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* * * 読書雑記(2016年) * * *



2016年は96冊の本を読むことができました。以下はそ
の感想、コメントです。来年も楽しめる本を1冊でも多く紹
介出来れば良いと思います。              

原田マハ「星がひとつほしいとの祈り」が今年の読み納めと
なりました。様々な境遇、世代の女性が主人公となる物語7
編を納めた好短編集です。本当にこの作家は多才です。作品
はどれも共感出来る内容の上に作風は多彩です。もっと色々
な作品を見てみたくなる作家ベスト1です。       

コンタサル「遊戯の終わり」読了後、表紙を良く見たら何と
エッシャーの独特な空間図形でした。本文と良い取り合わせ
だと思います。この本は現実と仮想が混雑するような世界や
意識だけが何と山椒魚に乗り移ってしまった男の話や、意識
下に潜む狂気と正気、などなど夢と狂気の幻想譚を集めた短
編集です。コンタサルという作家、作風を幅広く知るには格
好の一冊です。                    

池田清彦「真面目に生きると損をする」角川新書を読了しま
した。この著者の本もだいぶ読んでいますが、共感出来る部
分と納得出来ない部分がいつも相半ばします。今回はそれが
何故かを考えながら読んでみました。朝日系のメディアが典
型的ですが、池田氏の論点も極めて限定的な観点から述べら
れていて、それなら賛否は簡単です。言うまでも無く世の中
は複雑に出来ていて、単に戦争反対、防衛費増大反対と叫ん
でも平和もやって来なければ中国が軍事費を増大させて近隣
諸国、地域を侵略し続けることに何の歯止めがかかる訳でも
ありません。そのあたりは沖縄の知事も一緒です。オスプレ
イ退去や辺野古移設反対を叫んでいれば沖縄県人の一定の共
感は得られるのでしょうが、沖縄を含めた日本の防衛をどう
していくのかという為政者としての視点が完全に欠如してい
ます。池田氏の発言では安倍政権を徹底的に批判しています
が勿論そこには政治的視点は完全に欠如しているし、原発問
題でも徹底批判していますが、そこには日本が抱えるエネル
ギー問題に対する現実的な視点が完全に欠如しています。現
実的でない対策案は色々な所に顔を覗かせますが茶番に過ぎ
ません。氏の著作は歯切れのよい所が持ち味ですが、多角的
な視点からの論議がもう少しあれば良いと思えてなりません。

夏目漱石「こころ」読了です。『彼岸過迄』『行人』に続く
後期三部作の最終章だそうです。一体に漱石の文学は有名な
本が多過ぎておそらく大多数の人が2、3篇位しかちゃんと
読んでいないのではないかと疑っています。調べてみたら私
が読んだ漱石文学は『文鳥・夢十夜・永日小品』『三四郎』
『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『硝子戸の中』『明暗』
『草枕』『それから』『門』『虞美人草』『こころ』だけで
すが、何を読了しているか忘れてしまって『吾輩は猫である』
や『夢十夜』などは2回も読んでいます。『硝子戸の中』も
2冊もありました。このような作家の場合は最初にシリーズ
で纏めて買っておいて端から読んでいくのが良いかも知れま
せん。ところで「こころ」ですがこの本は学生(勿論帝大生)
と先生と呼ばれる主人公の心の葛藤を手紙での告白という形
で綴ったもので、今ではまず見掛けないような文章構成と心
性の吐露をテーマとする一昔前の文学が堪能出来ます。そう
はいっても同じような男女間に絡む苦悩や葛藤は現代でも尽
きることのないテーマであり、何より読み易い文章構成なの
で一気に読み通す事が出来良く理解出来ます。深読みしたい
人は漱石自身の苦悩や葛藤と引き合わせて読むと一層楽しめ
ると思います。そのような向きには新潮文庫「こころ」解説
を先に読むことをお勧めします。            

「橋をかける」は皇后の美智子さまが子どもたちの希望と平
和を願って記念式典で語られた、子ども時代の読書の思い出
を本にしたものです。皇后さまの活動の一環を知る手掛かり
となるとともに、子どもたちへの熱い思いがご自身の読書体
験を通して伝わって来ます。主題の本篇は40ページにも満
たない短い物なので手にとって見てみることをお勧めします。

原田マハの著作はまだ少ししか見ていませんが作風は様々で
それぞれなかなか良いですね。「本日は、お日柄もよく」を
今回読み終えましたがスピーチライターという職業を主題に
オバマ大統領のチェンジや郵政民営化、急患のたらい回し問
題、などを絡め更には主人公の恋愛の行方まで最後まで息を
つぐ間もなく一気に読ませてくれます。『楽園のカンヴァス』
では著者の専門である美術のキュレータが活躍しますが今回
の主役はいきなり友人の結婚式で舟を漕いでスープに顔を突
っ伏してしまうような愛らしいキャラクターです。おそらく
この本の最初のぺーじにあるスピーチの極意、十カ条を目に
した人の多くはこの本を読んでみようと思うはずです。  

土屋賢二の近作「無理難題が多すぎる」を読了しました。疲
れている時の清涼剤代わりに気楽に読める一冊です。ユーモ
アエッセイ60篇が収録されています。言葉の使い方が学べ
る貴重な一冊です。                  

山崎正和の「日本人はどこへ向かっているのか」読了です。
碩学で論客として著名な筆者が社会問題、歴史、外交、教育、
政治、道徳、文明などあらゆる分野に対して卓抜な批評と提
言を与えてくれます。一方的な善悪判断では無く多角的な視
点から語りかけてくれる点は大いに参考にしたい所です。 
ほぼ全編を通じて得る所は多いですが、日本の戦後責任とい
うか対外外交についての考え方だけは間違っていると思わざ
るを得ません。筆者が言うには日本は全面降伏の代償として
戦後の繁栄を手に入れたのであるから、今更戦争に突入した
真相などを追求すべきではなく、近隣諸国には謝り続ける事
が必要だと言っているようです。私に言わせればアメリカや
イギリス、ロシアに騙されて戦争に突入させられ、降伏後の
不公平な裁判で日本の正当な言い分を言う事も出来ず、挙句
日本悪者論を国民全体に刷り込まれ卑屈な日本人を作らされ
たことは悔やんでも悔やみきれません。卑屈さを払拭しない
限り戦後は終わりません。我々の祖父母世代が本当に悪者だ
ったのか、それとも良識的な毅然とした日本人だったのかと
いう国民の尊厳の問題です。正しい歴史認識を敢えてしよう
としない筆者には落胆、幻滅するというより怪訝です。そも
そも今の繁栄をアメリカが保証してくれたから軍部が降伏し
た訳ではありません。飽くまで日本人の勤勉さと歴史におけ
る多少の好運が味方して今の日本の繁栄はあります。   

阿刀田高の短編集「妖しい関係」を読了しました。13篇の
ちょっとした不可思議な雰囲気が味わえる一冊です。老練さ
が滲み出ている短編集です。大胆な仕掛けやトリックはあり
ませんが、何気なく日常に潜んでいそうな一画を切り取った
上質な異質感が堪能出来るかも知れません。       

久々に阿刀田高の作品を読みました。三笠文庫「オトナの言
葉の愉しみ方」は著者が得意としている言葉遊びがぎっしり
つまった一冊です。駄洒落、親父ギャグ、都々逸、無理問答、
段駄羅、語呂合わせ、数え唄、古典落語、名字、左右上下と
も対称な漢字「幸」、歳時記、落語、起承転結、同音異義語、
語源、和歌、唱歌、漢字の成り立ち、書き順などなど豊富な
話題は博識な著者ならではです。入門書として最適です。 

