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* * * 読書雑記(2022年) * * *



「韓国「反日民族主義」の奈落」は韓国、済州島出身で日本に
98年に帰化している呉善花による2021年4月初版の新書
です。韓国の国民性が非常によく判る一冊です。この時期に韓
国大統領だった文在寅の政治活動については余りにも目に余る
ものがありましたが、なぜそれ程までに反日、親北朝鮮だった
かについても非常に良く判る内容になっています。そう言った
意味では韓国に少しでも関心のある人は読んで損は無い一冊で
す。この本にはそのような韓国と今後どの様に付き合ったら良
いのかについての示唆はありませんが、それは著者による別の
書籍を参考にするしか無さそうです。           

宮部みゆき「よって件のごとし・三島屋変調百物語八之続」を
読了しました。2022年7月末初版発行です。賽子と虻、土
鍋女房、よって件のごとしの3話から成る520頁程のハード
カバー本です。本の帯の抜粋を交えてこの本の要約を以下に示
しておきます。物語の舞台は江戸は神田の袋物屋・三島屋で行
われている風変わりな百物語です。虻の呪いから姉を救うため
神々の賭場で下働きをすることになる顛末を語った「賽子と虻
」、池の底で結ばれた隣村で発生した「ひとでなし」について
巻き起こされる騒動を描いた「よって件のごとし」の2編が特
に秀逸です。宮部みゆきの描く独特な不思議世界が堪能出来る
一冊です。                       

丸山宗利/吉田攻一郎/法師人響諸氏による大判の昆虫写真集
「驚異の標本箱・昆虫」を読み終えました。2020年10月
初版です。以前に養老孟司氏推薦の『象虫』という写真集を見
たことがありますがこれと同様に数十枚から数百枚の元写真を
コンピュータ画像編集(深度合成)して1枚のくっきりとした
昆虫写真を作成しています。取り上げられている昆虫は美麗種
や珍奇種、拡大写真が語るべき特異な形態を備えたものなど見
ていて飽きることのない昆虫が満載です。それぞれの種別に何
故そのような形態を獲得するに至ったかや見るべき特徴につい
て丸山博士による簡単な解説も付いていて興味を深めてくれて
います。造形の驚異がこの一冊に満ちています。      

丸山宗利「昆虫学者、奇跡の図鑑を作る・カラー版」は本年9
月末に幻冬舎から新書として発行された新刊です。この本は本
年7月5日に発売された『学研の図鑑LIVE昆虫新版』製作
の裏話とでも言うべき本です。僅か200頁ほどの本ですが少
しでも虫に興味のある人にとってはとても面白い本です。私は
本を読むのが早い方ではありませんが、この本は購入して僅か
2日で読み終えてしまい、読み足りない気分が残っています。
もちろん本命はこの本ではなく図鑑の方なのですが図鑑作成ま
での経緯やバックヤードの様子、更には図鑑には載っていない
貴重な写真や説明までもが満載なこの本は図鑑をより楽しむ為
にも是非とも読むべき本です。私などは単なる虫好きの「昔の
少年」ですが、『虫屋はすごいな』と思わせられる一冊です。
因みに『学研の図鑑LIVE昆虫新版』はこの本の著者である
丸山宗利氏が監修を行い、主に虫屋を中心に延べ350名近い
人々が虫の採集から撮影、製作までに関わっているという一大
プロジェクトです。この図鑑の凄い所は、日本に棲息する主要
な昆虫約2800種を生きた状態で白バックで撮影していると
いう点です。これまでの大図鑑では当然の事ながら昆虫は標本
を背面真上から撮影していますが、この図鑑ではその昆虫を一
番認識し易い角度で撮影し、質感や光沢までもそのままに表現
しています。生きている昆虫と標本では色彩が大きく変わって
しまうものも少なくないので生きた昆虫の写真の図鑑は貴重で
す。私も昔買った図鑑に飽き足らずに野外で虫の生きた生態を
撮影したポケット図鑑を購入して持っていますが、当然背景は
木の枝や葉っぱで白バックではありません。それ程生きた昆虫
の白バック撮影による図鑑作成というのは普通ではありえない
大変な挑戦です。加えてこの本では近年発見され他の図鑑には
掲載されていない新種までを多数掲載しており一見の価値ある
図鑑となっています。                  

原田マハ著・村上たかし(原作)「小説・星守る犬(新装版)」
読了しました。原田マハの著作としては珍しくハッピーエンド
ではありません。見方によってはハッピーエンドかも知れませ
んが、読後感はいまイチです。本文庫は人気コミックの小説化
作品だそうです。犬好きの人には共感出来るのではないかと思
われます。                       

島本理生「生まれる森」を読了しました。この小説は2003
年の夏に著者がまだ大学在学中に執筆された初期作品だそうで
す。本の紹介では、恋に悩み迷う少女時代の終わりを瑞々しい
感性で描く名作とありますが、個人的にはあまり共感が出来る
ような箇所がありませんでした。若い世代にこそ読まれるべき
作品との評が解説にありますが同感です。         

森下典子「猫といっしょにいるだけで」は「いわた書店」が選
んでくれた一万円選書の一冊です。猫派でも犬派でもない私が
まず手にする事のない一冊です。誰でも赤ちゃんをみると思わ
ず顔がほころんでしまうように、むくむくの子猫を間近にみて
しまうとこの著者のようにあたかも昔からの猫好きかのような
書名の本を書くまでになってしまうのかも知れません。猫好き
の方はもう既に読んでいる方も多いと思いますが、犬派の方や
犬ネコ嫌い派の方も手に取って損はないと思います。僅か二百
五十頁ほどの文庫で短文節からなる読みやすい一冊です。  

川口マーン惠美「そしてドイツは理想を見失った」読了です。
章立ては以下のようになっています。(序章)SNS規制法案
が可決された日(1章)戦後ドイツとナチズズムとの闘い(2
章)最強の女帝・メルケルの正体(3章)なぜドイツと中国は
仲良しなのか(4章)矛盾に満ちたエネルギー・難民政策(5
章)EU内でも止まらない「反ドイツ」(6章)そしてドイツ
は理想を見失った(終章)理想は追い求めても自由は手放すな
本書では日本のメディアが誰も報じて来なかったメルケル退陣
に至る原因ともいえるドイツ内の理想と現実のギャップ、我々
が民主主義と呼ぶその内容(意味合い)の違い、公平なメディ
ア報道のあり方などが語られ、そこからはドイツ在住の著者が
感じているドイツ社会を覆う違和感がよく伝わって来ます。我
々はドイツ内の政党の事など殆ど知りませんがそれらの関係を
判り易く解きほぐし、難民政策やエネルギー問題に対する各党
のスタンスや国民の思惑なども簡潔に伝えてくれます。振り返
って我が国のノー天気ともいえるあなた任せの無策ぶりもよく
見えて来ます。トランプ前大統領に対するネット権の剥奪問題
もドイツAfdに対するメディアの対応も本当に正しいのか、
改めて問われるべきかも知れません。民主主義とは何なのかが
問われています。エネルギー問題、難民問題、民主主義とは何
かという著者の問いかけの意義は今一度よく考えるべきだと思
われます。                       

動物行動学者である竹内久美子の「女はよい匂いのする男を選
ぶ!」を読み終えました。独自性のある著者の発言には説得力
があります。動物行動学者からみて最近のLGBT運動につい
て物申したり、最近よく言われるようになった性格と血液型の
相関は無いという見解についての意見を述べたり、ポリコレに
毒された日本の皇統・政界・論壇と題して1章を設けて徹底討
論するなど、従来以上にこの本での論調は一段と過激になって
いるような気がします。個人的には一見の価値があると思って
いますが誤字変換が多く校正がおざなりにされている様で残念
です。指比の研究報告などはもっと世間に取り上げられても良
いと思っていますが、著者の各種著作以外では目にしたことが
ありません。これは右手の手のひら側で測定し「人差し指の長
さ÷薬指の長さ」が男の生殖能力やスポーツの才能などに優位
に影響しているという報告です。日本人男子の男の指比の平均
は0.98、女の指比の平均は1.00ということですが指比
の低い人ほど能力が高い傾向があるそうです。政治絡みの発言
では太陽光発電、夫婦別姓、女系天皇容認、移民推進、総理の
靖国参拝問題などに絡んで河野太郎氏をやり玉に上げています。

