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* * * 読書雑記(2004年) * * *



現在読んでいる「脳のなかの幽霊」V.S.ラマチャンドラン著を題材にし
たTV番組を12/12(日)にテレビ朝日でやっていました。「大発見!
だまされる脳」といいタイトルで、本でも解説を担当している養老孟司が番
組でも内容の紹介をしていました。TVでは良いとこ取りで番組の時間の制
約もあるので主旨だけは判りますが、やはり詳しい内容は実物の本がお勧め
です。幻肢という症例に真面目に取り組んだ結果生まれた治療法や脳解明の
重要な鍵となるかもしれない貴重な所見に満ち満ちています。脳に関する最
先端の知見ですが素人の我々でも十分に理解できる内容です。お勧めです。
オリバー・サックス「妻を帽子とまちがえた男」も併せて読むと一層それら
の内容が興味深く感得できると思います。               

解剖学者の養老孟司と数学者森毅の対談集「寄り道して考える」を読了しま
した。寄って立つ基盤が違う大家同士の会話が弾むのは勿論ですが性格の違
いもかなりあるようで、ものの捉え方が違って面白みを増しています。  

ジャーナリスト出身の作家、梶山李之の手になる「せどり男爵数奇譚」面白
く読むことが出来ました。せどりと呼ばれる古本業界の商売を題材に6編の
連作小話をたくみに仕上げています。古本マニア必見の一冊です。    

杉浦日向子著「ごくらくちんみ」にはくさや、とうふよう、またたび、ふき
みそ、うばい、からすみ、かぶらずし、きんちゃくなす、あんきも、にがう
るか、うみたけ、ばくらい、うずらのぴーたん、ゆべし、きんつば、みんで
んなす、にこごり、はたはたずし、ひずなます、はまなっとうなどなど珍味
や佳味がたくさん登場して机上で美味しい食卓を展開してくれます。これら
の料理法も流石に手だれた著者だけあって食材のうまみを十二分に引き出し
てくれています。巻末に実物のお取り寄せサイトの紹介まで載っている所は
サービス満点です。                         

藤沢周平著「義民が駆ける」読み終えました。史実と創作部分が無理なく融
合して庄内藩の国替え騒ぎでの義民の動きがいきいきと描き出され、読み応
えのある歴史小説を堪能させてくれています。             

星新一のショート・ショート「悪魔のいる天国」読了です。まだ星新一の本
はたくさん読み残しているのでまだまだ当分先まで楽しみがあります。  

ビートたけし童話集「路に落ちてた月」1日で読み終えてしまいました。面
白い発想満載です。よそで見たことのあるギャグもいくつかありましたが、
良しとしましょう。                         

武術の達人である甲野善紀と、解剖学者である養老孟司の身体論についての
対談集「古武術の発見」は互いのよって立つ基盤の違いが対談に奥行きを持
たせて読み応えのある一冊に仕上げています。惜しむらくは、武術の実物を
我々読者がじかに見ることが出来ないことで、これがために所々隔靴掻痒の
感を免れないのは宿命というものでしょうか。一度だけちらっと甲野善紀が
テレビで実演しているシーンを見ましたが今思えばもっとじっくり見ておけ
ばこの本をもっと実感出来たのではないかと悔やまれます。       

コリン・タッジ著/竹内久美子訳「農業は人類の原罪である」は進化論の現
在シリーズの一冊です。農業の始まりと進化論がどう結びつくのか興味のあ
る方は一読下さい。大きな字で100ページ足らずの薄い冊子なのですぐに
読めてしまします。但し、このシリーズの中では私はこの本が一番判りにく
いように思えました。多分、その理由は議論の根拠に推論が多いことではな
いかと思いますが立証する手立ても現状なさそうなので、とりあえずこのよ
うな見方もあるというように捉えておくのがよいかと思います。     

花咲一男が江戸時代の古典から釣りに関する俳句と風物を取り出して纏め上
げた「江戸魚釣り百姿」は当時の風物が良くわかってなかなか楽しめます。
昔も今も釣りキチの生態が変わらないことを俳句を通して実感できます。 

池田清彦著「新しい生物学の教科書」は著者の思惑とは異なって相当な生物
学の知識が無いととても読みこなしきれません。著者が頭が良くて文部省の
認定教科書が著者から見て間違いだらけでバカらしく見えるのは非常に良く
理解できましたが、一般人の理解の程度を考えられない所にこの著者の限界
があるように思えます。最新の生物学の情報や著者の主張する構造主義生物
学の内容も盛り込まれた良い著作だと思いますが私などには、それがどうし
たのみたいな細かい記述も散見されます。               

