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* * * 読書雑記(2011年) * * *
2011年は累計で101冊の本を読むことが出来ました。
「千夜一夜物語」をはじめ大部の本を多く読んでいたため
かあまり冊数は進みませんでした。
ジェフリー・ディーヴァーの「スリーピング・ドール」が
文庫本で上下2冊で出ました。文教堂の株主優待5%割引
を使って購入しようと思って待つこと一ヶ月、やっと書店
の店頭に並びました。有隣堂やジュンク堂などでは発売と
同時に平積みされているのにあまりにも遅すぎます。どう
みてもこのあたりが文教堂の売り上げの伸びない理由です
ね。待てなくて他の書店で買った本を思い返してみると、
今更ながらその多さに驚きます。ところでこの「スリーピ
ング・ドール」ですが、ライムシリーズ物ではじめてとな
る心理捜査官が主役となって登場するミステリーです。二
転三転するスピード感あふれる展開で800ページを超え
る大作なのにあっという間に読み終えてしまいました。他
人を心をコントロールする天才である脱走犯ぺルの奇妙な
行動とこれを読み解いていく心理捜査官との攻防が見もの
です。次の著作の文庫子化が早くも待ち遠しい現状です。
元毎日新聞社記者の松藤竹二郎氏の著書「血滾ル 三島由
紀夫「憲法改正」」を読了しました。ノーベル賞候補にも
あがっていた三島由紀夫が命をかけて訴えたかった事とは
何だったのかその一端が判る一冊です。あの日、三島由紀
夫が自衛隊市ヶ谷駐屯地のバルコニーで演説している映像
をまだ覚えている人も多いかと思いますが、そこで訴えた
かった日本の未来に対する憂いと憲法改正案とはどのよう
な内容なのかが詳しく書かれています。当時を知らない人
にとっても一読の価値があるかと思います。しかし時の経
過というものはむごいもので、この本が出版されても最早
何物をも動かす力を持っていないだろうことが、この本が
出版されたこと自体が証明していることが何とも皮肉です。
三島由紀夫と盾の会が決起の時期を間違ったのに重ねてこ
の経過を語る時期についても再度誤ったという感じを強く
受けます。せめて昨今の我が国の危機感の無さに楔を刺す
きっかけ作りくらいにはして欲しかったなと思います。
D・A・ワートン「極限環境の生命」読了です。想像以上
に学術的な本です。結構、この手の本は興味本位の本が多
いですがこの本は極限環境とは何かということから、深海、
砂漠、高山、極地、脱水、凍結などそれぞれの状況に於い
て生物学的な観点から極限環境での生命について論考して
います。真剣に考えるためにはとてもためになる一冊です。
泡坂妻夫「卍の魔力、巴の呪力」読了しました。紋上絵師
という顔をも持つ作家の本業である家紋を判りやすく興味
深く説明してくれています。最後の方にある紋の書き方が
新鮮で興味深かったです。
池田清彦「脳死臓器移植は正しいか」読了です。実は既刊
の『臓器移植、我、せずされず−反・脳死臓器移植の思想』
の増補改訂版なので既に10年前に一度読んでいますが、
改めて読んでみて池田清彦の思想がぶれていない事がよく
判ります。解説では養老孟司が医者の立場に少し触れた上
で著者との考えの違いを明確にしています。いろいろな考
えがあって問題もいろいろあることは確かです。この本を
読むとそのあたりが明確になるかと思います。医療の公平
性や危険性などやはり推進ありきではなくて冷静に見直す
必要もありそうです。因みに個人的には池田清彦の意見の
大部分に賛同出来ますが、ドナーカードは保有しています。
内田魯庵「新編思い出す人々」読了です。岩波文庫が一括
して重版したものの内の一冊です。二葉亭四迷、坪内逍遥
、尾崎紅葉、鴎外、露伴などいずれも昔の人々ですがこれ
らの人たちに関する知られていない思い出や、当時の世相
などが実にリアルに描かれていて興味深い一冊です。
重田みゆき著「人は0.5秒で選ばれる!」読了です。
『ホンマでっか!?TV』のレギュラーである著者の経歴
は決して順風満帆ではなかったことといかに現在の地位を
築いて来たかが良く判ります。併せて人に良い印象を与え
るにはどのようにしたら良いのか具体的なアドバイス満載
です。気づきを得るために参考となる一冊です。
田母神俊雄著「間接侵略に立ち向かえ!」はこの著者なら
ではの一冊です。おそらくこのような国防情報は知る人は
知っている情報だと思いますが、なぜかマスコミも政治家
も沈黙を守っているだけで何か事件があったときだけ国民
に迎合して大騒ぎするだけです。真剣に国を憂える人を育
てる教育をもっとしていかないと本当に日本は各国から侮
られて国力を弱めること必至です。田母神氏が幕僚長の座
を追われて下野したことは結果的には国のためになったの
ではないかと思います。
三島由紀夫の初期作品である「純白の夜」を読み終えまし
た。著者が僅か25歳の時に書いたというこの本は単なる
早熟な著者というだけでなく、ラディゲなどに早くから傾
倒し、且つ亦幼少のころから上流社会の中に生きた著者な
らではの賜物という気がします。登場人物の思念を手に取
るように描き出す著者の手腕は流石というほかありません。
栗本慎一郎/養老孟司/澤口俊之それぞれが書いた「脳が
わかれば世の中がわかる」を読了しました。それぞれの専
門分野からみた脳に関する話題が判りやすく書かれていま
す。今ではテレビ出演も多くなった澤口先生の脳科学者と
しての仕事内容や業績が良く判る一冊です。
落合恵子「積極的その日暮らし」読了です。この本は朝日
新聞連載のコラムを纏めたもののようで一話が2ページ程
の短いものです。落合恵子の本は私の中では評価が二分し
ていますが、この本は残念ながら外れの方の分類です。評
価出来ない主なポイントは以下の様な点です。
(1)私的な話題が多く話題に共感出来ない読者にとって
はほとんど興味を引きません。また私的な話題そのものが
残念ながら全体的に内容が明るくありません。(2)世間
の出来事に対しての主張がコラムの魅力となることが多い
ですがそれはあくまでも公平無私であることが前提です。
この本での多くの主張をみているといつまでたっても女性
は差別されていて、社会は常に年寄りにやさしくなく国は
無駄遣いばかりしていて世間は偏見に満ちていると言って
いるように思えてなりません。著者の見方自体が偏ってい
ないのかそちらの方が気になります。被害者意識はあまり
前向きな思考を生まないと個人的には思っています。この
著者の本は既に80冊以上読んでいますが、昔から共感出
来ない点はこのような見方が極端に走っているコラムです。
ちくま文庫「千夜一夜物語A」をやっと読み終えました。
全11巻の中のまだ2巻目です。千夜一夜物語なので当然
全部で1000話あるものと勝手に思っていますが、2巻
目を終えて95夜です。本当に1000夜までいくのか、
このペースでは不安です。そうは言っても1巻目だと26
夜までしかなかったので2巻目は相当なペースアップです。
それにしてもなかなか面白い話や構成が続きます。
このところ贔屓の著者が次々に亡くなっています。谷沢永
一、北杜夫などの作家の本は何十冊も読んでいますがまだ
買って以来読んでいない本も多数残っています。そんな本
の一冊「人生後半に読むべき本」谷沢永一/渡部昇一をや
っと読み終えました。いろいろと興味をひく本も紹介され
ていますが対談形式の所為か、書評集のようにこの本は絶