原田マハの「CONTACT ART・原田マハの名画鑑賞術」
は2022年10月発行の新刊です。キュレーターである著者
による名画鑑賞術です。国内各美術館にあるミレー、クールベ
、 モネ、セザンヌ、ルソー、クリムト、ダリ、草間彌生その他の
絵画や美術品についてその見所や作品から著者が感じ取って受
け取ったメッセージを簡潔に紹介してくれています。たとえば
クリムトからのメッセージは『強いは美しいの同義語である。
』、フロリアン・クラールからのメッセージは『あなたがいて
アートはアートになる。』、東山魁夷からのメッセージは『す
べてあなたの心の鏡に映った風景だ。』といった調子です。要
所要所にカラー図版が掲載されているので説明も腑に落ち納得
のいく名画鑑賞が出来ます。巻末には紹介された作品が展示さ
れている美術館情報も紹介されているので行く気になったとき
には役立ちそうです。それにしても金沢21世紀美術館の庭に
あるラッパのような導声管や、プールまでもが現代の意欲的な
海外アーティストの作品だとは思ってもいませんでした。身近
に感じ取れる美術です。                 

川口マーン惠美「無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ」を
読み終えました。2021年6月発行の近刊です。著者の経歴
を見る限りではこのような裏付けのしっかりしたエネルギーレ
ポートを書けるような人材にはみえませんが、桜井よしこの様
に具体的な数値の裏付けに支えられた啓発のレポートになって
います。国防意識と危機感の欠如した日本人、日本の国土売り
ますでいいのか?、奪われる寸前の尖閣、移民と難民の違いに
無頓着、豊田社長の正論、カーボンニュートラルと地球温暖化
危機論の問題点、電力の自由化の罠にはまるな、日本の独立に
は原発が必要、原子燃料サイクルは国家戦略、などなど言うこ
とがいちいち尤もです。読んでいて特に印象に残ったのは例え
ば、EVで使われるリチウム採掘では途上国の子ども達の健康
被害が心配されていますが、リチウムの使用量はスマホで5〜
10g、タブレットで30g、ノートブックで100gなのに
対してEV自動車では10〜15Kgも使用されているなどと
いう箇所です。このような話はマスコミも環境論者も誰も言っ
てくれません。ようやく燃料サイクルが始まろうとしているの
にMOX燃料が使える原発が殆ど稼働していない問題や司法に
よる異常とも言える程の再稼働取消判決の問題、再エネ促進に
よる電力不足穴埋めの為の火力発電所の稼働問題、中国製の格
安太陽電池にはヒ素やアンチモンなどの有害物質が含まれてい
ますが取り締まりもされず、太陽電池の寿命後の廃棄問題が放
置されたまま全国に広がっている問題、日本の水産物に未だに
規制を掛けている韓国では年間136兆ベクトルものトリチウ
ムを40年近くも毎年日本海に放出し続けている問題など具体
的な指摘満載の一冊となっています。お勧めです。     

呉善花/石平の対談「もう、この国は捨て置け!」を読み終え
ました。2014年が初版なので少し古いですが2019年に
7刷となっているので読み継がれていることが判ります。内容
は主に韓国の反日についての考察ですが、中国と韓国と日本の
国民性、地政学、歴史についての見方、経済、覇権などについ
て両国を良く知る2人による判りやすい解説となっています。
2013年ベースの知見であるため覇権国家を露わにする現在
の中国の姿はまだ全貌を窺い知ることは出来ませんが、その萌
芽は既に十分に現れています。それ以外の部分については基本
的に変わっていないため十分読む価値があります。     

土屋賢二の11/10の新刊「長生きは老化のもと」を読み終
えました。著者が連載している週刊文春の名物コラムを纏めた
ものです。他に類を見ない独自のコラムです。哲学者である著
者ならではの弁論術、問答法(簡単にいえば言い訳)が駆使さ
れたコラムはとても勉強になります。大いに笑って弁論方を学
びましょう。                      

宮部みゆき「子宝船・きたきた捕物帖(二)」を読了しました。
2022年6月の新刊です。サブタイトルにある「きたきた」
は主人公である北一と相棒の喜多次の頭文字を取ったもので、
このコンビが力を合わせて事件を解決していく捕物帖シリーズ
となっています。北一の住まいである長屋が著者の「桜ほうさ
ら」の舞台だったり、捕物の助力を与えてくれる通称「おでこ
」が著者の「ぼんくら」での登場人物だったりしてこれまでの
著者の著作を読んでいる人には余分に楽しめる内容となってい
ます。一連の物語は「子宝船」「おでこの中身」「人魚の毒」
の三話から成っています。                

櫻井よしこ/高市早苗「ハト派の嘘」産経セレクト読了です。
令和4年5末に出版された近刊です。自民党政調会長である高
市さんの我が国に対する思いが伝わって来る一冊です。章立て
は「核大国の嘘」「国防と歴史感」「反撃できない日本」「中
立論の嘘」「自民党の富国強兵」「台湾有事の日本」から成り
ます。核で恫喝しながら他国を侵略し国際法を無視し続けるロ
シア、弱腰バイデン、憲法9条、ハト派(リベラリスト、メデ
ィア、多くの政治家など)の唱える中立論、専守防衛、非核三
原則などの国防への妨げに囲まれる中、日本を取り巻く核保有
国である中国、ロシア、北朝鮮によるきな臭さが漂う近年の現
状変更の試みにどのように日本は対峙すべきなのか、この本は
色々重要な情報を与えてくれます。ぜひご一読下さい。この本
では、核大国が核を放棄した小国を核で恫喝するというあって
はならない世界情勢が発生した事や、米国がロシアの核の脅し
に屈して軍事介入を回避した事が語られていますが、本来は核
保有国であったウクライナが核放棄の代わりに領土の安全性と
独立的主権を保障するという「ブダペスト覚書」を思量すれば
米ロは約束を守らない国だということが見事に証明されたと言
う事を示しています。ウクライナはこの覚書き締結時に核だけ
ではなく戦車、軍艦、戦闘機、ミサイル、空母までもほぼ手放
していますのでまったくの騙し討ちと言えなくもありません。
日本国内の事でいえば国土、国民を守る事を阻む「専守防衛」
や「非核三原則」を国是とし続ける事は「善意の思考停止」と
言い切っています。世間の一部には台頭する中国に対峙する為
にはロシアと仲良くすべきとの意見もありますが、中露は同類
であることを4つの観点(専制主義、力による現状変更、国際
法無視、人権・自由・法)から明白化しています。我が国の防
衛予算の貧弱さについても内訳を示して明らかにしていますが
人件費や糧食費だけで42%を必要とするため、研究開発費は
僅か3.2%に留まるというのは驚きです。高市さんの発言で
気になったのは『コロナで傷んだ経済を立て直すためには金融
緩和はこのまま続けておくしかない』という点です。我々庶民
の一般的な感覚では、『異次元の緩和により経済は一層疲弊し
ている』というところだと思いますが、政府高官の考えは庶民
とかけ離れているのではないかと思わざるを得ません。   

谷沢永一/向井敏著「読書巷談縦横無尽」を半年掛けてやっと
読み終えました。鯉釣りの待ち時間に読んでいたため鮎釣りの
季節は読むこと無く、この10月末になって再度手に取る形と
なりました。鯉釣りの方は残念ながら「ボウズ」でしたが完読
出来ました。この本は1980年初版なので絶版になって久し
いですが、読書巧者2人による50冊のお勧め本に関する対話
なので読みたい本の情報が満載でお勧めです。私はどうしても
読みたくて古本で購入しましたが、最近はネットで新本、古本
が容易に購入出来るので気になる方はぜひ読んでみて下さい。

10/20に岩谷テンホーの新刊「大盛!!みこすり半劇場・
2022秋」が売り出されました。笑えて気分転換に最高です。
四コマ漫画なので読みやすいです。550話ほど入っていて定
価が税込み556円なので1話1円換算です。コスパは悪くな
い買い物です。今年3月に出た「大盛!!みこすり半劇場・2
022春」は既に売り切れて買えなくなっていますので紙書籍
で読みたい人は早めに購入しておく必要があります。    

講談社学術文庫「ひとはなぜ戦争をするのか?」というタイト
ルをみると分厚い堅苦しい本しか想像できませんが、この本は
一見の価値があります。アインシュタインとフロイトという2
人の天才が題記のテーマで交わした書簡を書籍化したものです。
アインシュタインからの問題提起が400字詰め原稿用紙換算
で24ページ程度、フロイトからの回答が44ページ程度、養
老孟司による解説が23ページ程度、文庫本のページ総数でも
僅か110ページという極薄の本です。ロシアがウクライナに
一方的に戦争を仕掛けている最中ですが、この機会にアインシ
ュタインとフロイトと養老孟司が「ひとはなぜ戦争をするのか
?」というテーマに対してどの様に考えて答えを出しているの
か興味のある方はぜひお読み下さい。           

