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* * * 読書雑記(2009年) * * *
2009年は約130冊の本を読むことが出来ました。まだまだ面白い
本はたくさん世間にころがっていそうです。2010年も引き続き興味
ある本をたくさん読んで良い本を発掘していきたいと思います。
ジェフリー・ディーヴァー「シャロウ・グレイヴズ」読了しました。
映画関係者が訪れた町で殺害されるという事件が発生するが
町の関係者は揃って単なる事故だということで迅速に後処理
がされていく。友人を亡くした主人公は孤立無援の状態で謎
に挑んでいくが背後には巨大な組織とその中枢には意外な
人物が潜んでいるという推理サスペンス。注目を集めた最近
のライム物と比べると単純なストーリーといえなくもありません。
解説によれば映画的な手法を使用したストーリー展開がこの
本の眼目のようですが、あまり際立った特徴は感じられません。
「一言半句の戦場」は開高健のエッセイ、コラム、インタビュー
対談、推薦文などを収めたファンにはこたえられない一冊です。
小説や紀行文などにも増して著者の人となりが随所に現れる
珠玉集となっています。全編の基底にはトリスのCMの文句が
流れ、著者の警句やユーモア、洞察、言葉の数々が鏤められ
た作りは豪華です。巻末近くには著者に縁の深かった人達の
心からなる思い出やら称える言葉なども添えられ開高健の総
集編といった重厚な作りとなっています。
久々の阿刀田高です。「こころ残り」に収められた12編は何と
形容したら良いのか難しい短篇です。本の帯には『ひたひた
と近づく人生の終わり。遠い日の記憶、12の人生の物語』と
あります。人生におけるちょっとした風景と思いを切り取った
そんな掌編集です。
ジェフリー・ディーヴァー「悪魔の涙」読了です。ライムが登場
する科学捜査官シリーズかと思っていたらライムはちょい役で
登場しただけで元FBI科学犯罪文書研究室捜査官が主役の
犯罪捜査物でした。知的犯罪者ディガーと捜査官、FBIの攻防
が次々と進展していきますがお約束の二転三転するストーリー
展開はボーンコレクターやウオッチメイカーの作者ならではの
素晴らしさがあります。単なる筆跡鑑定に留まらない文書研究
室のノウハウも興味深く読むことが出来ます。
手塚治虫漫画全集398「手塚治虫エッセイ集8」をやっと読み
終えました。このシリーズは休みの日のボランティアの合間で
余裕があった時だけ読んでいるので読み終えるまでに3ヶ月
くらいかかっています。漫画全集なのに活字ばかりしか無い
のも時間が掛かっている理由です。これで全400巻のこのシ
リーズも残り2巻となりました。今期中に読み終えるかどうか
というペースです。
手塚治虫の漫画全集は文庫本になって帰って来ました。本当
に手塚治虫のマンガ本はいつまでたっても次々と発売される
のでとても集め切れません。版形だけ違って中身が同じなら
買わなくても良いですが以前の全集では漏れていたものなど
が追加されていたりするとついつい買いたくなってしまいます。
「手塚治虫極めつき1000ページ」には1955年〜1986年
の間にいろいろな雑誌に掲載された全32編の短篇が納め
られています。鉄腕アトム、ジャングル大帝、三つ目がとおる
を始め、ライオンブックスや新・聊斎志異などからも名作が
選ばれて組み込まれています。手塚治虫の特質がつまった
一冊です。
谷崎潤一郎の初期短編集T「潤一郎ラビリンス」には刺青、
麒麟、少年、幇間、秘密など都合8篇が納められています。
谷崎の持っている幻想、耽美などの要素をもった独自世界が
既にこれらの短篇中に見られます。わが町、山北町は昔の
東海道本線の主要駅ですが、はからずもこの短編集の中の
『悪魔』という作品に登場しています。身近な場所が出て来る
と親近感が沸きますが、これまで山北町が登場している作品
はまだこの本を含めて3作しか読んでいません。もっとたくさん
あるだろうとは思いますが今の所縁がありません。
「夢十夜」はご存知夏目漱石の名作です。既に絵本仕様の本で
読んだことがありますが今回読みたかったのはこの本の後半
部分にある永日小品です。今では見ることの出来ない独特の
味わいを持ったその名の通りの小品が並んでいます。時代の
雰囲気を味わうには最適です。
山口椿著「死せるヴィーナスたちの誘惑」読了です。作家・画家
・チェリストという鬼才、山口椿ならではの著作です。著者関連
HPでの紹介文では『クライムノベル29編に、それぞれマインド
サイエンスの論考を付け、さらにネクロサイトからの過激なアイ
キャッチも添えるという異色作。』とありますが難しすぎて判りま
せん。ともかくも構成、内容ともに特異な一冊です。
藤沢周平著「無用の隠密」は「藤沢周平 未刊行初期短篇」集
に短篇「浮世絵師」を追加した文庫本です。初期作品とはいえ
著者の素晴らしさがもう十分に発揮された渾身の作が15編も
詰め込まれていてお買い得です。この初期作品ではいろいろ
な種類の作風が窺えてそういった意味では新鮮です。
出久根達郎著「作家の値段」は古本屋ならではの一冊です。
古本の値段は何で決まるのか、文学の価値とは何か、著者
の経験に裏打ちされた著名作家の読み方、及びその評価に
は傾聴する価値があります。思わず古本に興味が沸いて楽し
くなる著者の初期作品を髣髴とさせる一冊です。古本の値段
については著者の古本仲間でその方面に造詣の深い書店主
も参加しての興味深い内容となっています。取り上げられてい
る作者は司馬、三島、山本、川端、太宰、寺山、宮沢、永井、
樋口、夏目、直木、横溝、火野などなど苗字だけですぐに判る
大作家総勢24名が取り上げられています。
矢島稔著「樹液をめぐる昆虫たち」は青土社「ユリイカ総特集・
昆虫主義」を見て購入した本です。樹液の出る木と出ない木が
あるのは一遍でもカブトムシやクワガタムシを取りに行った人
には周知の事実ですが、何故、樹液が出る木と出ない木があ
るのかに疑問を抱いてこれを科学者として調べた結果を纏め
たのがこの一冊です。必ずしも結論が確定した訳ではありま
せんがボクトウガという蛾が大きく関わっているのは事実のよ
うです。併せてこの蛾の幼虫の知られざる生態も明らかにされ
ています。この本は子ども向けのシリーズ本の一冊のようで、
難しい漢字にはルビも付いていて大変読みやすく出来ていま
す。しかし驚くのは、私でも知っているほどの生物学の大家で
ある著者の謙虚さです。この本が子ども向けであることを差し
引いてもこの本はあまりにも謙虚で上品に仕上がっています。
自分が本を書くのであればぜひとも参考にしたいような一冊
です。因みにこの本のシリーズは偕成社「わたしの昆虫記」と
いうサブタイトルです。既刊@ABはそれぞれ「黒いトノサマ
バッタ」「ホタルが教えてくれたこと」「チョウとガのふしぎな世界
」で小学館児童出版文化賞や産経児童出版文化賞などを受
賞しているようです。いずれこれらも読んでみたいと思います。
爆笑問題「大恐慌時代」は2006年1月からつい最近の2009
年3月までの社会問題、事件を例によってパロディ化して一刀
両断のもとに切り捨てている日本原論シリーズの最新刊です。
思いっきり笑っているうちに読み終えてしまいましたが、爆笑の
天才太田をもってしてもネタが出来ないようなもう少し安定した
社会に少しでもならないものかと思います。
「養老孟司の人間科学講義」読了です。この本は2002年に発
行された「人間科学」の文庫化です。「人間科学」ならば既に読
んでいるので2回目ということになりますが、だいぶ忘れている
ので新たな気持ちで読み直しました。内容は遺伝子、情報系、
差異と同一性、脳、都市化、共同体、クオリア、人の身体、男女
など多岐に渡ります。著者の著者らしさが良く現れている著作
だと思います。初めて著者の本を見る人には著者の論理展開
の仕方や物の見方などは新鮮で参考になると思います。
それにしても出版社は文庫化で勝手にタイトルを変えないで欲し
いと思います。インターネットでの注文ではそこまで判りません。
池田清彦著「だましだまし人生を生きよう」を読了しました。著者
の本はこれまでに15冊以上読んでいますが、この本について
はどうもあまり共感出来ませんでした。中身は自伝的なエッセイ
ですが、著者の昆虫少年時代から生物学者、著作者として名を
成すまでの成功譚としか思えませんが、著者は自分をあたかも
落ちこぼれであるかのごとく誤解しているのではないかと思いま
す。「だましだまし人生を生きよう」とは誰を騙しているのだろうと
思います。内容を見る限り好きなことしかせず、自由気ままに
生きている著者が自分をだましだまし生きているようには見え
ないし、最終章の「科学者をめざす君へ」という章にしても一般
の落ちこぼれ者には全く用の無い、素晴らしく頭脳の良い将来
の約束されたようなごく一部の人に対してのアドバイスとしか見
えません。タイトルを誰が考えたか知れませんが、単行本での
タイトル「生物学者」の方がまだしっくりきます。
乙川優三郎著「逍遥の季節」はなかなか良いです。舞台は江戸
の芸道を主体にした時代小説です。三絃、画工、茶の湯、活花
舞踏、糸染め、髪結いなどを生業とする女性の生き様を情緒
たっぷりに描きます。それぞれのサブタイトルは「秋野」「三冬
三春」「夏草雨」「細小群竹」などなどなかなか洒落ています。
著者の言葉に対する感性には並々ならぬものがありますが、
この著作には特に強い思い入れや巧みな描写が際立っている
ように思います。読んでしみじみ良かったと思える一冊です。
星新一著「にぎやかな部屋」は著者の没後10年記念復刊で
購入したものです。著者には珍しい戯曲仕立の一作です。一つ
の部屋を舞台に高利貸しの亭主と占い師の夫人が中心となっ
てそれぞれの霊魂、ならびに相談者や強盗などが絡んだ大タテ