対に読んでみたいと思わせられるようなインパクトが今ひ
とつありません。
谷沢永一著「完本巻末御免」読了です。これほど直截に歯
に衣着せずに時代を斬る発言をした作家もそう多くはない
のではないでしょうか。それだけに各方面からの反発も多
かったのではないかと思いますが、このような一冊が成っ
たコラム連載や出版社があったことは評価すべきだと思い
ます。この本に載っている300ものコラムの良い所は単
なる著者の意見というだけでなく、読者にも独自に判断が
出来るような材料も含めて提示してくれていることです。
一方、この本の難点は一編を1ページという短い文章で紹
介しているため特に当時のホットニュースなどの場合には
ニュースそのものの記述が省かれてしまって、それに対す
る時評だけが記載されている場合が多々あることです。今
となってはもうあまり有名でないニュースや出版会の内輪
の話などの場合には話題についていけない事もあります。
朝日新聞週刊百科編集部編「藤沢周平のツボ」はいろいろ
な作家による藤沢周平作品の解説です。いろいろな見方が
あるのは勿論ですが、これほど多くの一流作家たちを読者
に持つ作家というのは凄いです。
山村修著「もっと、狐の書評」読了しました。書評集を読
むとあとで読む本が増えてしまって困ります。それが「狐
の書評」となれば尚更です。1篇がたったの2ページだけ
の解説ですが、これほどにその本を読みたいと思わせる筆
力には感動です。取り上げられている本は150冊にも及
びます。また書評で取り上げられているジャンルは歴史、
旅、漫画、昆虫、物語、写真集など多岐にわたります。読
みたい本が見つからないという人にはお勧めです。
誠文堂新光社「粘菌 〜驚くべき生命力の謎〜」を読み終
えました。ほぼ全ページカラー図版なので定価3500円
とちょっと値が張りますがそれだけの価値のある一冊です。
100ページを超える粘菌の各生活ステージにおける貴重
な写真は一見の価値があります。たった一つの細胞が10
cmを超えるものもあるという驚異の世界です。ともかく
も子実体と呼ばれる胞子の入れ物の色や形態の多様さを眺
めるだけでもこれまで思い描いていた世界が広がる事請け
合いです。このような生き物を含めての生物多様性です。
江戸家魚八「魚へん漢字講座」読了しました。120文字
ほどの魚編の漢字1つづつについて漢字の来歴、魚の名前
の意味、魚の生態、調理方法、地域による呼び名など過不
足なく解説されています。難をいえば同じ調子が続いてい
るため読みのもとして見ていると飽きてしまうといった所
があります。辞書として利用するのが良いかも知れません。
出久根達郎「日本人の美風」読了です。大の日本贔屓であ
る呉善花の「私を劇的に変えた日本の美風」は外国人から
冷静に見た日本の美点と進言、声援の書ですが、「日本人
の美風」は一風変わった書です。各章のタイトルをあげて
おくと大体の内容が判るように思えますので以下に列記し
てみます。
・天災と砕身………浜口梧陵と篤志の人々
・無名の志………中谷宇吉郎と奇特な宿
・勤倹力行の提唱者………二宮尊徳の凄味
・陰徳を積む………野口秀雄のパトロン
・義理がたい………樋口一葉の優しき清貧
・狂歌の伝統………一高校長たちのユーモア
・良く耐えてこられましたね………皇后美智子さまの読書
地震や飢饉などの天災や戦争、さまざまな苦難などにおい
てかつての日本人がどのように行動してきたかをいろいろ
なエピソードを交えて紹介した本ですが、その行動の中に
日本人の美風が垣間見えてくるといった一冊です。
三島由紀夫「外遊日記」を読了しました。本のカバー裏に
は以下の様な解説が記載されています。『昭和32年7月
から33年1月にかけて、アメリカをはじめ、メキシコ、
ドミニコ、ハイチさらにはスペイン、ローマ、ギリシャを
訪れた際の紀行文、見聞録、観劇記からなる「旅の絵本」。
他に紀行文17本を加えておくる、まだまだ外国旅行の不
自由だった時代の旅日記。』たしかに今から見ると如何に
も時代を感じさせる内容の掌編が多いですが、そこは流石
に三島由紀夫の描写だけにいまでもみるべきものはありま
す。出版当初はこのような見聞録を人々は期待を持って読
んだものと推測されますが、時代の推移はおそろしく早い
です。今では見る人も少ないと思われます。私にしてもこ
の本を買ってから既に15年も経ってしまいました。
宮部みゆきの新刊がいちどきに出ました。「おまえさん」
の上下がハードカバーと文庫でいちどきに出たのには吃驚
ですが、このほかにヤングアダルト向けの「刑事の子」と
絵本の「悪い本」が出版されています。一番短い「悪い本」
をさっと読み終えました。読後感はいまいちです。宮部み
ゆきらしくも無く、伝えたいメッセージが私には今ひとつ
判らないしでちょっと残念です。外れがない宮部作品の中
での数少ない失敗作というのが私の中での評価です。
竹内久美子の「遺伝子が解く!万世一系のひみつ」は週刊
文春に平成16年〜18年に連載された読者の質問に答え
た動物の行動に関する蘊蓄をまとめたものです。おおよそ
は非常にためになる面白い科学読み物になっていますが、
いくつかは質問に真摯にこたえていないものがあって残念
です。解釈はどうであっても質問にはちゃんと答えるべき
で、単なる話の枕にしたいだけのタイトル選びでは読者の
共感は得られません。因みにタイトルとなっている「万世
一系のひみつ」のネタである女系天皇論争を動物行動学的
に捉えた話題では読ませる解釈を示していて読み応えがあ
ります。著者の本領発揮といったところです。
高任和夫「罪びと」読了です。タイトルが今一だと思いま
す。いつもの企業物なので『架空取引』『告発封印』など
のような従来のスタイルのタイトルの方が判りやすいと思
うのですが、最近は『敗者復活戦』といい、この本といい
何かタイトルに違和感があります。一般の人が受け取る『
罪びと』のイメージとは異なって、この本に納められてい
る6つの短編は重役、部長まではいかなくてもそれなりの
ポストや責任ある職を任される所まで行けた企業人の定年
を間近にしたいろいろな思い、行動を居酒屋を中心とした
人のつながりをベースにそれぞれの企業活動の内幕に絡む
遣り手企業人の活躍を描いた好個の読み物となっています。
三井物産の審査畑を歩んだという経歴の著者の本領が遺憾
なく発揮された円熟の一冊です。
昭和の時代に買った北杜夫の「悪魔のくる家」を今頃読ん
でいます。「どくとるマンボウ航海記」以来かなり北杜夫
の本は読み続けていましたが、読まなくなってからももう
随分と経ちました。最近また「家族マンボウ航海記」の様
な本を出しているようですが著者の元気さには脱帽です。
さてこの本は多分、著者の唯一の戯曲です。著者の躁鬱病
の雰囲気がそのまま出ているように思える秀逸な一冊です。
出久根達郎「作家の値段『新宝島』の夢」は著名作家の古
本にまつわる蘊蓄に加えて古本の値段という興味はあって
もなかなか知ることが出来ない興味ある情報を提供してく
れています。取り上げられている作家は24名に上ります
が有名どこでは藤沢周平、芥川龍之介、松本清張、手塚治
虫、開高健などがあります。手塚治虫の「新宝島」が五百
万円などというとんでもない金額が目を引きます。しかし
古本として古書価が上がるかどうかは保存状態、帯の有無
などマニアックな要素が絡むのでこれで儲けようとするの
はなかなか難しいようです。たまたま希書を持っている時