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界14」を読了しまし
た。藤沢周平著『一茶』の紹介冊子です。僅か35ページです
が中身は濃いです。藤沢周平の『一茶』よりはるかに全貌を捉
えているので出来ればこの冊子を読んでから本編を読むと良い
かと思います。本のあらすじ、人物相関図、ストーリーマップ
は勿論のこと、一茶の生涯と作品概観、一茶の作品世界、江戸
時代の俳諧の状況など様々な観点で一茶作品が捕えられていま
す。小説「一茶」の見せ場も何点か紹介されています。   

エリザベス・コルバート「6度目の大絶滅」読了です。350
ページ程のハードカバー本です。地球ではこれまで5度の生物
大量絶滅が起こっています。(1)オルドビス紀末(約4億4
400万年前)腕足類など85%が絶滅。(2)デボン紀後期
(約3億7400万年前)甲冑魚など82%が絶滅。(3)ペ
ルム紀末(約2億5100万年前)三葉虫など90〜95%が
絶滅。(4)三畳紀末(約1億9900万年前)アンモナイト
など76%が絶滅。(5)白亜紀末(約6600万年前)恐竜な
ど70%が絶滅。この本では今、人類が原因で6度目の大絶滅
が起きているという主張を様々な調査を元にしています。この
様な主張は多くの生物学者がしていますが、問題は地球温暖化
やSDGs、原発、地震などの主張と同様に、統計を恣意的に
使って過大に数値を積み上げ真実味を増そうと試みていること
です。この本のカバーによれば現在、サンゴ類の1/3、淡水
産貝類の1/3、サメやエイの1/3、哺乳類の1/4、爬虫
類の1/5、鳥類の1/6、植物の1/2がこの世から姿を消
そうとしていると主張しています。生物種の総数も不明な現在
この類推が正しいかどうかは実は誰にも判りません。すなわち
主張した者勝ちです。このような危機的主張をする組織や人に
は公的補助金や研究資金が集まりますが、反対の主張をする人
には資金が集まりませんので主張は一方的に拡散されていく事
になります。そのような前提でこの本も冷静に見る必要があり
ます。この本の著者も地球温暖化論者の様ですが、IPCCの
報告ではこの100年に誤差を最大に見積もっても地上平均気
温は1℃も上がっていません。更にはこれが人為的活動による
影響なのか長期的にみた自然の変動範囲なのかも確定されてい
ません。しかしネイチャーに掲載された論文では直近の気温変
動を外挿して『温暖化によって2050年までに百万種が絶滅
』と謳っています。この本の見所は怪しげな総論ではなく個々
の事例にあると私は思っています。例えばパナマの黄金のカエ
ルをはじめとする多くのカエルがツボカビ菌によって絶滅しか
けていることや、海洋の酸性化によるサンゴの死滅、ニューヨ
ークでの好冷菌によるコウモリの個体数減少(白鼻症候群)、
アメリカでのクリ胴枯病による40万本のクリの木の枯死、ネ
アンデルタール人のDNAなど興味深い記述に溢れています。
いずれにしても、人類の創造性や探究心が多くの生物種を絶滅
に追いやる動機となっていたとしたら如何ともしがたいものが
ありますが、同時にそれが自然回復の動機と成り得るかも知れ
ない事には留意するべきかも知れません。         

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界13」を読み終えま
した。30ページ程のガイド本ですが、これ一冊で藤沢周平の
『本所しぐれ町物語』『橋ものがたり』が描く小説の概要、街
に架かる橋の様子や人物相関図、ストーリーマップ、架空の町
並みまでが本当らしく判ります。本当にこのシリーズは貴重で
す。ガイドブックを開くたびに原本の小説を読みたくなります。

和田徹「商品はつくるな市場をつくれ」はダイヤモンド社から
2022年3月の刊行です。『麒麟淡麗<生>』『氷結』『キ
リンフリー』などのヒット商品開発にまつわる24の技法が紹
介されています。他分野でも参考になりそうなアイデア満載で
す。                          

養老孟司/池田清彦共著「年寄りは本気だ・はみ出し日本論」
は新潮選書の一冊です。2022/7末発行の新著です。流石
に長年の虫友だけあって対談の息もぴったりです。対談内容は
多岐に亘っています。コロナワクチン関連、ウクライナ関連、
虫の話、AI、非戦闘的有事、環境問題と経済成長、安全保障
としての環境問題、流域思考、日本人の幸せとは何かなどの章
タイトルから成ります。賛同出来る所も疑問符を付ける箇所も
ありますが一読の価値はあるかと思います。啓発される主張も
多々あります。P31には鎌倉建長寺の虫塚の法要の話が載っ
ていますが、この情報を元に先日は建長寺で実物を見て来まし
た。この塚のデザインには隈研吾も関わっているようです。 

養老孟司/ヤマザキマリの対談集「地球、この複雑なる惑星に
暮らすこと」は2022年5月発売の新著です。ヤマザキマリ
は「テルマエ・ロマエ」で夙に有名な漫画家ですが、この対談
を読むと単なる漫画家ではなく、なかなかの論客であることが
判ります。更に幼い頃から昆虫が好きという虫屋に近いレベル
だということも判ります。養老孟司は様々な方と対談をされて
いますが、今回の対談ほど養老孟司が寡黙になっているのを見
たことが無いほどヤマザキマリは饒舌な上、博識、興味も多方
面に亘っています。これを機会にヤマザキマリの著作も時間が
あったら読んでみたいと思います。            

団まりな著「細胞の意思<自発性の源>を見つめる」を読み終
えました。果たして細胞には意思があるのかというなかなか興
味深い内容の本です。我々はついこれまでの常識に基づいて、
生物は遺伝子によって決められた手順に従って卵の発生から一
個体が出来上がっていくものだろうと漠然と思っているのでは
ないかと思われますが、発生生物学を専門としている著者は様
々な条件を課して発生の様子を実際に確認し、題記のテーマの
解明に迫ります。我々素人が読んでも十分に大半の解説が判る
様に平易に解説がされています。興味のある方には十分な刺激
を与えてくれる好著です。                

小松美羽著「小松美羽Transparent Chaos−
霊性とマンダラ−」を読み終えました。内容は今年6/25か
ら8/28まで川崎市の岡本太郎美術館で開催されていた小松
美羽展で販売されていた『小松美羽展 岡本太郎に挑む、霊性
とマンダラ』の再編成版といった所です。大きな章立てなどは
変更ありませんが、作品の並びやサイズ、構成などで細かい変
更が随所にされています。識者が寄せている小松美羽論の内容
にも変更があります。開催中に小松美羽が行ったライブペイン
ティングの写真も今回の作品には収録されています。一般の人
はもちろん両方を入手する必要はまったくありませんが小松美
羽ファンは展覧会にもこまめに参加して特別バージョンの作品
集が出ていないかチェックする必要があるようです。そう言え
ば小松美羽展では銅版画「四十九日」のジグソーパズルを購入
しましたがそこではパネルを売っていませんでした。その後、
やのまんのページなどをサーチしてパネルを探してみましたが
作品サイズに合わせた500×800という絵画サイズはジグ
ソーパズルには無いサイズの様で見つける事が出来ませんでし
た。いずれどこかの絵画屋さんでパネルを探そうと思います。

この季節になるとテレビ番組でもスズメバチについての特集を
よく報道するようになります。そんな旬のスズメバチについて
の比較的新しい本を読みました。中村雅雄著「スズメバチの真
実」です。著者はもともとは素人研究者だった様ですが今では
著書も何冊かあり、メディアでも様々に活躍している様です。
この本では著者のホームベースである横浜のキイロスズメバチ
の30年以上に亘る生態の変遷についての研究成果や、各種の
スズメバチ属の生態比較に加え、スズメバチは駆除すれば営巣
数が減るかなどの野心的な研究結果、世界のスズメバチの紹介
や最近問題になっている対馬から侵入し始めたツマアカスズメ
バチの紹介と未来予想、スズメバチとの共生についての考察、
コガタスズメバチ目線の物語など盛り沢山です。興味のある方
はぜひ手に取って見てみて下さい。難を言えば読んだ本は20
18年7月初版本ですが、科学書としては誤字が多すぎます。
このようなマニアックな本はなかなか重版されないと思います
が、是非第二版では良く校訂して最低限、誤字を無くして欲し
いものです。元教員といった経歴からも、著作者としても、科
学者としても正しい記述は必須です。           