養老孟司/島田雅彦著「ネコのヒゲは脳である」は20年前の旧版を改題し
て出版されたものですが古さは感じられません。この解剖学講義(対談)の
良さは両者の歯車が今ひとつかみあっていないように見える微妙なトークで
す。                                

落合恵子「人生案内」読み終えました。新聞の人生案内の質問と回答をまと
めた本です。適切な回答と思えるものが多いですが、やはり女性寄りの回答
も多く見られます。古今東西人の悩みは繰り返されているようです。   

「広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由」というちょっと見には怪
しげなタイトルの本を読んでいますが、どちらかと言えば学術書に近い本で
す。地球人がこれまでの歴史の中で宇宙人と遭遇していない理由について、
50の観点からまじめに論じた本です。フェルミ・パラドックスと呼ばれる
この謎についての考察を素人にも判り易く記述しています。宇宙に関する知
識は当然ながらそれ以外の種々雑多な話題についても触れていくことが出来
ます。ドレイクの公式、ラグランジュ点、オッカムの剃刀、浸透クラスター、
ニュートリノ、SETI計画、宇宙背景放射、デルタt論法、マイア説、球粒
隕石、カークウッドの間隙、ガンマ線バースター、雪球地球、プレートテク
トニクス、古細菌、RNAヌクレオチド塩基、アイレス遺伝子、エラトステ
ネスのふるい、ゼノンのパラドックス、銀河居住可能領域などパラドックス
に迫るための英知がちりばめられています。夜空を見上げて、広い宇宙には
きっと知性を持った生物がいるに違いないと思ったことのある人にはお勧め
の一冊です。                            

三島由紀夫がドナルド・キーン氏に宛てた97通の書簡をまとめた「三島由
紀夫未発表書簡」は昭和45年11月までの2人の間の親交を私事、演劇論
文学論などにわたって三島由紀夫が書き記したものです。伝説の三島由紀夫
の素顔を垣間見ることの出来る一級品の資料です。           

『養老孟司の<逆さメガネ>』は養老孟司が教育の試論と銘打って独自の物
の見方をいろいろな観点から述べた本です。現実とは何かという節では百円
玉とヒゲボソゾウムシはあなたにとってどちらが現実か?と投げかけていま
す。思わず笑ってしまいますが、確かに冷静に考えれば現実は個人毎に違い
ますね。                              

長塚節についてのおそらく初めての小説であるという「白き瓶 小説長塚節」
は藤沢周平としては珍しく時代物では無い小説です。63部にも及ぶ参考資
料を元にして書かれただけあって節の足跡を丹念に追いかけてひととなりを
丁寧に浮かび上がらせています。また藤沢周平にとって本来、門外漢である
はずの短歌についても並々ならぬ鑑賞眼をみせて我々に提示してくれていま
す。エンターテイメント性は薄いですがじっくりと読むには良い本です。 

「イーハトーブ釣り倶楽部」の著者である村田久の「底なし淵」を読み終え
ました。なにげないような文章ですが心にしみいるような余韻の残る描写の
うまさが目立ちます。渓流釣りの好きな方には必見の一冊です。     

今年のベスト10について見直しをして一部ランキングを変更しました。 

阿刀田高「おどろき箱1」、「おどろき箱2」全15話を読み終えました。
ちょっとしたアイデアがこの本にも詰まっています。使えそうなノウハウや
使えないけど面白い見方などがうまくストーリーに生かされています。  

キングズレー・ブラウン著、竹内久美子訳「女より男の給料が高いわけ」は
ダーウィンプログラムの成果から生まれた進化論の最先端の概念を紹介した
シリーズ第二弾です。人類学の博士課程終了後、法学博士となった著者なら
ではの深い洞察により労働市場や結婚生活の場での男女の行動の差、ひいて
は地位や給与の差についてももともとは生物学的な性差の違いから引き起こ
されているのではないかという議論を展開していきます。進化論の今を知る
のには格好の読み物です。と同時にフェミニストを自称する方にも是非とも
冷静な眼をもって読んで欲しい一冊です。               

2004年10末時点でお気に入りの著者の作品をどのくらい読んでいるか
を3年振りにランキングにしてみました。藤沢周平、養老孟司、泡坂妻夫が
大躍進です。



藤沢周平著「風の果て(上・下)」は10日足らずで読み終えてしま
いました。幼馴染の生涯とそれぞれの係わり合いを背景に主人公の立
身出世を織り込んだ長編時代物です。各人の性格が良く描き分けられ
ており、それぞれの性格と行動とが無理なく物語りに現れています。