アイザック・アシモフの推理物は良く読んでいますが科学解
説書にも定評があります。ハヤカワ文庫の科学エッセイシリ
ーズのトップバッターは「空想自然科学入門」です。難しい
ことでも判り易く話が出来るのがプロだと言われますが正に
この本ではそれを見事に実現しています。生物学、生命、化
学、元素、物理学、天文学などのテーマを軽快に易しく解説
してくれます。生き物の大きさの比較表、細胞の大きさの比
較表などを具体的に紹介して理解を深めてくれます。生命を
構成出来る組成の検討から住める可能性のある星の推測まで
話は壮大で矢張り具体的です。同位元素の説明など下手をす
れば訳の判らなくなりそうな話もきっちりと筋道を追って説
明しているのですんなりと頭に入って来ます。ニュートリノ
の話や太陽エネルギーの尽きない訳まで話は縦横無尽に展開
されます。このシリーズで唯一残念な点はシリーズ物の文庫
にも関わらず古本でしか入手出来ない本があることです。 

私の中では一押しの部類に入る『楽園のカンヴァス』で有名
な原田マハの青春小説「生きるぼくら」を読み終えました。
徳間文庫です。いじめ、ひきこもり、認知症などのテーマも
織り込んで、最後は爽やかな感動を与えてくれる好著です。

本屋で北野武の「新しい道徳」をみてこれは読んでみたいと
思って購入しました。買って損は無かったと思いますが矢張
り道徳教育は難しいと感じました。再開させるのが遅過ぎた
感が否めません。私が思っている道徳は一言でいえば『他人
に迷惑を掛けない』ことに尽きます。他人に不快な思いをさ
せない事まで含めれば、電車内での化粧や携帯の通話、匂い
の強い香水なども自ずと減るのではないかと思います。当然
歩きスマホも駄目な部類です。             

養老孟司の対談「日本の大問題現在をどう生きるか」を読み
終えました。本の扉にある紹介では対談相手の藻谷浩介氏は
MBAを持つ地域エコノミストで年間500回以上も公演活
動を行っているそうです。この対談では養老孟司の引き立て
役を自称しているような所がありますが残念ながら空回りし
ているようにしかみえません。米原万里の後継者を自称して
いるようにみえる高尾慶子を思わず思い出してしまいました。
下で紹介した隈研吾との対談と比べてみると良く判ります。
養老孟司の対談は大抵面白く読んでいますが久々に残念な一
冊でした。波長が合わな過ぎです。           

養老孟司と建築家の隈研吾との対談「日本人はどう住まうべ
きか?」を読み終えました。とは言ってもこの本を読むのは
2回目です。お互いの分野でのスペシャリスト同士の対話だ
と、話題も豊富で軽快なテンポで話が深耕されていくという
良い見本です。「だましだまし生きていく」がこの本のキー
ワードです。                     

「エッシャーの宇宙」読了です。この本も随分前に買った本
ですが今年SOGO美術館で開催されいた「エッシャー展」
のチケットを友人から戴いて見に行って来たのを契機に読み
始めたものです。エッシャー展では繊細な版画の原版なども
見る事が出来て感動しましたが、この本は感動というよりは
エッシャーの作品制作に関わる手法や下書きからの論理構想
などが見えて来ます。どちらかと言えば理屈っぽい一冊です。
そのような制作過程を知りたい人には最適な一冊ですが感動
だけを求めている人にはちょっと違うかなという一冊です。

夏目漱石「虞美人草」読了しました。「虞美人草」とは何ぞ
やと問えば「ヒナゲシ」という答えが返って来ます。アニメ
の「コクリコ坂」に出てくる「コクリコ」も同じく「ヒナゲ
シ」で同じものです。言い方によって随分印象が違います。
今時何で「虞美人草」かと怪しむ向きもあろうかと思います
が単に買ったまま読んでいなかった本の一冊というだけです。
でもこの本は歳を食ってから読んだ方が面白いと思います。
元より漢文の素養も、文芸の素養も無い私のような者が読む
にはいろいろな古典やら蘊蓄満載のこの本を読み解き切れま
せんが若い時分に捨て置いてしまったのは多分、難解過ぎて
諦めてしまった為ではないかと思われます。色々な本を読ん
で少しは雑学を齧ったからこそ少しは楽しめる本となってい
ます。11節にこんな文章があります。『蟻は甘きに集まり
人は新しきに集まる。文明の民は激烈なる生存のうちに無聊
をかこつ。立ちながら三度の食に就くの忙しきに堪えて路上
に昏睡の病を憂う。生を縦横に託して縦横に死を貪るは文明
の民である。〜狗は香を恋い、人は色にはしる。〜蛾は燈に
集まり、人は電光に集まる。〜』じっくりかみしめながら読
むほどに味わいが出る一冊です。帯には『愛の文学フェア』
とあるように若者たちと恩師の娘、令嬢らの恋の物語です。

小堀桂一郎編「東京裁判 日本の弁明」は講談社学術文庫か
ら出版されています。この講談社学術文庫には読むべき本が
たくさんありますが、この本はその中でも最たるものです。
読まなければいけないと思いつつも560ページを越す文庫
にはなかなか手が出せません。そう思いつつ長年放置した結
果、遂に2冊も買ってしまっていました。最早戦後70年を
越しましたが、今の世界情勢を鑑みてこの本の意義は燦然と
輝いています。アメリカをはじめとした連合国が東京裁判で
いかに茶番劇を演じたか、またその呪縛に今も全世界が如何
に囚われ続けているかがこの僅か560頁を読むと判ります。
日本が如何にアジアで悪い事をしたかと声高に唱える老人が
読者の声などで良く取り上げられますがこの本を読めば如何
に実情を知らずに当時の統制報道を信じたまま戦後70年の
間、間違った認識に囚われているかが判ります。一番性質が
悪い状態です。このような本を全く読まずに、そんな昔の戦
争のことなど判らないという手合いの若者も論外です。読書
週間に読む意義のある一冊です。所謂A級戦犯と呼ばれる人
を見る目も、靖国参拝問題を糾弾する手合いも必ず見方が変
わるはずです。変わらない人は呪縛から逃れられない可哀そ
うな人かちゃんと考えることを放棄した人のどちらかです。
この本が日本側の一方的な弁明だと強弁したい人は草思社の
『ルーズベルトの開戦責任』ハミルトン・フィッシュ著を見
ることをお勧めします。ついでに見ておきたい本は小学館文
庫の『パール判事の日本無罪論』とWAC『大東亜戦争の真実』
あたりです。日本人もいい加減勉強しないと米露中の暴走は
100年経っても絶対に止まりません。今の国連が良い例です。

今時、中井英夫といっても知らない人が多いかと思います。
有名な「虚無への供物」は長編ですが今回は「幻想博物館」
という短編集です。特異な作風で知られる作家ですがそれら
が十分堪能出来る一冊です。幻想小説あり奇妙な犯罪推理物
あり、精神の異常をテーマに持つものありと本当にバラエティ
に富んでいます。                   

チャタレイ裁判で有名なD・H・ロレンスの「チャタレイ夫
人の恋人」を読んだのはいつだったかもう記憶の彼方ですが
まったく面白くも無く、興奮するような個所も無く失望した
記憶だけが残っています。それもそのはずです。完訳版が発
禁となってから46年、約80頁分の削除箇所を復活させた
「完訳チャタレイ夫人の恋人」が平成8年に発行されました。
これこそが感受性の強かったその当時の私、そして多くの人
が読みたかった「チャタレイ夫人の恋人」です。今では平静
に読むことが出来るほど個人的にも歳を取り、また社会的に
もこの程度の文学は今時は猥褻にもならないほど時代が変わ
ってしまいました。ちょっと遅すぎた感があります。しかし
チャタレイは単なる猥褻文学では無さそうです。近代の産業
主義や清教主義への反発や階級主義、永遠回帰の思想などに
対する著者の思いが根底にあり、「チャタレイ夫人の恋人」
を書かせる原動力にもなっていたようで、そのような総合的
な文学としてこの書を捉えることが大切なようです。   