養老孟司/宮崎徹「科学のカタチ」を読了しました。宮崎徹氏
は免疫学の先生ということですが、AIMと呼ぶタンパク質が
腎不全や神経変性疾患などの病気の治療を行う際のマーカーの
役割を果たしているのではないかという研究をされているそう
です。将来的には腎不全が多発するネコの治療に役立つのでは
ないかという事です。ネコ好きな養老先生とはそんな関係に加
えて同じ東大医学部の恩師という関係もあるそうです。AIM
の話に加えて話題のメインに上がっていたのが、昆虫の不完全
変態から完全変態への進化についてどのような生物学的要因が
あったのかについて議論を交わしています。ひょっとしたら元
々は幼虫と成虫で別々であった生物が融合して今の完全変態の
生物が出来たのでは無いかとの仮説に挑戦しています。確かに
昔は細胞内には色々な器官があると教えられて疑いを持ちませ
んでしたが、今では細胞内のミトコンドリアは元々、別の生物
だったと言われており生物学の常識は一筋縄ではいきません。
言われてみればトンボやセミ、バッタなど不完全変態の昆虫は
沢山いますが生きていく上でなんら不都合はありません。形態
が全く異なる幼虫と成虫を結びつけるために態々サナギという
防衛能力の無い細胞撹拌再編成用の坩堝を設けた進化の要因に
迫るかも知れない興味ある話題です。           

ジェフリー・ディーヴァーの最新の短篇集である「死亡告示」
を読み終えました。トラブル・イン・マインドとして文春文庫
から出版された短篇集の2巻目です。「プロット」「カウンセ
ラー」「兵器」「和解」「死亡告示」「永遠」の6話で構成さ
れていますが、「永遠」は文庫で230ページもあるので中編
と言った方が当たっています。リンカーン・ライム物も含まれ
ていますが、異色の「カウンセラー」が良かったです。ミーム
に似た「ニーム」が現実感を持って描かれています。是非、御
一読下さい。                      

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界12」を読み終えま
した。「獄医立花登手控え」シリーズ4巻を対象とした解説書
です。全30ページ程の小冊子です。例によって人物相関図、
ストーリーマップ、ストーリーの抄録に加えて江戸時代の医療
環境や小伝馬町牢屋敷図と解説など必要な情報が要約されてい
ます。解説は主に4冊の内の最初の一冊である「春秋の檻」を
中心に書かれています。                 

ダニエル・フリードマン「もう年はとれない」は創元推理文庫
刊380ページ程の推理小説です。主人公は87歳の元殺人課
刑事というこれまでに例の無いヒーローです。ユダヤ人の主人
公を捕虜収容所で過酷な目に遭わせたナチ将校が戦後金塊を抱
えてドイツを脱出して今も生きているという情報を得た主人公
はその真偽を確かめるため、老体に鞭打って行動を開始します。
しかし事態は主人公の予想を超えて進み関係者が次々と悲惨な
死を迎えていきます。果たして金塊は本当にあるのか、主人公
と協力者であるその孫との確執と活躍が十分楽しめる一冊です。
著者のデビュー作である本作は第六回翻訳ミステリー大賞2位
だそうです。                      

漫画家の杉浦日向子はいわば同時代人ですが、私が杉浦マンガ
に嵌ってから、著者が漫画家を廃業して隠居し、江戸風俗研究
家としてマスコミに露出してからも何故かテレビで一回も実物
を見ること無く旅立ってしまいました。「お江戸暮らし・杉浦
日向子エッセンス」は杉浦日向子が愛した江戸暮らしの魅力を
漫画、エッセイ、語りなどで編集した総集編です。著者のお勧
めの本や画家なども随所に紹介されています。       

谷崎潤一郎の種々作品をベースに10名ほどの漫画家がアンソ
ロジーとして編んだものが「谷崎マンガ・変態アンソロジー」
です。中公文庫270ページほどの小冊子です。当然の事なが
ら作家によってマンガの作風も谷崎作品の捉え方も大きく異な
るので色々な見方で作品を楽しむことが出来ます。     

クライブ・ハミルトン「見えない手」は中国共産党による世界
戦略の手法を事細かに調査して纏めた一冊です。本編380頁
ほどで脚注を加えると480頁ほどにもなる重厚な本で読む程
に憂鬱になる本です。日本は世界の先進国の中でも飛び抜けて
戦略的な外交政策を持っていない国ですが、経済大国&軍事大
国となった中国はとても先進国とは言えないにも関わらず世界
制覇の邪念を隠しもせぬダントツの戦略大国といえます。その
手法を各国での中国友人作り、一帯一路戦略、姉妹都市、統一
戦線工作、華僑、友好協会、脅迫とハラスメント、通商会議、
スパイ工作、シンクタンクや研究機関、専門家会議、サイバー
攻撃、グローバルメディア戦略、プロパガンダ、海外メディア
による自己検閲、文化戦略、共産党マネー、思想管理、欧米の
学術界への圧力、大学連携、学術出版、国連の中国化、台湾の
国際舞台からの排除戦略、北京版テロリズムの定義の輸出、中
国的人権の拡散、インターネット統治、新技術の国際基準化な
ど各方面で実例、具体名を挙げて詳細に述べています。救いが
ないのはこの本ではその対策までは殆ど述べられていないこと
です。個人的には前米大統領のトランプさんが行っていた人権
問題対応としての強力な経済制裁が一番有効な対応となるので
はないかと思っていますが、我が国でも少しは中国共産党の手
法を見習って戦略を練る必要があるかと思います。     
この本には各所に心しておくべき名言がちりばめられています。
そのいくつかを以下に示します。『中国共産党による「友情」
という言葉の定義は「敵対者を心理的に無力化し、現実を作り
直すための手段」である。』『中国では党の承認なしに「人民」
や「友好」という言葉を組織名に使うことは出来ない。他にも
「博愛」「平和」「発展」〜などが使われている場合も党に支
配されている統一戦線工作に関係した組織であることを示して
いる。』『2017年に行われた中国と世界の指導者との会議
での宣言では「各国の価値観の尊重」を求めていたが、それは
中国共産党にとっては「普遍的人権の拒否」を言い換えた隠語
であった。』『ファーウェイは「党と企業の融合」と「文民と
軍事の融合」の中心にある。これに「影響工作とスパイ活動の
融合」を加えることもできるだろう。』『中国共産党が推進す
る「ジャーナリズム」という概念では、真実の唯一の決定者は
党なのだ。』『「トップガン」続編では、主人公マーベリック
の革ジャンの背中のパッチが微妙に変更され、日本と台湾の国
旗が取り除かれた。』『孔子学院の契約書の中には、受け入れ
国では違法だったり、受け入れ大学の価値観に反する条項が含
まれていることが判明したものもある。』『中国共産党の現在
の「宗教的過激主義」の定義には、髭を生やすことや豚肉を拒
否すること、祈ることなどが含まれ、このおかげで新疆ウイグ
ル自治区のウイグル人イスラム教徒たちは、強制収容所に送ら
れる脅威に直面している。』『中国共産党は「すべての中国人
の守護者=中国共産党」という構造を世界中の中国系の人々に
向かって喧伝したい訳だが、〜唯一の脅威は「中国共産党」と
いう組織なのであって、中国人という「民族」や「人種」では
ない。』                        

2004年11月初版「サクリファイス」はその頃話題となっ
ていたフランス女流ポルノ小説の一つであり現地では15万部
を超える売上げがあったという有名な書です。その他の女流作
家の話題作としては「カトリーヌ・Mの正直な告白」「肉屋」
「肉の絆」「黒衣の下の欲望」などがあります。「サクリファ
イス」の著者はフローランス・デュガ、発表当時30歳だとい
う事です。この小説の特徴である両性具有という性哲学はギリ
シャ神話の「テイレシアス」の話からヒントを得ていると言い
男女は性交時に男女どちらの方がより快感が大きいかというギ
リシャ神話時代から続く永遠の議論にも繋がっています。本書
は単なるエロ小説として興味本位で読んでも良いし、上記の神
話なども踏まえて深読みしても良いかと思います。とは言って
も完全にアダルト向けの書籍なので取扱いは要注意です。  

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界11」を読了しまし
た。「麦屋町昼下がり」をテーマにした解説本です。例によっ
て舞台となるストーリーマップや人物相関図、重要な箇所の解
説など必要な情報が漏れなく記載されています。古本でも入手
出来るのであれば本編を読む前に読んでおくと良いと思います。

谷沢永一「日本人の「しきたり」ものしり辞典」大和出版を読
み終えました。辞典なので必要に応じて読み返して活用する事
が出来ます。章立ては衣、食、住、冠、婚、葬、祭、礼、年中
行事の10個に分かれています。草履、足袋、羽織、梅干し、
粥、塩辛、居間、座布団、箪笥、元服、初節句、雛祭、宮参り、
角隠し、位牌、戒名、絵馬、縁日、法事、内祝い、熨斗、左義
長、盂蘭盆会、酉の市、追儺などなど様々な日本のしきたりや
行事、慣例などの概要を知ることが出来ます。神棚の項目では
二階屋の一階に神棚を設ける場合、その神棚の天井の部分に”
雲”と書いた紙を貼るなどという知恵も授けてくれます。また
のし紙の表書きの作法についても正式な書き方が判りやすく記
載されています。                    