進化学の重鎮であるリチャード・ドーキンスが著したエッセイ集「悪
魔に仕える牧師」はエッセイというと見誤るおそれがあります。科学
的な知識に裏打ちされた常識でもって迷信や伝統、宗教、権威などに
真っ向から対決すべくかかれた渾身の書であり、生物進化学会のもう
一方の雄であるグールドの著作に対する書評も掲載された中身の濃い
啓蒙書です。この本はわれわれ一般人向けに書かれた本ですが、惜し
むらく唯一の欠点は詩からの引用や生物学での常識がベースとなった
発言がままあることで、こちらの貧弱な常識では理解出来ない言い回
しがたまに出てくることです。「薔薇の名前」や「ダンテ・クラブ」
なども古典からの引用や時代背景に基づいた記載などがちりばめられ
難解さがつきまとうようですが、この本にもその片鱗が伺えます。し
かしそのことを差し引いても十二分にお釣りが来る事請け合いです。

村田久著「イーハトーブ釣り倶楽部」は雨の日の釣り師にはもってこ
いの好読み物です。釣りに関する雑記ですが心をほんの少し癒してく
れます。随所に自然を愛する釣師ならではの優しさが溢れています。

土屋賢二著「紅茶を注文する方法」こういう哲学なら毎回楽しんで読
むことが出来ます。文庫版なら必ず買ってしまう著者の作品です。 
この本でちょうど今年も年間読書冊数100冊を達成しました。  

浅川嘉富著「恐竜と共に滅びた文明」読了です。イカの線刻石は何と
も不思議な物体です。本物であれば歴史の常識を覆すのに十分な重み
がありますが本を読み終えても判断のしようがないといった所です。
お茶を野菜だと言い張っていたキャスターがいたように記憶していま
すが、この本のもっともいけない点は論理の展開に飛躍が大きいこと
や針の先ほどの事でも自分に都合の良い点については天下の大事みた
いに言う言い方や例えが特に後半に行くに従って目に余るほどひどく
なっていることです。特に年代測定法についての論理は無茶苦茶です。

白洲正子著「お能・老木の花」なかなか良い本です。判りにくい能が
少しだけ取り付きやすくなった気がします。女性で初めて能の舞台に
立った経験もあり、いろいろと能の事を考えた経歴や文才が一体とな
って独自の視点から能というものを捉えて解説してくれています。 
難点は出版社の講談社学芸文庫が高すぎる事です。文庫で厚くもない
のに千円を越す価格にはどうしても納得出来ません。       

養老孟司「あなたの脳にはクセがある」読了しました。既に読んでい
る「都市主義の限界」という本に一遍を加えて再編したものなので、
当然すでに見慣れたフレーズばかりですが「ものの見方」を教えてく
れる本なので再読に耐える事が出来ます。            

リチャード・ドーキンス「悪魔に仕える牧師」、浅川嘉富「恐竜と共
に滅びた文明」、養老孟司「あなたの脳にはクセがある」の3冊を会
社の休み時間、自宅就寝前、通勤時間中に時分割で読んでいますが、
これらの本には共通のキーワードが出て来ます。立場はそれぞれ違い
ますが、木村資生「分子進化の中立説」と「創造説論者」の2つの用
語です。

呉善花著「韓国人から見た北朝鮮」は日本からみたら不可解な北朝鮮
の考え方や行動を韓半島の同国人であるが親日派の韓国人が書いた珍
しい本です。北朝鮮人に対しても日本人に対しても冷静な視点で眺め
ることが出来る稀有な著者ならではの仕上がりだと思います。日本も
このような視点を真摯に取り入れて国策に反映していくことが肝要な
ような気がします。                      

泡坂妻夫著「鳥居の赤兵衛」は宝引の辰捕物帖シリーズ最新刊です。
この著者の捕物シリーズはトリック物と同様、見逃せない作品ばかり
です。どの著者のものでも一般に捕物シリーズには外れがめったにな
いような気がします。                     

現職のFBI捜査官ポール・リンゼイが書いた話題の書、「目撃」を
読了しました。情報提供者のリスト捜査、FBI上層部や組織内の軋
轢などと並行して誘拐された女性の緊迫した捜索劇がラストに向かっ
て盛り上がって行きます。FBIの行動規範は官僚主義に乗った規則
か、それとも正義か?著者がきびしく問いかけています。     

