えました。寡作なので本屋の棚には
数えるほどの本しか並んでいませんが、どの本も良い出来です。  

 向田邦子「思い出トランプ」「男どき女どき」続けて読みました。
特にこれはと思うような文章には感じられませんが、なにげなさそう
に生活のちょっとした場面を切り取って一篇の物語りに仕立てる技は
やはり名人の作なのかと思われたりします。           

唐津一著「『ものづくり』は国家なり」は日本の底力を支える技術を
具体的に示して間然するところがありません。NHKのプロジェクト
Xと同様、元気の無くなって来た日本に元気を与えてくれる貴重な書
です。                            

小笠原京の旗本絵師書留め帳のシリーズが5巻まで出ました。この作
者の作品は大きな本屋の片隅でやっと見つける程度しか売れていない
ようですが、もったいないことです。捕物帖の王道を踏襲している上
に、ストーリーの中に出て来る着物の柄や当時の食べ物などに他の作
者には見られない学者としての作者の本領が発揮されていて読後感は
爽やかな上、新知識も得られ大層得した気分です。第四巻「落梧の非
情」、第五巻「修羅坂の雪」一度手に取ってみてみて下さい。   

「ドラゴン・フライ(上・下)」読了しました。「人類、月に立つ(上・下)」
では世界中が注目する中で人類が始めて月に立つという栄光ある華や
かな世界を心躍る筆致で描き出していたのと比べ、この本ではドラゴン・
フライと呼ばれるミール宇宙ステーションをめぐる米ソの苦悩と搭乗者の
挫折を多くの関係者からの証言と資料を基にして描いているところに
特色があります。日本では先日、小惑星のかけらを採取するためにロ
ケットを飛ばし成功しましたが、「ドラゴン・フライ(上・下)」を読んで
いると宇宙進出については今の日本のように発展期だけが瞬間的に輝
いていてそれ以降は意気込みも組織も資金も先細りしていく運命にあ
るのかなという少し悲しい感慨にとらわれてしまいました。    

シェルビー・ヤストロウ著「高額慰謝料」なかなか楽しく読むことが出来ました。
ダウン症を軸とした医療過誤をめぐって陪審員制度と弁護士、保険会
社の駆け引きが見事に描かれています。最後の詰めが幾分都合よく筋
が運びすぎるきらいはまぬかれないと思いますが全体的には合格ライ
ンですね。                          

「ドリームバスター2」宮部みゆき著は前作よりは良い出来のような気がしま
す。一気に読み終えてしまったのは宮部作品ではお約束通りです。 

「歯と爪」ビル・S・バリンジャー著は古典名作ですがいまでもぜんぜん色褪
せていません。名作たるゆえんですね。ミステリーなので詳しく紹介
出来ないのが残念です。結末部分は袋とじになっていてここを開封し
なければ返金してくれるという興をそそる作りとなっています。私は
もちろん開封してしまいました。                

竹内久美子著「小顔・小アゴ・プルプル唇」読了しました。この著者の本に
は外れがないので興味を持って楽しんで読めます。見所はいつもの事
ながら著者の生物学的なもっともらしい新見解です。信じる信じない
は読者に任されているので生物の行動についての新しい見方を知らず
知らずの内に養うことが出来ます。               

「石の来歴」奥泉光著は、石という今までに類を見ない題材を扱って
見事に成功した稀有な例として記念すべき作品です。戦中体験の記憶
とその後の人生が石を通して見事に交差し夢うつつの間をさまよう様
を見事に描ききっていて絶品です。               

巷では養老孟司「バカの壁」が話題になっていますが、養老ファンか
らすれば今まで言っていることと違うところは少しも無いですね。た
だ一つうまくできているのは俗受けしやすい本の名前だけです。  

結城昌治著「泥棒たちの昼休み」は当然泥棒たちが主役ですが、その
生きざまや失敗談には共感できる部分が多く含まれていて読む価値は
高いと思えます。上質な掌編の集まりです。           

「死者の輪舞」泡坂妻夫はいつもながらの謎解きがうまく仕組まれて
いて上等なエンターテイメントになっています。泡坂ミステリー作品
には外れがありません。                    

「昆虫食はいかが?」こんな本はめったな人は読まないでしょうね。
巻末にある昆虫食に関する書籍の一覧、解説は古今東西よくまとまっ
ていて貴重です。                       

数研出版「ミーム力とは?」は新しい物の見方のヒントを与えてくれる読
みものです。いろんなところに応用ができそうです。       

ジョン・グリシャム著「路上の弁護士(上)(下)」一気に読了して
しまいました。ホームレスの弁護士という設定での社会への問題提起
を含んでいてなかなか興味ひかれるストーリーとなっています。  