モノです。会話主体の軽妙なコメディです。
土屋賢二対談集「人間は考えても無駄である」は文庫語り下ろ
しです。対談相手は科学者、文学者、音楽家、心理学者となっ
ていますが残念ながら私は誰も知りません。対談相手が誰で
あっても中身が面白ければ良いと思うのでその点では問題は
ありません。爆笑するといった内容ではありませんが、巧みな
話術の攻防が十分に楽しめると思います。助手を加えた対談
は屁理屈と活舌が満載です。
青土社「ユリイカ総特集・昆虫主義」は養老孟司、奥本大三郎、
池田清彦などの著名な昆虫好き作家をはじめ、昆虫に関わる
いろいろな分野の多分、第一人者が勢揃いしている感があり
ます。昆虫研究分野の最前線の知見はもとより、虫と思想、
マニアックな虫屋の弁、虫が主体の漫画、昆虫食、腐海、詩
などなど読んでいて飽きません。巻末には必読昆虫入門/
専門書のガイドが載っていて見ると欲しい本が満載です。
私は単なる虫好きですが虫屋にとっては堪らない一冊であろ
うと思います。因みに巻末に紹介されている昆虫関連の本は
全部で50種類ほど記載されていますが私が既に持っている
本は僅かに以下の8冊だけです。
「昆虫の図鑑 採集と標本の作り方」「虫の宇宙誌」「楽しい昆
虫採集」「昆虫の本棚」「オサムシ 飛ぶことを忘れた虫の魅惑」
「オトシブミハンドブック」「スズメバチはなぜ刺すか」「都会に
すむセミたち 温暖化の影響?」
養老孟司/岸由二共著「環境を知るとはどういうことか」は環境
問題に詳しい岸氏がほぼ丸ごと一冊を流域思考という観点から
問題点、保護活動、思考方法などなど様様な観点で述べつくした
ものです。養老孟司は時々独特の観点で意見を述べる程度です。
主に取り上げられているのは著者の活動拠点である小網代、
鶴見川流域、多摩三浦丘陵です。第一章の”五月の小網代を
歩く”はカラー写真も満載で楽しくこの流域の生態系の概要やら
保護活動の要点やらが何となく判ります。2章以降はかなり本格
的な活動実体の紹介となっています。行政を動かすまでの活動
には頭が下がりますが、やはりこれだけの活動を本格的に実施
すると我々外部の者からは活動団体がどうしても閉鎖的に見え
てしまう面があります。これだけのことを本格的にやるためには
ルールに従わないものは受け入れない、我々のやっている活動
事態には間違いが無いといった思い込みや反省が無いのかな
ど考えれば考えるほど難しいなあと思います。多分、このような
純粋な保護活動であっても個人ではなくて規模を広げると政治
活動や宗教活動のように固有の団体性が出てくるからかと思い
ます。活動自体には非常に共感出来る部分が多いのにも関わ
らず読後に違和感が残るのは多分個人的にこのような団体活
動事体があまり好きではないからだと思います。自然保護運動
に興味のある人にとっては一読の価値があると思います。
高橋秀実著「やせれば美人」はダイエット本でもないし純粋な小説
でもありません。自伝的なエッセイといった感じですが妻のダイエ
ット奮戦記?を冷静に微笑を込めて綴った本です。解説で述べて
あるようにこの本の眼目はこのちょっとしたおかしみとダイエット
回りの気付き、作家としての視点の特異さにあると思います。何
げないようなエッセイですが飽きさせる事無く淡々と読めます。
いそっぷ社「手塚治虫の理科教室」は科学技術に関連した手塚
漫画を10数編集めた09年7月刊行の科学書です。福江純が
手塚治虫の先見性を判り易く解説してくれていて、最先端の知見
も満載です。同じシリーズに「手塚治虫の昆虫博物館」「手塚治虫
の動物王国」というのが発行されているようですが未購入です。
内田魯庵の文庫新刊「貘の舌」を読み終えました。小説家、評論
家、随筆家、翻訳家など多数の肩書きを持つ魯庵の文明批評集
です。縦横機智に富むするどい舌鋒でさまざまな話題に及びます。
私の方に内容を十分に理解するだけの基礎知識が無い為に
十二分にその評論を味わい尽くすことは出来ませんが、それでも
かなり興味を持って読むことが出来る話題もあって楽しむことが
出来ました。該博な知識の裏づけによる豊富な話題も流石に時代
を経ることで色褪せてしまっている部分もあって今では、だから
それがどうしたといった話題もあります。当時の世相などを知りた
い人にとっては貴重な資料だと思います。
山本夏彦の対談集「浮き世のことは笑うよりほかなし」が講談社
から09/3に新刊として発売されました。著者は既に故人なので
今時新刊が出されるのは珍しいです。中身は雑誌「室内」に掲載
された対談から17編をえりすぐって纏めたものだそうです。対談
相手は清水幾太郎、向田邦子、関川夏央、出久根達郎、池部良、
藤原正彦、盛田昭夫などの面々です。それにしても驚くのはどの
相手と対談をする時でも関連する話題の周辺についての著者の
造詣の深さというか博識が光っていることです。単に警句を発す
るだけではなく人間とはそういうものだという常識を併せ持って
さりげなく我々を諭してくれる話芸は他の追随を許しません。
奥本大三郎訳「完訳ファーブル昆虫記7巻下」読了です。日本で
は本家フランスよりもファーブル愛好家が多いようですがこの
全訳は完成の暁にはそれこそ世界に冠たる名著となること請け
合いです。集英社創業80周年記念企画は良い題材を選びまし
た。訳は勿論のこと補足説明や挿絵もぜいたくに作られています。
またこれまで14冊が出されていますがいまだに誤字、誤植らし
きものを1つも見かけません。唯一欲を言わせてもらうとしたら
発行の間隔がもう少し短くなれば良いというくらいなものです。
15冊目の発行予定の2010/3が待ち遠しいです。
岩谷テンホーの四コマ漫画「みこすり半劇場ぶっ飛び」今回も大
笑いさせていただきました。同じ四コマ漫画でもいしいひさいち氏
などのものは政治情勢や野球界のネタを知らないと楽しめない
ようなものや、ごくたまに高尚過ぎたりして笑えないことがありま
すが岩谷テンホーの四コマは笑えないということがありません。
ヒット率も高いです。でも値段はとっても安いです。1話1円位です。
ビートたけしと各界の達人との対話が「達人に訊け!」にぎっしり
詰っています。奥本大三郎、毛利衛、藤原正彦をはじめ麻雀の
達人やら字幕の達人、香りの達人、金型の達人などなど、どの
対話もたけしの話術によりうまく引き出されていて読み応え十分
です。一読に値する一冊です。
解剖学者の養老孟司と作曲家の久石譲とでは接点が何もなさそ
うですが角川書店「耳で考える」はその2人の対談です。なぜ人
は音楽で感動するのか、いい音楽とは何か、共感性と創造など
のテーマで熱い対話を交しています。なかなか波長も合って興味
深い対談となっています。
PHP新書「本質を見抜く力」は養老孟司/竹村公太郎の対談集
です。モノという現実から社会を見ていこうという視点に立った意
欲的で有意義な対談となっています。語られている内容は章立
てを見ていくと/人類史はエネルギー争奪史/温暖化対策に金を
かけるな/少子化万歳/農業・漁業・林業・百年の計/博物学
などとなっています。現実と本質が良く判る対談となっています。
夏目漱石は小説で有名ですが実は俳句や漢詩も自在に作る多
才な人です。豊福健二著「風呂で読む漱石の漢詩」は世界思想
社の「風呂で読む」シリーズの一冊です。このシリーズは新刊本
屋では入手困難ですがインターネット販売では新本が入手出来
ます。風呂のお湯につけても読めるのでとても重宝しています
が、漢詩などだと1回の入浴で1篇の漢詩とその解説を読むの
がやっとです。それ以上読んでいるとのぼせてしまいそうです。
もとより漢詩の素養など無いのでとても読み下しは出来ません
がそこは素人向けに懇切丁寧に読み下しと解説がついている
ので漱石の漢詩の一端を味わうことが出来ます。たまにはこの
ような畑違いの本を無理して読むのも必要かなと思っています。
井田徹治著「ウナギ・地球環境を語る魚」は岩波新書の本です。
ウナギの激減に警鐘を鳴らす重要な本です。ニホンウナギの産卵
場所が最近ほぼ突きとめられましたが卵からの養殖の実用化に
はまだ時間が掛かりそうです。最近世界的にウナギが減っており
絶滅危惧種に指定されるというような状況にまでなってきている
ようですが本書では激減の理由やこれからの対応、問題点などに
ついて幅広く論じています。専門書でありながら身近な魚である
ウナギの概況を判り易く解説しておりお勧めです。
宮部みゆき著「楽園(下)」読了しました。「模倣犯」でもうひとりの
主役を演じたライター前畑滋子がまたまた事件の主役として活躍
しています。事件が交錯する中で読みどころはやはり子を思う親
の心の動きや、登場人物たちの思惑を推理し果敢に真相を追求
していく前畑滋子の行動力です。事件が重大な割には読後感が
比較的爽やかなのも読者にとっては救いです。「模倣犯」で感動
してしまった人には必読の書です。
宮部作品も当然2009年のお勧め本(ベスト10)に入れて当然
ですが、今や第一人者となっているので今更ベスト10に入れなく
ても良いだろうと思うので番外としました。
2009年度のこのミステリーがすごい!で堂々の第一位を獲得
した作品ということで期待して購入した道尾秀介著「向日葵の
咲かない夏」はたしかに読み応えがありましたが単なるミステリー
ではないホラー系の部分でやはり少し引っかかります。従来の
正統派ミステリーからすると邪道に陥りかねない転生について
の謎解きの仕掛けについてもとても良く出来てはいます。解説
にあるように記憶に残る作品であることは確かですが、読後感
としてはこのような趣向の作品はこれ一冊で十分といったところ
です。SFやホラー、ファンタジーの独自世界の中での起承転結
であれば多分ここまで違和感を感じることは無いのでしょうが、
本作品ではまさに現実世界の中に何の脈絡も無くいきなり転生
した蜘蛛が出てきて一緒に事件解決に向かっても登場人物の