幸村誠の漫画「ヴィンランド・サガ17、18」を読み終え
ました。争いの無い平和の国ヴィンランドを作るための資金
作りの為、主人公トルフィンとその意思に共感する一行は 
イッカクの角の需要のあるギリシャを目指すが、トルフィン
に恨みを抱く女狩人がその前途に立ちはだかる。急展開を迎
える2巻です。壮大な物語はまだまだ続きそうです。   

岩谷テンホーの最新4コマ漫画「大盛!!みこすり半劇場 
太鼓判」を読み終えました。本当によくこの手の四駒漫画で
ネタ切れにならないものだと思います。もっとも中には見た
ネタもあるので過去の作品も幾分か混じっているようです。
300頁余、600を超える四コマ漫画が僅か500円で読
めて大笑い出来るのでこんな安い読み物はありません。過去
の作品が次々に品切れ、入手不能となっていますが勿体ない
ことです。                      

養老孟司「手入れという思想」読了しました。とは言っても
この本は平成14年に発行された『手入れ文化と日本』とい
う本を文庫化して改題したものなので中身は既に一度読んで
います。それでも改めて読んでみても納得のいく話や話題の
豊富さ、話の展開など見るべき所は多数あります。文庫表紙
の挿絵は私の好きな小林路子さんのベニテングタケの細密画
です。キノコ絵の第一人者です。            

今年は今まで溜め込んでいて、ずっと読んでいなかった本を
極力選んで読むようにしています。石川達三の「その愛は損
か得か」もそんな本の一冊です。今の人だとこの作家自体を
知らないと言う方も多いかと思います。タレントの又吉直樹
が2015年に第153回芥川賞を受賞して話題になりまし
たが、石川達三は何と80年前の1935年に第1回芥川賞
を受賞した後に長年にわたって活躍した作家です。今回読ん
だ本は昔からよく議論されて来た、愛とは何か、性関係の自
由と結婚との関係をどうみるか、現代の愛の関係は打算なの
かなどを主題としています。今からみると古典的ともいえま
すが、それでも多くの真実を含んでいる議論だと思います。
それに加えて無償の愛や国家による束縛や義務、権利などの
テーマまで盛り込もうとした意欲作ですが、その議論の為に
ストーリーを少し不自然に作り過ぎた感が無くはありません。

「吉田博全木版画集第2版」を読み終えました。これは日曜
美術館というテレビ番組の影響で購入した本です。あまり知
られていませんが明治から昭和15年頃まで活躍された画家、
木版画家です。有名な黒田清輝の時代の人です。この本には
タイトル通り吉田博の全木版画が掲載されています。圧倒的
な作品です。木版画なのにグラデーションや多色刷りが半端
ではありません。多くの作品は50回以上の重ね刷りとなっ
ているそうです。剣山や亀井戸、渓流などの大作は息をのむ
ほどの精緻さに思わず脱帽です。良い作品集だと思いますが
値段が6480円なのでちょっとした踏ん切りが必要です。

養老孟司と南伸坊との対談集「老人の壁」を読み終わりまし
た。無理して生きなくても楽しい事をして生きれば良いとは
養老孟司の言です。表紙のお二人の顔写真がそのことを良く
表しています。読んで落ち着く一冊です。        

養老孟司「文系の壁」読了しました。4名の方々との対談集
です。対談相手は森博嗣、藤井直敬、鈴木健、須田桃子です。
文系と理系の違い、ヒトの認識が変わる技術、「なめらかな
社会」と細胞、STAP細胞事件の本質などそれぞれテーマ
が違います。どれも興味深い内容に加えて博識の養老孟司の
解剖学から見た的確なコメントによりテーマが深耕されて、
より考えさせられる内容となっています。個人的にはやはり
STAP細胞を扱った書籍『捏造の科学者 STAP細胞事
件』の著者である毎日新聞記者の須田さんとの対談が興味深
かったです。この著作は本当に判り易く的確にまとめられて
いてお薦めですが、この本を読んでいないと対談だけだと少
し本質が判りにくいのかなあと思います。        

養老孟司「養老孟司の幸福論 まち、ときどき森」読了です。
しかし、実はこの本は「庭は手入れをするもんだ」を改題し
て文庫本化したものなので既に一度読んだ本です。もちろん
そんなことは知らずに買ったものなのでしっかりと再読しま
したがやはり養老孟司の発言は奥深く二度読みしても全く損
した気にはなりません。自分が作り出すエネルギーの40倍
を消費するのが日本と言う国らしいですが、アメリカは何と
160倍も使っているそうです。今やエネルギーの消費高は
その国の国力(経済規模)に大きく影響しますので減らす訳
にはいきませんが、石油を早く使いきってしまえば良いとい
う意見は私も賛成です。石油が無くなれば代替エネルギーを
真剣に考え出すことになり今の石油中心のゆがんだ政治勢力
や紛争は大きく様変わりする事確実です。そのようなヒント
がたくさん詰まった一冊です。             

長谷川英祐「面白くて眠れなくなる生物学」読了しました。
教科書では教えてくれない生物の話という文句が帯を飾って
います。確かに生物学の授業は覚える事ばかりで退屈な授業
だったような記憶があります。この著者は生物学も理屈に従
って科学現象や遺伝子学は成り立っているので、その基本を
覚えるだけですっきりと理解出来ると言っています。その言
い分には共感を覚えますが、実はこの本は多分我々一般の人
には難しいように思えます。生物学の世界で苦労している人
にとっては大いに手助けとなる本ではないかなと思います。
多分、良い本なのだろうと思いますが私にとっては難しい本
でした。                       

新潮文庫「この世はウソでできている」は池田清彦の著作で
す。いろいろな発言がありますが賛成できるのは半分程です。
物事は一面からみてばっさり切ってしまえばあれは駄目これ
は良しと決めつける事が出来ますが、現実は色々な面から検
討すると駄目な所もあるけど良い所もあって一概に良し悪し
を決められないものです。著者の切り方は特定の思想の下に
ばっさり切っている所が多く、痛快な部分もありますが賛成
出来かねる部分も多くなっています。その点では同じ社会事
象を論じていても養老孟司の方が視点が広く賛同できる部分
が多くあります。温暖化問題、原発問題、生物多様性問題、
脳死問題、がん検診、大麻取締問題、大気汚染、などなど多
くの問題に対してどのような見方があるのかをまず知るため
のはこのような本を読んでおくことは役立つと思います。そ
う言った意味では良い本だと思いますが常に批判精神を持っ
て読まないと一方的に誰かの言い分を信じてしまう事になり
それはそれで危険です。                

山本周五郎の「小説日本婦道記」は氏の比較的初期の短編連
作です。厳しい武家社会の世の中で夫や子どもの為に生き抜
いた妻や母の清々しいまでの強靭さと凛とした美しさや哀し
さが各篇に溢れています。全31篇の中から選ばれた10篇
ということでどれも感動を呼ぶ短編揃いです。時にはうるっ
としてしまう作品もあります。私がこの本を買ったのは平成
22年以降なので何らかの書評を見て買う気になった本だと
思いますが全く思い出せません。僅か300頁弱の文庫本な
ので是非本屋さんで手にとって立ち読みしてみて下さい。 