前回はAmozonで注文して自宅郵送してもらったので良かったですが、
今回は有隣堂のオンライン注文で本屋での受け取りにしてしまったの
で「みこすり半劇場OP」「みこすり半劇場愛蔵版1」を受け取りに
行く時はちょっと困りました。店頭で『注文した「みこすり〜」』を
下さいとはなかなか言い難いものがあります。『注文したマンガ本3
冊を入荷したという連絡を受けたんですが‥‥‥』と言って誤魔化し
ましたがこのような名前の本はやはり自宅郵送が基本ですね。   
「みこすり半劇場」シリーズは思わず大笑いしてしまう四コマの率が
かなり高いので自宅でひっそりと読むのが最適です。       

「ポル・ポト<革命>史」山田寛は書評を読んで購入した本です。まだ
最近の話なので記憶にある方も多いと思いますが、ポル・ポトが死ん
だ時に、あの類を見ない大量虐殺の革命とは一体何だったのか疑問に
思った方も多かったと思います。そのような疑問に真摯に答えてくれ
る一冊です。近隣諸国の思惑もからんで結局、国際裁判もまともに開
かれない内に関係者の高齢化が進み忘れ去られようとしている革命の
歴史が良く判ります。一読をお勧めします。           

「日本一の昆虫屋」は昆虫商一筋で80年以上という志賀夘助の生涯
の記録です。虫屋の智恵が標本道具や昆虫採集機器に反映されていく
軌跡が訥々とした語り口で克明に描き出されています。      

宮部みゆき編「贈る物語Terror」には恐怖小説の古典名作が収録され
ています。何度読んでも怖い「猿の手」は「ペット・セマタリー」を
どうしても想像してしまいます。短編なら前者、長編なら後者です。
「変種第二号」もじわーっと怖さがにじみ出てくる秀作です。   

予想通り「『修身』全資料集成」は今の教育にもっとも必要な人間と
しての基本的な行動規範が満載の必見の書です。「修身」という言葉
を聞いただけでやれ軍国主義だ云々と言いたがる人がいますが、戦後
失ってしまった道徳という人としての常識を取り戻すには、今一度 
基本に帰る必要があると思います。正直は成功の基、倹約、産業を興
せ、孝行、礼儀、良き習慣を作る工夫、規律正しくあれ、公益、忍耐
、博愛、進取の気性、職務に勉励せよ、などなど目録を見ただけでも
いかに当たり前の事を言っているかが判りますがこれらが最近では頓
に失われて来ています。皇室関係や時勢に沿った国運の発展などの話
題を省いていわゆる道徳といわれる人間としての常識をぜひとも纏め
直して教育に盛り込んで欲しいものです。            

養老孟司「かけがえのないもの」は著者のこれまでの言行録をまとめ
たものでお馴染みの独特の視線から見た自然観が余す所無く描き出さ
れていますが、説明が要点のみで話題がころころと変わるので初めて
の人にはちょっとまごつく所もあるかもしれません。       

出久根達郎「おんな飛脚人」には「駒形あたりホトトギス」「鰯の頭
も信心から」「じゃんけん蛇が出る鬼が出る」「夏の薬は水物」など
の地口や洒落、ことわざなどいろいろな言い回しが出てきてそれだけ
でも大層楽しめますが、女飛脚人を中心にした人情味溢れる物語には
つい時のたつのを忘れて読みふけってしまいます。        

藤沢周平「漆の実のみのる国」(上・下)と「藤沢周平の世界」を読
み終えました。藤沢周平の文庫本で読んでいない本がだんだん少なく
なって来ました。それでもまだ15冊くらいありそうです。    

インターネットAmozonで注文した「みこすり半劇場QR」岩谷テンホー
作は大人の読み物ですが、笑えます。4コマ漫画なのですぐに読み終
えてしまうのと古い本が絶版で入手出来ないのがちょっと残念です。

養老孟司「話せばわかる!」をやっと読み終えました。まだ長期の夏
休み中なので読書はあまり進んでいません。この本は養老孟司と16
人の著名人との対談集です。田部井淳子、竹宮惠子、岩城宏之、米原
万理などなどといった各界を代表する人達が対談の相手です。錚々た
るメンバーとの対談だけに薀蓄にあふれた読み物となっています。 

 長期の夏休みに突入してしまったので通勤時間帯や昼休みの読書の
時間が無くてさっぱり読書が進みません。自宅で書棚をつらつら眺め
ていてやはり手塚治虫漫画全集の301巻目以降が無いのがどうにも
気になって、今更ですが手塚治虫漫画全集301巻目〜400巻目を
徐々に揃えていくことにしました。手始めにインターネットで10巻
分を注文しました。Amazon.comなどではまとめ買いをすると手数料、
郵送料無料で自宅まで届けてくれるので便利です。        

放浪の天才画家である山下清の著した「日本ぶらりぶらり」を読み終
えました。山下清のたくさんのペン画も豊富に掲載されています。こ
の本には山下清の数々の何故や感動したことなどが書かれています。