誰もが違和感を抱いていないという設定そのものに対して私が
すなおに共感できないということだと思います。正統派ミステリ
ーや正統派ホラー、正統派ファンタジーなどの世界だけでは
既にネタが枯渇してしまってこのようなジャンルを超えた新しい
作品がこれからは増えてくるのかもしれません。そういえば
宮部みゆきの「楽園」にしても現実世界の事件解決に超能力
が大きく関わっていました。
小池書院の「百物語上下巻」の味わいに味を占めて同社から
2007年に出版されている杉浦日向子「風流江戸雀」も購入
しました。一年十二ヶ月の江戸の市井の暮らしを各月ごとに
適切な川柳を添えてほのぼのと描いています。後半2/3は
古川柳つま楊枝と題して、有名な句にぴったりの漫画各4頁
が添えられています。読み飛ばさずにじっくりと読んでいると
その時間は江戸に遊んでいるような気分にひたることが出来
ます。これを期に久々に誹風柳多留の本を眺めてみました。
杉浦日向子著「百物語下之巻」には其ノ五十三から九十九巻
までの不思議な物語が収められています。1986年から8年を
掛けて描かれた99話の物語はどれも珠玉の名品ばかりです。
一話一話が独特のタッチで描かれ独創的な内容に満ちていま
す。やはり文庫で見るのに比べて大判で見るのは迫力と味わい
が違います。発行元の小池書院は良い仕事をしていますね。
杉浦日向子の「百物語」は何年か前に文庫で読んでいますが
小池書院から09/7に新たに大判で出ていることを知り即決で
上下巻を購入しました。なかなか味わい深い一冊です。寝しな
に上巻の52話をじっくり一話ずつ読んでいます。
曜日や時間帯によって読む本を使い分けているので同時並行で
読む本が増えています。会社の休み時間には「楽園」、通勤時間
には持ちやすい文庫版で「向日葵の咲かない夏」、寝る前には
気分転換に「百物語上之巻」、子ども体験センターのボランティア
で時間が空けば「手塚治虫エッセイ集8」、風呂場ではその名の
通り「風呂で読む漱石の漢詩」をといった具合ですが、風呂場で
漢詩を長々とみているとのぼせてしまうので一回の入浴で良くて
一遍の詩といった進み具合です。
いしいひさいちの近著「大問題’09」読み終えました。漫画ですが
時事問題を知らないと楽しめないネタなのでニュースなどを良く見て
おく必要があります。幸いにも所々に用語解説コラムが挿入されて
いるのでだいぶ助かります。麻生さんのあの名言も、中川さんの
あの迷言も、オバマさんから中国、北朝鮮、インド、グルジアなどの
世界各国を題材にしたものなどなど四コマ漫画が150程楽しめます。
その昔テレビでやっていた「狼少年ケン」の漫画本があるということ
はこれまで知りませんでした。原作者は伊東章夫です。一部カラー
ページがあったり、みんなが良く知っているあの「狼少年ケン」の
テーマ曲が載っていたりしてちょっと嬉しくなります。この本を探す
きっかけになったのは言うまでも無くあのたけるんが出ているロッテ
のFit’sのCM「噛むとフニャン」です。最近ではyoutubeにも昔の
「狼少年ケン」の動画が出ていたりするので便利な世の中です。
この本にはキャラクターの紹介や特別付録としてキャラクターの
設計図、作画資料が載っていたりして充実した一冊です。
宮部みゆき著「楽園(上)」読了しました。既に「模倣犯」から9年
と本の帯にあります。後半に期待です。それにしても早いもので
す。あの桐野夏生も名著「OUT」の後継として「IN」を書きました
がなかなか読みたい本が多くて読みきれない状態が続いています。
湯川豊は前著「イワナの夏」で十分堪能した分、新著の「夜明け
の森、夕暮れの谷」にかける期待は大きなものがありました。結果
は期待ほどではありませんでしたがやはり読んで良かったという
思いです。フィールドに出掛けても出掛けられなくてもこの本が
思いの一端を癒してくれます。渓流釣りがしたくなる一冊です。
米原万里著「他諺の空似」はどこから集めたのか世界各国の似た
ような諺(ことわざ)を豊富にちりばめた上に諺を導くための小話
を添えた珍しい作りの一冊です。各国のいろいろな諺を知るだけ
でも十分に世界の地域色を窺うことは出来ますが、それだけでは
すまないのが著者の特色です。鋭い政治批判も満載です。
沼田永治/初宿成彦共著「都会にすむセミたち」は海游舎からの
出版です。地球温暖化によってナガサキアゲハの北上が近年話題
になっていますが、この本では近年急増した大坂市内でのクマゼミ
の調査を通して温暖化との影響はあるのか、クマゼミ発生のメカニ
ズム、寿命、飛翔範囲など多角的に調査した結果がわかりやすく
纏められています。結論づけることなく継続的に調査している成果
が生態系を考える上で貴重な資料となっています。
爆笑問題「こんな世界に誰がした」幻冬舎文庫を読み終えました。
8/22(土)に歯医者とサッカー観戦しに行った電車の行き帰りで
あっけなく読み終えてしまいました。釣りの魚信の待ち時間は西丸
震哉の「裏がえしのインド」を読み終えました。待ち時間の読書は
なかなか有効です。なお、「裏がえしのインド」は絶版になっている
ので古本を購入しての読書です。
初めてダンテの『神曲』を読みました。とは言っても読んだのは最近
流行の名作の漫画です。「まんがで読破・神曲」は文庫で約190ペ
ージほどの読みやすい一冊です。「神曲」は「千年紀のベスト100
作品を選ぶ」という本で堂々の33位を獲得している名作中の名作
ですが、最近販売されている文庫本(3分冊)では総ページが1500
ページほどもあります。一応購入はしていますがまだ1ページも読
めていません。やはりいきなり名作に挑むよりは漫画で予備知識
を得てから読み始めるというのが良いように思えます。
阿刀田高著「黒い回廊」は著者のホラー短編の傑作選だけあって
上質な一冊です。そうは言っても著者の短編集はほとんど読んで
いるので読んだ記憶のある短編がいくつかありました。ホラー系
の短編をこれから味わってみたい人にお勧めです。
ジェフリー・ディーヴァー著、文藝春秋刊「ウォッチメイカー」を
読み終えました。2007年のベストミステリーに選ばれただけあ
って読み応え十分です。このシリーズ物は証拠の科学的解析が
主眼かと思っていたら、本著ではこれにもう一つキネシクスという
手法が大きく加わって新展開を見せています。ひやっとする場面
とどんでん返しが多いのもこの本の特徴です。少し良く出来すぎ
ているような気がします。そうはいっても犯人の真の目的は何か
どの事件が本質なのか、汚職事件の結末はどうなっているのか
など大きな事件が交錯して展開していくさまは実にすばらしい
出来です。当然、今年のベスト10の上位にランクインする力作
ですがライム物のこのシリーズを上げだすとキリがないので、
あえてベスト10には入れずにおきます。
左党放犀「河馬の馬鹿」はサブタイトルにあるようにノンセンス
句集です。全編、上の句か下の句に「河馬の馬鹿」が入ります。
よくもこれだけ作ったものだと感心します。おまけに結構教養が
ないと作れない句も多いです。単なる駄洒落と言ってしまえば
それまでですが、楽しめるようであればなかなかの本です。
みうらじゅん著「愛にこんがらがって」は斉藤綾子の本と一緒で電
車の中ではなかなか読みにくい本です。この本を少しでも文学
的に読もうとするのであれば解説から入っていくのが良いかと
思います。いきなり1ページ目から読み始めると単なるエロ小説
として読むだけに陥りそうです。
小池真理子著「泣かない女」は集英社文庫からの出版です。
短編ミステリーなので読みやすいです。巻末エッセイを読むと
著者のミステリーに対する思い入れが良く判ります。
手塚治虫漫画全集397巻目「手塚治虫エッセイ集7」読了です。
手塚治虫漫画全集は休みの日の中でもたまにしか読まないの
で読み終えるのに3ヶ月以上も掛かってしまいました。全集もあ
と3巻で読了します。今年中には読み終えられそうです。
ずっと積んだままになっていた阿刀田高著「ホメロスを楽しむた
めに」が本棚の整理と共に見つかって読むことが出来ました。
ホメロス作の「イリアス」「オデュッセイア」を判り易く読み下して
くれています。当時の人がどのようにこれらの叙事詩を読んだ
であろうかということまで補足してくれているので時代背景など
を知らない我々素人には良いガイドとなります。著者の古典解説
シリーズの一冊です。
阿刀田高の本を久々に読みました。朝日新書「松本清張を推理
する」がその本です。松本清張生誕100年記念作品だそうです。
松本清張の作品を解説しながら創作の原点や手法、アイデアの
見つけ方など自身の創作手法と対比しながら探求、推理を重ね
ています。短編の名手ならではの観点からの清張作品解剖の
図がなかなかに興味深いです。
坪内稔典著「日本全国河馬めぐり カバに会う」読了です。全国
のカバに会いに行くというだけで既に変わっていますが、前書き
を見るといきなり『河馬の馬鹿』という人の句集が紹介されていて
カバを見るだけでなく、世の中にはカバの句集まで作ってしまう
人がいることに度肝を抜かれます。この著者自身も俳句を作る
ようだとなにげなく思っていたら、何と本業は歌人、俳人で日本
の詩歌や漱石、俳句などを研究している大学名誉教授だと知っ
て再度びっくりします。このような著者がカバに魅了されて全国
のカバを探しに行脚するのですから面白くない訳がないと思う
とタイトルから想像できる程には面白くありません。それでも
異質で特異な本であることには変わりありません。全国のカバ
57匹の一覧も巻末に付いています。興味のある方はぜひ手に
してみて下さい。
著者の高橋敏夫は既に藤沢周平の本を5冊も書いているそうで
大の藤沢周平ファンで藤沢周平通のようです。本書「藤沢周平
の言葉」は角川SSC新書からの発行ですがこれまでの集大成
ということでより深く掘り下げた内容となっているようです。私も
