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* * * 読書雑記(2005年) * * *
「底抜けブラックバス大騒動」は池田清彦の怒りの書です。世間や環境省や
マスコミが大騒ぎして悪者ブラックバスの駆除を推進・加担していることに
対して常識的な反論をしている稀少な本です。全面的に著者の意見に賛成で
す。外来生物をむやみに国内に導入するのは基本的には良くないけれど一度
入ってしまった外来生物は駆除しきれない、税金を使って駆除を続けるのは
一部の利権を肥え太らすだけだとの主張には拍手を送りたくなります。確か
にブラックバスを駆除するのは大半に人に同調されますが、コスモスを駆除
しろと言ったら同調しない人が多いように思えます。どちらも生態系に多大
な影響を及ぼしているかも知れず、及ぼしていないで多様性を増やしている
だけかも知れません。このような議論は長いスパンでみないと判断出来ない
問題なので一概にこれは悪者、これはいい者と決め付けるのは恣意的な判断
しかありません。マスコミも世間に迎合するような意見ばかり言わずに著者
のような視点を持って報道して欲しいものです。
最近、脳に関して台頭著しい茂木健一郎の著書「脳と仮想」を読み終えまし
た。素人向けに書かれた判り易い良い本です。まだ現代科学にっていない分
野の裾野を広げるのにはこのような本がたくさん出てこないといけないのだ
ろうと思います。我々素人が読み始めるのにはお勧めの本です。小林秀雄賞
受賞作だということですが、残念ながらこの賞自体を良く知りません。
星新一著「ほら男爵現代の冒険」は実在のほら男爵ミュンヒハウゼン男爵の
直系の孫という設定での冒険譚です。解説にもありますがこの作品は単なる
名作の焼き直しでは無く民話、名作、伝説、神話などを織り交ぜながら実に
愉快にパロディ、現代社会への諷刺、寓話、視点の転換などを豊富に盛り込
んだ夢物語です。珍しくショート2では無く4話からなる冒険譚です。
星新一著「地球から来た男」読み終えました。毎週のように星新一作品を読
んでいると書くことが無くなって来ます。これは本の解説も同じらしく解説
を書く人もずいぶん苦労しているようです。そう言っては何ですが同じよう
なショート・ショートに一冊ずつ解説をつけるのは確かに難しいものがあり
ます。星新一との思い出を書く人、星新一作品の系譜をまとめる人、仕方な
しになんとか紙面を活字で埋めましたといった人などさまざまです。
クラフト・エヴィング商會「ないもの、あります」はアイデア勝負の本です。良く耳
にするけれども見たことの無い者達の紹介です。堪忍袋の緒、左団扇、口車
、地獄耳、思う壺、針千本、大風呂敷などなどをみせてくれます。このよう
な発想の本も出来るんだと言う「目から鱗が落ちる」かもしれない本です。
星新一著「ありふれた手法」読了です。ユニークな発想のショートショート
30篇収録です。あとがきに載っている発想メモ「できそこない博物館」は
残念ながら絶版です。今年は星新一作品を集中的に読みましたがまだ10冊
くらいは読んでいない在庫があるのでしばらくは楽しめます。
杉浦日向子の「4時のおやつ」はさりげない文章においしそうなオヤツがつ
いたショートストーリー33篇です。「ごくらくちんみ」共々お勧めです。
星新一著「ブランコのむこうで」を見ていたら夏目漱石原作の「夢十夜」を
思い出しました。パロル社「夢十夜」の絵本の雰囲気が妙に「ブランコのむ
こうで」にダブります。珍しくショートショートでは無くメルヘンの世界で
す。楽しく読むことが出来ました。
奥本大三郎訳「完訳ファーブル昆虫記」第1巻上を早くも読み終えました。
奥本氏は丁寧な仕事をしています。種の同定だけでもたいへんな手間を掛け
て調べています。また脚注や訳注など読み飛ばされてしまいそうな所で本領
を発揮しています。ファーブルの残した素材はもちろん素晴らしい業績です
が面白さや理解しやすさを上乗せして素材を120%生かしきった傑作です。
第一巻(上)(下)の応募券を付けてアンケートに答えるともれなく昆虫記
特製の図書カードがもらえるというのもうれしい特典ですが、応募券の付い
ている本の帯を切り取ってしまうのがちょっと忍びないです。
もちろん今年のベスト10入り確実ですが全20巻なので来年のベスト10
に回そうと思います。
星新一著「さまざまな迷路」を読み終えました。民話あり、SFあり、妖精
あり、夢物語あり、幽霊ありといろんな星新一が味わえます。32編の選り
抜きのショートショート集です。
谷川渥編「三島由紀夫の美学講座」は三島美学の本質に迫るアンソロジーで
す。三島由紀夫が残した書評、解説、紀行文などの中から美と肉体と芸術に
関する著作を集めたもので、ジャンルを追っていくことで三島由紀夫を読み
解こうとするものです。出だしは難しいですが中盤から後半にかけては理解
出来る部分も増えて編者の云わんとすることが大体判る様になります。
本当は「せきこえのどに浅田飴」を読みたかったのですが品切れなので続編
の「せきこえのどに六輔」永六輔著を買って読んでみました。全編が浅田飴
のCMといった本です。遊び心と味わいのある本です。気晴らしに読むには
丁度手ごろな本です。山下勇三のカラーの絵入りのページが大半を占めてい
て、この絵の中の独特の永六輔の似顔を楽しむのも一興です。
「冒険の国」は桐野夏生の初期の作品で短い作品の割には落ちが甘いように
思えますがやはり桐野夏生らしさは特に後半に現れています。
星新一の本だとだいたい2〜3日で読めてしまうので今年は着々と読み進め
て、もう既に20冊近く読んでいます。「妄想銀行」の本のタイトルにもな
った小話はなかなか面白いアイデアです。落ちの良し悪しにはばらつきがあ
りますがこの本にも着想のひらめきが随所に現れていて楽しめます。
赤瀬川原平著「名画読本日本画編」は富嶽三十六景、東海道五十三次、古木
猿猴図、風神・雷神図屏風などを題材にして名画の見方を丁寧に教えてくれ
ます。とは言っても普通の鑑賞眼では時代背景や訴えたい思想などや色使い
などに話が進んでいきますが、赤瀬川氏は独自な視点を持ってポイントを指
し示してくれます。与謝蕪村「鴉図」では塗り残しで描いた雪に焦点をあて
丸山応挙の「藤花図屏風」では横3.6mの金箔画面の圧倒性に藤の幹のタ
ッチがようやく拮抗しているさまを言葉を尽くして説明してくれます。富嶽
三十六景の「凱風快晴」では雲の不規則さと版画の木目を上げ、「神奈川沖
波裏」では望遠の構図、青一色の色使い、波の大きさと舟中の人たちの様子
などいろいろな観点で教唆を与えてくれます。既存の評価に捕らわれること
なく名画を楽しく見るためのアイデア満載の本です。お勧めの一冊です。
養老孟司と玄侑宗久の対談集「脳と魂」はタイトルと本の表紙を見てこれは
堅苦しい話に違いないと思って読むのをだいぶ延ばして来ましたが失敗でし
た。解剖学者・昆虫学者と僧侶・芥川賞作家というそれぞれ特異な立場にあ
る異色の対談には二人の物事の捉え方の良いところが明快に現れています。
不思議な程の阿吽の呼吸でテンポ良く対談は進んでいます。内容が素人にも
実に判り易い上に二人とも極めて該博なために話が縦横無尽に及びこれが本
を読んでいて得した気分にさせてくれます。玄侑宗久の本ははじめてですが
他の本も今度見てみようと思います。今年のベスト10にぜひ入れたい所で
すが養老孟司の本には既に定評があるのであえて外しておきます。
世界最先端の動物保護思想と銘打った中央公論新社刊の「動物の命は人間よ
り軽いのか」を読み終えました。動物の権利や福祉、動物の痛みなどの問題
を手始めに食物としての動物、動物園の是非、実験動物や衣類としての動物
利用への非難、代替案などについて幅広く論じています。この本ではこれま
での人間中心主義と決別しこれから我々がどう考え何を実行すべきか問いを
投げかけています。この本にあるような考え方もあるとは思いますが個人的
には同調出来る部分がほとんど無い珍しい本です。同調出来ない主な点は以
下の通りです。(1)動物の痛みや権利を考えなければいけないという提案
は良いですが筆者がどこまで認めどこは認めていないのかという立場を必ず
しも明確にしていない箇所が多いことがあげられます。例えば動物保護の為
に肉食は一切駄目と考えているのか卵なら良いのかなど筆者は立場を明瞭に
していません。狼保護には同調しているようですが野犬や野良猫には賛同し
ているのでしょうか。およそ立場と行動が読み取れません。(2)だからと
いっていろいろな考え方があるということを認めているかというとどうも認
めていないように感じられます。保護思想という原理主義をみるような感じ
をぬぐい切れません。(3)動物はすべて平等のような口調ですがやはり類
人猿や身近なペットを人間の次に置いているように感じられます。蠅やシロ
アリなどの昆虫やムカデ、蜘蛛、線虫、バクテリアまで含めて動物と言って
いるのか。疑問です。私個人としては昆虫や植物まで含めて生き物といった
意味ではすべて繋がっていると考えていますが、筆者はどうもやはり重みず
けをしているとしか読めません。おそらく生物はすべて痛みを感じることが
出来、だからこそそれぞれの生物が危険を避けて綿々と生存して来られたの
ではないかと思われます。もう少し筆者が立場を明確にして本が書かれてい
たら同調出来る部分もあるのではないかと思われる点がとても残念です。
(4)筆者は植物には触れていませんが、植物にも痛みや感情があるのでは
ないかという議論も世間にはあります。動物さえ殺さなければ植物は殺して
も良いと考えるのか聞いてみたいところです。私個人としては人のような雑
食動物は当然、動植物を食物とするのは自然だとも思っています。また遊び
や趣味などという高等な感情を手に入れてしまった人という生物が人らしい