は出来るだけ手に触れずに大切に保存する必要があります。
ちくま文庫の「千夜一夜物語」の第一巻を読み終えました。
想像以上に楽しい読み物です。語りの中で別の人が語り始
めるような入れ子構造の話も随所にあって単調な話が延々
千夜続くわけではないことが初めて判りました。一筋縄で
はいかない実に奇抜な話題をよくこうも集めたものだと思
います。この物語は一般には子ども向けのように受け取ら
れていますが、大人になってから読むのがより楽しめる様
な気がします。それにしても1巻が600頁を超える分厚
な文庫が11冊もあると思うと読み始めるのも大変です。
私の場合には購入してから読み始めるまで約3年です。
落合恵子「絵本処方箋」読了です。一話3ページ程の簡潔
な文章で大人も子どもも楽しめる絵本を紹介しています。
取り上げられている本は70冊を超えています。各文章の
先頭には頭書きがあって曰く『怒りがたまってきたら』『
子ども時代に帰りたかったら』『疲れがとれない日々だっ
たら』『どこか遠くに行きたかったら』『ちょっと煮詰ま
ったら』などどうみても大人に対しての絵本の紹介にほか
ならないという事が判ります。取り上げられているのは絵
本だけでなく写真集や図鑑の類も含んでいるようです。
澤口俊之の「恋脳指数」読了しました。著者は北海道大学、
京都大学、エール大学などで生物学、医学などを修め現在
は認知脳科学、霊長類学で活躍している研究者ですが最近
は『ホンマでっか!?TV』のレギュラーとして夙に有名
です。代表作ということで買ってみましたが、完全に選択
を間違えました。この本は20〜40台の未婚女性向けで
すね。そういった意味で前半第一章のLQテストは対象者
以外には用はありません。第二章の有名漫画家倉田真由美
との対談は澤口氏の本領発揮といったところで買った甲斐
があったと思われる内容です。なお、倉田真由美は「だめ
んず・うぉ〜か〜」が有名になったので漫画家としました
が最近ではいろいろなTVにも出演し、本も多数出してい
るのでマルチタレントと言った方が妥当かもしれません。
さて、肝心の第二章の内容ですが簡単に言えば『ホンマで
っか!?TV』の延長です。恋愛に関して、男女の関係に
ついて、スポーツ、血液型から都市伝説にいたるまであら
ゆる話題について相手の質問に対して瞬発で解答が返ると
いう説得力のある対談が繰り広げられています。
宮部みゆき「英雄の書(下)」読了です。失踪した兄の行
方を探す旅に出た”印を戴く者(オルキャスト)”となっ
た主人公ユーリは無事目的を果たすことが出来るのか、城
の消えた地下の戦いの場に仲間と共に挑む主人公は無事に
生還出来るのか、『英雄の書』『虚ろの書』『破獄』『無
名僧』『狼』『黄衣の王』『最後の器』『エルムの書』な
どの関係が最後の最後に明確になっていきます。予期せぬ
展開も待っています。思わずのめり込んでしまう一冊です。
竹内久美子の「遺伝子が解く!美人の身体」文春文庫を読
み終えましたが2008年の単行本「ドコバラ!」を改題
したものだということが判りました。既に大半の内容は忘
れてしまっているので良いようなものですが、同じ内容の
本を全く違うタイトルで出版する文春の見識を疑います。
名前を変えて何度でも売ろうとする商売根性丸出しです。
内容が面白いだけに『買わされた』感が唯一の瑕瑾です。
宮部みゆき「英雄の書(上)」読了しました。まだ前半を
読んだだけなのでこれから先の展開は読めませんがファン
タジー系の作品かと思っていたらテーマはなかなか重くて
深淵です。中島敦の作品に「文字禍」がありますがなぜか
この本を思い出してしまいました。文字には力があるとい
われますがそんなテーマも内包しています。後篇が楽しみ
です。
宮部みゆき「チヨ子」はこれまで個人短編集に入っていな
かった5つの中短編が納められています。ホラー&ファン
タジーものです。今、著者の「英雄の書」も併読していま
すがこの短編集の中の「聖痕」はまさにこの「英雄の書」
と繋がる所があります。偶然、一緒に読んでいるだけです
がなかなか興味深いものがあります。ちょっと重たいテー
マも内包していますが読み応えのある一冊です。
スティーブン・ジェイ・グールド「ニワトリの歯(下)」
読了です。ヒトの起源に関わる重要なピルトダウン事件の
真実に迫る著者の熱情、推論は科学的読み物として一級品
です。創造論に関わるスコープス裁判、さらには優生学の
話など熱い議論目白押しです。それぞれの話題については
さらに踏み込んだ著書がありますが、この本はいろいろな
議論のエッセンスをぎゅっと縮めて纏めた感じの本です。
千葉県立中央博物館「あ!ハチがいる!」読了です。さま
ざまな蜂の紹介や話題の提供があります。蜂の88面相な
ど面白い取り組みもあります。本格的に取り組みたい人に
は巻末にある蜂の分類表が役立つかも知れません。写真も
豊富で楽しめる一冊です。
「養老孟司の大言論3 大切なことは言葉にならない」を
続けて読みました。日常としての宗教、科学と宗教と文明
や日本人と宗教などといった宗教に関するテーマが多いの
が特徴です。流石の養老孟司でも宗教には閉口している様
子が垣間見えます。他には生物多様性と採算性、自然に学
ぶなどのテーマがあります。この本で一番嬉しい点は巻末
のおすすめ本リストです。これでまた読みたい本が増えそ
うです。
「養老孟司の大言論2 嫌いなことから、人は学ぶ」読了
です。博物学の視点、違いから説き起こす、お金や情報は
現実か、石油が維持する秩序などなど独自な視点から論じ
る内容には一見の価値があります。もしかしたら物の見方
や考え方を変えてくれる一冊になるかも知れません。
進化学者スティーブン・ジェイ・グールドの「ニワトリの
歯(上)」読了です。チョウチンアンコウの雄はなぜ雌の
10分の1の大きさしかないのか、6000万年前に失わ
れたニワトリの歯の再生の話、車輪を持つ生物の話題など
面白い科学ネタについて更に興味を引く解説がついたエッ
セイ集です。
半藤一利「あの戦争と日本人」を読了しました。判りやす
くためになる歴史の真実が随所に見られます。歴史に関し
ては偏った見方をする人が多い中、公平な目で見て真実は
どうだったのかを見出そうとする姿勢には感心させられま
す。思い込み無しに読んでみることをお勧めします。
松田宏也「ミニヤコンカ奇跡の生還」読了です。大変な困
難の末に生還した登山家の記録ですが、なぜか共感出来な
い本です。これは多分、亡くなった方への鎮魂の言葉がま
ったく見られないことや、失敗の解析などが一切なくまた
自分だけが生き残ったのは自分だけ体力や知識があったか
らだと言っているかのようにしか読み取れないためだと思
います。残念なことです。著者のその後の言葉を聞きたい
と思ってネットで本を検索してみましたが直接関係しそう
な続編らしきものは見当たりませんでした。
岩波文庫「世界文学のすすめ」を読み終えました。大岡信
/奥本大三郎などの対談が面白いです。その後に続く30
篇ほどの著書についてのさまざまな作家などによる解説は
共感出来るものと、個人的な思い出だけを語って読者には
まったくうったえて来ないものなど玉石混交の書評集です。
全体的にみると向井敏などの書評に比べると格段にレベル
が低いように思えます。
青山潤著「アフリカにょろり旅」読了です。世界のウナギ
全18種類中、唯一まだ採集されていなかった種「ラビア