数多くの藤沢作品を読んでいますが、この本を読んで感興を新
たにしています。今一度読んで見たいという本はたくさんありま
すが今はまだ他の未読本が山積みとなっていて当面は読み直
しは出来そうにありません。藤沢作品はいずれも再読に耐えら
れるような名著ばかりですね。
イーデン・フィルポッツ著「赤毛のレドメイン家」はミステリの古典
的名作ですが、初出は何と今から90年ほども前の1922年の
刊行だそうです。それにしては内容が古びていないことに感心
します。もちろんDNA鑑定やら指紋鑑定などの科学捜査の無
いことが大前提となっていて探偵が主役のミステリですが少し
も違和感無く読むことが出来ます。レドメイン家での連続殺人
事件に挑む警視庁の敏腕探偵が犯人に翻弄されている間に
次々と事件が発生します。迷宮入りかと思われた事件を解決
に導いたのは熟練の老探偵です。最後の犯人の告白と結末
まで目が離せません。
一青窈と何人かの著名人との対談&詩集「ふむふむのヒトト
キ」は8/12にメディアファクトリーから出版された本です。
荒木経惟、小川洋子、吉田戦車、鈴木清順、土屋賢二、横尾
忠則、阿久悠、川上弘美などのメンバーに対して一青窈が熱い
思いを語っています。各章は対談相手とのツーショット写真、
相手へのメッセージ、対談、対談後の詩という形式を取っていま
す。一青窈はご存知のように「ハナミズキ」などで有名な歌手で
すが、舞台や映画などにも出演しているようで活躍の場に広が
りをみせています。この本を読んで詩人としての顔をあらたに
認識させられましたが、意外だったのは一青窈が対談相手の
仕事や楽曲、著者のこだわりの作などに実に良く通じていると
いうことです。たとえば阿久悠との対談では劇画の上村一夫の
「蛍子」、安田弘之との対談では「紺野さんと遊ぼう」、朝比奈
弘治との対談では「文体練習」などの話題で盛り上がったり、
別の対談では「オー・マイキー」が出て来たりで著者の興味の
広さに驚かされます。今後、歌を聞くときにも今までとは少し
違った見方で接しられるのではないかと思います。
ジャック・モノー「偶然と必然」は知る人ぞ知る有名な本のよう
です。1965年にノーベル医学生理学賞を受賞しているそう
なので当然かも知れませんが、私は残念ながらこれまで全く
知りませんでした。この本は分子生物学者としての著者がそ
の研究をベースにして宇宙には何の目的も無く、神も存在せ
ず、単なる偶然と必然との結果によって生物が進化してきた
こと、また客観的な認識をベースにして新たな倫理を構築す
べきだとの理念から宗教や哲学に対する疑問を投げかける
などかなり刺激的、挑戦的な内容の本です。そうは言っても
DNA、ヌクレオチド、たんぱく質の構造、遺伝暗号、熱力学
の第二法則、ヘーゲルやマルクスなどの思想に対する発言
など初心者向けの本にも関わらず難解な部分がたくさんあり
ます。じっくり読むのに良い本だと思います。
呉善花著「日本人ほど個性と創造力の豊かな国民はいない」
PHP新書を読み終えました。非常に良い本です。このように
日本をプラス思考で捉えて貴重な提言をしてくれる本は珍しい
です。更に、この著者が韓国人であるというところに発言の重
みがあります。マスコミに対しても厳しい意見を提出しています
がまったくその通りだと思います。一人でも多くの人に読んで
欲しい本です。今年のベスト10に入れてもおかしくない本です
が呉善花の本は既に2冊もランクインしているのでこの本は
あえて外しておきます。
乙川優三郎著「むこうだんばら亭」を読み終えました。銚子の
飯貝根という土地で居酒屋「いなさ屋」を営む主人、孝助が
主人公の連作短編ですが、本当の主人公はこの店を中心
にして集まる市井の男女と人々の人生を左右する雄大な
自然である海の物語です。自然に翻弄され人生の荒波に
揉まれながらも逞しく生きる人々と主人公たちを暖かい目で
描いています。きっと結末でほっと安堵の胸をなで下ろせる
のではないかと思います。お勧めの一冊です。
国立極地研究所監修「南極大図鑑」をやっと読み終えました。
定価7350円。小学館からの発行です。南極のペンギン、
オーロラ、動物、沈まない太陽などが収められた70分の
DVDムービー付きです。本書は日本の南極観測50周年
を記念する図鑑です。A4サイズ約200ページオールカラー
は読み応え、見応え十分です。南極のことであれば何でも
判ります。砕氷船、南極の気象、オーロラの仕組み、南極
隕石、氷床コアの解析、氷河、海洋大循環、海生生物や
湖沼の生態系などに続けて付録では南極探検史、南極条
約全文、南極探検人名録などと盛り沢山です。また最後の
一章ではご丁寧にも北極についても10ページほどを割いて
います。気になる項目を図書館で見るのが良いと思います。
出久根達郎著「出久根達郎の人生案内」は中公新書から
出されています。読売新聞の「人生案内」2001〜2002年
を纏めたもののようです。約90篇の悩みに著者が真摯に
答えています。どうも藤原正彦の人生相談の回答口調と
だぶってしまいそうな雰囲気がありますが、こちらの方が
より普通の回答です。著作の傾向からもうちょっと薀蓄満
載の回答を予想していただけに少し期待外れでした。
養老孟司著「養老孟司の旅する脳」読了です。本書はJAL
グループ機内誌「SKYWARD」に掲載された掌編を抜粋、
加執、改稿して構成した本だそうです。著者によれば「語り
おろし」だそうです。気軽なエッセイの中にも養老孟司の独自
性があちこちに語られており良い啓蒙の書に仕上がってい
ます。著者の書く内容が哲学っぽいといわれるのもむべなる
かなとおもわせられる独自の視点が光ります。
呉善花著「韓流幻想」は「日韓、愛の幻想」を文庫化にあたり
改題したものだそうです。「冬ソナ」ブームで日本人女性が
韓国男性に熱中するカラクリを韓国生まれの著者が鮮やか
に検証しています。似たようで違うお互いの国の恋愛感、結
婚感、家族のあり方をこうも判り易く公平無私な視点で描き
出せるところが著者の素晴らしい点です。このような本を良く
読んでからお互いを正しく認識していくところから本当の国際
化が始まるのだと思いますが現実はいまだになかなかうまく
いかないようです。
池田清彦著「がんばらない生き方」は構造主義生物学者とし
ての著書ではなく、がんばらずにうまく世間と折り合って生き
ていく知恵をエッセイという形で提供してくれているものです。
世間の常識と言われているものにとらわれない考え方を判り
やすく伝えてくれます。構造主義生物学者としての著書の方
は随分と回りくどかったりする内容が多いですが、この本は
気楽に読めてためになります。心がちょっと重たいというよう
な人は目次を見て感心のあるページを開いてみるとそこに
は安心の場が広がっているかも知れません。
爆笑問題「爆笑新聞」は角川文庫からの出版です。1年間の
毎日の話題を面白おかしく解説したものです。私の世代では
ほとんどのパロディが理解出来るので全編これ面白さ満杯
です。芸能人や著名人の誕生日もおまけで載っています。
田母神俊雄著「真・国防論」読了です。このような本を見るだ
けですぐに軍拡主義だとか言い出す人たちがいそうですが国
防は真剣に考えた方が良いです。先の大戦でも事前に防衛
設備をさんざん減らされた挙句石油封鎖をされ戦争に突入
せざるを得なかった苦い経験がわが国にはあります。世界
は腹黒いというのは最近の各国の動きを見ていても十分に
判ります。経済力だけあれば誰も攻めて来ないという幻想
は日本固有領土である北方四島、尖閣諸島、竹島を見て
いれば真偽の程は自明だと思いますがどうも我が国民は
元々の国民性なのか米国の傘の下に長いこといた所為か
能天気すぎるところがあります。文民統制の話も、抑止力と
しての戦力保持という話も腑に落ちる話題です。いい加減に
憂うべき状態から脱却するような方向を模索していかないと
50年後、100年後の日本は世界に対して今よりも更に発
言力に無い国になっているような気がします。少なくともこの
ような告発の書を元にせめて議論を始める事が大切です。
「人間の測りまちがい(下)」スティーヴン・J・グールド 河出
文庫を読了しました。グールドの本領が十分に発揮されて
いると思える人種差別、偏見への告発の書です。それにして
も白人至上主義は根深いものがあります。1994年に出版
された「ベル・カーブ」がこのことを雄弁に語っています。いま
だにベルカーブ論争として話題になるほどかの国では議論
が盛んなようです。世界ではいまだにこのような偏見が蔓延
っているという現実を知ることは大切だと思います。非常に
貴重な議論だと思いますが、今年のベスト10に十分入って
おかしくない本ですがグールドのこの本も大部の本ですんな
りと読めないという難点がありベスト10からは外しました。心
して読む必要があります。
戸板康二著「黒い鳥」は古本即売で見つけて買った本です。
鯉釣りの時間待ちの間に読み終えました。他の釣りでは本
など読んでいる暇はありませんが鯉釣りは一投すると魚信
が無い限り1時間以上は待ちとなるので読書には恰好です。
この本は既に新刊本屋で入手ができないのが残念ですが
味わい深い推理短編7編が収録されています。
陰陽師を描いた岡野玲子の新刊「イナンナ上弦の巻」読了
です。これがベリーダンスを題材にして表現した絵物語だと
いう認識を持っていないと陰陽師以上に何がなんだか判ら
ない美人のカット集のようです。巻末に付いている「イナンナ
をもっと楽しむためのベリーダンス基礎知識」全30ページ
を読んだあとで画を見直すと少しは判ったような気がしてき
ます。絵の繊細さ、表現の多彩さを眺めているだけでも気分
が和らいで来るそんな一冊です。下巻が楽しみです。
土屋賢二の本が本屋で平積みされていました。哲学者の書
いた本が平積みされるというのは珍しい事態です。最も考え
られる理由は著者本人が平積みし回っているというものです。