生活を送るためには狩猟や家畜などというおそらく筆者が反対するであろう
行動を抑えることは懸命では無いと思っています。また世間では犬猫だけが
ペットと真剣に考えている人が大勢いますが、たとえば蛇のペットやウナギ
のペット、人の嫌がる虫のペットというのも高等生物である人の中には当然
あってもおかしくないと考えます。およそ自分の理解の外にあるものを除外
しようと考える考え方やおしつけにはどうにも同調しにくいです。
星新一著「エヌ氏の遊園地」には「エヌ氏」とは誰かという謎解きが解説に
あります。こういうところで楽しむことも出来ます。
「いろんな色のインクで」には書評のコツ、74編の書評、千年紀のベスト
100、近代日本のベスト100更に雑文といったいろいろな要素の文書が
集まった、その名の通りの「いろんな色の」傾聴に値する文章の藝が並んで
います。名実ともに書評に定評のある丸谷才一の力作揃いです。非常に有意
義に読ませていただきましたが、氏独特の旧仮名遣いと難しい評論もあって
本の半分くらいは素人にはちょっと高尚過ぎるようです。向井敏亡き後、真
に素人向けに書評を提供し続けてくれる作家が見当たらないのが残念です。
星新一の本をまた一冊読み終えました。「天国からの道」にはデビュー以前
の作品と1001編到達以降の作品が同居しています。同じテーマで書き上
げた作品集とは違ってこれまで文庫に未収録だった掌編を纏めた一冊です。
最近の作品集ではめったにありませんが、この本には落ちの極めて弱い作品
が多いように思えます。
養老孟司著が時事問題について論じた何冊目かの本である「こまった人」を
面白く読みました。山本夏彦翁亡き後を引き継ぐのは養老孟司位しかいない
とかねがね思っていますが、ご多分に漏れず養老孟司もあたりまえのことを
視点を変えて論じるのが上手です。但し山本夏彦が古典に多く材を取ってい
たのに対して養老孟司は自然である人体や虫取りの視点で世事を第三者的に
眺めるという視点の違いはあります。いずれにしても時事問題は直接反対や
賛成と言った視点で論じ始めたが最後泥沼に陥るのは必定なので論じる技術
が重要です。両者ともその呼吸が実に楽しいという点では共通しています。
あだち充原作のマンガ「タッチ」を原案にして、青木ひかるが書き下ろした
もうひとつの「タッチ」がここにあります。原作のマンガの隙間をうまく埋
めて物語を補強しています。原作はもちろん感動物ですが、これもまた感動
できます。言葉のニュアンスも含めて原作に忠実に出来ています。
あらためて2時間物のビデオテープ全7巻に納めてある「タッチ」をはじめ
から見なおしてしまいました。こちらは何回見ても感動出来ます。
星新一著「ノックの音が」はその名の通りノックの音から始まる物語15編
です。あとがきに著者の当時の考え方が現れていて興味深く感じました。
杉浦日向子著「隠居の日向ぼっこ」にはなつかしいアイテムが沢山出て来ま
す。きせる、屏風、はいちょう、へちま、軽石、蚊遣り、つりしのぶ、おひ
つ、ねんねこ、赤チン、湯たんぽ、火箸、箱枕、はたきなどなど読んでいて
飽きるということがありません。中でも『踏み台』と題した一話は興味深く
読むことが出来ました。ここで言う踏み台は、木製のすそ広がりの台形型を
したものですが、市販されているのを見たことがありません。これは踏み台
が元来、新築家屋への大工さんからの置き土産だということから来ているそ
うです。はじめて聞きましたが聞いて納得です。このような何気ない薀蓄が
てんこ盛りの一冊です。
ロビン・ウイルソン著「四色問題」は地図を塗り分けるには最低何色あれば
塗り分けられるのかという有名な問題である「四色問題」が解決に至るまで
の先人たちの努力の道のりと解決後のクレームにいたるまでの記録です。
数学はスマートであるべきだという思いは「フェルマーの最終定理」などを
読むと痛切に感じますが、この四色問題はコンピュータを使って解いたとい
った意味でこれとは対極にあります。果たして四色問題にはこれ以外の解は
無かったのか、たとえ力ずくではあっても解けてしまった今となってはもう
誰も挑戦する一流の数学者は永久に現われることは無いと思われます。解け
たのは喜ばしいですがこの点はとても残念です。この本の技術的説明は図の
色分けが白黒図版のせいで読みにくいという難点があります。また用語にも
最小反例、C可約配置、不可避集合、放電法など難しい概念が多く素人向け
の本にしては説明が今ひとつ判りにくかったように思えます。技術的に判ら
ないといった意味では「フェルマーの最終定理」の方が難しいですがこちら
は判ったような気にさせてくれます。
榛葉英治著「釣魚礼賛」には私の住む山北町やその周辺が登場します。釣り
文学はどれも味がありますが、この直木賞作家の手になる釣りエッセイにも
釣りに対する賛歌と自然と向き合う姿勢が感じられ好感が持てます。一般の
釣り文学ではやたらに釣り上手が出てくる風がありますが、この著者はどち
らかというと釣り下手では無いかとさえ思えます。しかし、古き良き時代の
釣りの様子を良く伝えていると言った点では記録文学としても価値があると
思われます。「続釣魚礼賛」には釣り歩きの他に自然の記も含まれます。
「マンガをもっと読みなさい」は養老孟司と日本漫画家協会理事である牧野
圭一氏のマンガ対談です。当然マンガも多用されていて行間も異常に空いて
おり読みやすいことこの上ないです。しかしマンガと対談がもう少しかみ合
って欲しかったと思うのは私だけではないと思います。また、これだけ活字
が少なく200ページも無い割には1500円は高すぎるように思えます。
星新一著「おみそれ社会」読み終えました。ちょっと長めの短編集です。裏
の裏の裏まであるケースやこちらの思惑とまったく違う意図が隠されていた
りして物事は一筋縄ではいかないことをいろいろな事例で諭してくれます。
杉浦日向子著の「江戸アルキ帖」は絵が秀逸です。もちろん文章もほのぼの
と江戸の町を散歩している雰囲気を良く伝えてくれて言うところなしですが
地図がついているともっと良いなぁと思ってしまいます。
V・S・ラマチャンドラン著「脳のなかの幽霊、ふたたび」は一作目に比べ
て少し難しくなっています。素人には1冊目の方がお勧めです。より詳しく
知りたい方はこの本の最後にある原注をじっくり読むことをお勧めします。
宮部みゆき著「孤宿の人(下)」読み終えました。物語はめまぐるしく展開
していきます。落雷による日高山神社の消失、流行り病騒ぎ、相次ぐ関係者
の謎の死、丸海の町を二分する騒乱と炎上、そして涸滝屋敷での雷獣と神獣
との戦いで物語は大団円を迎えます。中円寺の手伝い人『宇佐」の心配する
中、涸滝屋敷に奉公に上がっている『ほう』は無事でいられるのか。最後の
最後まで手に汗握る展開が待っています。
虫好きな者にとってのバイブルとでもいうべき『ファーブル昆虫記』の完訳
が05/11末から順次発売されます。もちろん古くは岩波文庫で全10巻
が出ており、92〜94年には奥本大三郎訳でハードカバーの抜粋全8冊が
出版されています。これらは当然読んでいますが、今度出る全10巻×上下
計20冊揃いはこの奥本大三郎氏が生涯の仕事として取り組んだ内容充実の
叢書のようです。宣伝のチラシを見て早速書店に申し込みをしましたが揃い
で約6万円の出費です。こんな買い方をしているので図書券が必要となる訳
です。しかしフランス文学者であり虫好きでその名を知られる奥本大三郎の
ライフワークでもある完訳がつまらない訳はありません。書店に出た暁には
是非ご一読下さい。
今年は星新一1000作品を読破しようと思って文庫本を次々に購入して来
ましたが、入手出来ていない本が10冊ほど残っています。どこの新刊本屋
にも置いてありません。仕方無しにインターネットで注文をしようと検索し
てみたら何と入手できない本はすべて絶版、品切れ、重版未定となっていて
早い話、入手が出来ません。星新一作品にしてからがこれだけ絶版となると
いうのは由々しき事態です。やはり本が出過ぎですね。新書やハードカバー
の本は在庫を持つのは大変かもしれませんがせめて文庫本くらいは絶版禁止
として欲しいものです。そういえばインターネットで本の検索をしていたら
宮部みゆきの新刊『ステップファザーステップ−屋根から落ちてきたおとう
さん』が講談社青い鳥文庫という出版社から10月に既に出ている事が判り
早速買いに行きましたがさっぱり見つかりません。よくよく調べてみたらこ
の本はいわゆる文庫のサイズでも無く、新書コーナーにも無く、置いてあっ
たのは児童書の棚でした。見つからない訳です。既に文庫等で出ている同名
の本と内容は同じですが、総ルビで挿絵満載の装丁で、大人向けの本よりも
充実しています。お得感に溢れていてすぐに購入しました。宮部みゆきの本
を本屋で探し回ったのはこれで2度目です。一回目は『Shadow Family』で
これはタイトルだけでなく中身も英語の本だったため洋書コーナーにありま
した。このようにインターネットでの本の検索では思わぬ探し物を見つける
ことがあります。養老孟司のキーワードで解説だけ養老孟司の『脳の中の幽
霊』が見つかったり、小説新潮の別冊のために丸ごと桐野夏生特集なのに新
刊コーナーにも置いてない『The COOL! 桐野夏生スペシャル』もインターネ
ット検索では簡単に見つけて予約することが出来ました。ネット検索は本当
に役立ちます。しかしその分、余計な本も買っているようにも思えます。
星新一著「盗賊会社」2日の通勤時間で読了です。これも20年以上前の本
ですが内容が古びないところが凄いです。どの短編を読んでも楽しめます。
吉村昭著「蛍」は30年も前に書かれた本です。さまざまな人生の一端を描
いて独特の世界を描き出しています。文体はいかにも古臭くて年代を感じさ
せますが、描かれている9篇の短編では見つめる視点に独自なものがあり、