ータ」を探し求めてアフリカを旅する東大研究者「うなぎ
グループ」の旅物語です。言葉も通じないアフリカ各地を
バスで4000Km以上も移動しての探索には頭が下がり
ます。とても調査紀行とは思えないような奇想天外な旅の
様子が面白おかしく描かれています。うなぎ研究に関して
は世界一と言っても過言ではない日本の科学者の実態の一
環をここにうかがうことが出来ます。
ほんまでっかTVでお馴染みの門倉貴史著「本当は嘘つき
な統計数字」を読み終えました。統計のからくりを分かり
やすい例題で教えてくれます。大変ためになる一冊です。
ほんまでっかTVレギュラーの牛窪恵の近著「おゆとりさ
ま消費」読了です。ゆとり世代の消費スタイルが実にさま
ざまな角度からとらえられています。大いに参考になる著
書だと思いますがついていけない部分も多数です。
青山潤「うなドン・南の楽園にょろり旅」と廣瀬慶二「う
なぎを増やす」の2冊を読み終えました。今年は土用の丑
の日が2日もあるのを記念して「アフリカにょろり旅」を
含めて溜め込んでいた鰻関係の本3冊を読み始めたもので
す。「うなぎを増やす」は学術的な本で為になりますが、
平成13年初版の本なので最近急進歩している鰻の学術的
な情報としては少し古い感じです。一方「うなドン・南の
楽園にょろり旅」は東大の偉い人たちがメガストマと呼ば
れる鰻を求めてタヒチに冒険旅行に出掛けた?末を描いた
はちゃめちゃな冒険譚です。ウナギのドンキホーテよろし
く活動する様はまさに「うなぎバカ」です。十二分に楽し
める一冊です。
岩谷テンホーの新作「みこすり半劇場モッコリ」読了です。
たったの420円でこれだけ笑える4コマ漫画はそうそう
ありません。500篇弱の4コマが納められています。タ
イトルを見てもわかるように大人向けのギャクです。
阿刀田高「ものがたり風土記」をやっと読み終えました。
読み始めてからは1週間と経っていませんが、購入してか
らは既に数年経っています。読んでみるとそれなりに面白
くて民話、伝承、小説などの舞台となった各地の様子が豊
富な蘊蓄とともに紹介されていてためにもなる内容ですが
どうもこの類の著者の作品は積んでおかれる運命にありま
す。まだ何冊か本棚のどこかに残っているはずです。
『養老孟司の大言論』シリーズは、季刊紙『考える人』に
連載された著者の連載34回分を単行本化したものだそう
です。本の帯には「一冊読み切り」とあるので1冊かと思
っていたら3冊シリーズです。訳が判りません。コラム集
などは大抵1話読み切りなのでわざわざ(上)(中)(下)と書
く必要は無いですが「一冊読み切り」と書くことも無いと
思います。新潮社の見識を疑います。第1冊目のタイトル
は「養老孟司の大言論1希望とは自分が変わること」です。
内容は著者のいつものコラムです。「コスタリカと生物多
様性」「考える田舎」「スロー社会」「ただの人」「個人
主義とはなんだ」などなど興味の沸く章が並んでいます。
田原総一朗著「なぜ日本は「大東亜戦争」を戦ったのか」
を読み終えました。内容としては当時多くのアジアが欧米
の植民地となっていた時代背景において、アジア独立を提
唱、推進していた隠れた実力者たちの努力が実らずに大東
亜戦争に突入していってしまったのかその経緯を明らかに
したといった意味では実に有意義な本だと思います。しか
し本のタイトルの回答がこの本の中にあると思って読んで
いると肩すかしを食わされたような感じに陥るかも知れま
せん。実は私はその口です。どうもぼうっとして読んでい
るとそこまで読み解けないように思えます。折角の素人向
けの本なのでもっと明確に描いてくれると更に役立ったの
ではないかと思います。それにしても頭山満、大川周明、
北一輝という日本史の表面にあまり登場しない3人が歴史
で果たした役割やどのように日本の将来を見据えていたか
など教えられるところの多い一冊です。
毎週水曜日にはテレビ番組『ほんまでっか!?TV』を楽しみ
に見ています。ゴールデンに進出した番組ですが、かなり
怪しい話題を毎週レギュラーの論客が発信し続けています。
しかし個人的にはこの出演者の顔触れをみて凄いメンバーを
揃えていることに感心しています。池田清彦氏は生物学の
泰斗で、養老孟司氏とも何冊か共著を出しています。他の
メンバーもそれぞれの分野の専門家です。つい最近ですが
出演者の主要著書をネットで注文しました。以下に参考ま
にそれらを載せておきます。
・澤口俊之「知能指数(IQ)より人生を左右する恋愛脳テスト」
・植木理恵「男ゴコロ・女ゴコロの謎を解く!恋愛心理学」
・牛窪恵「おゆとりさま消費」
・金子哲雄「これでわかった!!値段のカラクリ」
・重田みゆき「人は0.5秒で選ばれる!」
「顔グセの法則」
・池田清彦「ほんとうの復興」
・武田邦彦「「エコ」社会が日本をダメにする」
「ウソだらけ間違いだらけの環境問題」
・門倉貴史「本当は嘘つきな統計数字」
「人妻の経済学」
池田清彦著「新しい環境問題の教科書」読了です。この本
は養老孟司との共著である「ほんとうの環境問題」と「正
義で地球は救えない」の中の池田清彦氏の執筆部分だけを
まとめて一冊にしたものです。そういった意味では私は既
に中身は一度読んでいますが、改めて読む価値のある本だ
と思います。池田清彦氏の本は専門の構造主義生物学の話
になるとまわりくどくて読みにくくなりますが、こういう
評論に関しては極めて判りやすく書かれています。政治家
には第一にお勧めしたい本ですが、エコには積極的に取り
組んでいるという家庭の主婦やゴミ問題に取り組んでいる
エコグループなどにも是非とも読んで欲しい一冊です。
地球温暖化、ゴミ問題、人口増加、エネルギー政策、生物
多様性などについて豊富な例証をあげて判りやすく説明し
てくれています。
森澄雄「俳句への旅」を読み終えました。俳句の作法から
始まって近現代の俳句小史、近代の代表俳人の作品紹介ま
でその内容は満載です。いろいろな人の作品を見るとその
観点が違って参考になることも多いです。
久しぶりに阿刀田高の本を読みました。著者の著作の内で
ミステリーや奇妙な味、ブラックユーモアなどの著作は読
むのも楽しみですが、『xxxを楽しむために』『xxx
を知っていますか』のシリーズ物については今ひとつ趣味
が合わないため購入したまま眠っている本が何冊かありま
す。今回はその中で「シェイクスピアを楽しむために」を
書棚の奥からたまたま見つけたのを機に読んでみました。
シェイクスピアの主要な作品の早わかりとしては良くまと
まっていると思います。多分好きな人はいろいろな蘊蓄で
楽しめるところでしょうが何しろシェイクスピアの作品を
一冊も読んだことのない私みたいな者にとっては単に納得
する程度の関心しか湧きません。残念なことです。
最近いろいろな人が松本清張論を展開していますが新潮社
版「松本清張傑作選」は清張ファンでもある宮部みゆきの
選んだ珠玉短編集です。自伝的作品の少ない作家の数少な
い自伝的要素の多い作品が11篇収められています。同じ
ようなテーマで2通りの作品を作っていたりして読み比べ
が出来るところも選集ならではです。
谷沢永一著「いじめを粉砕する九の鉄則」を読み終えまし
た。著者独特の人間観からの提言なので誰にでも当てはま
る訳ではありませんが、人間とはこんなものというその言
い分にも傾聴すべきものはあると思います。但し結構極論
で発言している部分もあるので自分の意志をしっかり持っ