「虚妄の成果主義」は一部ではかなり話題になっている本のようです。
成果主義が本当に良いのか、日本型年功制復活が経済再生の鍵なのか
一読、再読する価値がありそうです。              

宮部みゆき、黒鉄ヒロシ絵の「ぱんぷくりん(鶴・亀)」の2冊はほ
んの10分もあれば読み終えてしまうほどの薄〜い絵本ですがほんの
少し心を癒してくれる効果がありそうです。           

竹内久美子著「遺伝子が解く!男の指のひみつ」は「私が、答えます」
を改題したもので単行本で一度読んでいますが挿絵の妙と云い何度読
んでも感心するところがたくさんあります。性に関するいろんななぜ
に的確に答えてくれる一冊です。                

岡本太郎「今日の芸術」、養老孟司「バカの壁をぶち壊せ!正しい頭
の使い方」、薄田泣菫「完本茶話(下)」3冊を読み終えました。 
中でも岡本太郎の芸術論は素人向けに判り易く書かれた本で相当昔の
著述ですがまったく古びていません。芸術をしてみようという気にさ
せる本です。                         

養老孟司最新刊「真っ赤なウソ」、乙川優三郎平「かずら野」を読み
終えました。ともに安定した著作を出し続けている作者の作品なので
内容も充実しており一気に読み終えてしまいました。「かずら野」は
通常のハッピーエンドでは終わりませんが、随所に人の優しさがあふ
れており、最後にはちゃんと救いがあります。          

徳間書店「どどいつ万葉集」と藤沢周平の「闇の傀儡師(上・下)」
を相次いで読み終えました。どどいつもなかなか面白いです。   

養老孟司著「カミとヒトの解剖学」をやっと読み終えました。宗教体
験と脳、禅の身体論、経典の解剖学、霊魂の根性、浄土の見方などの
テーマで脳について縦横無尽に語っています。内容は一読、再読に値
する価値あるものですが、著者もあとがきで言っているように余裕を
あまり持たせずに書いているということで、その分だけ小難しくなっ
ている箇所があります。寝不足の頭で電車内で読んでいるとつい眠く
なってしまい、読了に時間が掛かってしまいました。唯脳論と併せて
読むと著者の言わんとする核心の概略は理解できそうに思います。 

泉麻人著「東京少年昆虫図鑑」は町の風景の中の昆虫について著者が
思い出の中の忘れられないカットとともに紹介したもので、虫好きな
人にとっては共感できる所が多々あるものと思われます。なにより良
いのは安永一正の手になる挿絵が従来の昆虫図鑑などには見られない
現実感をもって描かれていることです。小林路子のキノコ画と同様、
その絵を見ているだけで子どもの頃の思い出がよみがえって来ます。

開高健の人生相談「風に訊け ザ・ラスト」読了しました。著者らし
い薀蓄が随所に見られます。釣りと酒と旅だけに留まらず人生全般に
わたる著者の見識が読む人に元気を与えてくれます。       

養老孟司の本をこのところたくさん読んでいますが「養老孟司アタマ
とココロの正体」は脳科学の最新分野についてそれぞれの専門の学者
との対談集です。カオス、バーチャルリアリティ、ニューロン発火、
マップ形成、認知科学、多様性、決定論などなど難しい内容が盛りだ
くさんです。脳研究の最先端を覗き見たいという向きには最適な一冊
ですが「バカの壁」のように読み流すのは難しい新知志向の本です。

時事問題と国内外の豊富な話題をネタに一話完結で薄田泣菫が書き綴
った随筆「完本茶話」の上巻をやっと読み終えました。時事ネタとは
言っても大正時代の随筆なのでさすがにほとんどの登場人物には馴染
みがありません。それでもそれぞれの話題の中には人生の哀歓を感じ
させるものやキラリと光る人生の機微やら諧謔やらがちりばめられて
います。谷沢永一推薦の名随筆です。              

桐野夏生著「光源」は説明のしにくいストーリーです。とは言っても
決して読みにくい物語という訳ではなく、逆にそのテンポの良さと次
に来る展開の意外性に思わず引き込まれてページを繰ることになるこ
とは請け合いです。舞台は新人監督の采配する1本の映画製作の現場
をめぐるプロデューサー、俳優、撮影監督、元アイドルといった面々
が織り成す人間模様と映画作りへのそれぞれの思いを軸にした今まで
に無い実験的な構成の大胆なこれまでに読んだことの無い本です。 