一読の値打ちはあると思います。これはこれでそれぞれにインパクトがあり
ますが『羆嵐』ほどの衝撃はありません。
杉浦日向子追悼記念で「大江戸美味草紙」も購入しました。川柳を肴にして
江戸庶民の生活を詩情豊かに活写してくれています。まったくうまいもので
す。今時の横文字を適材適所、縦横無尽に駆使してそれでいて違和感の無い
語り口には脱帽です。江戸を語らせ描かせたら右に出る者はいそうにありま
せん。
横山秀夫著「半落ち」が文庫になったのを機会に早速、一気に読みました。
噂どおりの良い出来です。前半部分は県警と地検との駆け引きで始まり記者
や弁護士、裁判官、刑務官などそれぞれの立場から各章が語られていきます。
警察幹部が尊属殺人を犯した後、自首するまでの空白の2日間についての謎
は最後の最後まで残されたままです。犯人が心の奥に隠している真実とは何
か、感動の最終章が待っています。お勧めの一冊です。
宮部みゆき著「孤宿の人(上)」読み終えました。讃岐の国丸海藩で起こる
事件や怪異譚に人情物が絡んで物語が進んでいきます。後半が楽しみです。
岡野玲子画の「陰陽師L」最終巻です。壮大なスケールで清明を描ききって
います。安倍清明没後1001年だそうです。陰陽師1巻目が出てから既に
6年が過ぎて当初予定の12巻を越して13巻目でやっと完結です。本の厚
さも10巻目から一気に厚くなって内容も最後の2〜3巻では特に難しくな
りましたが素晴らしい画法は最後まで我々を感動させてくれます。
「きまぐれロボット」200頁も無い本なので2日もしない内に読み終えま
した。タイトルで既にお判りのように星新一のショートショートです。発明
と宇宙人といったくくりの編集です。人生そんなにうまくいかないいんだと
いうことを判りやすく諭してくれる一冊です。
夢枕獏著「鮎師」はなかなか楽しい読み物です。友釣り以外の鮎釣りの物語
というのは極めて珍しいのではないかと思います。今年は相模川で30cm
オーバーという鮎が釣れたというニュースがありましたが、この本に出て来
る鮎は桁違いです。確かに年魚でない鮎もいて時には巨大になることもある
ようです。私も一度、多分鮎だろうという巨大なのを子どもの時に一度だけ
見たことがあります。酒匂川で友釣りやどぶ釣りでも無い鮎釣りに実際にお
目に掛かったことはほとんどありません。私がたまに流し釣りをしている位
です。小説に出て来る小田原の早川はそのような釣りに向いている川なのか
も知れません。12月に毛鉤で鮎が釣れるというのも酒匂川ではちょっと信
じられないような状況です。酒匂川でも12/1〜12/31まで再解禁と
なりますが寒バヤ釣り以外の釣り人を見たことはありません。
養老孟司著「日本人の身体観」読了しました。「自然の見方」「現代哲学の
身体観」「近世の身体観」「中世の身体観」「西欧の身体観」という項目に
分かれて論じられています。いずれにしても身体観を論じるということは難
しい内容となります。この手の本を読んでみると言うことで何らかの新しい
知見を得られれば理解し切れなくてもそれで良いのかと思います。
養老孟司編「脳と生命と心」は難しい本です。「クオリアと志向性」「前頭
前野の動的オペレーティングシステム」「精神分裂病と肉体性を持つ言葉」
「同一性、記号、時間」「物質の雑音状態」という講演と討論のタイトルを
みただけで如何に内容が難解か判ってもらえるかと思います。シンポジウム
に参加しているのは脳の専門家、救急精神医療の専門家、構造主義生物学の
メンバーなどです。脳の話をし出すと語っている脳自身のことも考えなくて
はいけないなど難しいことは判りますが、討論者の間でさえも話が噛み合わ
ないこともあるほど議論は高尚です。
東雅夫編「ホラー・ジャパネスクを語る」は宮部みゆきをはじめ7名のこのジャンル
の手だれによるホラー談話です。いずれも甲乙付けがたい程のマニアの談話
のため読み応えはありますが、とてもついていけない部分も多くあります。
そういった意味ではこの本自体が相当マニアックな本です。
星新一著「これからの出来事」を読み終えました。一冊ずつそれぞれに特徴
があるので星作品を読もうとする人はやはりタイトルを見て選ぶのが賢明で
す。とはいっても「明治の人物誌」などのほんの一部の本を除けばどの本も
面白いです。
10/1についに全国的に図書券の販売が終了となります。これからは図書
カードだけになってしまいますが、そうするとお釣りも無くなってしまうの
で割引率がぐっと落ちることになります。図書券はこれからも使えると言っ
ていますが、売るのが終わってしまうと入手出来なくなってしまうので今の
うちに1年間分くらいの図書券をチケットショップで買い占めておくのも手
かもしれません。しかし私の場合、この1年間の図書券購入金額は30万を
超えているのでちょっと簡単には買いきれません。
星新一著「ちぐはぐな部品」読み終えました。すぐに読めてしまいますが、
完成度の高い作品が目白押しです。まったくハズレなしです。
最近テレビで宣伝している「XXXとチョコレート工場」の原作である短編
の名手ロアルド・ダール著の「チョコレート工場の秘密」は半年以上も前に
購入しましたが、購入以来どこに紛れ込んだか見つからずに未だに読んでい
ません。購入して積んである本が300冊以上はあるので一度紛れ込んだら
見つけるのは大変です。
「脳が語る身体」は今読んでいる「脳と生命と心」のダイジェスト版のよう
な内容の本です。系統発生の話、脳と意識の問題、形とは何かなど最先端の
生命科学の話に溢れています。しかし、現在の科学として把握出来ないよう
な枠組みの話が多いため、科学なのか哲学なのか判らないような難しい話が
あちこちに出て来ます。人間を扱っていても最先端の話題というのは難しい
ことがよく判ります。しかし、いろいろな知見に溢れたこのようなまじめな
議論を垣間見るだけでも少しはためになると思います。
電車の帰りに読む本が無くなったので、いしいひさいちのマンガ「嗚呼!
栄光は君には輝かない」を買ってすぐ読み終えてしまいました。四駒マンガ
なので読み始めたらあっという間です。気晴らしには丁度良いですね。
藤沢周平の獄医立花登手控えシリーズ4部作の(一)「春秋の檻」読み終え
ました。このシリーズが読み終えてしまうと藤沢周平の文庫本はほとんどが
読み終えてしまうことになります。この4部作は大長編だと思って残してお
いたものですが読み始めてみたらなんと短編集です。それにしても最初の一
作「雨上がり」からして見事な出来栄えです。この素晴らしさは佐藤雅美の
解説で余す所無く語られています。4部作の(二)「風雪の檻」も良い出来
です。人物設定がうまいですね。(三)「愛憎の檻」(四)「人間の檻」も
読了です。
土屋賢二著「ツチヤ学部長の弁明」、「ツチヤの口車」2冊読了です。気晴
らしに読むのに最適な本です。それにしても土屋賢二のエッセイにはいしい
ひさいち氏のマンガがよく似合います。いしいひさいち氏の哲学の本を改め
て読みたくなりました。
星新一著「夜のかくれんぼ」読み終えました。28篇の選りすぐりが載って
います。星新一のショート・ショートはどれをとっても外れと言うものが無
いので一冊ごとの解説が極めて書きにくい作品群です。この文庫は昭和60
年に出たものですが、著者あとがきで『真鍋博のプラネタリウム』という文
庫本を紹介しています。この本は星新一作品1001篇記念にイラスト集を
新潮文庫の一冊にまとめたもので副題が「星新一の挿絵たち」という通り、
挿絵と星新一作品の発端部分、中には全編をも一部収録したものだそうです。
しかし、この本をネット検索してみると既に絶版となっており、中古市場で
は元の定価が378円なのに何と2200円〜2625円という高値が付け
られています。文庫本とは思えない値段です。やはり中古市場ではネームバ
リューが大切ですね。それにしてもたかが文庫を新潮社ともあろう大出版社
が絶版になどしないで欲しいものです。
阿刀田高著「メトロポリタン」は著者の得意な奇妙な味の短編集です。いま
一つと言った作品もありますが全体的には良く出来た短編集です。
筑摩書房刊の「ぼくらの鉱石ラジオ」は子どもの頃楽しんだゲルマニウム
ラジオよりも更に古い時代の天然の鉱石を使ったラジオ受信機の話です。仕
組みから実際の組み立てまですべて手作りです。コイルの巻き方、鉱石の選
び方、ケースの製作、バリコンの製作まで載っている本はこれまで見たこと
もありません。カラー図版も多く見ているだけで楽しくなってしまいます。
コンデンサーの仕組みから容量の計算、リアクタンス、インピーダンスの求
め方まで全てに渡って細心の注意が払われて判り易く書かれています。
「マンガ中国入門」は黄文雄監修、ジョージ秋山画の力作です。日本からの
ODAが中国でどう使われているかを知ることだけでも読む価値はあると思
います。中国の歴史、文化、経済のありようから日本に対する政策の方針が
導き出されるプロセスが判り易く書かれています。これからは近隣諸国の声
を鵜呑みにして聞くだけではなく、自分たちでもっと勉強していくことが大
事だと思います。近隣諸国の多くは画一的な国民教育のせいで硬直化が進ん
でいますが、日本はその点では教育も政治もおそらく世界で一番開けている
国だと思います。書店や図書館に行けば自由に賛成意見も反対意見も見る事
が出来、言うことが出来ます。独立国として近隣諸国と対等につきあってい
くための常識を磨くためにはこのような本がもっと大いに読まれて良いと思
います。
もう10年以上も前になりますが「イワナの夏」という文庫本を読んで感動
して以来、久々に湯川豊の「夜明けの森、夕暮れの谷」を読みました。釣り
好きそれもフライ愛好家はもちろんですが釣りをしない人にもお勧めの一冊
です。この本は日本に残されている数多くの森林と渓谷などの自然の奥深い
たたずまいに我々をいざなってくれます。疲れた心を癒してくれる上質な釣