ていない人は安易に鵜のみにしない方が良いかも知れませ
ん。
「オサムシ 飛ぶことを忘れた虫の魅惑」川那部浩哉監修
読了です。日本の昆虫にしてはタマムシのように黄金色に
輝く珍しい個体が満載の種類だけに愛好者は多いようです
が個人的には主として地味なマイマイカブリしか見ていな
いためあまりこの昆虫に興味はありません。しかし分子生
物学的な研究が進んだ昆虫として注目されており、新しい
知見が得られる可能性の高い昆虫としては要注目です。本
の帯には以下のように記されています。『大人も子どもも
虜にしてしまうオサムシという虫のふしぎと魅力を一挙紹
介!妖しく美しい翅ゆえに”歩く宝石”と呼ばれる甲虫オ
サムシ。その翅の輝きがうまれる秘密はもちろん、四季の
生態や習性から、世界のオサムシの多様性、分子生物学が
明かす系統と進化、遺跡や化石のオサムシが語る歴史、手
塚治虫やファーブルとオサムシ、さらに捕まえ方・飼い方
・標本のつくり方まで、昆虫ファンを惹きつけてやまない
魅惑のすべてを収録する。』
「そして夜は甦る」は原ォの沢崎探偵シリーズの長編第一
作です。私立探偵沢崎が行方不明調査に巻き込まれる発端
から物語は一気に警察官殺害事件、東京都知事狙撃事件に
まで発展していきます。事件の鍵をにぎるルポライターを
追う沢崎の活躍は外国のハードボイルドをみるようです。
寡作の作家の作品なので一冊ずつ味わいながら読み進めて
います。
以前に最相葉月の『青いバラ』を読んで興味を持って今回
やはりノンフィクションの『絶対音感』を手に取ってみま
した。これもなかなかの力作です。なぜ日本には絶対音感
を持った人が多いのか、そもそも絶対音感とは何なのか、
絶対音感は音楽家にとって必須なのか、基準音の周波数が
国によって違うことによる問題、固定ド唱法、相対音感な
ど奥が深いです。一流の音楽家や科学者ら200名にも
インタビューを取って纏め上げた一冊です。前半部分はか
なり興味をひかれましたが第7章の音楽とは何か、コンピ
ュータでの音楽作成などの話題については掘り下げが今一
つといった感じです。また最終章の「心の扉」ははっきり
いって期待していた本題とは離れてしまって絶対音感に振
り回された人生を送ることになった人々の生活史といった
内容で失望しました。といった状態なので全体的にはお勧
めなのですが300頁までが山場です。
ローワン・ジェイコブセン著「ハチはなぜ大量死したのか」
読了です。久々に読ませてくれる本に出会いました。これ
はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を超える警告の書
であると私には思われます。北半球で300億匹ものミツ
バチが理由も不明なまま失踪するという奇怪な現象が発生
しCCD(蜂群崩壊症候群)と呼ばれるようになったのは
2006年というまだ最近の話です。高がミツバチの失踪
という話だけであれば蜂蜜の値段が高くなるのかなあと漠
然と想像するだけですみますが、今やアーモンドを始めと
して各種農産物の生産量を支える重要な花粉媒介者として
の役割を知れば、その影響がいかに大きいかが判ります。
本書ではこの失踪の発端から、ダニに依る影響調査、ウイ
ルス原因説、携帯電話による電磁波が蜂のナビゲーション
能力を狂わせるという説、遺伝子組み換え植物や農薬使用
による蜂の学習能力減退説や蜂の酷使や栄養の偏りによる
免疫系の衰退説、更には中国産蜂蜜の世界市場への進出の
状況やその成分の不透明さ、遂には現代のミツバチが蒙る
複合汚染の脅威へと話は発展していきます。本書の素晴ら
しさはそれらの負の要因を乗り越えて自然との共生により
復活を図ろうとしている一部農家の取り組みとその成果が
紹介されていることです。それらの成功している事例から
著者は現代の経済システムに鋭く警告を発生していますが
養蜂業者だけでなく、すべての農業従事者、およびその恩
恵を受けてきた我々消費者も含めて今一度大量消費システ
ムを見直してみる良いきっかけとなる一冊だと思います。
きっと最終章まで読んだ人の多くは自分でも趣味で養蜂を
してみたいとおもわれるのではないかと想像します。
司馬遼太郎著「手掘り日本史」を読み終えました。本書は
著者への18時間にも及ぶインタビューをもとに纏められ
たものだそうですが、著者の歴史観の一端が窺える貴重な
史料となっています。
小島秀康著「南極で隕石をさがす」読了です。日本国内で
はまだ隕石は50個ほどしか見つかっていませんが日本が
南極で見つけた隕石は1万6千八百個にも上っています。
この本はこれらの隕石探査の様子や南極観測隊の準備状況、
採取後の作業などについて纏めた一冊です。最後の方に各
種隕石の特徴や分類が載っています。これから南極観測隊
に加わってぜひとも自分で隕石探索をしたいという人には
必須の書ですが、南極隕石に普通の関心を持っているだけ
の人にとっては、本書の前半部分は冗長過ぎるように思い
ます。読み物としての隕石の書では築地書館から出ている
「隕石コレクター」、科学的知見であれば東京化学同人の
「隕石」、図版では誠文堂新光社「隕石の見かた、調べか
たがわかる本」あたりの方がはるかに読ませてくれます。
それにしても本も昔に比べると値上がりしたものです。5
末に読んでいた本3冊だけで何と6,500円を超えています。
どうも小遣いがすぐに無くなるはずです。
山口椿著「恋寝刃地獄聞書(こいのねたばじごくのききが
き)」読了です。祥伝社文庫で全8巻のシリーズで山口椿
エロティシズム・コレクションが編まれているようですが
その7巻目に当たります。鬼才が絢爛たる文体で描く官能
怪異小説です。この著者でなければ描けない怪しくグロテ
スクな世界ですが、講談調の如き文体や隠語のバリエーシ
ョンの豊富さ、『嬉遊笑覧』、「末摘花』、南畝、馬琴な
どの各種古典引用によるコラボレーションの妙技は読んで
味わってみないと判らない素晴らしさです。尤も我々凡人
にはそんな素養がないので残念ながら1割も理解出来ませ
んがそれでも齧ってみるだけの価値はあるかと思います。
ジェフリー・ディーヴァー他によるリレー小説「ショパン
の手稿譜」を読了しました。本格的な推理小説でリレー小
説などありえないと思っていたら意外と古い歴史があるこ
とが解説に書いてありました。それでも15人の著者と7
人の訳者が文庫300頁ほどの推理小説を作ったら流石に
つぎはぎだらけになりそうですが、舵取りをしたジェフリ
ー・ディーヴァーの手腕なのかそれぞれの作者の力量なの
か判りませんがほんの少しの難解さと繋ぎに多少の無理が
ほのみえるだけで全体を通して見るとやはり流石と言わざ
るを得ません。十分に楽しめるだけのスリルとテンポと謎
解きの醍醐味をたっぷり味わうことが出来ます。ショパン
の楽曲の作りを何も知らなくても堪能出来ます。
田丸公美子著「シモネッタの本能三昧イタリア紀行」は著
者がこれまでの70回近くに及ぶイタリア紀行から得た、
かの国の素晴らしさ、しようもなさ、人間臭さなどを下ネ
タを織り交ぜて楽しく語った一冊です。「月刊現代」に2
年近く掲載したエッセイを加筆・訂正したものだそうです。
呉善花著「私を劇的に変えた日本の美風」は日本の良い所
を日本人自身が今一度見直して日本人が自信を回復してく
れるようにという、下で紹介した鈴木孝夫慶応義塾大学名
誉教授と同じような気概を持つ啓発の書です。著者の当初
からの日本贔屓にはいっそう拍車が掛っているようです。