呉善花「韓国併合への道完全版」は文春新書の2012年の
発行です。この12年前に「韓国併合への道」が発行されて
いますが、それに11章と12章を追加したものが今回の本
です。全300ページ弱しかない新書なのでお手軽に持ち運
びが出来て読み易い体裁です。著者は韓国生まれですが日本
に帰化した親日家ですので、韓国への提言には厳しく、日本
への提言は多少甘いかもしないですが、日韓併合の道のりを
およそ史実に基づいて丹念に記載し、どのような状況の下で
進行したかを判り易く示してくれます。おそらく現在日本人
にしても韓国人にしても近年、形作られた間違った史実を基
にした歴史認識を持つ人が多いと思われます。      
残念な事に戦後、韓国では様々な理由で間違った歴史を教え
続け、日本では中国や韓国などの近隣諸国からの反発を招か
ない様な配慮や自虐史観の台頭などによって正しい近現代史
を教えて来なかった教育が間違った歴史認識の主な原因です。
そう言った意味でこの本は誰もが読んでおくべき必須の一冊
と位置付けられます。史実に基づかない感情的な発言が多い
中で類書の少ない貴重な提言が盛り込まれた一冊です。  

宮部みゆき「ここはボツコニアン5FINAL」読了しまし
た。魔王も倒して無事ゲームクリアです。本当にゲーズ好き
な人向きのシリーズです。帯には以下のようにあります。『
長靴の戦士ピノとピピは、莢ニンゲンの支配するSFチック
な世界から、ラスボスの待ち受けるダンジョンまで、長く厳
しい試練の旅の果てに、ボツコニアンと魔王の謎を明かせる
のか?宮部みゆき、最大の問題作(笑い)、驚愕のラストは
誰にも話さないでください!』と言う訳でストーリーの結末
を明かす訳には行かないのでどの様な内容かはご自由に想像
下さい。                       

千葉県立中央博物館監修の「図鑑大好き!」は楽しい本です。
散歩が10倍楽しくなる図鑑がたくさん紹介されています。
やくみつるやさかなクンなどもお気に入りの本を紹介してい
ます。新鮮さが大切な魚類の図鑑を作るために苦労している
人や生態を重視した学習図鑑が紹介されていたり、本物の鱗
粉が付いているという珍しい蝶の図鑑の紹介、カラーフィル
ムの無い時代に作られたカラー写真図鑑、学習コンピュータ
植物図鑑など興味深い図鑑の話題まで満載です。勿論鳴き声
が聞こえるセミの図鑑やクモの巣の図鑑、鳥を見分ける図鑑、
ネット検索の図鑑など幅広く紹介されています。学芸員のお
薦めは『日本の昆虫1400』だそうで私も説明を読んで強
く惹かれた一冊です。いろんな図鑑が思わず欲しくなってし
まう誘惑のガイドブックです。お気を付け下さい。    

佐藤春夫「車塵集(日本の詩歌16)」は中公文庫の一冊です。
確か向井敏の「本の中の本」で紹介されていた一冊だったと
思います。紹介のキャプションは「流麗ならびなき名訳詩集」
です。あまり訳詩などに興味が無かったために長い間本棚に
放置してしまった本です。全編を読んでみて良い訳もありま
したが、やはり心に響かないものの方が圧倒的に多いです。
興味のある方はぜひどうぞ。一つの漢詩に別訳が2つほども
紹介されているものもあります。用語や訳詩の紹介もあって
2段組みの文字も小さいので僅か400ページほどの本です
が読み切るのはなかなか大変です。           

「つちはんみょう」という虫をそもそも知らない人の方が圧
倒的に多いと思いますが、この珍しい生態の虫を何と絵本に
してしまった人が舘野鴻です。驚くのはその絵の精密なこと
です。この人の師匠が熊田千佳慕氏だと聞けば納得される方
もいるかと思います。一枚の絵の中に10種を超える昆虫が
登場する場面もあったり、植物だけでも10種位登場する頁
があるなど本当に虫や植物に興味のある人には嬉しい一冊で
す。この絵本を描くに当って著者は私の住んでいる山北町か
らも近い秦野市で観察をしているそうで興味は尽きません。
毎日新聞書評欄で養老孟司と奥本大三郎が対談形式で紹介し
ていた一冊です。                   

宮部みゆき著「ここはボツコニアン4」読了です。ボツの世
界でのファンタジーという新しいジャンルを開拓した著書に
は敬意を表しますが、やはりゲーマーでは無い私にとっては
くだらない一冊という評価は揺るぎません。ゲーム好きの著
者が楽しんで書いているのは判りますが著者を有名にした数
々の名作に比べるとどうしても評価を下げざるを得ません。

出久根達郎著「幕末明治異能の日本人」読了です。二宮金次
郎、幸田露伴、清水次郎長などの著名人のふしぎな繋がりを
著者ならではの丹念な文献の掘り起こしによって判り易く纏
められた好読み物です。近世の歴史をこのような視点で綴っ
た本は意外と少ないように思います。高島易の創始者である
高島嘉右衛門を取り上げている所などは著者の面目躍如たる
ところです。数奇な人生がこれ一冊で楽しめます。    

田中美知太郎著「生きること考えること」を読了しました。
20年以上前の本ですが、哲学的な問いの答えを求めての思
索の書の内容が古びることはありません。多少まだろっこし
い所はありますが真摯に心理を追窮しようとする姿勢は称賛
に値します。小見出しには「幸福について」「教養について」
「美について」「現実的ということ」「安楽死について」な
どがあります。たまにはこの様な本も良いかと思います。 

山口椿「雪香ものがたり」読了です。エロチシズムをこのよ
うに格調高く精緻に豊富な言語表現出来る作家を他に見た事
がありません。帯には『耽美と残虐のエロス』とありますが
その言葉に相応しい挿絵まで山口氏本人が描いているのです
から吃驚です。この本は現在は絶版となっているようですが
中古本の価格をみると1円から3000円までの値段が付い
ていてこの作家、ならびにこの著書の一般の評価を良く表し
ているように思えます。一部のマニア、コレクターには絶大
な支持を得ている作家です。              

横田濱夫「はみ出し銀行マンの左遷日記」読了です。何かの
書評で評判になって気になっていて文庫が出た時にやっと買
った本ですがその後随分長い間本棚に寝かせてしまいました。
「港のみえる丘銀行」に入行した著者が銀行内部のいわゆる
スキャンダルを赤裸々にギャグ満載で描いた本です。確かに
この本を読んでから近くの銀行を眺めてみると前とは違う印
象を思い浮かべることは必至です。一読お勧めです。   

新田次郎「武田信玄」火の巻と山の巻の2冊読了です。信玄
の終生の念願であった京都への西上の途上で病死するまでを
描いています。信玄の死因や経緯については諸説あるようで
すが新田次郎描く所の信玄に相応しい生き様が風林火山の4
冊、2000枚の原稿に十二分に著されています。織田信長
や徳川家康などの諸将との戦術争いなど手に汗握る攻防も良
く伝わって来ます。良く言われるように信玄がもっと健康で
あったら世の中は随分違った経緯を辿ったであろうことが良
く判る読み物です。                  

新田次郎「武田信玄 林の巻」を読み終えました。歴史上有
名な桶狭間の戦い、および川中島の合戦が登場します。本著
は基本的には甲斐国の戦国大名である武田氏の戦略・戦術を
記した軍学書である「甲陽軍鑑」の記録をベースに構成して
いるようですが、この記録を残したとされる山本勘介の子供
も登場します。                    

笠間しろう「夢枕桃色四十八手」読了です。その名の通り四
十八手の解説本です。劇画作家だけあって描写は正確なのは
勿論ですが体位の説明に加えて深度、密着度、男女別快感度
まで付いた卒の無い教科書となっています。研究者には必須
の一冊です。定価1700円の本ですが今では絶版となって
古本市場では4700円〜76700円というとんでもない
値段が付いています。                 