り文学です。しかしこの本に惹かれるのは多分エッセイの行間や底流に漂う
釣り人の悲哀のようなもののせいでは無いかと思われます。あるいは過ぎ去
った10年の時の重みが余計に感傷的にさせるのかもしれません。
岩波新書から出ている「ぼくのマンガ人生」は手塚治虫の講演記録をもとに
子ども時代からマンガ家になるまでの発言をまとめたものです。この本では
手塚氏が伝えたかった人生のメッセージが文章という形でじかに伝わって来
ます。所々にマンガもあり飽きさせない作りとなっています。
途中まで読んでそのままになっていた「夏彦の写真コラム傑作選@」は山本
夏彦氏のコラムの中のえりすぐりを集めたものです。読むたびに味わいを増
すような名文ぞろいです。短い文章の中に言わんとすることが詰まっている
ので絶対にお買い得です。立ち読みするにも好適です。
杉浦日向子が文春漫画賞を受賞した作品「風流江戸雀」を読み終えました。
古川柳を題材にして花見、吉原、行水、金魚売、夕涼み、夜蕎麦売りなどの
懐かしい江戸の風流、生活を描き出した情緒溢れる作品です。まるで江戸の
町を散歩しているかのようなゆったりとした時間の流れにひたれます。合掌
星新一の本を順調に読み進めています。「凶夢など30」はそのタイトル
通り30の短編からなるショートショートです。この中でも「捕獲した生物
」は星新一らしさが一番溢れた一篇ではないかと思います。
出久根達郎の著作「俥宿」を読み終えました。女飛脚人に続いての女性の
俥引きの登場です。本作でも軽快なテンポで事件が次々と起こっていきます。
それにしても「俥」はいかにもといった漢字ですね。字面を見ただけで時代
の雰囲気まで醸し出してくれる漢字はそうそうありませんが、この字は本の
イメージをよく表しています。
後にも先にも過去に一度だけですが纏め買いをして割り引きしてくれた新
刊本屋さんがあります。両手に大きな袋いっぱいずつ約40〜50冊の纏め
買いですが、この時は千円単位の端数?をすべて割り引いてくれました。
このような例外を除けば、纏め買いの効用は腕が逞しくなる以外にはまず考
えられません。チケット売り場で図書券を3%引きで買ってから1冊ずつ手
塚治虫全集(301〜400巻)を買うのと100巻纏め買いをするのとを
比べると支払う金額に差が出ます。一冊650円平均とすると100冊バラ
で購入した方が1050円お得です。もともと3%割引だった図書券がこの
ように使うと約4.6%引きで購入したのと同じ結果になります。現金購入
と比べれば何と3000円お得です。
あとで買おうと思っていて店頭から姿を消す本が続出です。「モールス・
キーと電信の世界」という本が先週新刊で山積みになって出ているのを見掛
け、ちょっと高いけどどうしようかな〜と思っていたらもう一冊も残ってい
ません。その昔、まだ真空管でアンプなどを自作していた頃にモールス符号
の覚え方などをつまみ見て以来、覚えきれていない事がトラウマになってい
るのか気になってページをめくってみるとなかなか良い本であるとの印象を
受けましたがその日は既に3冊も別の本を買った後だったのと2940円と
いう値段をみてちょっと引いたのが敗因だったようです。店頭から一旦消え
た本を探すのはなかなか大変です。緊急信号発信です。・・・−−−・・・
早くインターネットで注文しなくっちゃ!!覚え方の例はこんな感じです。
A………亜鈴(あ・れー) ・−
B………棒倒し(ぼー・た・お・し) −・・・
D………道徳(どー・と・く) −・・
E………絵(え) ・
F………古道具(ふ・る・どー・ぐ) ・・−・
竹内薫著「よくわかる最新宇宙論の基本と仕組み」は最新の宇宙論を豊富な
画像や図表で1項目ずつ判り易く解説している宇宙論の入門書です。超ひも
理論をはじめとして訳の判らない用語が沢山出て来ますが身近な用例で例え
て解説してくれているのである程度は理解出来た気になります。それでも「
宇宙はポアンカレの十二面体になっている。」などの説明はどう聞いても理
解が出来ません。たまにはこのような本を読んで137億年の旅を楽しんで
みるのも良いかと思います。
永らく単行本の出版を待っていた陰陽師12巻は先週出た途端に購入しまし
た。夢枕獏の原作をもとに岡野玲子が書いている漫画ですが画法の素晴らし
さは抜群です。それだけでも購入する価値はあります。見たことの無い方に
はお奨めです。漫画といえどもあなどれません。次回作のLが完結編となる
そうです。今から出版が楽しみです。
阿刀田高著「黒喜劇」は鯉釣りの合間に読んでいた本ですが先日のいきなり
の土砂降りでびしょぬれよれよれになってしまいました。やっと残り半分を
読み終えましたが捨てようかどうしようか迷っている所です。しかし中身は
いろんなアイデアが詰まっていて良い本です。
8/8〜8/12は夏休みなので通勤時間での読書と昼休みの読書が出来ま
せん。鯉釣りは一投すると魚信が無い限り1Hr以上は暇なのでこの間に本
を読んでいます。この時間で読み終えたのが三島由紀夫の「文学的人生論」
です。かなり集中して読んでいましたが三島由紀夫の文学論はやはり難しい
です。私の生まれる前の著作ですがいまだに古びていない内容が多いです。
進化論の現在の成果を取り入れたキャスリン・サーモンの著書『女だけが楽
しむ「ポルノ」の秘密』を読み終えました。竹内久美子訳の極めて真面目な
本です。進化論の現在と題したシリーズの6冊目ですが他の著作と同様、こ
の本もなかなか難しいです。
最近インターネットで本を注文することが多くなりました。生活圏内で立ち
寄ることの出来る本屋はだいたい限られると思いますが、本屋のスペースは
売れ筋の新刊中心に取られてしまうためにお気に入りの作家の古い本などが
書棚に並んでいないことが多い所為と、絶版のスピードが加速している事に
よります。そのうちに買えば良いと思っていて2年も経たないうちに絶版に
なるケースも結構あります。このような事態を憂いて最近手塚治虫漫画全集
の301〜400巻を片端から買い始めました。因みに1〜300巻は大昔
に購入済みです。本も結構重たいので先日は20冊纏め買いして肱を痛めて
しまいました。残り80巻ですがその後はインターネットで10冊程度注文
を出して本屋に入荷したら1日1冊というペースで購入し続けています。さ
すがに毎日一冊づつ購入していると本屋さんのレジの全員に顔を覚えられま
すね。この手塚漫画全集にしても既に「ゴブリン公爵(2)」が絶版で入手
不可です。400巻のシリーズ物で、しかも2冊で上下巻になっている片割
れが絶版と聞いた時はさすがにがっくりしました。しかし、落ち込んでいる
間に本当に入手出来なくなるので早急に古書市場に出回っている新品同様の
品をインターネットで注文して入手することが出来ました。送料混みで新品
並みの値段です。絶版さえ無ければお気に入りの本をあわてて購入する必要
はないのですがこのところ残念ながら溜め込んでおく本が増える一方です。
D・W・バッファの4冊目の文庫「遺産」を読み終えました。一作目ほどで
はないかも知れませんがやはり素晴らしい出来です。ストーリーも一筋縄で
はいかず最後の最後まで油断出来ません。構想自体は一作目をはるかに凌ぐ
テーマを扱っていますが、言ってみればタブーとなっているテーマに触れて
いるだけに暗黙の制約もあるのだろうと思います。我が国でいえば皇室のス
キャンダルを扱うようなものなのだと想像出来ます。まだ読んでいない2作
目、3作目も今度読んでみたいと思っています。しかし500ページを超え
る文庫はポケットにも入らないし持ち歩くのはちょっと難儀です。
「わかることはかわること」読了しました。養老孟司/佐治晴男の対談集で
す。片や解剖学、片や天文学という取り合わせですがいつもながら話は多岐
にわたり内容には薀蓄がこもっています。
竹内久美子監修「恋のカラクリ」第一刷は実に誤字、脱字の多い本です。宝
島社はもうちょっとしっかりして欲しいと思います。最新の動物行動学に基
づいて纏められているので興味本位で書かれている割には内容はしっかりし
ています。加えて随所にちりばめられたあいかわももこのマンガが実に的を
射ていて笑わせてくれます。
「私の脳はなぜ虫が好きか?」ご存知、虫好きの養老孟司の最新作です。虫
の話だけでなく物の見方についての知見が随所に現れていて故山本夏彦翁の
著作のように甲乙両面から話を進めている点は大いに買いだと思います。
阿刀田高選「奇妙におかしい話」は一般応募作の中から優秀作を選んで編ん
だ短編集です。やはり出来が今ひとつです。アイデアとしては面白いものも
ありますが読ませる短編になるにはまだクリアしなければならない壁がある
ようです。「おかしい」という区切りが曖昧な所為もあるかもしれません。
出久根達郎著「御書物同心日記<虫姫>」は釣れない鯉を待つ間に読み終え
てしまいました。本を読んでいる暇のある川釣りは鯉くらいですね。一投す
ると魚信が来ない限り最低でも1時間から2Hrはそのままなので結構ひま
が出来ます。この休日は魚も休みだったようでおかげで読書が進みました。
星新一「午後の恐竜」は星作品の中でも良いアイデアの詰まった一冊です。
わずか2日に満たない通勤時間で読み終えてしまいました。
吉村仁著「素数ゼミの謎」はこれまで知られていた17年ゼミの進化の謎に
オリジナルのアイデアを加えて絵本の体裁で進化論を楽しく教えてくれる本
です。氷河期を経ることで幼虫時代が伸びたという着想は面白いと思います。
周期の違うゼミが交配していくとその比率がどうなっていくかという説明も
優しく判り易く出来ています。挿絵もほほえましいものです。
ジュンパ・ヒラリ著の「停電の夜に」は話題になった本ですが、個人的には
あまり感動できませんでした。ピュリツァー賞を受賞しているくらいなので
多くの方には受けているのでしょうが、どうも感性が合いません。表題作は