もしかしたら表紙の「いしいひさいち」の絵を見て本屋さんが
漫画本だと勘違いしているのかもしれません。なにはともあれ
このような本が売れてるというのは日本が平和な証拠です。
喜ばしい事です。
岩谷テンホー著「みこすり半劇場・金星」を読み終えました。
約250ページ、500篇ほどの四コマ漫画が詰っていて420
円はお買い得です。よくもまあこんなに際限なくばからしい下
ネタを思いつくものです。ギャグ4コマ漫画で馬鹿笑いしたい
のであればこのシリーズはお勧めです。
スティーヴン・J・グールド著「人間の測りまちがい(上)」読了
しました。副題は差別の科学史です。本著は改訂増補版の序
だけで約60ページ、そのあと序文が20ページほどもあって
ここだけでもう疲れてしまいます。ここは思い切り飛ばして第
二章から読んでいくのがよい様に思えます。上巻では人種多
元論と頭蓋計測学、著名人の脳の計測、反復説、IQの遺伝
決定論など興味深い話題を論じています。科学的という名前
の下でこれまで人類が犯して来た差別の歴史が明確にされ
ていきます。
乙川優三郎の久々のハードカバー「闇の華たち」読了しました。
6篇の短編時代小説集です。じっくり読むには少し量が少ない
ですが寡作の作家なので致し方ありません。ゆっくりと味わっ
て読むしかないですね。
米原万里著「パンツの面目ふんどしの沽券」は題名だけを見
る限り興味本位の軽いエッセイのようにみえますが、中身は
著者の語学力と熱意の賜物ともいえる貴重な文化史料となっ
ています。柳田國男の民俗学にも匹敵するような濃い内容に
満ちています。しかしそこには著者独特のユーモアもふんだん
に込められていて思わず笑ってしまう所にも事欠きません。
十字架に架けられたイエス・キリストが腰に纏っていたのは
パンツかふんどしか、腰巻なのかを既に幼少の時に疑問に
感じ、それを各種の傍証によって真剣に論じること自体が著
者の独自性の観点の現れですが、その論理展開には思わず
うならせられます。
岩谷テンホー著「動物性おつゆB」読了です。四コマ漫画は
少し疲れている時のカンフル剤として最適です。笑えます。
元航空幕僚長の田母神俊雄の著書「田母神塾」は双葉社か
ら出版されています。塾長である田母神氏が誇りある日本復
活のために歴史講座、政治講座、国防講座に分けて教育し
ている内容はいずれも国を挙げて真剣に議論すべき内容だ
と思われますが党首会談でもちっとも触れられていません。
明治の元勲のように真剣に国の行く末を憂いる人材が輩出
することを期待するものですが、先ずは議論するテーマとして
田母神氏の本著はとても適していると思います。
航空自衛隊から著者のような人材が抜けてしまったことは残
念ですが、怪我の功名の名の通り、世間にこれだけ田母神氏
の著作が出回ったことは大変有意義だったと思います。
呉善花の「日本の曖昧力」は生花や焼き物、日本庭園など
を題材にして日本の歴史や文化の持つ特異性を伝える近著
です。もともとは拓殖大学国際学部での講義内容を雑誌に連
載したものに加筆、修正、追加した内容だそうです。日本と
近隣諸国との文化の違い、国民性の違いをこれほどまでに
深く掘り下げて解析した作家はそうそうはいませんが、加えて
これほどまでに日本の特に若者を勇気づけようとする著作も
見当たりません。日本の曖昧力をマイナス評価で片付ける
著者はごまんとありますが、プラス評価している著者は極め
て稀です。批判ばかりしていないで謙虚に心して読む必要が
あると思います。
「南極の科学」シリーズ6『南極隕石』国立極地研究所が古今
書院から発行されていますが既に一般書店では入手が出来
なくなっています。この本は完全な学術書です。索引まで含め
ると500ページ程もある大部の本ですが素人が見て面白い
のはせいぜい第五章までの先頭80ページ程かと思います。
その中でもこの本の一押しは10ページ以上に及ぶ南極隕石
のカラー写真です。5章までの内容は南極隕石の概略と隕石
の種類、南極における隕石探査、南極隕石コレクション、隕石
の試料としての処理、南極隕石の集積機構となっています。
6章以降は隕石の種類別(ヘキサヘドライト、パラサイト、
コンドライト、エイコンドライト、ユレライト、SNC隕石など)の
分析、南極隕石の同位体化学、宇宙線生成核種と落下年代、
南極隕石の有機化合物、反射スペクトルと小惑星表面物質、
南極隕石の磁気物性、熱物性、隕石の弾力的性質、ガス
浸透率、破壊強度、比較惑星学、結晶粒の配向性、抵抗率
と誘電率、隕石のサイズ分布と形状分布などから成ります。
専門家以外には理解が難しい内容に満ちています。高度な
数式や化学式が山ほど出てきます。流石に私も先頭の方だ
け眺めて、カラーページと何ページかをコピーするだけで、
読了せずに早々に図書館に返却しました。
開高健「サイゴンの十字架」はかつて『夏の闇』『輝ける闇』で
ベトナムの戦禍を小説と言う形で生々しく衝撃的に伝えた著者
が1968年の南ベトナム解放戦線による一斉攻撃の様子、そ
して1973年の再訪による総括という形で現地ルポを行い、
戦争とは何かを追った迫真の一冊です。
荻原魚雷著、晶文社「古本暮らし」は本にまつわる雑文が多数
載せられています。中でも売るべき本の基準、古本の相場、
図書館のアルバイト、思うとおもうなどなど、なるほどと思うもの
や読んで啓蒙を開かされる逸話などが多数あります。
本の帯には時代活劇とありますが、このような本を書かせたら
この作家のうまさが際立ちます。出久根達郎「御留山騒乱」は
修行先から逃げ出した若僧、秘密の探索方、賭場の親分、
氷室守、逃散百姓といろいろな人物がご禁制品の山茗荷や
将軍家への献上品をめぐって大騒乱を巻き起こします。楽しい
読み物です。版元は実業之日本社です。
集英社文庫「爆笑問題時事少年」読了です。1999〜2001年
の流行と事件のアーカイブとして纏められたものです。今読ん
でも面白いです。いろいろな雑学を知っているほど面白いのが
爆笑問題の本の特色ですが完全にはまり込んでしまった感が
あります。この本には特別付録として爆笑問題を高く買っている
立川談志との対談が付いています。
F・ハイデ/F・ヴロツカ著「隕石 宇宙からのタイムカプセル」を
読み終えました。シュプリンガー・フェアラーク東京からの出版
ですが絶版になっているのか新刊本では入手出来ません。
ぜひとも再版して欲しいものです。仕方なしに図書館で借りて
読みました。島正子著「隕石 宇宙からの贈りもの」と併せて
読むと互いの不足分が程よく補われてにわか隕石通になれ
そうな気がして来ます。良い本です。これで隕石関連の本4冊
読了ですが、どうも隕石関連は品切れになる本が多い傾向が
あります。本書の巻末に国内の隕石関連本一覧がありますが
入手出来ない本が多いです。
爆笑問題の太田が今までに出会った中で最高の物語と激賞し
ていた「タイタンの妖女」を読了しました。著者はカート・ヴォガ
ネット・ジュニアです。残念ながら個人的には琴線に触れる様
なところはほとんどありませんでした。物語の壮大さや時空を
越えた設定、人類愛、シニカルな見方やファンタジー性など
色々な点で良く出来ていると感心する部分はありますが個人
的には「火星年代記」の方がよほど面白く読めました。他人
の推薦している本がアタリの時は嬉しいですが、外れた時は
期待していただけに一層残念感が強いです。養老孟司が
絶賛していた「ボーンコレクター」は大アタリ、宮部みゆきが
推薦、編集している「贈る物語Terror」の「変種第二号」も大
アタリ、多くの人が賞賛して止まない「キャッチ=22」は外れ
です。個人的な感性が合うかどうかは本当に難しいです。
奥本大三郎のライフワークとなりそうな「完訳ファーブル昆虫
記」全訳の7巻上を読み終えました。昆虫の漢字表記の注釈
はどのような虫かが良く判って大変便利です。
南極を除くとこれまで日本で見つかった隕石は50件です。
隕石の種類別分類では石質隕石が41件、鉄とニッケルから
出来ている鉄隕石(隕鉄)が8件、石と鉄が半分くらいづつ混
ざり合った珍しい石鉄隕石が1件です。
落ちてくるところが目撃されたものを落下隕石、目撃されなかっ
たがその後発見されたものを発見隕石とよんでいますがこれで
分類すると落下隕石:41件、発見隕石:9件となります。単位
面積当たりの隕石回収率では日本は世界トップレベルですが
発見隕石だけをみるとアメリカやオーストラリアの半分以下です。
これから判断出来ることは日本では見つかっていない隕石が
まだ多数あるだろうということです。
残念ながら私の住む神奈川県ではまだ隕石が見つかっていま
せん。隕石は発見した人が所有権を主張出来るそうです。ぜひ
以下の本を参考にして発見者第一号となりましょう。なお、隕石
の名前は発見場所の地名である市町村名となるようです。
<お勧めの隕石関連書籍>
(1)「隕石コレクター」 リチャード・ノートン 築地書館
(2)「流星・隕石」 藤井旭 偕成社
(3)「隕石 宇宙からの贈りもの」 島正子 東京化学同人
(4)「南極大図鑑」国立極地研究所監修 小学館
(5)「隕石 宇宙からのタイムカプセル」F・ハイデ/F・ヴロッカ シュプリンガー・フェアラーク東京
(6)「南極隕石」国立極地研究所 古今書院
(7)「失われた原始惑星」武田弘 中公新書
これらの内で(1)〜(4)は新刊本で入手出来ます。但し(4)は
南極の隕石だけを見るには高価過ぎるので立ち読みで十分かも
知れません。(5)は古本屋でしか入手出来ません。おまけに定価
2200円のこの本は古書価が1〜2万円と高価なので図書館を
利用しましょう。全ページをコピーしても定価以下で揃えられます。
(6)も書店では入手できません。図書館で借りて読むことが出来
ます。南極で取れた隕石のカラー写真が豊富に掲載されています。
(7)も絶版です。新書くらいはいつでも買えるようにして欲しいもの