新田次郎「武田信玄 風の巻」を読み終えました。風林火山
の4分冊となっていますが1冊が500頁程もあるので全巻
を読むのは大仕事です。本を買ってから既に30年を超えて
しまい全ページが黄ばんでしまっていますが内容は今読んで
も古びていません。群雄割拠の時代、晴信が勢力を拡大して
いく戦略と人となりが過不足無く描けていて秀逸です。  

「どんな左翼にもいささかも同意できない18の理由」は評
論家である西部邁の著作です。論理を正確に伝えようとする
ためか著者の性格なのか難しい言い回しや随所にいちいちカ
タカタ外来語が混じるので私にとってはかえって読みにくい
読み物となっています。それでも幾分判る所はあって大いに
納得出来る所や感心する所は多々あります。一読の価値のあ
る言説だと思います。無理だとは思いますがこの書に対する
左翼や右翼の反論を是非聞きたいものです。       

岡本綺堂「半七捕物帳(六)」はこのシリーズ最終巻です。
おそらく未来永劫古びる事の無い捕物小説の殿堂として残る
秀作です。江戸情緒と謎解きがうまく融合した捕物帳です。

宮部みゆき「ここはボツコニアン3」読了です。今回のテー
マは二軍三国志です。三国志のあまり有名で無いキャラクタ
が重要なキャラとなって登場します。ゲームマニアなら楽し
めるかも知れない脱力系ファンタジーです。       

幻冬舎「ヘッテルとフエーテルのみにくいアサヒるの子」を
読み終えました。タイトルから判る通りいろいろな社会問題
をパロディで皮肉りながら経済活動や政治活動の実態を暴き
出す秀逸な読み物です。全7話のタイトルの一例を上げると
「おむすびころしん」「不安ダースの犬」「みにくいアサヒ
るの子」などどこかで聞いたような物語や用語が満載です。
すべてを正しく読み説くには新聞などをこまめに読んでおか
ないと意味が判らない所もままありますが、あちこちに用語
解説が付いているので助かります。           

岡本綺堂「半七捕物帳(五)」読了です。江戸時代の風俗が
肌身で判る上に、極上の推理物語が楽しめると言う二重に美
味しい好読み物です。短編集で読みやすい所が良いです。 

講談社「椿 祥子写真集」を見終えました。文字が一つも無
いので完全な写真集です。綺麗だなあと思いますが興奮する
場所が一つも無いのは残念でなりません。妖しい構図や衣装
はありますが全体の基調は控えめです。既に「祥子愛にゆく
人」や「愛河」を見ている人には物足りない写真集だと思い
ます。今回はまるで展覧会を見ている時のような平常心で写
真集を見てしまいました。個人的に祥子さんのどこが気にい
っているのか今まで気にしたことはありませんでしたが今回
どうも口元らしいと言う事に初めて気付きました。    

冨田和成「大富豪が実践しているお金の哲学」を読み終えま
した。例に漏れずこの著者も大成功者です。およそ我々凡人
が松下幸之助やホンダ創業者などの成功譚を読んでも元々の
資質がまるで違うので役に立つはずはありません。それでも
この本はなかなか興味深いです。例えば一般人は時間でお金
を稼ぎ、小金持ちは運でお金を稼ぎ、大富豪は仕組みでお金
を稼ぐという話などはなるほどと納得出来ます。また、自宅
をどこに持つかという章では、一般人は郊外に買い、小金持
ちは高級住宅街に買い、大富豪は会社の近くで借りるなど面
白い考察が満載です。一度手に取ってみても損は無いと思い
ます。                        

「半七捕物帳(四)」読了しました。解説を読んで改めて著
者の時代考証の正確性に驚かされます。20年間にも渡って
書き綴られた68篇は決して時代順に書かれた訳でもないの
に天保年間、弘化年間、嘉永年間、安政年間、万延年間、文
久年間、元治年間、慶応年間の風物に即し、かつ半七の年齢
も時代に合わせた人格を描いているということで驚くのほか
ありません。ストーリーはバラエティに富んでいます。この
4冊目には「仮面」「柳原堤の女」「むらさき鯉」「みっつ
の声」「十五夜御用心」「金の蝋燭」「ズウフラ怪談」「大
阪屋花鳥」「小雪の絵馬」「大森の鶏」「妖狐伝」の11篇
が収められています。                 

呉善花の本は外れがありません。真に隣国の韓国を理解する
には最適です。「「反日韓国」の苦悩」には韓国の歴史、文
化、宗教などの経緯から現代韓国が抱える問題点をするどく
指摘しています。話し合えば判るといって一言で片付けてし
まったり、最近の韓国の著しい成長や一時期の韓流ドラマな
どの熱狂だけで韓国をみていたら見誤ることを呉善花は様々
な書籍で我々に教えてくれます。正しく判断してこそ正しい
付き合いが出来るものと思われます。我々一般庶民だけでな
く外交に関わる多くの政治家や官僚がこのような書籍を読ん
で上手な外交を行ってもらいたいものです。呉善花の講演会
を一度くらいは聞いてみたいものですがなかなかその機会が
ありません。                     

順調に「半七捕物帳(三)」読了しました。語り口が柔らか
くストーリー運びにも無理が無いのですらすらと読めます。
まさに上質のエンターテインメントです。至福の時間です。

岡本綺堂の「半七捕物帳(二)」を読み終えました。それに
しても綺堂の素晴らしい所は、語り口や事件の謎もすべて異
なった作品をよくもこれだけ作ったという点です。半七捕物
帳が捕物帳の嚆矢と言われるのも、長く読み継がれているの
もこのあたりに要因がありそうです。謎の中には狐や化け銀
杏、鬼娘、蛇、その他の怪異も多く含まれています。怪異の
多かった時代ですが、そこを怪異で済ませてしまうことなく
ちゃんと事件として解決していく半七の手腕に脱帽です。 

「ここはボツコニアン2」は宮部みゆきのファンタジー作品
第二弾ですが、個人的にはこのシリーズは宮部作品のなかで
唯一の失敗作だと思っています。ゲームおたく&宮部ファン
であれば面白く読むのかも知れませんが、ゲームおたくでは
ない私としては残念ながらこの世界にまったく入り込むこと
が出来ません。こんな話であればいくらでも空想にまかせて
書き続けることが出来そうに思えます。きっとゲームファン
にとっては斬新な発想や語り口が含まれていてそこが楽しめ
るのでしょうが、ゲームファンで無いとどこが面白いのか、
どう楽しんでよいのか途方に暮れたままページを繰ることに
なります。                      

「翔んで埼玉」は深夜番組『月曜から夜ふかし』で紹介され
ていた埼玉叩きをギャグにしたお笑い本です。埼玉県人はど
う思うか判りませんが、結構楽しめました。宝島社刊行です。
「翔んで埼玉」PARTT〜V、に加えて「時の流れに」や
「やおい君の日常的でない生活」「埼玉県についての風土的
考察」の諸篇が収められています。           

藤崎憲治著「群れろ!昆虫に学ぶ集団の智恵」を読み終えま
した。群れから学ぶ知恵がこんなにも多い事に驚かされます。
それにしても昆虫の多彩な生き方はどの本を見てもびっくり
するばかりです。防御効果、集団求愛、越冬集団、食性から
みた集団、亜社会性集団、真社会性集団、菌核菌との共生関
係など集団によって様々な活用がされています。真社会性昆
虫である蜂では良く知られている「3/4仮説」、シロアリ
では「近親交配説」や「共生動物引渡し説」、さらには生物
が社会性を発展させる事になった要因をうまく説明した「親
による子の操作説」など様々に説明されています。群知能と
いう目新しい言葉が持つ意味も判り易く説明されます。可也
興味深い内容を含んだ本です。対談相手というか解説者とい
うか鳥飼否宇が著者にいろいろな問題提起や結論のまとめを
してくれていますが、この名前はどこかで聞いた事があると
思っていたら10年ほど前に読んだ「昆虫探偵」の著者でし
た。                         