まだ読めますが、それにしても大騒ぎするほど感動できる物語ではないよう
に感じます。物語があまりにも淡々と進みすぎるのが私の時間感覚とシンク
ロしないみたいです。
河合隼雄/養老孟司/筒井康隆のシンポジウムでの対談と各人の笑いに関す
る考察が1冊に纏まった本が岩波書店「笑いの力」です。もともと「笑い」
には定義などないので、各人が心理学者、医学者、作家という基盤をもとに
笑いをまくらにいろいろな知見を披露してくれており、それがこの本の身上
です。やはり、抑圧やタブーなどがブラックユーモアの一番の根源のような
気がします。
宮部みゆき著「日暮らし(上・下)」を読み終えました。前作ともいうべき
「ぼんくら」の舞台を背景にして今回もまたまた、ぼんくら同心の井筒平四
郎、美形少年の弓之助、煮売屋のお徳などが大活躍です。宮部みゆきの時代
物はほのぼのとして心地よいです。
奥本大三郎/岡田朝雄共著の「楽しい昆虫採集」は前から読もうと思ってい
てなかなか読めなかった本です。夏を告げる蝉が鳴き始めたのを期に読み始
めました。予想していた以上に良い本です。いまどき昆虫採集の本なんてと
いう声が聞こえて来そうですが、この本は悪く言えば非常にマニアックな本
です。トラップの仕掛け方、展翅の方法、採集用具、標本製作、昆虫関係の
関係団体・学会一覧、器具販売店、国産蝶類食草一覧、天然記念物一覧まで
どれをとっても専門的な深みを持ってなおかつ判り易く記載されています。
所々に入っている奥本大三郎のコラムも笑いを誘います。昆虫離れが進んだ
昨今だからこそ今一度読み直してみる価値のある本だと思います。
星新一の「マイ国家」よくもまあいろいろなアイデアを作品に仕上げていく
ものです。この31短篇にもさまざまな特色ある作品が収められています。
星新一の1001篇目となる短編が収められた「どんぐり民話館」を読み終
えました。気軽に読めるところが星作品の利点です。
「そして殺人者は野に放たれる」はノンフィクションの告発の書です。著者
はジャーナリストの日垣隆です。この本を読むと@刑法三十九条を温存させ
ている司法界、A精神鑑定の専門家による判で押したような心神喪失や心身
耗弱の認定、B裁判官による無罪、減刑判決、C心神喪失や心身耗弱と鑑定
された場合に一切報道がされなくなる現実に本当に理不尽さと怒りを感じま
す。新聞やニュースで当初大きく報じられたいわゆる通り魔事件や信じられ
ないような凶悪犯罪が実は片端から無罪になっている現実がこの本で浮き彫
りにされています。信じられないような数字ですが2002年の犯罪白書で
は心身喪失的凶悪殺人者115人のうち実に90人が不起訴(いわゆる無罪
)、24人が刑の減刑を受けているそうです。もちろん被害者はすべて泣き
寝入りです。怖いことには無罪放免となった加害者には治療が義務付けられ
ている訳でもなく、場合によっては一ヶ月もするとそれこそ野放しになると
いうことです。当然、精神障害の可能性が出てからは報道もされないため、
当初世間中で大騒ぎをしたような事件でも事件そのものが無かったかの如く
扱われると言った意味で被害者遺族には癒される道も閉ざされています。
このような現実が世間で放任されているということは今では誰でもが安心も
出来ずにいなければならないということです。この本は、そのような被害に
実際に遭った当事者による著作であるので当然被害者側の一方的な意見も含
まれているとは思いますが、それを差し引きして我々のような一般の生活人
の視点からみても著者の言っていることは普通の考え方であると思われます。
もちろん専門家から言わせれば素人考えと言いたいところはあるかと思いま
すが、被害者になる可能性のある社会人から見れば絶対に今の制度は被害者
無視、加害者への過保護があると言わざるを得ません。このような現実があ
るということをもっと多くの人が知るべきだと思います。安心して住める日
本はいったいどこに行ってしまったのでしょうか。
山田真哉著「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」は判りやすい会計の本です。
タイトルにある「さおだけ屋」の話、「ベッドタウンにある高級フランス店
」の話、「在庫だらけの自然食品店」の話などなど身近な疑問を取り上げて
会計の考え方をわかりやすく紹介してくれます。一読の価値はあると思いま
す。
藤森照信著「人類と建築の歴史」を読み終えました。建築の歴史といっても
この本はだいぶ変わっています。何しろ竪穴式住居から始まって地母信仰、
太陽信仰、スタンディングストーン、ピラミッドを経て春日大社、モダニズ
ム、現代建築へと話は進みますが建築様式だけにとどまらずに石器に始まる
道具の変遷や神様との関りから建築を紐解いていくというアプローチです。
他者と一味ふた味違うのは建築探偵の面目躍如といったところでしょうか。
藤原正彦/小川洋子の対談と言う形の「世にも美しい数学入門」が手ごろな
新書版で出版されたことは慶賀すべき出来事だと思います。それほど期待し
て読み始めた訳ではありませんが予想以上の良い出来です。なんといっても
我々素人向きであること、タイトルにたがわず本当に美しい数学の数々を判
り易く例示してくれること、日本人が果たして来た数学への貢献を明確に示
してくれているなど数学の和洋の歴史の一端も織り込まれていること、二人
のトークに味があり飽きさせないことなど薄い本の割には内容が充実してい
ます。阪神タイガースの江夏投手の背番号が完全数であることやオイラーの
公式の美しさ、ゴールドバッハの問題、フェルマー素数が正17角形が定規
とコンパスだけで描けることに関係していることなど貴重な話が難しさ無し
で理解出来た気にさせてくれます。もちろん近年解けたフェルマー予想にも
触れています。この証明に「谷山−志村予想」「岩澤理論」が深く関ってい
ることについてはよく纏まっていて判りやすいです。しかしさすがに前者の
骨子である楕円曲線とモジュラー形式の結びつきの中身までは描く余白は無
かったとみえて簡単にふれているだけです。これについては新潮社の「フェ
ルマーの最終定理」に詳しいです。数学とは美しきもの、また数学の中には
神様がいろいろなものを隠しているというフレーズがなかなか印象的です。
「市塵(上・下)」は市井から出た一儒者である新井白石の業績・生涯をテ
ーマにした藤沢周平の歴史小説です。疲弊した経済の建て直しや対外外交の
手腕を資料を踏まえた上で的確にしてなおかつ小説としての面白さを十分に
加味して描いています。歴史を学ぶ楽しさを味わえます。
養老孟司の対談集「脳という劇場」を読み終えました。米長名人、荒俣宏、
南伸坊、丸谷才一、山根一眞など各界の著名人16人との対談集ですがよく
考えてみると養老孟司ほど対談集の多い作家も珍しいように思います。薀蓄
には富んでいますが難しい話も多くなかなか話を理解できない所もあります。
赤瀬川原平著「赤瀬川原平の名画読本」は名画と言われている15の作品に
ついて、画家でもあり芥川賞受賞者でもある著者によって自由な見方で鑑賞
した感想を述べたものです。先入観に囚われることなく我々素人が名画を見
るときの良い入門書となってくれること請け合いです。
田中一規著「マンガ種の起源」読み終えました。漫画といってもあなどれま
せん。内容はかなり高度な最新の知識を反映しています。但し、あまりにも
知識をてんこ盛りした為にマンガとしての面白さが少し損なわれています。
世良康著「アユが釣れる人、釣れない人」は最新の鮎釣りの技術を楽しいマ
ンガとともに41のテーマに分けて解説したものです。従来は掛かり鮎はラ
イナーでかっこよく引き抜くのが主流でしたが、いまやふわり抜きと呼ばれ
る取り込みに取って変わろうとしているようです。また、ごく楽背バリやス
ーパーウエポン背バリ、おもりを付けるか付けないか、ハリスの長さ調節、
3本イカリと4本イカリの長短、遊動式天上イト、アミ付け、金属ラインの
先イトの長さ、遊動式ハナカン、場所移動の優劣などなど話題は尽きません。
名人には名人なりにこのようなさまざまな点での工夫点があるようです。
これらを研究、導入することで釣果を伸ばすことが出来そうな気がします。
星新一著「つねならぬ話」読了です。星新一の短編は納得できるようなオチ
があるのが普通ですが、この短編集ではあえてそういう結末もあるんだなあ
という終わり方の短編が多く集められています。そういった意味では変わっ
た短編集です。
函入り・帯付・月報・蔵書票付きの装丁本、喜国雅彦の「本棚探偵の回想」
は本マニアの著者ならではの集書にまつわるあれやこれやを惜しげもなく盛
りこんだ飽きさせない一冊です。古本屋めぐりが一段と楽しくなること請け
合いです。
星新一著「かぼちゃの馬車」読了です。まだまだ読んでいない本が多数ある
ので当分は気晴らしがてらに楽しめます。短編なので読みやすいのですが、
著者の本には必ず独特のイラストが何ページかに1枚あるので、それと判る
人にはすぐに星新一の本だと判ります。時にはこのイラストが無ければ良い
と思うこともあります。
藤本ひとみ「見知らぬ遊戯」は鑑定医シャルルシリーズ第一作目です。2つ
の事件の犯人側の心理状況を描くかに見せて、それを解明していく憲兵隊と
鑑定医それぞれが抱えた心の葛藤をあぶりだしていく手法は流石というしか
ありません。この副線が事件の進行と交差しながら解決へと向かっていく手
際は見事です。著者の犯罪心理学に対する造詣の深さにも驚きです。
子どもたちの質問・相談に養老孟司が本音で答えた「バカなおとなにならな
い脳」を面白く読みました。子どもの真剣な質問の中には思い込みの烈しい
かなり硬直した質問もありますが、そのような質問に対しては真正面から向
き合って子どもを諭し正すという真摯な姿勢がみられ、本当の教育者らしさ
が随所に垣間見られます。養老孟司の本の中でも極めて平易に書かれた本音