です。幸いに古本では入手が可能です。市場に大量に出回ってい
るらしく古書価格も非常に安いです。まだ未読ですが全編これ隕石
の本です。月の隕石、原始惑星の隕石、南極隕石、火星から来た
隕石などそれぞれについて生成のメカニズムなどを隕石成分など
から解き明かしています。宇宙生成の謎を解くヒントが濃縮されて
いる一冊です。
5/3は鯉釣りの待ち時間に読んでいた戸板康二の「才女の喪服」
を読み終えました。今では入手できない文庫本です。先日古本屋で
購入したものです。俳優であり名推理家である中村雅楽探偵物の
掌編集で表題のものを含めて12編が収められています。薄い冊子
なので荷物にもならずに釣りのお供にちょうど良いサイズでした。
東京化学同人社刊「隕石」著者は島正子、理学博士だそうです。
先日読んだ「隕石コレクター」は素人に隕石に対する興味を引き起
こさせるとても良い本ですが、この本は隕石が学術的に持つ意義
を詳しく述べたもので一般向けの本では類書が無さそうです。隕石
を材料にして宇宙の成り立ちや太陽系生成の謎について迫る取り
組みがこの本の主眼のようです。隕石の落下、回収状況、隕石の
命名法、所有権、隕石の見分け方、隕石の分類あたりまでは一般
向けといえるかもしれませんが、太陽系における元素の存在度や
隕石を構成している元素成分、原始太陽星雲ガスからの隕石生成
のシナリオ、隕石中の微量元素、放射性元素分析による年代測定、
球粒隕石中に宇宙線で生成した放射線のスペクトル分析、石質
隕石が宇宙空間に存在していた時の大きさの測定、隕石中の貴
ガスの測定による惑星型の分類、酸素の同位体による組成分析、
星の内部で起こっている核融合反応との関係、宇宙塵など専門の
話が続きます。最後の章近くには日本に落下した隕石の素描など
もあり興味深い一冊には変わりありません。隕石を極めたい人に
お勧めの一冊です。隕石に関する3冊目は藤井旭著「流星・隕石」
偕成社を読み始めました。これは本当に興味本位の素人向けの
楽しそうな隕石の本で総カラーページで50ページほどの本です。
隕石の大型カラー写真がたくさん載っているので隕石探しをしたい
人には大いに参考になると思います。
「人生に関する72章」は読売新聞に連載された藤原正彦の人生
案内を纏めたものです。十代の悩み〜六十代以上の悩みの各章に
分れていますがいくつになっても悩みは尽きないものです。それにし
ても著者の切り口には歯に衣着せぬ独特なものがあります。解説に
ある藤原美子さんの特別質問と藤原正彦氏の回答がなんとも面白く
読めました。
講談社の手塚治虫漫画全集396巻目は「手塚治虫対談集4」です。
小松左京、種村季弘、萩尾望都、鶴見俊輔、立川談志、牧美也子、
巌谷國士と来て最後に手塚眞との親子対談という珍しい取り合わせ
になっています。それにしても手塚治虫の映画に対する造詣の深さ
やいろいろな人とのつながりの多さには驚かされます。対談中で昔
の著作で好きな本として短編集のライオンブックスを上げていまし
たが、昭和48年頃に私もこの本を購入して読んで良かった記憶が
あります。第一期ライオンブックス全4冊、一冊280円の時代です。
著者も気に入っていたんだと35年以上経って初めて知りました。
扶桑社文庫「爆笑問題の死のサイズ(上)」読了しました。死亡記事
の紙面サイズを元にして各著名人を爆笑問題ネタを織り交ぜて紹介
している本です。後半1/3は死亡記事の1950〜1999年の年代
別のサイズの大きさランキングを載せています。今では名前を忘れ
られてしまっている人がランキング1位に入っていたりして世相を感
じさせられます。「爆笑問題の死のサイズ(下)」は漫画家、文学者、
大スター、女優、総理大臣、喜劇役者と多彩なラインアップです。
富永裕久著「図解雑学フェルマーの最終定理」読了です。この本を
買う少し前に新潮社「フェルマーの最終定理」の本を読んだ所だった
ので期待したところは大きかったですが、残念ながら「フェルマーの
最終定理」に直接関わる解説は最終章にほんの少ししか載っておら
ず、それも新潮社に比べて楕円曲線、谷山=志村予想、岩澤理論
などの説明もこの本の方がわかりにくいという残念な内容です。数学
の歴史から始まって「フェルマーの最終定理」に行き着くための数々
の数学の要素について説明していっているのは判りますがそれが
どう最終解決に寄与したのかつながりや必然性はさっぱり理解が
出来ません。素人に判らせるといった意味では新潮社版の方にはる
かに分があります。この本の良いところは最終章に行き着くまでの
数論の歴史とトピックスにあります。古代エジプトの掛け算の方法、
6分銅問題、素数をめぐる歴史、完全数、4平方の定理、数論の未
解決問題などには一読の価値があります。
寡作な作家である小笠原京の新著がこのところ続けて2冊も出され
ました。読者にとってはうれしいことです。「十字の神逢太刀」は著者
のホームグラウンドである小学館文庫からの何冊目かの出版です。
早速読みました。蘭方姫医者書き留め帳一とサブタイトルにあるの
で新シリーズの一冊目のようです。蘭方医の女医が主人公となる
時代推理物です。ストーリーは勿論面白く読み始めたら止められま
せんが、著者の本領が主人公の着物や食べ物、時代背景に大いに
発揮されているようでそのような細部にわたってまで楽しめる一冊と
なっています。女優の菊川怜も推薦しているようです。
阿達直樹著「昆虫の雑学事典」は電子顕微鏡による写真を武器に
して昆虫の不思議な能力や生態を解き明かしてくれるこれまでに
見られなかった素晴らしい本です。面白半分の昆虫の不思議本は
いくらも見慣れていますが、この本は圧倒的な説得力を持って独自
な昆虫の機能を科学的に判り易く解説してくれます。クワガタムシの
幼虫同士が朽木の中でお互いを傷つけ合わないための発音器の
構造、クワガタムシは音に敏感に反応して木から落下しますが前足
についている耳の独特な構造、カブトムシの蛹の滑り止めの毛の
構造、ゲンゴロウの雄の前足の吸盤の構造、蚊の口器の先端の
構造、蚕の卵の精子進入口の構造、スズメバチの羽にあるフックの
構造、葉の裏を歩けるテントウムシの足の吸盤構造、金属光沢を
持つモルフォチョウの鱗粉の断面構造、空気だけを通す気門の毛
や樹状突起の構造、複眼の構造などなど興味津々の映像満載です。
開高健著「オーパ・オーパ!!モンゴル・中国篇 スリランカ篇」読了
です。”OPA!”何事であれ、ブラジルでは驚いたり感嘆したりする
とき「オーパ!」と言うそうです。この本でも多数掲載されている写真
が世界の広さ、多彩さ、素晴らしさを雄弁に伝えてくれます。開高健
の文章は補助的に読んでも良いくらいです。こんな写真を撮ってみた
いというような素晴らしい写真満載です。先ずは立ち読みがお勧め
です。スリランカ篇では宝石も見事です。
西丸震哉著「野外ハンドブック」は鯉釣りの待ち時間の愛読書として
昨年から読んでいましたがやっと4月半ばになって読み終えました。
この本には春夏秋冬を通したフィールドでのいろいろな知恵が満載
です。火の起こし方、方向指示の出し方、食べられる山野草、等々
これほど自然に密着した具合的なノウハウ本は類をみません。
話題の前航空幕僚長、田母神俊雄と上智大学名誉教授である渡部
昇一の共著である「日本は侵略国家ではない!」を読み終えました。
本当に歴史認識というものは難しいものです。東京裁判でインドの
パール判事がその意見書で述べている言い分が極めて公平な意見
だろうと私はみていますが、世の中にはそのように思わない人や
そのような意見を善しとしない人が、特に政治社会教育の中枢に
いかに多いかということが浮き彫りとなった事件だと思われます。
日本が軍国主義に傾くことを危惧するあまりに、逆にまっとうな愛国
主義を放棄してしまっている人たちが多すぎるように思えてなりま
せん。過日のテポドン発射と各国の対応を見ただけでも謝ってばか
りいる日本がいかに世界から軽視されているかは一目瞭然です。
お人よしの国は生き残れません。為政者には国家百年の計を誤ら
ないで欲しいと切に願うものです。おそらく多くの人は著者名を見た
だけでこの本をまたいで通るものと思いますが是非とも一読した上
で冷静に真実とは何かを考え直して欲しいものと思います。参考に
なるのは小学館文庫「パール判事の日本無罪論」です。
世界思想社刊「風呂で読む漱石の俳句」を読み終えました。漱石が
生涯に作った俳句は2500句の余あるということですがこの中の80
句あまりがこの本に掲載されています。芭蕉が作った句が1000句
に満たないことを考えると多作ですが小説や漢詩に比べると評価は
低いようです。しかし小説からは窺い知れない漱石の人となりが覗け
て読んだ価値はあったかと思います。
養老孟司・渡部昇一共著「日本人ならこう考える」PHP研究所を読み
終えました。現代人への啓蒙の書です。アメリカの未来について、永
田町の「バカの壁」、日本の信教の自由、中国問題など幅広い話題に
ついて2人が縦横無尽にそして日本の未来を憂いて苦言を呈します。
為政者にこそ読んで欲しい一冊です。
開高健著「オーパ!」読了しました。36刷も版を重ねる息の長い著作
です。著者の文章がすばらしいのは勿論ですが、釣りの写真だけでは
なく現地の迫力のある自然や人物の写真の強烈な印象が読後に残る
点がこの本を不動のものにしている大きな要因だと思われます。著者
の文章以上に現地の雰囲気を良く伝えてくれます。
「読まない力」は養老孟司著、PHP新書からの発行です。「Voice」誌
に掲載していたコラムの集成版のようです。最近の世相についての
独自の視点からの提言満載です。ぜひとも一読をお勧めします。
今年は何かと土日に用事があってなかなか釣りに行けません。そん
な時に癒してくれるのが「釣り師の本棚」のような本です。中里哲夫著
寿郎社発行1500円です。全48篇のコラムの中には数多くの名著