原田マハの「ランウェイ・ビート」を読了しました。青春学園
物の感動ストーリーです。ファッションで一躍人気者となる転
校生と仲間たちの巻き起こす希望を与えてくれる好著です。 

川崎市岡本太郎美術館では2022年6月25日から8月28
日までの間、企画展として小松美羽展を開催しています。2年
前の24時間テレビでライブペイントをした画家なので知って
いる方も多いと思います。因みにこの時ライブペイントで描い
た絵はチャリティーオークションで何と、2054万円で落札
されたそうです。今回の企画展ではそんな小松美羽の作品が何
と100点近くも展示されています。普通の展覧会では考えら
れませんが撮影は自由です。展示作品の目玉は最新作で京都の
東寺に奉納される曼荼羅絵、2014年に出雲大社に奉納され
た「新・風土記」です。これらに加えて、小松美羽の初期作品
である銅版画「四十九日」「六道輪廻」などの銅版画の数々、
神獣をテーマとしたペインティング、狛犬や山犬をテーマにし
た有田焼(初期作品は大英博物館にも展示されています)など
も展示されており小松美羽の現時点での集大成といった展示で
す。そんな「小松美羽展」の絵画集を川崎市岡本太郎美術館が
出版してくれています。定価3300円です。私は企画展会場
の売り場で購入しましたが、7月12日現時点では一般の本屋
やAmazonなどではこの本は売っていないようです。ネッ
ト検索をしてみると今年の9月14日に「小松美羽・霊性とマ
ンダラ」という本が4400円で販売されるようですが、同じ
内容かどうかは判りません。ちなみに企画展会場で売っている
「小松美羽展」の絵画集には「岡本太郎に挑む霊性とマンダラ」
というサブタイトルが付いています。           

ピーター・ジェイムズ「古代文明の謎はどこまで解けたかT」
は中々読み応えのある一冊です。2002年7月に第一版なの
で少し古いですが、古代の謎解きはそう簡単には進捗しないの
で十分近著だと思います。この手の本にはトンデモ本が多いで
すが、この本はそうした興味本位の流行本とは一線を画す様に
最先端の科学的知見(DNA判定、放射線年代測定など)も取
り入れて議論を進めています。特に一時期話題となった『神々
の指紋』(1996年刊)との対決議論には力が入っています。
著者によれば同書の著者であるハンコックの超古代史に関する
センセーショナルな予言は全くの幻想であるといって差し支え
ないとまで言い切っています。              

学研のフィールドベスト図鑑シリーズ15「日本の鉱物」を読
み終えました。日本には約1110種の鉱物があるそうですが
その中で著名な約200種がこの図鑑に紹介されています。鉱
物種名、鉱物の代表的な形態を示す写真のほかに特徴、採掘場
所、結晶の形、化学組成式、硬度、比重、産状、英名、光沢、
劈開、類似する鉱物との見分け方・違いなどフィールド図鑑と
して必要な項目はすべて揃っています。見ていても楽しい一冊
です。私の地元である神奈川県西部の山北町に産するベスブ石
や菫青石についても取り上げられています。また、鉱物写真と
して山北産の普通輝石、燐灰石などの写真も掲載されています。

杉山大志「「脱炭素」は嘘だらけ」」を読了しました。300
ページ弱の本ですが、知りたかった情報が満載です。エネルギ
ー問題は政治問題でもあり、経済問題でもあり、国防問題でも
ありますがこれらについても余すところなく情報を提供してく
れています。もちろん主題は「脱炭素」が科学的に正しいのか
です。これについては統計数字を判りやすく提示して世間で言
われているCO2増加による気候変動問題などに対して異論を
展開しています。併せて世間で「脱炭素」が問題視される様に
なり、学会、経済界、政界などがそれに挙って熱を上げる様に
なっている背景についてもばっさりと大なたを振りかざしてい
ます。マスコミから刷り込まれた「脱炭素」の認識を変えるの
に有効な読む価値の高い本であると思います。多くの方に手に
取って戴きたい一冊です。記載内容の一例を以下に示します。
例えば太陽光発電などの全量買取制度では今、年間総額2.4
兆円の賦課金が発生、非効率石炭火力の9割削減は年間7000
億円の損失になる。洋上風力発電を2030年までに1000
万キロワット導入すると、コスト低減が進まない限り、年間約
8500億円の追加費用が発生するかもしれない。2050年
にCO2をゼロにしようとするとコストは国家予算に匹敵する
ものになる。                      

武田邦彦「「新型コロナ」「EV・脱炭素」「SDGs」の大
ウソ」を読み終えました。第一章から第3章までは新型コロナ
に関する指摘です。著者は理系思考と言っていますが、こじつ
けの見解を披露している様に思えてなりません。およそ新型コ
ロナ対策の有効性やワクチンの有効性については評価が難しい
と思われますが、著者の言い分は我こそは正しい科学的評価を
しており、今の政府や専門家が行っている対応は間違っている
と断罪していますが、かなり疑問です。この本での指摘をどの
ように捉えるかは各人の判断次第だとは思いますが、個人的に
は同調出来ない点が多数あります。第4章は「EV・脱炭素」
「SDGs」、第5章は国防や民主主義についての見解、最終
章は日本の国家観、男女関係、士農工商、その他で総花的に話
題を広げすぎているように感じられます。そのため4章以降は
一の話題が深掘りされず全体的に薄っぺらい論理展開、議論に
なってしまっており説得力に欠けています。物事をどう評価す
るかは計測値をどのように扱うかに大きく影響されます。例え
ば、いわゆる「地球温暖化」の議論にしても、最初に指摘され
たホッケースティック曲線が雄弁に物語っている様に、捉え方
一つで温暖化に一直線に突き進んでいるとも言い張れるし、一
時的な特異点と見做すことも出来ます。同じような話は「地球
温暖化」が人為的なものなのか、単なる気候変動の範囲とみる
かの違いで大きく話が変わります。人為的温暖化論者およびマ
スコミが繰り返し「人為的」と喧伝したことが今の偽りの「地
球温暖化」危機に繋がっていると個人的には思っていますが、
いずれも十分に検証されること無く今に至っています。この本
で述べられている武田理論についても論理的思考にみえて逆に
その虞が多分にあるように感じられてなりません。識者のミス
リードほど恐ろしいものはありません。          

「SDGs」「脱炭素」など一見すると立派に見えるお題目に
ついては個人的には以前から胡散臭さを感じていますが、今回
はそれらについて集中して関連本を3冊読んでみました。一冊
目が池田清彦「SDGsの大嘘」です。第一章では「SDGs」
が掲げる17の目標についての矛盾を明確にし、第2章では環
境ビジネスで儲けている人を明確にし、第3章ではマスコミの
報道姿勢について断罪しています。第4章では日本の「里山」
と「SDGs」との関係について述べています。しっかり読む
べきはやはり第一章と第2章です。            

最近、世間で喧伝されている「脱炭素」「SDGs」は個人的
にはどうも胡散臭いキャンペーンだと以前から思っています。
今回、そんな疑念に答えてくれそうな3冊を並行して読んでみ
ようと思って購入した本が上記の3冊です。        

星新一「夜明けあと」新潮文庫版は入手出来ない状態が続いて
いますがオンデマンド版が出版されているので価格が文庫に比
べて7倍近くとかなり高価ですがかなり昔から興味のある本だ
ったので仕方なしにオンデマンド版を購入しました。300頁
余の読み応えのある本です。内容は明治という時代の世相、風
俗、ゴシップなどを端的に示す話題を新聞等から抜粋、要約し
た編年史です。明治3年、平民に苗字を許可。一方、帯刀は禁
止とする。明治9年、廃刀令公布。士族のなかには腰がさびし
いので長いキセルを代わりに差すのが流行。といった調子です。
お菊の幽霊、鉛筆の国産化、マッチ製造機の輸入、からゆきさ
ん、八甲田山の雪中行軍、上野動物園へのカバの輸入、モナリ
ザ盗難、遊郭反対の話題まで市井の話題含めて豊富です。十分
楽しめる一冊となっています。              

谷沢永一/向井敏の本に纏わる対談集「読書巷談縦横無尽」を
春先まで鯉釣りの合間に読んでいましたが、6月から鮎釣りに
シフトしてしまって読んでいる暇が無いため、鮎釣りが終わる
季節まで一旦中断しようと思います。残り100ページ程なの
で一気に読もうとすれば釣りに関係なく読むことも出来ますが
焦ることもないので保留です。鯉釣りだと一投してしまうと魚
信(アタリ)があるまで最長2〜3時間位は置き竿にしたまま
何もする事がありませんが、鮎釣りだとずっと竿を持ったまま
です。10月中旬までは極力鮎釣りに専念しようと思います。