トークです。
橋本治はいろいろなジャンルの本を書いていて何が本業か判らないような所
がありますが、「勉強ができなくても恥ずかしくない@AB」もジャンル分
けの難しい本です。しかし書いてある内容も伝えようとしているメッセージ
も判り易い本です。小さなお子さんを持った親御さんに一読お勧めの本です。
泡坂妻夫著「蚊取湖殺人事件」は著者の得意とするミステリー、奇術、紋章
上絵師などが全編にちりばめられた珠玉の短編集です。7篇の内の5篇がハ
ードカバーにならずにこの文庫に直接収められたということで貴重な最新作
といえます。ミステリー好きにとってはこの著者のトリックの謎解きの仕掛
けには定評があることは周知のことなので今回はあえて中身には触れません。
せきねはじめ著「知っておきたい将軍さまの四字熟語」は主に北朝鮮の話題
を中心にした四字熟語講座です。漢検1級の著者による作品なだけに本当に
現在の政治状況と四字熟語の勉強になります。右顧左眄、悪逆無道、阿鼻叫
喚、朝令暮改、我田引水などの判り易いものから苛斂誅求、綱紀廃弛、籠絡
人心、抽薪止沸、風声鶴唳などの難しいものまで60の四字熟語がマンガを
媒介にして適切に解説されています。時事問題の内容もホットな話題ばかり
が取り上げられています。
桐野夏生の最新刊「魂萌え!」は書評どおりの出来栄えです。突然に夫を失
った壮年の婦人の心理状況と彼女を取り囲む家族、友人、知人それぞれとの
葛藤や迷い、いさかいなどが良く描けていると思います。難を言えばそれま
で貞淑な妻であった主人公がいろいろな要因はあるにしても急に不義に走る
流れに無理があると思われます。「OUT」では普通の主婦たちが異常な行
動に入り込んでいく過程に無理がなかっただけに最後まで緊張を持って読み
通す事が出来ましたが、今回の本については通しては良く出来ていますが導
入部でのつかみでは失敗していると思います。惜しいことです。
藤沢周平の著書をまた一冊読み終えてしまいました。「周平独言」は著者に
は珍しく時代物ではなくエッセイ集です。藤沢周平ファンとしてはこのよう
な本もやはり読みたくなる一冊だと思います。著者もあとがきで書いている
ように日常の言葉で書かれた読者へのメッセージであり、文章にはいかにも
この著者の味が出ていますが薀蓄を盛り込んだようなものではありません。
養老孟司/和田昭允の対談集「科学は豹変する」を読み終えました。医学博
士と理学博士の対談で話は深く多岐に渡っていますが、対談の特色を出そう
とした編集方針のせいかそれぞれの発言のあとに感嘆詞や相槌などの文句が
入っているのが耳障りです。付録の「小柴カミオカンデプロジェクト」と「
和田DNAプロジェクト」の相違点についての和田証言が私には一番面白か
ったです。
堀江珠喜著「人妻の研究」面白そうなので読んでみました。歴史上に出てき
た「妻」「人妻」「夫人」「マダム」「ママ」「奥様」「金妻」などを文学
や歴史を紐解きながら分析しコメントしています。「人妻」の歴史のおさら
いといった態の比較的真面目な読み物です。内容はタイトルほどは面白くあ
りません。
山本夏彦の傑作選である「夏彦の写真コラム傑作選A」は単行本5冊に収録
された509編の中から選抜された100話が掲載されています。山本夏彦
氏を知るのにはこの傑作選の特に@を読むとほぼ著者のひととなりがつかめ
るかと思われます。山本夏彦氏の文章は単純明快だと私などは思いますが、
表裏一体となっているような事柄を見事に一刀両断したかに見せて、言わん
とすることを見事に言ってのける技の冴えが横溢する文章は、物事を単純明
快に断罪したがる一群の人には理解しがたいものとなっているかもしれませ
ん。頭は柔軟にしていてこそ正しい判断が出来るという良い見本帖です。
「カブトムシと進化論」このタイトルに引かれて思わず本を手にした虫好き
の方も多いと思います。カブトムシ/クワガタムシにはどうして心引き付け
るものがあるのか不思議です。河野和男はこの道の大家、いわゆる虫屋にし
てなおかつ本業の仕事では国際的なキャッサバの育種家として各国から表彰
されているような人物です。品種改良の経験を生かし保有する膨大な甲虫類
の分類を推し進めた上での進化論議論には傾聴する価値があります。これま
での進化論についても良く吟味を加えカブトムシ/クワガタムシの種間の変
異や地域差などから展開していく議論には無理がありません。進化論の議論
では声を大にして自説を主張する手合いが多いですがこの本には賛否はとも
かくとして人を納得させるものがあります。24ページもあるカラーの写真
だけでも見て損はありません。中身は学術的な面も踏まえた上で、なおかつ
我々素人を想定読者として書かれていて更にはドーキンスのような適所での
ボルヘスやワイルド、新約聖書、鴨長明などの警句、フレーズを示して内容
の品位を高尚なものにするのに一役買っています。
小林路子による絵本「森のきのこ」を読み終えました。美術協会会員にして
キノコの仙人と呼ばれる著者の手になる本だけあってどのキノコも本物以上
の本物らしい出来ばえです。この作者による絵の素晴らしいのはキノコ以上
にその背景に精密に描かれているコケである落ち葉であり森の雰囲気です。
辻原登の著作は先日「村の名前」を読みましたが、今回読んだ「枯葉の中の
青い炎」の方がはるかに良い出来です。6篇の不思議な世界を垣間見ること
が出来ます。それぞれに味わいが違う物語なので一言で説明するのは難しい
ですが、毎日新聞に載った書評の掉尾では以下のように解説されています。
『緻密な観察と細部への偏愛、そして現実に肉薄しようとするリアルな姿勢
に貫かれながらも、東西の文学の博読によって鍛えられた想像力が自由奔放
に時空を超え、妖しくも不思議な空間を現出させる。そんな物語の快楽を存
分に味わわせて作品集だ。』書評者は沼野充義氏。
星新一著「たくさんのタブー」の解説には星新一の海外での翻訳数の多さに
ついての説明が載っています。20年前に既に363点の作品が20の言語
の翻訳されていたと言うからすごいものです。1000作を超える作品に、
外れというものがないのもすごいものです。
阿刀田高著「殺し文句の研究」と辻原登の新作「枯葉の中の青い炎」を並行
して読んでいますが、奇しくも双方の書にラピスラズリ(青金)という宝石
が出て来ます。この宝石は12月の誕生石(トルコ石、ジルコン、ラピスラ
ズリ)の一つでもあり、また天空の城ラピュタの飛行石としても知られてい
るのでご存知の方も多いかと思います。星の瞬く夜空を連想させる紺碧色の
宝石で安いものは3千円程から、質の良いものになるとダイヤモンドよりも
高額になるものもあるそうで、前著に出てくるラピスラズリの金額は30万
円、後者の本でテーマの主要なポイントを担っている宝石は何と300万円
程という高価なものです。この小品は奇妙な味の物語に仕上がっています。
テリー伊東/養老孟司の対談集「オバサンとサムライ」を面白く読むことが
出来ました。日本再生の鍵はサムライの復活ではなくこれからは一番元気な
オバサンの生き方を見習っていくべきだということで、巻末にはオバサンの
代表である扇千景の生き方を教訓に最強の「オバサン道」10か条を載せて
います。養老孟司も普段より本音を出してテリーとの対談に臨んでいます。
阿刀田高著「海外短編のテクニック」O・ヘンリーやカフカ、モームなどの
有名短編作家の見るべき著作を提示してその短編のどこが素晴らしいのか、
そのテクニックのありかなどを探求した成果を判り易く解説してくれます。
てだれの短編作家による分析だけに内容は濃いです。
出久根達郎著「漱石先生とスポ−ツ」は朝日新聞に連載したスポーツに関す
る掌編や観戦記をまとめたものです。古い時代の日記などを著者が丹念に探
して当時の時代背景や漱石などの著名人がスポーツをどう捕らえていたかな
どを探り出して行くのがこの本の醍醐味の一つです。
星新一「ひとにぎりの未来」読了です。1000編と言われる著者のショー
ト・ショートも一冊ずつ着々と読み進んでいます。
ピーノ・アプリーレ著「愚か者ほど出世する」を読み終えました。この手の
本は紹介がしにくいです。養老孟司が序文で「こういう本のいいところは、
固定観念を変えて、脳を開放してくれるところである。ただし、読んでそう
思えない人には向かない。」とあるように固定観念を変えてくれる可能性を
秘めた本です。目次には序文『バカの意義』に続いて『バカなやつほど生き
のびる』『バカは人まねができる』『のさばるのはバカばかり』『人間は寄
れば寄るほどバカになる』などなど『バカ』のオンパレードです。だからと
言って決して雑本の類ではありません。著者はイタリア人ジャーナリストで
雑誌の副主幹を務めるような人であの動物行動学者コンラート・ローレンツ
とのインタビューから話は始まることからも、この本がただのバカ本ではな
いということが判るかと思います。いくらかでも興味のある方は先ずは序文
だけでも読んでみることをお勧めします。但し、単なる面白さだけで言えば
序文が一番面白いように思います。
「枯葉の中の青い炎」辻原登を購入してからだいぶ経ちますがまだ読めてい
ません。そうこうしているうちにこの本が第31回川端康成文学賞を受賞し
たというニュースを聞きました。そろそろ読み始めようと思います。
池田清彦が角川書店の小冊子である「本の旅人」に連載した30話を1冊に
纏めた「やがて消えゆく我が身なら」読了です。身も蓋も無い口調で信念を
もって時世を斬って捨てた思われるエッセイ群にはなるほどとうなづける話
と、これはどうみても著者が一方的な見方で書いていると思われる話題とが
混在しています。どう捉えるかは読む人の見方次第ですが一読の価値はある
と思います。本の帯には養老孟司の「本当のことをこれだけはっきり、短く
書く人はいない。しかも笑える」との推薦の一言が載っています。