エド・マクベイン87分署シリーズ新刊「稲妻」読了しました。かなり衝撃
的な内容に反して分署での署員の話し合いにまじるユーモアには傾聴
する価値があります。なかなか和物では味わえない味わいです。読み
始めると一気に読み進んでしまいますがこの手の本はみな分厚で冊数
が膨大なのではまり込んでしまうと大変です。          

白水社刊「マネの肖像」なかなか興味深く読むことが出来ました。マネ
の美術論ですが我々素人にも判りやすい観点で描かれていてたまには
美術館にも足を運びたいという気にさせてくれました。光り輝く白と
黒の対比、ワンポイントとして置かれた小物の印象が記憶に残ります。
      
司馬遼太郎「菜の花の沖@A」読了しました。いろいろな見方がある
と思いますが、元気を出すのに一役買ってくれそうな本です。3巻以
降が楽しみです。                       

中公文庫「フランス革命下の一市民の日記」はその名の通りフランス革命
当時に一市民が6年間にわたって綴った日記です。文庫で800頁は
随分厚いですが、かのマリー・アントワネットの処刑当日の模様や、
日々の近所付き合いの模様や物価高騰の様子、政治状況などが一市民
の眼で見た通りに書かれていて興味は尽きません。連日にわたるギロ
チンの犠牲者の中には化学者のラボアジエなども含まれています。 

ここのところインターネットの古本サイトでずっと探していた本2冊
を入手しました。一冊は谷沢永一著「近代小説の構成」、もう一冊は
漫画家である秋竜山の「おとぼけ読書絵日記」です。古本サイトも増
えて絶版で見つからなかった本も探しやすくなって来ました。有難い
ことです。                          

谷沢永一の「司馬遼太郎」は本人の思い入れが深い分だけ実に力強く
描かれています。つい司馬遼太郎本人の著作を読みたくなってしまう
迫力を秘めています。じつはもうかなり昔に「菜の花の沖」全6巻を
購入していますがそのまま積んでありました。今回この機会にやっと
読み始めることにしました。                  

山口椿著「雨月物語」読了しました。古典に材をとった独特の世界を
築いています。今回の著作は著者渾身の一冊です。        

M・リオーダン著「宇宙創造とダークマター」は宇宙創生の物語を最新の観測成果
を元に可能な限り判りやすく解き明かそうとする好著です。もちろん
難しくて理解が出来ない所も多少ありますが宇宙の解明はここまで進
んでいるということが素人にも手に取るように理解出来ます。この本
がちょっと難しそうだという人はPHP文庫「最新宇宙論と天文学を楽し
む本」を、また物足りなかったという人は丸善から出ている「教養の
ための天文学講義」がお勧めです。               

寒川猫持著「走馬灯の夜」には昭和30年代の懐かしいものが沢山出て
来ます。人は子ども時代を振り返ると常に一番良い思い出を連れ帰る
もののようです。                       

養老孟司著の「『都市主義』の限界」を読了しました。山本夏彦とは
また違った切口で世相を斬る手腕が良く発揮された好著です。両者に
共通しているのは世俗に視点を置いていない、故に見方が公平である
ことかと思われますが、その為に中途半端な平和主義者や自然保護愛
好家、正義溢れる人の中には本の内容が理解出来ない、あるいは本音
のところでは同調したくないという人もいそうですが、山本夏彦亡き
あと、このような視点で物事を論じられる稀有な存在だと思います。

2002年に購入した小説類などの合計金額は約17万円、辞書など
で3万余の合計20万円くらいです(コンピュータ関連などの専門書
は除く)。良く考えたら金券ショップで図書券を3%引きで買ってお
くだけで6000円も安く済んだということに気が付きました。少し
損した気分です。

「しあわせの書」泡坂妻夫著は力作です。こんな仕掛けを考え付いて
も本にするようなマニアは泡坂氏以外にはまずいそうにもありません。
奇術師の面目躍如といったところですね。気になる方はご一読あれ。

スティーヴン・ヤング著「本の虫」こんな題を付けられたら私としては絶対買
っちゃいますね。でも期待したほどには面白くありませんでした。 

読んでいない本が410冊以上あります。何も本を買わなくてもあと
3年は読んで暮らせます。今年も昨年同様に順調なペースで読み進ん
でいますが最近はだいぶ作者が固定化されてきている感があるので、
ちょっと目先を変えて新しい著者、新しい分野の本も読んでみたいと
思っています。                        

気に入った本があったら読んでみて下さい。

戻る