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界10」の対象となっ
ている書籍は文春文庫「よろずや平四郎活人剣(上・下)」で
す。主人公は旗本の四男である神名平四郎です。市井のもめご
と仲裁で糊口をしのいでいる傍らお家の権力闘争にも巻き込ま
れ物語が展開していきます。例によって登場する人物相関図、
ストーリーマップ、内容抄録に加えて当時の世相紹介の一環で
「天保の改革」の概要や鳥居耀蔵の紹介、江戸時代のもめごと
仲裁の概要などが取り上げられています。         

産経セレクトの新書「赤い日本」は日本の国防を真剣に考える
ための必須の書です。著者は櫻井よしこ、言論テレビで放送さ
れた対談をもとに再構成、大幅に加筆したものだそうです。約
1年前の2021年5月に第一刷が出た近刊です。およそ我々
庶民は日々のテレビ報道などをみて何が真実か、今我々の回り
で何が起こっているのかを判断していますが、この本を読むと
何と理解が浅かったのかがよく判ります。多くの人が読むべき
本だと思われます。本書での主な論点は以下の章タイトルから
窺い知ることが出来ます。(1)メディアの中国汚染(2)「
九条二項」の呪縛、(3)「独裁中国」から逃げている(4)
敵基地攻撃と学術会議(5)有事に動けない国(6)天安門事
件の教訓。このような論点に対して可能であれば与党である自
民党、野党各党の見解を聞いてみたい所ですが、大体において
皆さん無視するか口を噤んで何もコメントしない傾向にありま
す。このような論点に対してゴールデンタイムに公開討論をし
て意見を明確にするような番組をマスコミは放映して欲しいも
のです。国会中継より余程有意義な放送となること必至です。
この本の中で特に気になったのは、日本学術会議のあり方です。
敵対する中国人民解放軍の経歴を持つ中国人は日本の大学院に
受け入れ技術を教える一方、防衛大学校卒業者を大学院に入れ
る事は許さず、日本人研究者が防衛省との共同研究をすること
も許さないということをしているそうです。名前は日本の学術
会議の総本山の様ですが、実態は戦後公職追放された後に学会
に入り込んだ左翼系の研究者団体から続く反日的組織の様です。
因みにアメリカでは国防総省の組織である国防を担うDARP
Aからインターネット、GPS、ルンバ、Siri、ステルス
戦闘機など様々な重要な技術が開発されているそうです。安全
保障上問題になっている外国人による日本の土地購入問題など
もその延長線上にあるようです。その他にもニュースで耳にす
ることのある米ロ間の新START(新戦略兵器削減条約)や
中国による海警法の改正についての本当の問題点が判りやすく
説明されています。テレビニュースがいかに内容を隠して報道
しているかがよく判ります。               

ジェフリー・ディーヴァーの短編集「フルスロットル」を読了
しました。サブタイトルは「トラブル・イン・マインドT」で
す。2022年6月には「トラブル・イン・マインドU」も発
売されました。ともに文春文庫のために訳出されたものです。
本書には著者の主要なシリーズ物であるリンカーン・ライム、
キャサリン・ダンス、ジョン・ペラムなどが主人公として活躍
する短篇も含まれています。著者の長編は読み応えがあります
が、短篇についてもそれらに劣らないどんでん返しなどの仕掛
けが沢山仕込まれています。短篇もすべて外れ無しです。  

山下裕二/壇蜜が首都圏にある常設美術館を巡る旅でコメント
を語り合うという美術鑑賞本が「私を美術館に連れてって」で
す。取り上げられている美術館は、東京国立博物館、岡本太郎
記念館、川崎市岡本太郎美術館、ちひろ美術館、印刷博物館、
東洋文庫ミュージアム、すみだ北斎美術館、その他多数です。
展示品が多数掲載されているのはもちろんの事、行ってみない
と判らない様な様々なポイントが要領よく紹介されています。
美術入門書として判りやすい一冊です。          
なお、この本で紹介されている上記の川崎市岡本太郎美術館で
は6/25〜8/28までの間、企画展として小松美羽展が開
かれるそうです。見所は「東寺」に奉納予定の4m×4m大の
曼荼羅画と、「出雲大社」に奉納された門外不出の新・風土記
特別公開です。事前予約制ですが小松美羽ファンの一人として
は是非見ておきたい展示です。              

夢枕獏は神奈川県小田原市を拠点にして活動していますがこの
著者による「聖楽堂酔夢譚」なる本を読み終えました。この本
には小田原の不思議な古書店「聖楽堂」なるものが登場します。
実在のモデルがあるのかないのか不明ですがこの店を巡る古書
との出会いや著者の作品に関しての実話風の雑談が綴られてい
ます。特にこの本に出てくる寺田寅彦「螺旋教典」、妻木松吉
「強盗の心理」、澁澤龍彦「暗黒のメルヘン」、坂口安吾「桜
の森の満開の下」などなど興味を引く本が多数紹介されていま
す。面白いジャンルの本です。              

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界9」読了しました。
藤沢周平の「風の果て」の解説書です。主人公は武家の次男、
三男のその後の生き方がテーマです。解説によれば厄介叔父に
なるか、塾に通って学問で頭角を現すか、道場で剣の腕を磨い
て道場を開くか、婿の口を探すか、京都や江戸や長崎に行って
漢方や蘭方の医術を学んで医師になるかだそうです。「風の果
て」ではそのよう様な道場で学んだ仲間のその後の人生が描か
れています。この物語の背景には農地として開墾する為の堰の
開削工事という事業が大きく関わっていますが、物語で語られ
る堰と作者、藤沢周平の故郷である庄内地方の堰工事などとの
類似性などについても頁を割いて説明がされています。   

山正之「中国への断交宣言(変見自在セレクション)」は新
潮社の「変見自在」シリーズから中国関係のエッセイを採録し
て再編集したものです。2004年頃から2020年までに亘
るエッセイからの抜粋ということで流石に中国のこれまでのや
り方がよく判る構成になっています。未だに政界、官界、経済
界を含めて中国大好き人間が多い日本ですが、このような本を
よく読んで対応を考える必要があります。今、もっとも清々し
い程、中国に対して忖度なく言いたいことを言っている著書の
一つです。                       

江戸川乱歩の有名な『貼雑年譜』の複製版「江戸川乱歩 貼雑
年譜」を読み終えました。とは言っても一字一句読んでいる訳
ではなく、眺めただけです。この本は乱歩自身が作成した所謂
年譜を画像レベルで複製したもので、原本がスクラップブック
に新聞雑誌の切り抜きやら毛筆の原稿を貼り付けたものから成
っていて、それを天地、左右ともに2/3程に縮小されたサイ
ズで製本しているため一字一句読むのは至難の業です。内容は
新聞雑誌、パンフレット、チラシの切り抜きに加え歴代自宅の
家の間取図、などが時代を追って貼り込まれているものですが
自分史や自注なども沢山書き込まれています。乱歩氏の性格や
興味の有り様まで窺い知れる乱歩ファンには楽しい一冊です。

阿刀田高の「赤い追憶」はミステリー短編選集です。色々な短
編集から選ばれた11の短篇が収められています。かなりの短
篇は各短編集で読んだはずですがすっかり忘れていますので、
新鮮な気持ちで読むことが出来ました。様々なタイプの広義の
ミステリーが収められていますので阿刀田高ミステリーの入門
書としては最適かと思います。ストーリーが楽しめるだけでな
く色々な知識も併せて得られるというメリットもあります。 