しかし決して無理強いに自論を展開している訳ではなく常
に冷静な透徹した眼を以て良い所を的確に把握している所
が流石と言わざるをえません。巷には自説を押し通すため
に声高に言う人がいますが、呉善花はその対極にあります。
韓国を良く知る著者だからこそ、その比較で日本の良さが
見えるといったところはあるとは思いますが、せめて日本
の論客や為政者はこれらの発言に少しでも耳を傾けて今後
の日本の威信・自信回復に役立てて欲しいものです。
巷に流行っている「品格」シリーズの一冊です。土屋賢二
「ツチヤの貧格」は御存じのお茶の水大学哲学教授である
著者がいつもの調子で週刊文春に2006年〜2007年
に掲載した自虐ネタのコラムをユーモアたっぷりに描いた
ものです。しかし似たようなネタを長年続けているせいか
当初に比べて切れが悪くなってきているような気もします。
鯨統一郎著「喜劇ひく悲奇劇」はタイトルからも判るよう
に回文をテーマとした推理事件で、なおかつ泡坂妻夫の「
喜劇悲奇劇」をベースにした事は一目瞭然です。泡坂妻夫
の原作は解説をみて仰天した覚えがありますが、この本も
さすがに良く出来ています。回文としての力作です。興味
のある方にはどちらの本もお勧めです。
鈴木孝夫は言語社会学者としてことばや文化に関して多く
の著作を著している方のようですが今回初めてそのうちの
一冊「日本語教のすすめ」を読みました。日本語の欠陥を
論う人は多くてもこれだけ日本語を良く解析してその素晴
らしさを明確にした人も少ないと思います。漢字の音訓読
みの利点や同音の多い日本語の特徴や言葉と文化の関係な
ど多くの知見を与えてくれています。天狗の鼻は長いとは
言わずに高いということなどその着眼点が独特です。また
身内の呼び方の方程式などは目からうろこといった所です。
加藤秀俊・熊倉功夫編「外国語になった日本語の事典」を
読み終えました。40名程の執筆者が手分けして50項目
の外国でも使われている日本語の解説をしています。極め
て真面目な本です。それぞれの言葉が外国に伝わるように
なった経緯、歴史的な背景、言葉の意味、最近の状況まで
を学術的に探求して記載した興味深い一冊です。地味な本
ですが良い仕事をしていると思います。
記載されている用語は生花、漆、温泉、黒潮、交番、酒、
しょうゆ、豆腐、二世、根付、盆栽、蒲団などこれまであ
まり聞いたことの無い外国語になった日本語も取り上げら
れています。勿論、津波や忍者、武士道といった良く知ら
れている言葉も同様に掲載されています。一項目が5頁程
度の読みやすい分量で纏められていて使いやすいです。
与謝野晶子訳の角川文庫「源氏物語・上巻」をやっと読み
終えました。鯉釣りの間の待ち時間で読んでいるだけなの
で、読む時間が限られます。少なくとも2009年11月
には読み始めているので1年半は掛っていることになりま
す。600ページを超える大部の古典を読むのはなかなか
しんどいです。源氏物語は難解だと言われますが実は多く
の人が現代語に訳しています。その中でも千年を越えて同
じく才女である与謝野晶子が判り易い現代語に訳したこの
本には定評があります。余裕のある方は読んでみて下さい。
角川文庫版では上・中・下巻に分かれていますが上巻には
桐壺、帚木、空蝉、夕顔、若紫、末摘花、紅葉賀、花宴、
葵、賢木、花散里、須磨、明石、澪標、蓬生、関屋、絵合、
松風、薄雲、朝顔、少女の各帖が納められています。
あのオウム報道でジャーナリストとしての姿勢を貫き通し
た江川紹子が、冤罪の可能性のある係争中の事件を追った
渾身の一冊です。「名張毒ブドウ酒殺人事件」と題された
この事件は昭和36年に三重県と奈良県にまたがった小さ
な集落の寄り合いでブドウ酒を飲んだ女性5名が亡くなる
という大事件です。しかしこのサブタイトルには”六人目
の犠牲者”という見過ごすには重たい文字があります。私
もこのサブタイトルを見て購入した一人ですが、事件の起
こった部落の人間関係や事件の背景、司法制度の実情など
を読むほどに理不尽さがどうしても解消されません。著者
もそのような思いでこの文庫本を出した2011年1月付
けのあとがきにも淡々と熱い思いを綴っているように思え
ます。このような事件こそもっとTV報道番組で取り上げ
て真実の解明を促すきっかけを担うべきだと思うのは私だ
けでは無いと思います。
山本夏彦著作集A「意地悪は死なず」は山本夏彦と山本七
平の対談集をまとめたものです。博学の2人の対談なので
傾聴に値する内容は多いですが、博学過ぎて脱線すること
夥しいものがあります。また、さすがに時代がだいぶ経っ
てしまったために時代を読み換えて理解しなければならな
いところもあって若者には理解しづらい箇所もあるかも知
れません。しかし、良く読めば至言の端々が見られます。
山下景子著「美人の日本語」は四季の言の葉を一日一頁と
いう短いコラムで綴ったものです。わたぬき、あけぼの、
ひこばえ、はなまいこえだ、はなあかり、たけなわのよう
な漢語でない床しい言葉が365日続きます。当然のこと
ながら蘊蓄満載です。ほっとするような語り口が内容と相
俟って心地よいです。
谷沢永一氏が今年の3月に亡くなったそうです。著者の本
はだいぶ読んでいますが、買ってまだ読んでない本も多数
あります。今回は新潮文庫の「冠婚葬祭心得」を読み終え
ました。披露宴、祝辞、引出物、七五三、入学式、入社、
還暦、祝電、年賀、名刺、電話、割勘、歳暮、改築、見舞
、小話、同窓会、二次会などなど人生の節目の行事に於い
て人との付き合いをどのようにしたら良いか作法やら心得
やらを独自の見解で明確に示してくれます。人間通だった
著者ならではの一冊です。
飯塚訓といえば日航ジャンボ機の墜落後の遺体の身元捜査
に当たった際の記録である著書「墜落遺体」が有名ですが
著者の長年の警察勤務の経験を元に著した「油断大敵」が
第二冊目の著作だそうです。ここには泥棒のプロと警察の
プロとの実に人間臭い交流があります。人間を知りつくし
人間を愛し信頼しているからこそ完全黙秘していた窃盗の
プロに全面自供をさせることも出来るというそんなエピソ
ードに溢れています。なかなか興味深い一冊です。
出久根達郎著「読売新聞で読む明治」を読み終えました。
何だか残念な本です。第1章「ひらがなは一番なり」第2
章「巷の事件でたどる明治は」など出だしはとても面白く
明治の風俗が新聞記事で浮き彫りにされていますが章を追
うごとにだんだんとつまらなくなって第6章「明治の若者
を熱狂させた連載小説」に至っては本当の文学好きの人な
らば楽しめるかもしれませんが現代人にとっては当時の作
者も著作も古すぎてついに興味が沸かずに尻すぼみに終わ
る可能性が高いのではないかと危惧されます。差し当たっ
てその犠牲者第一号は私です。著者の本は初期の「猫の縁
談」「古本綺譚」から始まって既に60冊は読んでいます
が最終章でこれほど飽きてしまった本はこれが初めてです。
元航空幕僚長という肩書きの田母神俊雄の「田母神の流儀」
は国家を憂える著者が100のテーマそれぞれに独特の見
解を加えて語った言論のエッセンス集です。多分このよう
な発言を聞いた途端に怒り出す人が出るだろうとすぐにも
予測されそうな内容ばかりですが、冷静に耳を傾ければ的
を射た発言も数多くあると私は思います。曰く『武器輸出
三原則は直ちに変えよ』『原子力潜水艦の増強が必要』『
核武装は有効な外交カード』『国債を100兆円発行せよ