ずっと前に買った半七捕物帳シリーズを読みはじめました。
ご存じ岡本綺堂の名捕物帳です。全6巻の光文社文庫新装版
の1巻目を読み終えました。全部で68作あるそうですが、
此の巻には14話が収められています。このシリーズは大正
6年から昭和11年までの約20年間に渡って書き綴られた
ものですが、平成28年の今読んでも何の違和感も無く時代
推理小説として読むことが出来ます。恐るべきことです。 
大判カラー写真集「HUBBLE」は実に壮大な星々の誕生
の姿を色鮮やかに見せてくれ、見飽きると言う事がありませ
ん。百四十ページ余、3200円が高いか安いかは見る人に
よるかと思います。大型望遠鏡では決して見られなかった宇
宙の彼方までが見られる時代に生まれて本当に良かったと思
います。科学的にはHUBBLEの写真から宇宙の正確な年
齢やら、星の誕生や終焉の謎を解くのに役立つ様ですが我々
素人は唯、美しく素晴らしい星々を眺めて一時の清涼感を味
わえば十分かと思います。               

世界的なベストセラーという謳い文句の児童絵本が「おやす
み、ロジャー」です。著者はカール=ヨハン・エリーン、日
本での発行元は飛鳥新社です。この絵本を読み聞かせるだけ
で子どもが10分で寝つくと言う魔法のような絵本です。残
念ながら試す機会がないので効果のほどは判りません。私が
寝しなに一人で読んでいる分には効果も無ければ面白くもな
いのでお薦めはしませんが、興味のある方は本屋さんで一度
ページを繰ってみて下さい。              

名著の誉れ高い「日の名残り」をやっと読みました。15年
以上前に購入したきりつまらなさそうだと決めつけて本棚に
寝ていたものです。著者はカズオ・イシグロです。今回初め
て読んでやはり名著だとは思いましたが、この本を今の人達
が読んで面白く感じるかは不安です。有名な賞も受賞した本
でイギリスの名家に素晴らしい執事がいた時代の雰囲気を良
く伝える他に類を見ない珍しい本だと思いますがあまりにも
今の時代とかけ離れてしまいました。          

小泉今日子が読売新聞で10年間も書評委員をしていたこと
をこの本をみるまで知りませんでした。「小泉今日子書評集」
と題された250ページ程のハードカバーには97冊のお薦
め本が紹介されています。かの久世光彦氏が推している著者
らしさは十分に発揮されていると思います。多分、私の心に
響く書評が少ないのは興味の在りどころが全く違う事が原因
しているものと思われます。人に興味があって生き方や人生
とはといったものを本に求めている人には多くの良書が見つ
かるものと思える一冊です。              

新潮文庫「アンダスン短編集」は流石に昭和の時代に購入し
たものなので本の小口はいかにも古本といった様相を呈して
います。同じ短編集とは言ってもフォークナーのとは相当に
作風が異なります。解説にもありましたが会話の極端に少な
い寡黙な人生を歩む人々の屈折を抒情に満ちた文章で綴った
掌編集です。260ページ程の冊子に10篇が収められてい
ます。                        

通勤時間と就寝前と昼休みが主な読書の時間ですがまだ再就
職後の新しい生活に慣れていないためなかなか読書の時間が
確保出来ません。以前と同じくらい読書の時間があるはずで
すが週に1冊も読めていません。ここはじっくりと本を選ん
で良い本を読んでいきたいと思います。         

「すごい虫」は大昆虫博公式ガイドブックとして2010年
に編まれた大型本です。養老孟司/奥本大三郎/池田清彦が
編者となっているだけあって見飽きない写真が満載です。虫
好きな方にはもちろん、虫がいまいちと言う方、これから子
供が昆虫デビューするような年代にも昆虫の多様さや面白さ
をビジュアルで教えてくれる好著です。         

新潮文庫「フォークナー短編集」は昭和63年から私の本棚
に未読のまま鎮座していた本です。さすがに本の小口は黄ば
んでしまっていますが中身は何とか読める状態を保っていま
した。XX短編集を纏めて買ったままあまりに字が小さ過ぎて
そのままにしてしまったものですが、この度やっとページを
開いてみました。今の短編集と違って明確な落ちが無いもの
も多く、また本筋に関係ない無駄な会話や無駄な風景描写が
過剰な所が当時の風潮なのでしょう。そう言った意味で結構
かったるいですが、そのような会話や描写が当時の雰囲気を
良く伝えてくれているのも事実です。まだ人種差別の明確な
時代の産物です。時代を理解するのには良い資料です。  

東海大学出版会「アリの巣の生きもの図鑑」はジュンク堂で
見掛けて即購入した本です。2013年2月が初版なのでま
だ3年位しか経っていない最近の本です。図鑑となっていま
すが、そして当然中身も図鑑そのものなのですが、蟻の巣の
中にはこんなにも多くの生き物たちが住んでいることを初め
て知り、図鑑であることを忘れて読み耽ってしまいました。
一篇の良く出来た生物エッセイといっても良いと思います。
この本には紹介しておかなければいけない重要な点がありま
す。それは写真です。図鑑と聞くと一般には展翅された虫た
ちがずらーっと並んでいる映像を思い浮かべると思いますが
この図鑑は本当の生態図鑑です。それもどの一枚を取っても
我々素人には決して写す事の出来ないであろうまさにその決
定的な瞬間を写しています。例えばクロオオアリに寄生する
瞬間のノミバエを写した写真はアリの体長が10cmほどに
も拡大されていますが、体長2mmのノミバエともども微妙
なぶれ1つ無くクリアに写されています。アリの写真を撮ろ
うとした人には判ると思いますが、普通のアリ1匹にピント
を合わせて写真を撮ることも実は容易ではありません。この
図鑑で不思議なのはアリの巣の中の生き物を普通に撮ってい
ることです。普通はアリの巣を掘り返したりしたらアリ達は
大騒ぎで撮影どころでは無くなります。驚嘆の一言です。 
次はハードルを上げて「スズメバチの巣の生きもの図鑑」の
発行をぜひとも東海大学出版会には期待したいところです。

ハヤカワ文庫「虫の惑星(2)」も読み終えました。生物学
の面白さを教えてくれる素晴らしい本です。加えてレイチェ
ル・カースンの名著「沈黙の春」を下敷きとした自然と人間
との関わりがどうあるべきかなど興味深い洞察も見逃す事が
出来ません。いろいろなヒントを与えてくれる一冊です。 

ハヤカワ文庫「虫の惑星(1)」を読み終えました。22年
も前に発行された本ですが内容はいまだに古びていません。
これは本の中でも触れているように何百万種もある昆虫につ
いて我々人類が知り得た事は未だにほんの僅かしか無く膨大
な知見はまだ隠されたままだということが最大の原因のよう
です。最近は遺伝子学の発達によってその方面ばかりの研究
が盛んですが、もっと地道なファーブルのような生態学につ
いても力を入れて行く事が大切なように思えます。しかしそ
のような分野にはもはやというか過去から現在に至るまで研
究費が出る事はないのでしょうね。この本にあるように宇宙
研究に費やしている費用のほんの一部でもよいので生物学に
向ければもっと人類の生活に役立つ情報が得られる可能性は
大きいのではないかと思います。この本は虫たちの不思議な
生態を判り易く楽しく説明しています。取り上げられている
昆虫はトビムシ、ギキブリ、ヤゴ、コオロギ、ホタル、ハエ、
チョウなどですが、同じ昆虫群でも種類が違うと生態が全く
違う昆虫がとても多いという事に今更ながら驚かされます。