古本屋で探してみても見つからなかった「きのこ」の画集が近くの図書館に
置いてあることが判り早速借りて来ました。きのこ画の第一人者である小林
路子の描いた作品500点以上の中から厳選した64枚がこの画集に収めら
れています。きのことともに描かれているコケや落ち葉、雑草にいたるまで
丁寧に描かれています。絶版で入手が出来ないのが残念です。一番増刷して
欲しい一冊です。山と渓谷社に期待したいところです。でも見る事が出来て
良かったです。
岩谷テンホー著「みこすり半劇場20」あっというまに読了しました。その
名の通り大人向けの四駒マンガで大いに笑えます。
久々にやってしまいました。電車内ではたいてい本を読んでいますが帰りの
電車でつい真剣に本を読み過ぎてしまい乗り過ごしてしまいました。気付い
たのは次の駅近くで車掌が隣の駅名への到着を知らせるアナウンスをするの
を聞いて外を見て本当に隣の駅だと気付いてからでした。アナウンスが聞こ
えなければもう一駅くらいまで先に行っていたかも知れません。何をそんな
に真剣に読んでいたかというと藤沢周平著「よろずや平四郎活人剣(上)」
というごく普通の本です。ちょうど上巻の最後の佳境に入った所を読んでい
たのが運の尽きでした。なかなか最後の一話「一匹狼」は読ませます。
「よろずや平四郎活人剣(下)」も四日後に読み終えました。
「虹の解体」早川書房刊をやっと読み終えました。内容が多岐に渡り啓発さ
れることが多い本です。リチャード・ドーキンス著だけあって先端的な知識
を易しく教えてくれます。さすがに専門家は違います。科学的な知識を知る
ことがいかにわくわくして詩情も広げられるか縷々述べられています。虹の
光の話から説き起こしてフラウンホーファー線、ドップラー効果を判り易く
説明したあとで、これらの知識によって星までの距離が測定出来ることや、
これを元にしてビッグバンの起こった年代までの計算が出来ることを淀みな
く論理的に説明してくれます。もちろん遺伝子の話もあります。
落合恵子著「午後の居場所で」朝日新聞連載のエッセイ集です。人生の午後
をテーマにした一話3ページほどの”日常の一画を切り取った”風の小話集
だけあって華やかな所はありませんがしみじみと読める文には出会えます。
「奥の細道 芭蕉が見た風景」は芭蕉の旅の日記の現代語訳とカラー写真の
旅の景勝地が織り成すコラボレーションが310年という時代を超えて奥の
細道に我々をいざなってくれます。何と言っても写真が綺麗です。俳句作り
は出来なくても奥の細道への旅に出掛けようという気にさせる一冊です。
朝日新聞社刊の「まるごと宮部みゆき」は04年7月までの宮部作品全てを
対象にした様様な視点から解析した宮部論兼資料集です。宮部みゆきファン
必携の一冊です。
辻原登の芥川賞受賞作「村の名前」を読み終えました。桃源郷を題材にした
幻想的な作品です。作品の好悪については芥川賞での選評と同様、評価の分
かれる所かと思います。ストレートに感動出来たり引き込まれるような作品
では無いので、この本を味わうには読む前に文庫の解説に目を通しておいた
方が良いかと思います。個人的にはこの作風には馴染めそうもありませんが
最新作の「枯葉の中の青い炎」は書評に釣られて既にハードカバーで購入し
てしまっているので、こちらに期待したいと思います。
大沢オフィスのメンバである大沢在昌/京極夏彦/宮部みゆきによる1冊目
の共著「大極宮」を読み終えました。それぞれの人となりが良くうかがえる
著作です。それにしても宮部みゆきがそれほどまでのゲームマニアだとは思
っていませんでした。ドリームバスターもICOもブレイブ・ストーリーも
この流れだということがやっと判りました。
星新一のショート・ショートは長編で疲れた時の息抜きに丁度良いですね。
星新一の著作はまだ沢山読み残しているので当分は楽しめそうです。今回読
んだ本は「どこかの事件」です。ちょっとミステリアス調の濃い内容です。
中公新書で出た「フライフィッシング(カラー版)」齋藤直樹著はちょうど春
のヤマメ、イワナ解禁にあわせて発行されたもので釣りの技術、道具の紹介
だけでなく、釣りの楽しさを味合わせてくれる一冊です。釣りの技術や道具
も日進月歩で変わっていきます。2005年2月刊行のこの本にはそんな最
新のノウハウが詰まっています。
斎藤綾子の久々の文庫です。この本の解説には『愛より速く』『結核病棟物
語』と本書『欠陥住宅物語』を著者の自叙伝三部作と表現していますが著者
の奔放で堅実な生活を知るのにこの三作目は実によく構成されていると思い
ます。著者らしさも出ているし堅実そうな生活の一旦も伺い知ることが出来
ます。一作目のような衝撃はありませんが文章はあいかわらず上手です。実
にきわどい内容を描いていても文学作品として読めてしまう所が著者の持味
です。もっといろいろ作品を発表して欲しいものです。
泡坂妻夫の夢裡庵先生捕物帳シリーズ3作目「飛奴」を読み終えました。こ
の著者によるシリーズ前2作については品切れ・重版未定のままです。文庫
にしてから絶版やずっと品切れのままにするのは止めて欲しいものです。そ
れもシリーズ物の前2作が読めないなんて論外です。内容はこの著者による
シリーズ物で外れがある訳がないのは宝引の辰シリーズや曽我佳城物や亜愛
一郎シリーズのどれかを読んだことのある読者なら誰でも判っていただける
ものと思いますので紹介は省きます。
木乃倉茂著「ツチノコ」は昭和17年の長野県で捕獲された野槌(ツチノコ
)の記録と言われているものを著したものです。真偽のほどは各人の判断で
すが、この本の眼目は野槌の実物写真と骨格標本の写真だろうと思います。
昭和17年以降に一匹も捕獲されていないことは重大な否定材料ですが写真
についてはこれまでツチノコの話題では見ることの出来なかったかなり信憑
性のある写真だろうと思われます。興味のある向きには一読お勧めです。
ピーター・シンガー著「現実的な左翼に進化する」は竹内久美子訳の「進化
論の現在」シリーズの一冊です。左翼と進化論がどこで結びつくのかと怪訝
な向きもあろうかと思いますが進化論的な考え方はこんな所にも応用が利く
のかという良い見本だと思います。なお、このシリーズは全7冊です。
出久根達郎著「二十歳のあとさき」読み終えました。二十歳の頃までの著者
の修行時代の日記を小説仕立てに脚色した作品です。古本屋という職業柄、
いろいろ面白いエピソードが随所に出て来ますが、著者の初期の頃の珍談や
奇談に溢れた掌編に比べるとやはり質がだいぶ落ちているように思えます。
古本綺譚、古書法楽、古書彷徨など本当に胸躍るような話をまた目にしたい
ものです。出久根達郎も有名作家になってしまったのでもう無理ですかね。
今年何冊目になるか既に判りませんが、養老孟司の1986年の著作である
「脳の中の過程」を読み終えました。この本にはもう「バカの壁」という言
葉が出て来ており、いかに昔から著者が人と人との理解の壁を意識していた
かを知ることが出来ます。この本でもいろいろ貴重な知見を得ることが出来
ますが、惜しむらくは校正が不十分であるという点です。多くの「な」が「
た」に化けています。それだけならまだ許せますがどうにも意味の通じない
箇所があるのには閉口します。イッカクというイルカの話では歯の回転の方
向が問題となっていますが左側が伸びるのか右側が伸びるのか良く理解出来
ません。どこかに左右についての誤記があるような気がします。
出久根達郎著「犬と歩けば」読了です。犬好きの著者による犬と共にすごし
たいろいろな出来事をつづっています。手だれの著者によるエッセイなので
ちゃんとした読み物になっています。
「読書談義」は渡部昇一氏と谷沢永一氏による読書に関する対談集を文庫と
して発行したものです。初出は25年も前の対談から始まっていますが少し
も内容が古びていないどころか読んでみたくなる本がまた増えてしまいまし
た。やはり読書好きで博識の2人の対談だけあって押さえどころが確かです。
板倉聖宣著「禁酒法と民主主義」を読み終えました。この本も小冊子なので
読みやすい本です。禁酒法の歴史や禁酒に至った背景や解除になった経緯な
どが平易に解説されています。
板倉聖宣著「おかねと社会」は100ページに満たない小冊子なので僅か2
日で読み終えてしまいました。日本の貨幣の歴史を教育的観点から纏めた本
で、にせがね作りと為政者の政策、貨幣の質の変遷などの項目をQ&Aの形
式と補足説明という形で記述しています。この著者の本全般に亘って言える
事ですがきわめて平易に出来ています。だからといって内容が薄っぺらい訳
では無く普通の歴史では決して出て来ないような多彩な内容を含んでいます。
「不機嫌の時代」は大正時代に活躍した森鴎外、夏目漱石、永井荷風、志賀
直哉などの著作とその人物を文芸評論家の冷徹な眼で斬新な視点で切り取っ
た山崎正和の功績の集大成と言えるような作品です。不機嫌や不安といった
上辺だけの言葉に陥り易い時代の雰囲気を明確に定義し作品を通して解析し
ていった手腕は流石といったものがあります。山崎氏のこの著作を読むこと
でこの時代の一見つまらなそうな作品がどのような意義をもっていたのかの
一端を垣間見ることが出来、単なる古典から少し格上げ出来ること請け合い
です。多少、内容が難し目のところは措いても一読の価値はあります。
養老孟司著「臨床哲学」を読み終えました。養老孟司は著作が多いですが、
いろいろな所で似たような話もしているため全く新しい話は少ないです。こ
の本ではかなり要約して話をしている部分があるためこれまでの著作をいろ
いろ見ている人にはわかりやすいですがこの本を最初に見たりすると舌足ら
ずの様に感じられる部分が多いのではないかと思われます。この本には表題
通りの内容の箇所と脳の構造、機能、発生と解剖の歴史などの異なる内容の
ものが5つに章分けされて語られています。