』『会社は株主のものではない』などなど一見の価値あり
です。田母神氏が解任されて下野したお陰で聞く耳を持っ
た多くの国民に益するとは解任した麻生太郎元総理も予測
出来なかったでしょうが時には良い事もあるものです。
岩谷テンホーの新作「みこすり半劇場大ボケ」を読み終え
ました。寝る前に読むと大笑い出来て楽しく眠れます。こ
んな楽しい本が出るはしから絶版になるのは勿体ないです。
宮部みゆきの著書を続けて読了しました。「ばんば憑き」
には江戸時代を背景にした怪異6篇が納められています。
「坊主の壺」「お文の影」「博打眼」「討債鬼」「野槌の
墓」と表題作の「ばんば憑き」すべてにそれぞれの味わい
があります。中には連作短編が出来そうな配役も出て来ま
す。じっくりと読みたい一冊ですがあっという間に読み終
えてしまいました。それにしても参考文献に百目鬼恭三郎
の「奇談の時代」が出て来たのは懐かしい思いがしました。
宮部みゆき著「小暮写眞館」も700ページを超える大作
ですがハードカバーの本なので、ページあたりの文字数が
ほぼ同じの文庫「狩野亨吉の生涯」に比べると格段に読み
易く感じられました。「小暮写眞館」に越して来た高校生
が主人公のエンターテインメントです。仲間とささいな謎
や幽霊譚や事件を探求しながら友情を深めたり別れを経験
していくという心温まるライトノベルです。
青江舜二郎著「狩野亨吉の生涯」は文庫で800ページを
越える分厚の本です。あまりなじみのない名前の著者名と
題名にある名前ですが、あの文豪、夏目漱石の友人であり
自然科学思想史の開拓者であり、一高校長をはじめとした
大学長を歴任し多くの信奉者を持つ偉大な人物であること
がこの本により明らかにされています。夏目漱石の研究家
などにとっては記念碑的な一冊かもしれませんがやはり我
々一般人にとってはあまり興味をそそる本ではありません。
膨大な資料を渉猟して狩野亨吉という人物の交友、業績を
生涯に亘って明らかにした点で大変な労作といえます。
昭和の時代に買った本をやっと読み終えたという感慨があ
るばかりです。当時定価約千円の本を25年程寝かしてい
た間に古本で数倍の値段になるとは私にはとても予測出来
ませんでした。これではとてもコレクターにはなれそうも
ありません。
宮部みゆき選「謎002」で紹介されていた原ォ「天使た
ちの探偵」を購入し読了しました。やはりこの短編集は全
篇上質です。私立探偵沢崎が主人公の本格推理短編集はこ
の一冊しか無いようですが、同じ主人公の長編推理小説は
まだ他にも何冊かあるようです。推理小説の紹介をするの
は難しいので紹介文を以下に引用しておきます。『ある女
のひとを守ってほしい―沢崎の事務所を訪れた十才の少年
は依頼の言葉と一万円札五枚を残して、雨の街に消えた。
やむなく調査をはじめた沢崎は、やがて思いもかけぬ銀行
強盗事件に巻き込まれることに…私立探偵沢崎の短篇初登
場作「少年の見た男」ほか、未成年者がからむ六つの事件
を描く日本冒険小説協会大賞最優秀短編賞受賞の連作集。』
山本夏彦の復刻集全10巻が刊行され始めました。第一巻
は「茶の間の正義」です。40年以上も昔の著作とは思え
ないほどに普遍的な辛口の言論がそこにあります。一話が
数ページのコラム集なのでとても読みやすい一冊です。私
は山本夏彦氏の著作のほとんどは既に読んでいますが今回
読み直して改めて偉大なコラムニストだったとの感を深く
しました。多くの人に薦めたい著作集です。
今読んでいる本は600ページ、700ページ、800ペ
ージという長編ばかり抱えているためなかなか読み終えま
せん。「源氏物語」は上巻だけで600ページを超えてい
て全3巻では1200ページ超です。日本の有名な古典も
読んでみると良さが判って来ますがそれにしても長いです。
「狩野亨吉の生涯」という本はハードカバーが絶版で古本
が高値をよんでいる時に文庫が出て買ったものですが今で
はその文庫でさえ古本でしか入手出来ずおまけにこの文庫
でさえも値上がりして二千円から五千円もしています。
出久根達郎著「あらいざらい本の話」を読み終えました。
2005年に初版を購入してそのまま本棚に積んでいたも
のを2011年になってやっと読み始めましたが読むのが
遅すぎました。この本で紹介されていた飯塚訓の「油断大
敵」も長辻象平の「忠臣蔵釣客伝」も村田喜代子「人が見
たら蛙に化れ」もみーんな購入出来ません。たったの6年
しか経っていないのか何か納得できません。絶版なのか何
なのか素人には事情は判りませんが特に許せないのは文庫
で出しているのに入手不能にするというのはないだろうと
思います。ハードカバーだったら売れない在庫をかかえる
のも大変だと思いますが、少なくとも文庫にしたら10年
や20年は品切れにならないようにする位の出版社として
の矜持は無いのかと思います。もうけ主義がはびこる出版
業界には最近は本離れが激しいなどと言って欲しくないで
す。読みたい本を売らないのはあなたたち出版社です。こ
れらの本の初版時期をみてもまだ10年も経っていません。
先日の「北一輝論」に続いて「二・二六事件」の話です。
河出文庫から出ている平塚柾緒著のこの著書はその名の通
り事件の発端から襲撃の状況、鎮圧の状況、その後の裁判
の状況、判決の一覧、決起将校の人物紹介、関係年表など
二・二六事件に関連する諸状況が詳しく載っています。
私は誕生日が2/26なので多少の思い入れを持って読む
ことが出来ました。
田川研著「虫屋の虫めがね」読了しました。30篇の掌編
はそれぞれ楽しい読み物ですが文体もいろいろで一段と楽
しめます。内容はタイトルから察せられるようにハナムグ
リ、ウスタビガ、ツクツクボウシ、ルリタテハ、ヤゴ、オ
オミズアオ、コムラサキなどの種々の昆虫と昆虫の植樹に
関するものがほとんどですが、昆虫採集に一緒に出掛ける
仲間とのやりとりにも絶妙な面白みがあります。
「進化論の不思議と謎」は平成10年に初版が出されて以
来平成15年に5刷となったものを読みましたが、比較的
最近の所見が盛りだくさんでためになります。遺伝子やD
NAの説明では一部難しい説明もありますが、そこを飛ば
して読んでも興味深い内容には変わりありません。ダーウ
ィンの進化論から最新の進化論の話、生命の大絶滅の歴史
と原因、生命の起源、人類の起源、遺伝子の進化論、今後
の進化の方向など話題は豊富です。
池田清彦著「寿命はどこまで延ばせるか?」を読み終えま
した。結構専門的な話が出て来ますが全体的には一般向け
に書かれているので主題の「寿命はどこまで延ばせるか」
がいろいろな観点で実現性があるのかどうかが良く判りま
す。最後の章では超長寿社会になった時の空想まであって
楽しめます。個人的には高齢化社会をうまく運営していく
のには若者の支援に金をかけるよりも高齢者に仕事をどん
どん与える施策を考える方が現実的で生き生きした社会が
出来ると考えていますが、一向にそのような施策が政府か
ら出てくる事はないですね。
地球博物館編「地球と生きもの85話」は地球誕生46億
年の歴史と神奈川の生物などに関して神奈川県立生命の星
地球博物館の研究員がそれぞれの専門分野の話題を判り易
く各項目を2頁程で纏めた自然に関する読み物です。一冊
でいろいろな分野を網羅しているので神奈川の自然を知る
のには手ごろな読み物です。神奈川県で唯一県内の地名が
ついた鉱物は湯河原沸石だということもこの本で初めて知