山口椿原作/森園みるく他作絵「新・残酷の眠るグリム童話
魔性の女」読了しました。山口椿自身も特異な作画を物して
いますが、森園みるく他による作画も山口椿の原作を余す所
なく描き出して秀逸です。グリムの新しい境地が垣間見えて
原作よりも判り易くお薦めです。            

養老孟司/隈研吾著「日本人はどう住まうべきか?」を読了し
ました。解剖学と建築学ではまったく接点が無さそうに見え
ますが様々な論点で話は縦横無尽に深堀りされ新たに気付か
される点も多く最後まで興味深く読むことが出来ます。本当
に養老孟司は対談の名手です。             

三島由紀夫「三島由紀夫文学論集V」読了です。全342頁、
27編からなる短編集です。極めて短い短編集ですが著者が
三島由紀夫となると容易には読みこなせません。内容を要約
するのは難しいので今回も裏面にある解説を載せておきます。
『市川団蔵、中村芝翫、中村歌右衛門、沢村宗十郎へのオマ
ージュにはじまる歌舞伎・演劇論、深く影響を受けたラディ
ゲ、コクトオ、ワイルド、ジュネ等の外国文学論、さらには
二・二六事件の青年将校・磯部浅一の遺稿や「葉隠」まで、
三島の美意識に刻み込まれた人と作品を縦横に論じ、小説の
美学と演劇への情熱溢れる二十七篇を収録。批評家。三島由
紀夫の文業を精選した論集全三巻完結。』        

平凡社刊「ヒマラヤ百高峰」は大判の写真集です。タイトル
通り7000m級、8000m級の世界最高峰の峰々の感動
の写真が百葉掲載されています。素晴らしいの一言です。 
圧倒的な迫力は撮影機材の良さだけではなく多くのシェルパ
を雇い被写体となる峰々に対面する2000〜5000mを
越える高所に登攀してギリギリの高峰から撮影していること
が大きな要因です。                  

壇蜜さんの写真エッセイ集「はじしらず」を読み終えました。
落ち着いた装丁が良いですね。よくあるグラビア系の写真エ
ッセイ集だと本屋さんのレジに出すのにちょっと恥ずかしい
ような表紙のものが多いですが、この本はモノクロでタイト
ル名と著者名だけというシンプルな作りです。全130ペー
ジほどの小冊子にはちょっとエロチックな写真が全ページの
半分程もあってお得感満載です。しかし不思議な事に壇蜜さ
んの映像は露出度が高い割に癒し系でお休み前の読書にも最
適です。エッセイの部分は壇蜜さん特有のありのまま風かつ
ちょっと斜に構えた見方がいつもながら興味深いです。よく
あるおバカ風を装ったアイドルやグラビア、またそつの無い
芸能人に比べると、このようなエッセイに見られるこだわり
の部分が、壇蜜さんが好きか嫌いかが分かれる所かも知れま
せん。                        

マネー・ヘッタ・チャン著「マッチポンプ売りの少女」を読
み終えました。著者の本業は7年間負けなしというプロの投
資家だそうですが、その故かこの作家の描くグリムっぽい童
話にはお金にまつわる様々な企みや危険が判り易く描かれて
います。タイトルからも判るように童話パロディに名を借り
た啓蒙の書です。そんな怪しい話には簡単には騙されないと
言い張る方にも是非読んで欲しい一冊です。参考までに各章
のタイトルだけを以下に列挙しておきます。「ゴーグルをか
けた猫」「コブラの魔法使い」「マッチポンプ売りの少女」
「アクデスと40人のどろぼう」「家を買った娘」「だんご
う3兄弟」「白々しい姫」「みにくい天下りの子」「金のゼ
ーリシと銀のゼーリシ」「インゴッドは死んだ」     

たぶん高野文子の久々の新作である「ドミトリーともきんす」
が出版されている事に初版が出てから1年半も掛かってやっ
と気が付きネットで購入しました。特異な作家ということで
ファンも多いらしく初版から1年も経たない内に8版も版を
重ねています。今回の作品は科学の啓蒙のために書かれた意
欲作です。登場人物は朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、
湯川秀樹という一流どころの面々です。こんな人たちを題材
にする所からして著者の捉えどころの特有さが窺えます。 
内容はこれらの人たちの業績を称えたり仕事の内容を説明す
るものではなく、これらの科学者たちの科学やものの見方に
対する言葉を綴った科学者自身の本を多数紹介しています。
機会があったら本屋さんで紹介されていた本を見てみたいと
思っています。                    

幸福の科学出版「正義の法」を読了しました。「政治的な正
しさとは何か」「経済的な正しさとは何か」「正義とは何か」
「格差問題」「世界の価値観の対立を読み解く」「先の大戦
における日本への評価は正当か」「宗教対立」などさまざま
な問題に対して宗教的な立場から冷静に、かつ一歩踏み込ん
だ具体的な提言をしている所が共感出来ます。私は信者では
ありませんが、この本に書いてあるような内容については他
の宗教関係者、政治関係者、マスコミ関係者、そして我々一
般人すべてが少なくとも斜め読み程度はした上で、それぞれ
の立場で問題を捕え直してみた上で、批判ばかりするのでは
なく問題解決に向けて行動する事が大切だと思います。但し
この本だけでは言い足りていない歴史の真実などがたくさん
あるので、色々な関係本も併せて読んでおく必要があります。
最近の傾向として、偏向したマスコミや司法に世論が引きず
られて人心が安定を欠いているように思えて仕方ありません。

退職に伴って3月から通勤しなくなった影響でこれまで続け
て来た通勤時の読書が出来ません。読書量ががた落ちです。
一週間で1冊読めていません。自宅にいると読書の時間を確
保するのは結構難しいです。              

「遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界」は最新の遺伝
子解析の知見に基づいて昆虫の起源や進化、形態、生態など
を解説した好読み物です。大場裕一/大澤省三/昆虫DNA
研究会による渾身の集大成本です。内容は各分野の専門家が
その成果を判り易く披露してくれています。昆虫の多様性と
その要因、昆虫類の起源、昆虫類の初期進化、有翅昆虫類の
系統進化、オサムシの起源と雑種形成による多様化、日本列
島の地史と昆虫相の成立、ギフチョウの起源、カラスアゲハ
類の分化、コオイムシの大陸への逆分散、時季や地理に由来
する進化の世界、イチジクコバチにみる昆虫と植物の共進化、
チョウにみる進化と多様化、好蟻性昆虫類、平行進化、砂漠
のゴミムシダマシ、クワガタムシの大顎・カブトムシの角の
発生メカニズム、チョウの斑紋形成とその進化、発光性昆虫、
蝶の味覚と産卵行動などなど昆虫に興味ある人には堪らない
内容に満ちています。判り易いとは言え全編、DNAに絡む
話なので勿論難しい部分もあります。それでもそれらの成果
を我々素人に少しでも判り易く紹介しようとした挑戦的な本
書は特筆に値すると思います。             

岩谷テンホーの最新の四コマ漫画「みこすり半劇場うっちゃ
り」を読み終えました。本当にいつでも楽しめる下ネタに満
ちています。構えていても笑わせられてしまうようなネタが
よくもこんなに継続して作り出せるものだと思います。  