講談社文庫「ふたり・皇后美智子と石牟礼道子」は北海道にあ
る「いわた書店」が一万円選書として私のために選んでくれた
本の中の一冊です。選んで戴いて良かったと思います。実はこ
の文庫本が書店に並んだ時に一度手に取ってパラパラと眺めて
みたことがあります。しかし、どうも私の感性とは相容れない
本だろうと直感して購入はしませんでした。読後はその時の感
覚が間違っていなかったことを改めて実感しました。一万円選
書として選んでくれていなかったら決して読むことはなかった
だろうと思います。インパクトのあるタイトルに加え、四大公
害病の一つとして知られる水俣病の実態について教科書レベル
の知識ではなく関係者に寄り添って判りやすく迫力を持って真
実を伝えてくれる400頁弱の本書は著者である山文彦のル
ポライターとしての実力を示す良い指標かと思われます。しか
し残念なことに皇室については敬称もなしに呼び捨ての上に、
「さま」付けでさえも無く、水俣病を引き起こしたチッソ工場
の社長であった江頭氏が美智子妃殿下(本書記載当時)の母方
の祖父であることから、あたかも皇室が水俣闘争の敵方である
かの如くに描いている箇所が散見されます。一例だけを挙げれ
ばP133で著者は水俣病患者に対して『天応皇后のほうこそ
〜懺悔したかったのではなかろうか』と勝手に憶測し決めつけ
ています。天皇皇后両陛下が我々庶民に寄り添いお心を砕いて
下さる事は大変有り難いことですが、この本ではその様な心情
が素直に描かれる事は無くねじ曲げられて常に上から目線で描
写されています。個人的には著者の感性が理解できません。ま
た主役の石牟礼道子氏や支援者である緒方氏などの言動や行動
についても著者と似通った所が随所に感じられます。「祈りの
こけし」寄贈に関する行動一つをとっても皇室への敬意や配慮
が欠けているように思われてなりません。本書の後半部を見て
いると、本書では否定していますが、この本で描かれる関係者
の活動は、左翼陣営が推し進めてきた反公害闘争や労働運動の
考え方とそっくりです。告発する会、機関紙、チッソに宣戦布
告、あの暗い昭和時代最後の一年、チッソによる毒殺行為など
数々の記述はそれらを際立たせており、1970年の厚生省占
拠事件でのシンパ職員の手引き、その半年後のチッソ株主総会
への乗り込みと社長に対する暴力はたとえ心情は理解できたと
しても行動は決して容認出来ません。単なる左翼による暴力と
同じです。患者認定が遅々として進まない事や、会社や国が責
任を認めない事などはあくまで心情で判断する事では無く、た
とえ症状が似ていてもすぐには認定出来ない事は仕方無く難し
い問題です。「救済法」と「補償法」の言葉の違い一つにして
も責任の所在の問題と心情の問題の行き違いが如実に表れてい
ます。どの様な行動や見方についても立場が違えば捉え方は異
なりますが、この本での見方はかなり一方的です。一例として
は以下を挙げておけば十分かと思われます。『チッソと国が一
体となって、水俣病事件のすべてを補償処理委の手で葬り去ろ
うとしていることは、疑いようのない事実であった。』この本
の読後感はモヤモヤしたままです。この様な本に対して評論す
ることは極めて難しいというのが率直な感想です。立ち位置に
よっては国体への批判となり、あるいは患者側への冒涜ともな
り兼ねませんが、国体の政治利用という言葉は諸刃の剣かも知
れず、内容については読んで戴くしかないといった類いの本で
す。この本はおそらく著者の思惑通りに極めて思想的、政治的
であり、単純に被害者に寄り添う美智子妃殿下の人間としての
素晴らしさや石牟礼氏の正義を貫く義憤や生き方に同調すれば
よいというものでもありません。             

宝島社文庫「#9(ナンバーナイン)」原田マハ著は2008
年に出版された同名の本に加筆・訂正を加えて文庫本化したも
のだそうです。著者のもう一つの本業である美術関連のキュレ
ーターとしてのノウハウが反映された美術品を巡る物語です。
舞台は東京、上海、貴陽にわたり、美術収集のストーリーに絡
む主人公を巡る愛憎劇が物語に重層性を与えています。#9と
は何なのか最後まで興味を引く物語です。なお、物語の最初に
出てくるどうみてもクリスチャン・ラッセンと思われる宇宙空
間を漂うイルカ画についての『芸術作品』という評価について
の記述については、当時からラッセンの芸術作品としての評価
が分かれていたことを想起させてくれ興味深いものがありまし
た。カリフォルニア出身と言う点まで史実に忠実で笑えます。
ストーリー運びとはあまり関係がありませんが、美術品に対し
て必要な資質として、鑑賞者として美術を極めるには感性、知
識、照合(リファレンス)、表現の4つを挙げ、アーティスト
に必要なのは感性、技術(テクニック)、独自性、情熱(パッ
ション)の4つを挙げています。なお、これは別の世界(文学
など)にも置き換えられると言っています。至言かも知れませ
ん。                          

北杜夫は芥川賞受賞作家でもあり一時期は時代の寵児でしたが
既に鬼籍に入っています。その北杜夫が2022年5月15日
の新聞記事に載ったのを見て感慨を深くしました。丁度、著者
の最新刊「静謐・北杜夫自選短篇集」の中の短篇「死」を読ん
でいる最中でしたが、その内容が北杜夫の父である斎藤茂吉の
死に纏わる随筆であり、新聞記事そのものがその随筆の内容の
後日談だったからに他なりません。あまりの偶然です。私は北
杜夫の文庫本については殆どを読んでいますが、世間に一般に
良く知られているのは、『どくとるマンボウ』シリーズか長編
の『楡家の人々』あたりかと思います。この短編集には10篇
の短篇が収められていますが、自選というだけあって読んで損
の無い秀作揃いです。既に北杜夫に馴染んでいる人も、そんな
昔の作家は知らないという人も一度手に取ってみても良い本で
あると思います。                    

「養老孟司&茂木健一郎の「天才脳」の育て方」はタイトル通
り、解剖学者の養老孟司と脳科学者の茂木健一郎の共著です。
天才脳を育てるには体験による脳細胞組織のつながりの活性化
と詰め込まれた情報の量が決め手のようです。この本では前者
の脳細胞の活性化の手段についてそれぞれの立場から提言がな
されています。養老孟司は虫取り、茂木健一郎はアハ体験とい
ったテーマで熱く語っています。付録にDVDの付いた子ども
向けの本です。内容はNHK教育テレビの「科学大好き土よう
塾」をベースに編まれたものの様です。          

漫画家の高野文子が登場人物のキャラクター原案を描いたとい
うアニメーション「平家物語」が2022年1月からフジテレ
ビ「+Ultra」ほかにて放送が開始されているそうです。
この原案や絵コンテ、ストーリーなどが紹介されている本が河
出書房新社が2022年3月末に発行した「わたしたちが描い
たアニメーション「平家物語」」です。製作の裏舞台を描いた
ものです。高野文子は寡作のマンガ家なので久々の新作です。
手練れの作家だけあって流石の人物造形です。残念ながらTV
アニメの方は見ることが出来ていません。         

ちくま文庫「千夜一夜物語」は全11巻の大部の物語ですが、
今回久々に第5巻目となる「千夜一夜物語D」を読みました。
内容は皆さんご存じの通りですが、読み終えたと言う人は殆ど
いないのでは無いかと思います。一冊が600ページ余もある
ので全巻だと6000ページを超えることになります。よくも
まあこれだけの分量の物語を作ったものです。各物語は一話が
50ページを超えるものもある反面、5ページにも満たない話
があったりします。また、話の内容も重層的な構造をとってい
るものがあったり、多数の詩を盛り込んだ話などがあったりし
て多様です。実はこの大場正史訳による文庫版には各物語毎に
注釈が多数付いていて挿話の背景や当時の風物などを詳しく知
りたいという方にはとても役立つのでは無いかと思われます。

養老孟司「読書の壁」は2004年末から2021年5月まで
の著者が掲げた毎日新聞の書評をまとめたものです。60篇程
が紹介されています。こういう書評集の良い所は世界の様々な
その道の先覚者の思想を簡便に知れる事ですが、悪い所は既に
自宅の本棚には未読本が500冊以上あるのにも関わらず、読
みたくなり購入せずにはいられない本が新たに多く登場してし
まう事です。そう言った意味で選書内容が個人的な好みと合う
養老孟司の書評は特にヤバいです。この本でも著者の専門分野
である自然科学系の書評が多いですが、心や精神に関係する特
に外国人による著作は、科学というより、哲学や思想史、宗教
とでもいうべき分類とも分かち難い著述が多い様に思えます。
紹介されている多くの著書が最新の専門的な知見に基づいたも
のであり、この書評一冊で世界には新たな様々な物の見方の萌
芽とでも言うべき物が芽生えている事が窺い知れてお得です。

爆笑問題、太田光の「人間失格ではない太宰治」は著者の太宰
へのレクイエム的な作品で、毒舌で知られる著者の思い入れが
溢れた重厚な本かと思って読み始めましたが、主な内容は太田
光、一押しの太宰作品11篇全文の掲載であり、太宰論が十分
展開されている訳ではありません。ちょっと残念な一冊です。
太田光がオシている11篇の諸篇の多くはおそらく太宰ファン
には有り難がられる作品なのだと思いますが、個人的には琴線
に触れるような作品は見い出せませんが唯一「御伽草子」(瘤
取りじいさん、浦島太郎、カチカチ山、舌切り雀)だけが子ど
も向けの「おとぎ話」を大人向けにアレンジするという着想の
お手柄があるかと思います。太田光の発言は出だしの選者の言
葉と巻末の言葉の2箇所にありますが、最終ページにある巻末
の言葉により多く太田光の思いが込められています。    
蛇足ですが、11の短篇の一つ「愛と美について」の中に高木
先生の解析学についての記載があって、私が学生の頃に学んだ
高木貞治先生の『解析概論』を思い出しました。文系の太宰が
よくこんな本を知っているものだと不思議に思いました。  