が紹介されています。私が読んだことのある何冊かも紹介されてい
ましたが実に正しく紹介されているのをみて他の著作もきっと興味深
い本なんだろうと思わされます。絶版になっている本であっても古書検
索で入手しやすいか、値段はいくらぐらいかまで言ってくれている所は
実にかゆいところに手の届く丁寧な作りです。釣り好きな人であれば
きっとこの本を見かけた途端に欲しくなるのではないかと思います。
この本を読んでまた読みたい本が大量に増えてしまいました。
まだ出たばかりの本です。すぐに笑いたければこの本がお勧めです。
著者は爆笑問題の太田、「日本文学者変態論」は幻冬舎出版です。
タイトルは過激ですが内容は24人の著名文学者の生涯やいろいろ
なエピソードを面白おかしく紹介した普通の本です。タイトルで敬遠
してしまうと損をします。結構破綻型の生活を送った文学者や個性の
強い作家が多く知られざる文学者の実像が知れて興味深いです。
鏡花、漱石、谷崎、乱歩、公房、太宰、賢治、司馬、清張、芥川、
藤村、三島、柳田、鴎外、独歩、一葉などなどフルネームを出さなくて
も判る著名作家が取り上げられています。
三木成夫著「胎児の世界」は中公新書の一冊です。たしか養老孟司
の推薦の本だったのではないかと思いますが少し記憶が曖昧です。
発生の話に加えて人類の生命記憶を椰子の実から説き起こす所
や命の波と称した章では生命記憶の根源を祭礼や森羅万象のリズ
ムと絡めて話を展開する所など今の養老孟司の縦横無尽な論理の
展開の根源を見るようで興味深いものがあります。それにしても
ニワトリの4日目が発生にとっての大事件だということには驚かされ
ました。新しく目を見開かされた出来事でした。研究とはこうゆう仕事
なんだということが判る一冊です。
「Dr.インクの星空キネマ」は漫才コンビ「キングコング」の”にしの
あきひろ”著作による絵本です。細かい線画には感心させられます。
このような才能があるということに驚きです。ストーリーは比較的
単純ですが絵の奥行きの深さをじっくり味わってみる価値はあります。
リチャード・ノートン著「隕石コレクター」を読み終えた直後に『第四回
ミネラルザワールドin横浜』という鉱物の展示即売会で訳者サイン入
りの同書が定価で販売されているのを見つけました。よっぽど買おう
かと思いましたがぎりぎりで踏みとどまりました。本当、欲しかったです。
副題に『鉱物学、岩石学、天文学が解き明かす「宇宙からの石」』と
書いてあるように隕石の分類、起源から、隕石の探し方、隕石を追い
求める人々の姿、隕石ハンターになるための隕石学、隕石が語る宇
宙の物語、衝突地質学などなど欧米の隕石ブームの火付け役となっ
た名著と言われるだけあって内容が多岐にわたり邦訳も読み応え
十分です。唯一の難点はこんな興味深い本を読んでしまうと隕石が
無性に欲しくなることです。この誘惑には残念ながら打ち克つことが
出来ずに地球の鉱物には無いウイドマンシュテッテン模様が明確な
ギベオン隕石を購入してしまいました。
やっと復刊されました。「夏彦・七平の十八番づくし(復刻版)」は山本
夏彦・山本七平という評論界では著名な二人の対談です。山本夏彦
氏の著作はほとんどを読みつくしていますが、この本は僅かに入手出
来ていなかった数冊の中の一冊でこの復刊は大変嬉しい出来事です。
初版が出てから25年以上も経ってからの復刊です。なぜこんなにも
長い間絶版になっていたのか不思議なくらい中身は古びていません。
あまりにも博識な両雄の対談なので話は縦横無尽にあちこちに飛ん
でついていけない所はあるにしても貴重な対談です。
小笠原京の久々の小説「ろくろ首の客」は学研M文庫から出版され
ています。本職の名誉教授『小笠原恭子』としての著作は専門的
過ぎて、一般向けの「歌舞伎名作集」しか読んでいませんがやはり
余技でやっている小説の方が一般読者としてははるかに嬉しいです。
もっと出版社は頑張って小笠原京の本を出させて欲しいものです。
講談社現代新書「カンブリア紀の怪物たち」は英国王立協会フェロー
であるサイモン・コンウェイ・モリスが現代新書のために書き下ろした
渾身の一冊だと言うことで内容は興味深いものです。カンブリア紀の
大爆発で有名なバージェス頁岩の生物たちの生態を見て来たかの
ように生き生きと描き出してみせます。従来の解釈を一歩踏み出し
た新たな見解には傾聴すべきものがあります。著者はバージェス
頁岩層の調査に「ケンブリッジ・プロジェクト」の一員として当初から
加わっていた主要メンバーの一人であるだけに話には説得力があり
ます。それにもかかわらずどうにもこの本に同調出来ません。多分
第三章でタイムマシンで遡ってその時代を再現した夢物語が嘘くさい
こと(何しろ古生物の色まで再現してみせています。)と、第七章から
おわりにまでの記述があまりにも独善に満ちた見解のように私には
思われることがその原因です。第五章あたりまでは起伏はあるに
しても科学的な裏づけに基づいた論理的な香りがしますが、第六章
の門の起源あたりの記述から最終章に向かっては自分の主張を通
すためにまさに論理が爆発してしまっているような感じを受けます。
多分、本人の中では極めて自明の論理展開をしているのでしょうが
残念ながら私のような素人でその言わんとするところが汲み取りきれ
ません。これまでの論理がまちがいだという主張も弱いものだし同様
に新たな主張も単なる主張に過ぎないように感じられます。
進化に対する新しい論理を知りたければこの本はお勧めですが、
科学的な読み物として現在の最新の知見に基づいた生命誕生と進
化についての多くの深い知識を知りたければ、まだ購入したばかり
で内容を十分には読みきれていませんがニュートン別冊の『最初の
生命から哺乳類まで−「生命」とは何か いかに進化してきたのか』
がお勧めです。カラー図表や古生物たちの実寸の判る図鑑も豊富
に掲載されていて見ているだけでも楽しめます。
最相葉月「青いバラ」は新潮文庫で600ページを越える大部の本
です。幻の「青いバラ」作りをめぐる小説かと思って読み始めたら
どうも様子が違います。「青いバラ」作りに魅入られた育種家の
人々、バラの花市場に対する企業戦略、バイオテクノロジーを駆使
してのバラ新種作りの手法、困難点、古代からのバラ作りの歴史、
各品種の系統樹の解説などなどノンフィクションの総合的なルポル
タージュの集大成となっています。巻末の参考文献だけでも30頁
ほどもあるという渾身の力作です。惜しむらくはこの本が平成13
年に書かれて、文庫化が16年ということで、その後果たして幻の
「青いバラ」は完成したのか、どこまで青くなったものが出来たのか
が伺い知れないことです。またこの本を一層楽しむためにはバラ
のカラー図鑑が必須だと思われますが残念ながら私の手元には
バラ図鑑が無いことです。そのうちに良い図鑑を見つけてみたい
と思っています。「青いバラ」すなわち「ブルー・ローズ」を英和辞典
で引くと『不可能』という意味が見出されるそうです。本当に「青い
バラ」が見られる日が来るのか興味はつきません。
現在、ウイキペディアで「青いバラ」を検索するとサントリー社が
1997年に発表した青いカーネーション「ムーンダスト」をはじめ、
1999年の青みを帯びたバラにまで言及されていますが、皆が
納得するような真っ青なバラが日の目を見るのはまだまだ先なの
かも知れません。その10年後の2009年1月末にはサントリー社
とオーストラリアのフロリジン社が共同で開発した「青いバラ」の
販売を開始したという記事がインターネット上に見つかりますが、
その写真をみるとどうみても薄紫にしかみえません。
現在本当に青いバラが無いのか気になってインターネットをさらに
検索してみると本当に青いバラが複数みつかります。しかしこれら
は画像を加工したものか色水を吸い上げさせて着色したものかの
どちらかのようです。このように「青いバラ」はみんなの創造力を駆
り立てて永遠に追い求められる美のシンボルなのかもしれません。
養老孟司著「運のつき」は2004年に著者が人生や社会を語った
ものですが今読んでもまだ実用に耐えます。山本夏彦や養老孟司
の時評や語りは時代に影響されず普遍性があるということのよう
です。
下川耿史「日本エロ写真史」ちくま文庫を読み終えました。なかなか
語られることの無い風俗史を丹念に資料収集して編んだ一冊です。
こういう地道な仕事が明治〜昭和という時代を浮き彫りにしてみせ
てくれます。解説の出久根達郎はその時代の申し子だけあってその
語り自体がその時代の雰囲気をよく表しています。
有限会社養老研究所著「うちのまる」は養老孟司のペットである猫
の『まる』の写真集です。所々に説明やらコメントやらが付いていま
すが、ほとんどはこの変わった猫を見てなごむことがこの本の狙い
のようです。その狙いはみごとに当たっているように思います。何か
変わった態度の猫に思わず癒される方も多いのではないでしょうか。
小学館「袖珍版・芭蕉全句」は1260円の本ですが総ルビ付きで
解説がついて全発句976句が掲載されています。季語での索引の
他に上句、中句、下句のそれぞれで引ける索引も付いています。
更に異形句一覧、芭蕉年表、旅の足跡まで付いたコンパクト版で
取り扱いやすい版形です。芭蕉の時代からは既に300年以上が
経っていますが古びていない芭蕉の句を漏れなく見れる一冊です。
岩谷テンホー著「みこすり半劇場寄せ鍋」読了です。僅か420円で
大いに笑わせていただきました。大人向けの漫画です。くだらないと
いう意見もあるかと思いますが、このばからしさはなかなか得がたい
ものがあります。
手塚治虫漫画全集395巻目「手塚治虫エッセイ集6」をやっと読み
終えました。新刊本で購入したものですが経年変化により周辺が日
焼けしてしまっています。エッセイ集や対談集が多数あるのでなかな
か全400巻を読み切ることが出来ません。