本の帯には「O譲の物語」の再来とありますが、確かに「黒衣の下の
欲望」は”禁断”とまでは行かずとも十分に”スキャンダラス”な物
語です。主人公となっている優秀な女性弁護士が匿名の著者自身では
ないかと噂されている点や姿態の描写のリアル感、主人公の心理を描
き出す手法など確かに「O嬢」と相通じるところがあります。そこに
は通常の風俗小説に無いフランス文学の香りが感じられます。   

つり人社刊行の「平成の竹竿職人」は東作の流れを組む江戸和竿師の
作品、工房を豊富な写真により紹介したものです。和竿の伝統作品を
後世に伝えるには格好の一冊です。職人の技や竹の吟味などの技術的
な話を知りたい向きには東作六代目の松本三郎著「竹、節ありて強し」
がお勧めです。                        

「対論 脳と生命」は養老孟司と生命哲学者である森岡正博の間で94
年に行われた対論ですが、10年経っているとは思えないほど内容が
新鮮です。日本人の死生観、医療、宗教、超能力、教育など多岐に亘
る内容盛りだくさんの対論は必見です。養老孟司の著作には対論集が
多いですがその中でも群を抜いて読み応えのある内容となっています。

小室直樹著「三島由紀夫が復活する」は天皇制に対する三島思想を最
も良く理解している著者の筆になる三島由紀夫の総括ともいうべき本
です。昭和45年11月25日の決起直前に三島由紀夫が書いた建白
書も第六章に掲載されています。これを読むと三島由紀夫の憂国の情
が理解できそうな気がしてきます。               

小松左京処女長編「日本アパッチ族」は小松SFの原点となる特異な
作品です。独自なストーリー展開の裏には文明に対する批評精神を窺
う事が出来ます。                       

先生が養老孟司で生徒が南伸坊という組み合わせで「解剖学個人授業
」を行ったものです。すばらしく良く出来た生徒で養老孟司のエッセ
ンスを余す所無く伝えてくれますが、ちょっと詰め込みすぎかもしれ
ません。養老孟司の原本を見ていると言っていることがよく理解でき
ますがはじめてこの本だけをみると意味が伝わりにくい所があるかも
しれません。                         

養老孟司著「死の壁」は前著の補足といった位置づけの著書です。前
の本(バカの壁)を見てじゃあどうしたら良いのかというような疑問
が沸いた方への回答です。                   

『芸術は爆発だ!』の言葉で有名な岡本太郎「自分の中に毒を持て」
は自身の生き方、強烈な個性が出ていて勇気付けられる本です。しか
し著者のような生き方に共感するところがあったとしても誰しもが氏
のように生きられるかは別問題です。良い所をうまく自分の生き方に
活かすことが出来れば成功かなと思います。

「潮干狩り」はシオヒガリ名人、原田知篤により潮干狩りのすべてが
わかり易く書かれた一般読者向けの本です。アサリは6時間空気中に
さらしてから調理するとコハク酸が増えて格段に美味しくなることや
アサリ取りの好ポイントの解説などは今日からでも実用になります。
潮干狩りの俳句、貝の模様、潮干狩りで取れるさまざまな貝の見分け
方、貝の料理、潮干狩りの歴史、潮干狩り場の紹介、潮の早見表など
「潮干狩り」にまつわるさまざまな事が要領よくまとまっています。
著者のHP 「史上最強の潮干狩り超人」はいろいろな賞を受賞してい
るそうです。                         

百目鬼恭三郎「読書人読むべし」は博学な著者による文献学とでも言
うべき書であり我々一般人が読むのには相当高度な内容となっていま
す。しかも古典、神話、伝記、辞書が主な題材なので内容は素晴らし
いと思いますが残念ながら「猫に小判」状態です。本当の読書人、知
識人はぜひとも古書店で手に入れてお読み下さい。        

「玉蘭」桐野夏生著を読了しました。著者には思い入れのある作品の
ようですが、これまでの著者の作品とは作風が違って幻想譚、時代の
交錯するSF、恋愛小説の混交のような作品で、今までのインパクト
のある作品に慣れた読者には物足りないものがあるのではないかと危
惧されます。じっくり読むと良く出来た作品だとは思いますが、あと
がきを読むことでより一層味わいが増すように思えます。     

いしいひさいち「ヒラリー・クイーン大統領への道」ニュースを知れ
ば知るほど一層楽しめるマンガです。前大統領、ゴア副大統領、ブッ
シュ大統領、パウエル国務長官、ライス補佐官という強烈なラインナ
ップが繰り広げる政治と愛憎劇のパロディには笑うしかありません。

「言葉でわかる『話を聞かない男、地図が読めない女』のすれ違い」
主婦の友社刊はあの有名な本のダイジェスト版といったところですが
それにしては中身の重複がとても多くちょっと残念な一冊です。  