養老孟司著「生の科学、死の哲学」を読み終えました。この本は養老孟司と
約20名の方との対談集です。いとうせいこう、佐藤雅彦、東海林さだお、
夢枕獏、妹尾河童、安部譲二など錚々たるメンバーを相手に見所満載です。
河合隼雄著「影の現象学」は影というものをいろいろな観点からまじめに捉
えて論じた哲学書です。ユングの影、トリックスター、自我と影、二重人格
など内容は充実しています。
山口椿「好色江戸川柳」は手だれの作家による江戸川柳の解説ですが川柳を
だしに使って現代風俗を描き出したといった方が当たっているかもしれませ
ん。話が縦横無尽に飛ぶので素養が無い下々にとっては理解しがたい内容が
あちこち散在しますが、一味違った川柳がここにあります。
小笠原京の小説はこれまで文庫本しか買ったことがありませんが、何分にも
寡作の作家なので読む本が無くなってしまいました。「見返り仏の女」は初
のハードカバーの本での購入となります。インターネットでの注文で入手し
たものですが、途中の1ページがくちゃくちゃになっていたことに読み始め
てから気が付きました。もう返品もきかず後の祭りです。やはり購入してす
ぐに確認だけは必要なようです。肝心の内容ですが4篇の掌編それぞれに味
わいがあって中世文学や演劇史の専門家ならではの史実と虚構の入り混じっ
た深みのある歴史物語(人情譚)が展開されています。小学館文庫から既に
出ている著者の旗本絵師捕物シリーズほど判り易くはありませんが、この本
は、史実の断片をうまくつなぎ合わせそれに肉付けをしてこくのある小説を
作りたいという作者の思惑通りの面白い小説に仕上がっています。
「福田繁雄のトリックアート・トリップ」には面白いトリックアートや奇妙
な芸術作品が満載されています。著者が毎日新聞に連載していた話が一冊の
本となったものです。いろいろな芸術作品に触れることで何かひらめくもの
やちょっとした発想の転換を図れるヒントが得られるかもしれません。小さ
な本屋さんでは置いていないと思いますが、どこかで見かけたら手にとって
ページをめくってみて下さい。
呉善花の「日本的精神の可能性」は3日ほどの通勤の合間にあっという間に
読み終えてしまいました。韓国をはじめアメリカ、中国などのものの捉え方
を知った上での日本への貴重な提言です。日本の固有の精神風土をこれから
いかに生かしていくのが大切かを様々な観点から論じています。一般に日本
の欠点と思われているような、ものの捉え方、考え方、接し方をプラス志向
で捉えている著者の慧眼にもっと着目してもよいのではないかと思います。
バリバリの韓国人から今では超親日派に変わったまず他には類をみない著者
の冷静な視点には一見の価値があります。通常は反日、親日を問わず激した
議論に陥りがちな著者が多い中でこの冷静な視点が呉善花の持ち味です。
佐野洋著「蝉の誤解」は個人的には好みの著作です。昆虫の生態とミステリ
ーを絡めた短編集ということで三拍子揃っていて本屋で見かけて即決で購入
したものですが期待が裏切られることはありませんでした。
佐高信著の「司馬遼太郎と藤沢周平」は徹底的なアンチ司馬の論調で書かれ
ています。これまでに1億冊以上も本が売れ、著名人からの書評などでも常
に推薦される著書の多い司馬遼太郎の見方にもいろいろな見方があるという
ことをこの本によって遅れ馳せながら知ることが出来ました。藤沢ファンの
私としては納得できる箇所が多いですが、司馬ファンにとっては噴飯物かも
しれません。しかし確かに歴史と人の味方についての両氏の寄って立つ足場
に大きな違いがあることはその著作をみれば明らかであり、佐高信の指摘す
るような影響を特に社会を牽引していく立場にある経済人や政治家に与えて
来ただろうことは否めないだろうと思います。藤沢周平について書かれた部
分についてはおそらくあまり異論が無いと思います。どちらかと言えば司馬
遼太郎の歴史観や人の見方を冷静に見据えた良い著作だと思います。賛同で
きない部分もあるかもしれませんが司馬ファンにとってこその必見の書だと
思います。
書店に並んでいてずっと前から気になっていたジョン・コールマン博士の「
300人委員会」をやっと読み終えました。とんでもなくすごい本なのか、
トンデモ本なのかさっぱり判りません。実名がゴマンと登場するしスケール
は壮大、にわかには信じられないような話が満載されており興味のある方は
ご一読下さい。
出久根達郎著「百貌百言」は二十世紀を生きた百人のエピソードでつづる伝
記と名言集です。人となりをよく伝えるエピソードや人と人との不思議なつ
ながりなどが満載されていて著者の特質が生かされた著作となっていますが
残念なことは今時の人ではないような人物が多いことです。既に鬼籍に入ら
れた方を対象にしているので古い人が多いのは仕方がないですが筆者好みと
しか思えないような一般には知られていないような方もいて個人的には余り
楽しめる著作ではありませんでした。
乙川優三郎の直木賞受賞作「生きる」を読み終えました。直木賞審査員全員
が褒め称えたと言われる作だけあってじわぁーっと読後に感動できる佳篇が
揃っています。
匿名子「狐」による4冊目の書評が「水曜日は狐の書評」という題でちくま
文庫から発売されていることを1年も経ってから気がつきました。早速購入
しましたがまだ読んでいません。こうやってどんどん”積読”本が増えます。
文庫本だからといってもいつ絶版になるかわからない世の中なので仕方があ
りません。在庫を抱えるのにも保管料その他の金がかかる事は判りますが、
文庫にしたら絶版にしてはいけないとか、必ず最後は電子出版で残すことを
義務づけるとかして欲しいものです。絶版になって読めない本が多すぎです。
今、絶版となっていて入手したい本の筆頭は小林路子画集「きのこ」です。
喜国雅彦「本棚探偵の冒険」がもう文庫化されました。読むだけなら文庫で
も何の問題もないので文庫化は大歓迎ですが2作目の「本棚探偵の回想」と
同様に装丁が凝った本なので文庫化は無いかなと思っていたので意外です。
「男女の仲」は山本夏彦翁最後の問答集です。この本もこれまでの著作と同
様、博学に裏打ちされた洒脱な語り口が文中に溢れています。
宮部みゆき「ICO - 霧の城 -」は同名のコンピュータゲームを元に小説化し
たものだと言うことですが残念ながら原作を知りません。知っていれば更に
楽しめるかもしれませんがこれはこれで良く出来ていると思います。願わく
はストーリーに沿った風景描写をイラストで入れてもらえていたらもっとも
っと物語が実感出来たのではないかと思います。残念!もっともイラストが
入っていてもブレイブストーリー愛蔵版のように高くては手が出ません。
養老孟司の書評集「まともな人」を読み終えました。時事に関する話題を取
り上げているため特に近隣諸国との間の話題については賛否両論があるとこ
ろかと思います。このあたりの切り方については故山本夏彦翁の自分の意見
はちゃんと盛り込んだ上でやんわりと一刀両断するやり方とは違って、自分
の意見を真摯に直接表明している箇所が多い分だけ常識人からの反発を受け
やすそうな気がします。自分が正しいと信じることを世間に迎合せずに表明
する作業が書評であるなら、書評の宿命かもしれませんが、万人に向かって
自分の意見を言うことの難しさを実感させられる一冊です。
この本のもう一つの楽しみは言わずと知れた虫屋としての養老孟司の面目躍
如たる昆虫採集の話です。以下はその一節です。思わず笑ってしまいます。
『私は最近、感性がほぼヒゲボソゾウムシになった。こんな葉っぱじゃあ、
もう硬くて食えないじゃないか。山の木を見て、そんなことを思うようにな
ってしまったのである。ヒゲボソゾウムシは人が好んで集める虫ではない。
そんなものをなぜ欲しがるのか。そこがオタクのオタクたる所以である。』
北方謙三選「闇に香るもの」には阿刀田高や宮部みゆきなど8名の選りすぐ
りの短編が集められています。特に阿刀田高のギャンブル狂夫人が圧巻です。
ダールの短編ばりのラストが印象的です。
2004年には結局127冊の本を読み終えることが出来ました。いろいろ
面白い本を発掘することが出来ました。興味のある方は下記の読書雑記をご
覧下さい。127冊税込みで約13万円、1冊あたり1000円を越えてい
ます。文庫本もかなりあるので平均単価は1000円以下だとばかり思って
いましたが昨年分は金額まで含めた集計をはじめてしてみて実態が明らかに
なりました。意外と高くついています。実際には購入して溜め込んでいる本
が昨年また増えているようなので購入金額はもっと高そうです。因みに購入
したけれどもまだ読めていない本の在庫は現在430冊ほどあります。
「弁護」D・W・バッファ著は養老孟司が自著の中で紹介していた本のよう
に覚えていますが、法廷弁護物でも出色の作品の一つと言って良いと思いま
す。あとがきや書評にあるように読後に余韻を残す作品です。始めから読み
返したくなるというN.Y.タイムスの書評もあながち誇大宣伝ではありま
せん。とてもデビュー作品とは思えない周到なプロットのもとに構成された
傑作です。
「脳のなかの幽霊」V.S.ラマチャンドラン著をやっと読み終えました。
昨年の読書雑記に既に載せていますが補足として本書で紹介されている疾患
のいくつかを以下に紹介しておきます。本書にはそれぞれについての有用な
知見が多数掲載されています。有名な幻肢をはじめとして自己身体否認、カ
プグラ・シンドローム、アントン・シンドローム、ウェルニッケ失語症、視
覚シンドローム、書痙、半側無視ほか多数が症例として上げられています。
2005年は158冊の本を読むことが出来ました。今年も良い本があった
ら本欄で紹介していきたいと思います。
気に入った本があったら読んでみて下さい。
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