りました。因みに湯河原沸石の現物は平塚博物館などでも
見ることが出来ます。
高任和夫著「敗者復活戦」読了です。この本はハードカバ
ーを積んで置いていた間に文庫本が出て、それも買ってし
まったので都合2冊揃っています。文庫本の良いところは
解説が付いていることでここも見応えがあります。この本
に出てくる中心人物は3人いますがいずれも引退前後とい
う年齢の同じ団地住まいの男性です。負債を残し失踪した
友人を探す商社マン、酒びたりの日々を過ごす元銀行員、
定年後単身船旅に出る自由人とそれぞれ生き方は違ってみ
えますが定年後の漠然とした人生への不安を抱えている点
では皆同じです。どのように生きていくのか、人生とは何
かという難しい問題を3人に託して判り易く提示してくれ
ています。同じような境遇、同じような年齢の読者の多く
が共感出来るのではないかと思います。この著者の素晴ら
しい所は最後のさりげない数行でほっと出来ることです。
出久根達郎著「漱石先生の手紙」読了です。この本を見る
と良く判りますが漱石は本当に筆まめです。友人知人はも
とより、読者、家族などさまざまな知己に手紙を出してい
ます。曲がったことの嫌いな漱石の表情が判るような手紙
や相手に応じて書き方を大きく変えて判り易く綴った手紙
相談に真摯に対応する漱石が手紙の中から浮かび上がって
来ます。本当に漱石のひととなりの判る手紙集です。著者
が人生の師のように仰ぐ気持ちが良く判ります。
中山由美「南極で宇宙をみつけた!」読了しました。著者
はテレビ朝日の記者として2回も南極に行ったという猛者
です。この紀行には隕石探査に多くの章が割かれていたの
でそれが楽しみで購入したようなものですが、隕石に関し
ては素人だったようであまり目新しい記述はありませんで
した。全篇を通して南極生活の実態や友情、厳しさが良く
描かれていますが、随所に挿入されているさかなクンとの
メールのやりとりが楽しさを盛り上げてくれています。
松本清張は昭和のいろいろな事件についてその実態を描き
出すのに特異の手腕を発揮し続けた作家ですが、この「北
一輝論」についても例外ではありません。従来の定説では
北一輝といえばあの2・26事件の首謀者として良く知ら
れていますが、松本清張はこれを北の著作と行動を綿密に
解析することで従来の北一輝像が作り上げられたものだと
いうことを白日のもとに晒していきます。解説者の注では
松本清張の主張には少し北を落としめ過ぎる嫌いがあると
言っていますが、割り引いてみても従来の定説を打ち破る
明晰な主張には目を見張るものがあります。時代を知るの
に有益な一冊であると思われます。
藤田雅矢著「ひみつの植物」は楽しい本です。植物園芸が
好きな方、野草に興味がある人のどちらにとっても一見の
価値のある本です。ともかくも珍しい植物の写真、育て方、
取り寄せ方までがコンパクトな本に詰まっています。サボ
テンの仲間、コルチカム、砂漠の宝石、変わり咲き朝顔、
ピンクのタンポポ、青いケシ、青バラ、ヒスイカズラなど
など欲しくなるものばかりよくも並べたものです。一度手
にとって見るとその多彩さに思わずため息が出ます。カレ
ル・チャペックの『園芸家12ケ月』を読んで感動したよ
うな園芸好きな方はぜひとも立ち読みしてみて下さい。
養老孟司/徳川恒孝の対談「江戸の知恵」を読み終えまし
た。徳川宗家第18代当主でもありWWF(世界自然保護
基金)ジャパン会長でもある著者と解剖学者であり自然に
造詣の深い養老孟司との対談はいろいろな話題に深みを与
えてくれます。章立ては「開国か鎖国か」、「大人のいな
い国・日本」「家と世間を取り戻す」から成ります。双方
とも現代社会を良くしようと江戸の智恵を振り返ります。
川上弘美「大好きな本」は会社の休み時間に読み続けてい
ましたが年末年始を挟んで半月ほどで読み終えました。こ
の本は題名から察せられるように書評集です。1冊が2頁
ほどで紹介されているのでとても読み易いです。著者のあ
とがきにあるように初期の書評には読むに堪えないものも
ありますが後半に進んでいくにつれて書評らしくなってい
きます。私のこの読書歴もあらすじよりは感想を書いてい
るケースが多いですが、さすがに書評集だとうまくあらす
じを紹介しつつ感動のポイントを紹介してくれないと未読
の我々には本を買おうという気が起きません。おまけにこ
の著者の紹介する著書の作者の多くをあまり本を読んでい
ない私などは知りません。掲載されていた本は150冊程
ありましたが、私が既に読んでいた本は「停電の夜に」「
本の虫その生態と病理」「「博士の愛した数式」「ねにも
つタイプ」「絶対安全剃刀」「棒がいっぽん」の僅か6冊
だけでした。読んでみたい本も何冊かありましたが本屋で
一度手にとって見てから購入するかどうか決めたいと思い
ます。
山本夏彦氏の新刊です。今迄単行本としては纏まっていな
かった掌編をまとめて一冊にしたものだそうです。この
「とかくこの世はダメとムダ」を久々に楽しんで読むこと
が出来ました。著者の子息があとがきに書いているように
山本夏彦の書きものは同じ内容のものが『寄せては返す波
の音』のように繰り返し少し違う書き方で出てきます。今
読んでも全く古びていない所は著者の狙い通りですが政治
経済社会のどれをとっても現在にそのまま通用する所は神
業のようです。短いコラムの集成なので寝しなに読むのが
お勧めです。敵を切った返す刀で正義然として共感してい
た読者側をも容赦なく切り捨てる切り方は見事です。この
ような識者にして痛快な文を提供してくれるコラムニスト
が見当たらない今、いかに貴重な人材だったかが判ります。
開高健「過去と未来の国々」読了です。60年代の中国と
東欧諸国に著者が旅した時のルポルタージュです。この当
時の日本と中国との関係は今とはいかに違うかという所に
興味を抱きました。日本も変わっているとは思いますが、
それ以上に今の中国がいかに変わったかが窺えてこのよう
な書物を今読みかえすことにも意義があるものと改めて思
います。当時の日本では安保反対の嵐が吹き荒れていて、
その運動にいかに中国の文筆関係者や為政者が注目してい
たかが分かります。
昨年から読み始めていた辻惟雄著「奇想の系譜」をやっと
読了しました。最初にこの書籍が発行されたのが約40年
前だそうですが未だに異彩を放っている珍しい本です。発
行当初にはまったく脚光を浴びていなかった6名の絵師を
発掘した功績は大きなものがあります。岩佐又兵衛、狩野
山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳と並べる
と何名かはご存じの方も多いかと思います。図版も豊富な
この文庫本は一読に値します。絵を見るだけでも楽しいで
すが、そこに加えられている解説も奥が深いです。
宮部みゆきが読売新聞に連載している三島屋変調百物語事
続「あんじゅう」を読了しました。三島屋に行儀見習いと
して入っているおちかが主人公の百物語です。お客様を迎
える黒白の間にはいろいろな不思議物語が集まって来ます。
世の中の不思議は必ずしも解決のつく話ばかりではありま
せんが、人の世は回っていきます。不思議物語ですが憎め
ない人たちもがたくさん出て来ます。宮部みゆきの独特な
時代物の雰囲気が快い一冊です。
気に入った本があったら読んでみて下さい。
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