乙川優三郎「五年の梅」2日で読み終えてしまいました。この著者は
基本的には長編に向いていると思いますが短編集も悪くありません。
それぞれの作品では逆境にある人々が最後に生きる気力を取り戻して
いく様を描いています。人を見つめる目の暖かさが山本周五郎賞受賞
に繋がっているように思われます。               

ノーベル文学賞を受賞しているガブリエル・ガルシア・マルケスの名著「百年の孤独」
をやっと読み終えました。この本は欧米諸国では爆発的な人気を博し
たそうですがラテン・アメリカの歴史や生活などから程遠い私などの
ような日本の一般読者にとってこの本を実感として楽しむことはかな
り難しいように思われます。この本を少しでも楽しむためには、先に
あとがきを読むか、向井敏著「本の中の本」に載っているこの本の書
評を読んでからにした方が良いと思われます。          

集英社新書『「わからない」という方法』はこだわりを持った著者独
自の視点で書かれた変わった読み物です。「花咲く乙女たちのキンピ
ラゴボウ」や「男の編み物、橋本治の手トリ足トリ」「桃尻語訳枕草
子」を初めとしてさまざまなジャンルの本(評論、美術、演劇、etc.)
を書いている著者が、いかにしてわからないものに取り組んでいくか
ということを実体験を通して書います。「現代はもうどこにも正解と
いうものが存在しない」と主張する著者が、ではそれらの物に対して
どのように取り組んでいったら良いのかを方法として提示してくれて
います。

養老孟司の「バカの壁」が新書として爆発的な売れ行きをみせたお陰
で類書(XXXの壁のような本)が多数出版されています。また、当
人の本も対談集を中心に急に出版されるようになりました。養老孟司
の本はほとんど読んでいるのでつい「スルメを見てイカがわかるか!」な
ども買ってしまいました。これも今まで著者があちこちで発言して来
た内容の総集編のような体裁でそれほど目新しいものはありません。

「生物は体のかたちを自分で決める」ジョン・メイナード=スミス著は進化論の
最新の成果だそうですが、内容がダイジェスト版のためかこのシリー
ズにしては出来がいま一つです。                

杉浦日向子の描く江戸ワールドには現実感が溢れています。「一日江
戸人」はマンガ半分、文章半分で江戸の風俗・生活を見事に表現して
います。著者の見る目には暖かみと江戸っ子らしい気風の良さがある
のでこの文庫一冊だけで楽しい江戸見物が出来ます。       

タマゴタケの挿絵の入った栞だけでも一見の価値があります。「森の
きのこ採り」はきのこの仙人と呼ばれる小林路子のフィールドノート
です。きのこのレシピもとびっきり美味しそうです。やはり好きな人
の書いた本というのは読み応えがあります。画集「キノコ」が絶版に
なっているのだけが非常に残念です。ぜひとも重版を出して下さい。

「人斬り以蔵」のタイトルに釣られて司馬遼太郎の著作を読みました。
短編集もなかなかに味わいがありますがやはり長編に分があります。

ロアルド・ダールは奇妙な味の作家としてよく知られていますが絵本
作家としての方が著作は多く、「へそまがり昔ばなし」にもダールら
しさが良くあらわれています。                 

漫画家、喜国雅彦は「本棚探偵の冒険」という書名からも判るように
たいへんな古本マニアです。本好きな著者が著したこの新本は函入り
の重厚な装丁で本棚を飾るのには良い出来です。内容も面白いです。

インターネットでの注文で最近まとめ買いをしました。Amazon.comで
5000円ほど、有隣堂で1万円ほどの計11冊です。どうせ注文す
るなら持ち帰りが重たいようなものは自宅への無料配送、文庫関係は
書店店頭で現金(図書券)での引き換えで少しでも安くなるようにと
あれこれ組み合わせての注文です。こんな調子で買っていると今年も
年末にまた読みきれない本の山となりそうで今からちょっと怖いです。

奥本大三郎著「奥本大三郎 自選紀行集」は雑文の集まりです。この
作家の著作はほとんど読んでいるので内容としては記憶にあるフレー
ズもあり、またこの作家にしてもやはり雑文中の雑文もあって評価は
中の上くらいという感じです。「虫の宇宙誌」などに比べると完成度
は今一つです。                        

「九時から五時までの男」を書いたスタンリイ・エリンはロアルド・
ダールと並ぶ奇妙な味の短編の名手という話ですが今回、初めて読ん
でみてなかなか味わい深い短編のいくつかに触れる事が出来ました。
しかし、面白みが今一つのものもあります。一冊読んだだけなので、
まだ正当な評価は出来ませんが個人的には灰汁の強いダールの方が 
面白味、余韻では分があるように思います。           