中堀豊著「Y染色体からみた日本人」は日本人男性のY染色体の系図
、分布の歴史的考察、Y染色体の多様性、精子濃度の違い、生まれ
月による違いなどなかなか面白い観点でのY染色体論です。
ジェフリー・ディーヴァー「眠れぬイヴのために(下)」も読了しました。
予想通りの大どんでん返しが最後に待っていました。女性の住居に
入り込んだ精神分裂病患者、追う介護人、賞金稼ぎ、警察官、女性
の夫それぞれの運命が外の嵐のように翻弄されていきます。過去の
事件の顛末が明らかにされるのと同時に今回の事件の全貌が明らか
にされ最悪の結末を迎えます。一作ごとに味わいの違う著者の貴重な
一冊です。
出久根達郎「古本供養」は手だれの作者によるエッセイ集です。表題
のものから江戸関係、藤沢周平作品、生活に関する掌編など50篇
あまりが飽きさせる事無く語られています。
ジェフリー・ディーヴァー「眠れぬイヴのために(上)」読了しました。
とは言ってもまだ後編が待っています。高い知性と屈強な体力を秘
めた精神分析病患者が嵐の近づく中、病院を抜け出して裁判で不利
な証言をした女性への復讐に燃えてじわじわと女性の住まいに近づ
いていきます。追う介護人、賞金稼ぎ、警察官、そして狙われる女性
の夫と巨漢との追跡劇は迫真さを増していきます。過去の事件と関
わる疑問点も徐々に明確になっていきます。後編に期待です。
日刊工業新聞社刊「レアメタルの科学」は山口英一監修、レアメタル
と地球の研究会編著です。個人的には大変面白く読むことが出来
ました。レアメタルの種類、用途、レアメタルを含む鉱石と含有量、
レアメタルの特性、鉄鋼への利用、炎色反応、国別産出状況、埋蔵
量、備蓄量、鉱床探索手法、精錬法、希土類鉱床、希土類発見の
経緯、レアメタル発見と名前の由来、物理的特性、テレビや自動車
や航空機、電球、電池、携帯電話、複写機、磁石への利用状況、
生命に必要な元素、古代の元素観、レアメタルの健康への影響、
レアメタルの将来像、リサイクル処理法、代替技術プロジェクト、
リサイクル率、都市鉱山の活用、諸外国のレアメタルへの取り組み
の状況、などなどレアメタルに関して知りたいことが満載です。
このような本を読んで資源の少ない日本の現状を知ると安易に電子
機器などを捨てられなくなります。
戸板康二の珠玉の推理小説集「目黒の狂女」は中村雅楽探偵全集
の3巻目(全5巻)です。中村雅楽の謎解きが23篇も収まっていて
600ページを越える分厚さですが飽きさせることがありません。
さすがにこのシリーズで直木賞、日本推理作家協会賞を受賞した
作家だけあって充実した内容です。松井今朝子が解説で書いていま
すが、歌舞伎や芝居の約束事を知っていたり、芸能界事情が判る
人にはさらに絵解きの楽しさが何枚も加わる内容の深い一冊です。
岩谷テンホー下ネタお笑い4コマ漫画「動物性おつゆ@A」読み終えま
した。最近読んだ「特選!生しぼりテンホー劇場」と重複するものが
何件かあるのがちょっと残念ですが、それでも読んでいないネタも
沢山あるので笑いに事欠くことはありません。
出久根達郎の「抜け参り薬草旅」読了です。本の帯には以下のように
紹介がされています。『頃は天保元年、瀬戸物問屋の小僧洋吉は、
柄杓一本帯に挟んで、お陰参りの一人旅に抜け出た。箱根峠にさし
かかり、薬草採りの庄兵衛と道連れになったところから、次々と怪しい
事件にまき込まれることになる。道中、ふたりの行方は?波乱万丈
の長編時代小説。』お陰参りを軸にした薬草採りの道中では全9章の
それぞれで珍事件が出来、解決していきますが最後の最後で大波乱
と意外な展開が待っています。気楽に読める時代劇です。
一般にはあまり馴染みがありませんが俳句の元となった連句という歌
の形式があります。これは五七五の長句と七七の短句を複数人で互い
違いに組み合わせて作るものです。芭蕉の時代にはまだ全盛期でした
が300年も前の話です。歌仙とは36句仕立ての連句を指しますが、
この由緒ある歌仙を現代に蘇らせる使い手が大岡信/岡野弘彦/
丸谷才一の各氏です。「歌仙の楽しみ」と題する本書には8巻収められ
ています。我々に馴染みの無いこの歌仙の形式と内容そのものを実物
に沿って解説してくれているので読んでいるうちに歌仙とはどんなもの
なのかが何となく判って来ます。名手ぞろいなだけに発想の豊かさには
感心させられます。とても入り込むことは出来ない名人芸の世界ですが
その良さについては我々凡人でも感じ取ることが出来ます。世知辛い
世の中ですが、たまにはこんな世界で遊んでみるのも良いと思います。
ミシェル・ド・モンテーニュ著「エセー」は著名な割に読まれていないよう
な気がします。過去にいろいろな人が翻訳していますが白水社から出
ているこのシリーズは全7巻の内、まだ3巻しか刊行されていません。
判りやすさを重点に翻訳したというだけあって本当に読みやすい啓蒙
書となっています。注釈もうるさくなく章ごとに話題が完結するのが良い
です。それにしてもモンテーニュの博学には驚かされます。内容は「子
どもたちの教育について」「揺るぎないことについて」「想像力について」
「悲しみについて」「習慣について」等々、その思索については過去の
多くの警句などを傍証として実に穏当な解釈、提言を与えてくれます。
グルメ文庫「巷の美食家」は開高健の過去のいくつかの著作から食に
関するエッセイを抜き出して編集したもののようです。既に読んだよう
なエッセイもかなりあってちょっとかっがりです。
「特選!生しぼりテンホー劇場」とにかく笑えます。下ネタ四コマ漫画で
すがよくもまあこれだけいろんなネタを考え付くものだと思います。少し
は駄作もありますがヒット率が高いです。岩谷テンホー著竹書房です。
「ヘルズ・キッチン」はジェフリー・ディーヴァーがまだウイリアム・ジェフ
リーズ名義だった時に書かれた著作です。今や海外ミステリーのベスト
10に名を連ねる著名な作家ですが、その片鱗はこのミステリにも十分
に発揮されています。とはいっても、このミステリでは犯人は最初から
明らかにされているし、本編520ページの大半は淡々と物語が進ん
でいって490ページを過ぎたあたりから最後のどんでん返しがいくつ
か発生して急展開を見せますが、あまりに急ピッチ過ぎて十分に描き
きれていない様な気がします。少なくとも『ボーン・コレクター』などに
比べると格段に見劣りします。やはり名前が違う分に見合うほどには
十分な格差があります。
開高健著「生物としての静物」読了です。著者のトレードマークである
タバコ、ジッポ、パイプ、ジーンズ、ベルト、帽子、釣具などをはじめ
いろいろな”物”についてのこだわり、思い出、薀蓄を披露しています。
所々にあるカラーの挿絵が効果的に話を支えてくれています。
「検索エンジンは脳の夢を見る」は爆笑問題のニッポンの教養
シリーズの29巻目の本です。ゲストは東大大学院教授の高野明彦
氏です。この本で紹介されている連想検索、新書マーケットは面白
いです。紹介されているブックマークについては一度じっくりと試して
みたいと思います。キーワード検索してほとんどヒットしなかったこと
を経験したことのある人にとっては検索の概念を変えるようなこの
ような研究には多分、興味を持つだろうと思えます。お勧めの一冊
です。
「我働くゆえに幸あり?」は爆笑問題のニッポンの教養シリーズの30
巻目の本です。ゲストは東大教育学部教授の本田由紀先生です。
主に若者の労働やいわゆるニート問題などに多くの提言を行って
いる先生のようです。特に非正規社員が不当な扱いを受けている
ことなど、現在問題になっていることを深く掘り下げて力説されて
います。問題の解決にもっと社会が力を入れるべきだという働きか
けには賛同出来ますが、どうも話を聞いているとすべて悪いのは
社会だみたいな思い入れが強すぎて本を読んでいるだけでも疲れ
ます。このあたりの雰囲気については太田の突っ込みやあとがき
あたりを見てもやはり感じることが出来ます。世間の感覚では太田
の見方あたりが相場のような気がします。一般世間の常識が判ら
ず空気が読めなかったり漢字が読めなかったりして話題を振りまい
ている総理がいたりする世の中ですが、エリート街道一筋に進んで
来て頭だけで考えて自分の言い分は全て正しい、若者は全て被害者
みたいな物の見方はあまりにも考えの幅が狭いように思えます。
独断的な人は良く見ますが、超エリートで一途な熱血漢はかえって
迷惑となることもあるのではないかと思えて少しだけ読後に不安感
を覚えた一冊です。
養老孟司・池田清彦・奥本大三郎という稀代の虫好きの学者3人に
よる「虫捕る子だけが生き残る」は虫好きの読者にとっては本当に
面白い読み物です。虫捕りには、創造性、忍耐力、反骨精神など
を養うすべての要素が詰っていると著者の池田清彦は断言してい
るほどですが虫捕りの効能のほどはどうあれ、この本が昆虫好きの
人を楽しい気持ちにさせてくれることには疑いの余地はありません。
それにしてもこんな”永遠の昆虫少年”3人にも苦手な虫や生き物
がいてその話題で盛り上がっているのを読むと思わず笑ってしま
います。クモやゲジゲジが嫌いという養老孟司、ファーブル昆虫記
の全訳を手がけていて苦手なものなどなさそうな奥本大三郎は
カエルが苦手といい、池田清彦はザリガニの動きが嫌だと言いま
す。話の延長でゴキブリを捕るアシダカグモやザトウムシの話題
に触れていますが、3人の話には知る人ぞ知る実感があふれて
います。この本は勿論、虫の話題が中心ですがこのメンバーがそ
れだけで済む筈も無く、政治や社会や文学など多くの話題にも当然
のことながら話の延長で本音で切り込んでいきます。3人が実感と
して得ている生態系から見た地球温暖化に対する意見も傾聴に
値します。
気に入った本があったら読んでみて下さい。
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