講談社文芸文庫「三島由紀夫文学論集U」読了です。本の裏
面の紹介には以下のようにあります。『文壇の寵児としての
華やかな交遊、結婚、子供の誕生というプライベートの充実、
剣道とボディビルへの熱中、演劇・映画への傾斜……作家が
超人的な生活の中から何を思想の核として剔出するかを鮮烈
に示す、(中略)「裸体と衣装」。自らの文学的出発点と修
業の日々を語る「私の遍歴時代」を中心に、日常と創作の往
還から生み出された思索の結晶体、九編を収録。』    

講談社文芸文庫「三島由紀夫文学論集T」を読み終えました。
『太陽と鉄』『小説家の休暇』がメインの内容ですがそれに
加えて『「われら」からの遁走』『私の中の「男らしさ」の
告白』『精神の不純』『わが非文学的生活』』『自己改造の
試み』『実感的スポーツ論』『体操』『ボクシングと小説』
『私の健康』『私の商売道具』などジャンルの近い文学を集
めた一冊です。三島由紀夫の文学と行動の関係を知る上で参
考となる一冊です。この本を読んでいて気付いた続編である
「三島由紀夫文学論集U、V」は本屋ではもう手に入らなか
ったのでネットで注文して購入しました。        

悠書館「遺伝子から解き明かす昆虫の不思議な世界」は興味
深い本です。解説の中には難しい個所も多々ありますが昆虫
に興味のある人にはお薦めです。蝶の羽の模様の発現の仕方
などの章をみると近年の遺伝子解析技術の進歩が良く判ります。

トンボ出版「セミと仲間の図鑑」を読み終えました。図鑑を
読み終えるというのも何か変ですが、このシリーズは読んだ
あとに必要な時にまた図鑑をひくという形の使い方が合って
いると思います。この本も半翅目すべてを載せている訳では
なく極めて恣意的にある特定の範囲だけを記載しています。
昆虫に興味のある人にとってはこのような図鑑は大いに楽し
めます。気になる方は本屋さんで手にとって見て下さい。 

岩波科学ライブラリー186は「決着!恐竜絶滅論争」です。
著者は後藤和久です。このシリーズはなかなか気になるタイ
トルの本を多く出しているのでたまにチェックしていますが
この本は必見です。例によってマスコミは騒ぎになれば良い
と思っている媒体なので隕石が恐竜絶滅の主要因という説が
以前に出た時に、反論を散々出したきり結果どうなったかを
ちゃんと記事にしなかった経緯があります。そのため決着が
どうなったかを個人的には聞いた記憶がありません。個人的
には、最初から科学的な裏付けが確立していた隕石説は間違
いないと思っていましたが、多分多くの人は、私と一緒で反
論もあったけど科学的には一体どうなったんだろうと思って
いると思います。そのような危惧を当の科学者たちも思って
いたようで、この本はそのタイトルにもあるように恐竜絶滅
の主要因は6550年前にユカタン半島に激突した直径10
qの隕石によるものだということを反論に対する反駁という
形で科学的に説明、公表した経緯を判り易く纏めた一冊です。

中公新書「植物の見かけはどう決まる」は以前に読んだ本で
すが、ちょっと気になって読み直しました。相変わらず内容
は難しい記述が多いですが、シロイヌナズナが遺伝子解析に
益々重要となっている様子がネット情報などをみると判りま
す。そう言った意味で20年も昔にここまで論理が組み立て
られていたことに今更ながらびっくりです。       

たまたまですが今読んでいる本が全部、自然科学系の本にな
ってしまいました。最近良い小説に出会えていないのが原因
のようです。                     

土屋健著「白亜紀の生物(下)シリーズG」を読み終えまし
た。カラー図版が満載な所と、最新の知見が満載な所がこの
シリーズの強みですが、化石とは思えないほど詳細な部分ま
で残された魚類の化石などはため息が出るほどです。また歯
の形状や顎の作りなどから噛む力を類推したり、化石の出土
場所や化石の重複度から当時の生活状態を類推したりする手
法には一見の価値があります。この本では6600万年前の
巨大隕石による恐竜絶滅で章を終わっていますがこのあたり
でも科学的な知見に基づいた解説がなされておりお薦めです。

知る人ぞ知る官能劇画の第一人者である笠間しろうの文庫化
作品2点を読み終えました。「美味女三昧」「緋桜お艶」の
それぞれの作品も例に漏れず著者の持ち味全開のエロさと浪
漫満載です。大人向けの漫画です。これらが出版されて既に
4年以上も経ちますが続編が発行されないのが残念です。 

橋本治という作家は不思議な作家です。さまざまな分野の著
作を著していて一部では評価も異常に高いですが、一般読者
にとって判り易いかといえば残念ながら実に判りにくいと思
います。デビュー作の「桃尻娘」から大変な作家だとは思っ
ていましたが、橋本治の本を何冊か読んでみて良かったとい
える本がこれまで一冊もありません。今回読んだ「恋愛論・
完全版」も残念ながら人にお薦めしたいとは思いません。 
この本も難しいことが書いてある訳ではありません。平易に
書いてありますが、読者にとって判り易く纏めてあるかと言
うとその逆で自由気ままにみえる、自分の文体を曲げない所
があります。判る人には判るだろうと言うおごりも見え隠れ
します。これほどの才能を持った作家がもっと読者の視点を
意識して良い物を書いてくれたら有益ですが残念です。この
本の中に『橋本治の手トリ足トリ」というセーターの編み方
を書いた本があるという情報が気になって調べてみましたが
古本で36000円もの値段が付いていました。奇書の類に
入るだろうと思いますが著者自身がカリスマ的な存在になっ
ているようです。                   

田丸久美子「シモネッタのドラゴン姥桜」を読了しました。
イタリア語の通訳の第一人者である著者の子育て記録です。
そうは言っても型破りな著者による、これまた頭脳明晰で超
飛び抜けた行動をする息子さんの子育てエッセイなので本来
なら開成→東大→弁護士コースを辿る子育て記録なら顰蹙物
の自慢話にしかなりませんが、笑えるエッセイとなっていま
す。それでも残念ながら自慢話臭は拭いきれません。   

田丸久美子の「目からハム」を読了しました。イタリア語の
通訳の第一人者が語る面白いイタリア人のエッセイ集です。
個性たっぷりで、女性には優しく決してめげる事の無い陽気
なイタリア人が沢山登場します。愛称シモネッタと呼ばれる
著者のイタリア語講座や通訳業に絡むエピソードの数々は我
々を大笑いさせてくれます。              

技術評論社刊行の「白亜紀の生物(上)シリーズF」を読了
しました。このシリーズは写真や図版が豊富で最新の古生物
学の知見が紹介されているので、ある程度詳しい人にとって
も楽しめるシリーズとなっています。もちろん初めて古生物
の解説書を手に取る人にとっても図鑑感覚で気軽に読むこと
が出来ます。白亜紀だけは内容が多いため2巻セットだそう
です。この巻には恐竜、魚類、アンモナイト、その他各種の
生物化石が登場します。                

「世につまらない本はない」は養老孟司/池田清彦/吉岡忍の
3人による本の批評、紹介です。当然のことながらマンガを
含む読書全般に対して3人がそれぞれの素養を最大限に生か
した含蓄ある対談を通して本の紹介をしています。「養老」
流の本の読み方やバカにならないための本選びなどの章もあ
ります。「バカにならない読書術」を改題し加筆訂正した文
庫本だけあって気軽に読める一冊に仕上がっています。  

「蝶々は誰からの手紙」は丸谷才一の批評集です。内容は多
岐に渡り、深い洞察に基づいた批評は驚嘆に値します。本来
であれば今年のトップテンのトップに入れてもおかしくない
程の内容を含んだ一種の学術書ですが、学識の裏打ちの無い
我々素人が楽しんで読むには大分難しい所があります。そう
いった意味でランクは低くしています。         

気に入った本があったら読んでみて下さい。

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