「舞踏会に向かう三人の農夫」は弱冠28歳ほどでデビュー作として
出版された作品とは到底思えない壮大な構想を持った作品です。訳者
あとがきからその全体像を要約した部分を抜き出してみると    
(1)三人の農夫の物語の中に、時代の顔となった人々の言動が織り
 込まれるのは無論、写真論あり、伝記論、小説論あり歴史論あり〜
(2)各センテンスごとに反射的に何らかの皮肉、ジョーク、ひねり、
 引用、間接的言及が加えられた縦横無尽の文章。        
(3)小説の域を逸脱しているような緻密な思索。それらを支える驚
 異的な博識と論理的思考力、そして卓抜なユーモア。      
というような最上級の賛辞が並んでいますが訳者の自賛を差し引いて
もほほ実際これに近い評価が与えられるのではないかと思います。 
決して気楽に読み飛ばせる文章ではありませんが純文学が好きな人に
とってはこたえられない一冊かもしれません。          

乙川優三郎「蔓の端々」読了です。作柄は藤沢周平に似ていますが、
短編も味わい深かった藤沢周平とは違って長編でより本領を発揮する
作家のように思えます。次の文庫の発行が待ち遠しい作家の一人です。

宮部みゆき著「誰か」を読み終えました。いつもながら宮部ワールド
にはいろいろな背景はあるにせよ本当の意味の悪者は出てきません。
読んでいて心が和むのはそのせいでしょうか。          

養老孟司著「いちばん大事なこと」には環境に対する著者の思いがこ
もっています。環境保護やトキの保護に象徴される生物多様性の保全
などの問題には往々にして政治問題や経済問題が絡みがちですが著者
は中立の立場から平易な語り口で何が問題なのかを教えてくれます。

竹内久美子著「遺伝子が解く!愛と性の「なぜ」」には愛と性の不思
議が遺伝子という視点からの著者独特の語り口で謎解きされるという
面白さが溢れています。この本にはたくさんのイラストが掲載されて
いますが一番面白いのはこのイラストかもしれません。内容と併せて
みると面白さ倍増間違いなしです。               

蕣露庵主人著「江戸川柳花秘めやかなれど」は江戸川柳(破礼句)を
判りやすく解説してくれている本です。250年ほど前の当時も現代
と男女の間の感情にさほどの相違は無いと思いますが、世相・風俗が
まったく違う点も多くこのような解説本によりより楽しむ事が出来ま
す。                             

「告発封印」は高任和夫の持ち味が十分に生かされた短編集です。い
つの間にか主人公の気持ちに共感している瞬間があるかと思います。
立場はさまざまですが働く男の哀歓を優しさをもって眺めている確か
な視点が感じられます。                    

「カサンドラのジレンマ」という卓抜なタイトルに引かれて購入した本書は、
地球の危機(環境問題、人口問題、温暖化)を回避する方法について
のアイデアを具体的に提示してくれる書です。はるか昔にレイチェル
カーソンが「沈黙の春」で環境問題を取り上げて以来、いろいろな本
が出版されていますがほとんどの本は警告を発するだけで解決策につ
いては提示してくれていません。この本はその手法、またタイトルで
ある「カサンドラのジレンマ」について判り易く説明しています。 

「喜知次」乙川優三郎著読了しました。最後まで快い思いで読ませて
くれる良い小説です。同じ作者の「屋烏」も読みましたがこの作者は
長編の方が本領を発揮するように思えます。           

「年を歴た鰐の話」山本夏彦訳が文藝春秋から復刊されました。知る
人ぞ知る幻の名著の復刊です。童話として読んでも良し、何かの寓意
を読み取るも良し、永い間待っていた人がきっと多かったと思います。
どうしても待ちきれなかった人は私のように福音館書店から発行され
た「年をとったワニの話ほか3篇」出口裕弘訳をどこかで購入して読
んでいるかもしれません。しかし今回、復刻版を見て判ったことは「
年を歴た鰐の話」の眼目は僅か3ページの訳者による「はしがき」と
硬質な文体で書かれた本文にあります。驚くべきは山本夏彦の処女出
版である本書にして山本翁のあの独特の文体が既に確立されている事
です。吉行淳之介、久世光彦、徳岡孝夫の解説は本書が単なる童話で
はないことを我々にやさしく教えてくれます。          

2004年は124冊の本を読むことが出来ました。今年も良い本が
あったら本欄で紹介していきたいと思います。          

気に入った本があったら読んでみて下さい。

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