原田マハの文庫新刊「スイート・ホーム」を読み終えました。
洋菓子店「スイート・ホーム」の家族と近隣の人達を巡る連作
短編集です。幸せの絆の物語です。            

養老孟司「子どもが心配」は2022年3月のPHP新書新刊
です。4名の対談相手との子どもに関する対談です。ケーキを
3つに切れない子どもを変える教育、IQを測る意義とは何か、
「褒める教育」への疑問、感情をコントロールするには、違和
感にいち早く気付くには、ネットに頼ることの弊害、教育の最
終目標、まことしやかな「神経神話」、自由学園の教育などが
語られています。                    

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界8」を読了しました。
この本で紹介されているのは『秘太刀馬の骨』です。お家騒動
に絡んで筆頭家老から秘太刀の使い手探索を依頼された浅沼半
十郎とその支援に当たる石橋銀治郎の奮闘は続きます。江戸期
の剣術具の解説や武家の助成の教育と生活などの解説も相応し
い内容となっています。                 

宮部みゆき「過ぎ去りし王国の城」を読み終えました。400
ページ弱のハードカバーです。2015年4月初版なので購入
して既に7年ということになります。主人公は推薦入学が既に
決まった中学3年生の2人です。時は2月下旬、銀行ロビーで
主人公の一人が不思議な古城のデッサンを見掛けた事から物語
が始まります。この絵に触れることで絵の世界に入り込める事
を発見した主人公達は古城に閉じ込められている少女の救出に
当たりますが、捜索している内に事件が10年前の少女失踪に
関わっていることが判ります。果たして少女の救出は出来るの
か、失踪した少女は見つかるのか、パラレルワールドの謎に絡
んで意外な結末を迎えます。一種のファンタジー作品です。 

文一総合出版「樹皮ハンドブック」は80ページ程の野外ハン
ドブックです。普段、我々はあまり樹皮など気にして見ていま
せんが、この本を見ると樹木は若木、成木、老木で樹皮の形態
が大きく変わっています。それに気付くだけでも見る価値があ
ります。似ている樹木の識別のための樹皮の見方を丁寧に教え
てくれるので判らない樹木に出会ったら樹皮と樹木全体の写真
を撮って持ち帰ることで後で同定する事が出来ます。この本の
良い点は各樹木の利用方法(建築材、弓材、割り箸、鵜飼の松
明、まな板、魚毒、黒色火薬の材料、薬用、殺虫剤、鳥もちの
材料、将棋の駒)など様々な知らない情報も教えてくれます。
樹木が少し身近に感じられる気がする一冊です。      
ネットでみると文一総合出版の「ハンドブック」シリーズには
マニアックなものが多くて楽しいです。「シダ」「タンポポ」
「ウメ」「サクラ」「スミレ」「テントウムシ」に始まって「
地衣類」「ハエトリグモ」「繭」「虫コブ」「日本の豆」「モ
グラ」「ハムシ」「虫の卵」「紅葉」など様々あって興味をそ
そります。                       

「ウエストがくびれた女は、男心をお見通し・動物学から見た
男と女」は動物行動学者である竹内久美子の2021年の最新
作です。森元首相の失言とポリティカル・コレクトネス、コロ
ナ恐怖での性生活、女系天皇論、キャッシュレスでセックスレ
ス、左翼の男女平等論、デスクワークと精子の質、仲の良い夫
婦が似た顔となる理由、美男美女は健康で長生き、などなど動
物行動学と最近の社会風潮との関係にまで踏み込んだ大胆な発
言の数々が僅か240ページ程の新書に収められています。物
の見方が固まった頭を柔らかくしてくれる効果が期待出来ます。

逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」を読み終えました。この本
は「いわた書店」が選んでくれた一万円選書の一冊です。流石
の選書です。内容は商品解説の言葉を借りれば『独ソ戦が激化
する1942年、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィ
マは母をドイツ軍に惨殺される。赤軍の女性兵士に救われた彼
女は復讐を誓い、訓練を重ね女性狙撃小隊の一員となりスター
リングラードの前線へと向かいます。』既にアガサ・クリステ
ィー賞大賞を受賞していましたが、「いわた書店」選書後に本
屋大賞(2022年)も受賞しました。興味を引く内容に加え
て登場人物の描写なども判り易くすんなりとストーリーにのめ
りこむ事が出来ます。この本を読んだ期間はロシアがウクライ
ナに侵攻して日々ジェノサイドを繰り返している最中で決して
現ロシア(旧ソビエト)に同情できる余地はまったくありませ
んが、この本では立場が逆転していて一方的に侵攻しているの
がヒトラー率いるドイツ、祖国を守ろうとしているのがソビエ
ト側です。大いなる歴史の皮肉です。読んで損は無い一冊です。

文一総合出版「オタマジャクシハンドブック」には日本に棲息
しているカエル38種の内、35種が掲載されています。また
山椒魚、イモリ23種の内、22種が掲載されています。と言
うことは我々はこの僅か80ページ程の小冊子をポケットに入
れておけば新種以外はすべてのカエル、山椒魚、イモリが識別
出来るということです。オタマジャクシの繁殖カレンダーのみ
ならず卵塊の形、生息場所、親子の写真、サイズまで手に取る
ように判ります。一冊置いておくといざというときに活躍しそ
うです。                        

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界7」読了です。第7
巻は「海鳴り」)を対象とした30ページ程の解説冊子です。
「海鳴り」の人物相関図、ストーリーマップ、あらすじ、スト
ーリーの肝となる重要な箇所の詳説などに加えて江戸時代の和
紙の流通状況の解説などもされています。コンパクトに纏まっ
た「海鳴り」解説書となっています。           

河出文庫「女悦交悦淫欲の性宴」は山口椿によるダフェルノス
作「おんな色事師」の翻訳本です。2002年初版ですが既に
絶版です。これに限らず山口椿氏の著作は大半が品切れや絶版
になっていて新品での入手が難しいですが、紙の本ではなく電
子書籍では様々な本が販売されています。個人的には電子書籍
には興味がいまだに沸かないので紙の書籍に拘り続けようと思
っていますが時代はきっと電子書籍の時代なのでしょうね。 

宮部みゆき「この世の春(下)」を一気に読み終えました。読
み始めると止まりません。六代藩主の乱心による前藩主の惨殺
と押し込め、藩主による奥女中の惨殺、城下で行方知れずにな
った四人の男子、出土村一村の焼亡などなど事件を巡る探索が
進みます。この物語では御霊繰の降霊の業や白仮面を使った狭
間の秘技は登場しますが妖怪変化の類いが出てくるわけでは無
く、多重人格を含む主に人間心理に基づいて事件が出来し、ま
た解決の糸口を見つけていきます。結末は悲しくもあり希望を
持ったものでもあり爽やかな余韻を残しています。     

親日派として活躍している黄文雄/呉善花/石平の対談「売国
奴」を読了しました。2007年に購入したものですが内容は
古びていません。台湾、韓国、中国の各国の国家観、民族史、
歴史、文化、反日の形態などのテーマについてそれぞれの出自
に従って解説してくれていますので、日本人からみて各国がど
のような考え方、見方をしているのか参考になる点がたくさん
あります。日本人が近隣各国(中国、韓国、台湾)とどのよう
に付き合っていったら良いかの示唆を与えてくれる好著です。
国籍は黄文雄(台湾)/呉善花(韓国→日本に帰化)/石平 
(中国→日本に帰化)となっています。          

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界6」読了です。第6
巻は「彫師伊之助捕物覚え」シリーズの3冊(「消えた女」「
漆黒の霧の中で」「ささやく河」)が対象です。私がこれらの
小説を読んだのは20年程も前のことになります。このビジュ
アルシリーズではストーリーの概略、ストーリーマップ、人物
相関図などに加えて主人公の仕事である彫師が関係する浮世絵
の話や町奉行の職務系統図、自身番と木戸の説明などが加えら
れています。                      

5年程前に購入した宮部みゆき「この世の春(上)」をやっと
読み始めました。作家生活30周年記念作品だそうです。藩主
の押し込めという政変の陰に絡む亡者たちの怨念を主人公であ
る多紀が解き明かしていく長編物語です。上下巻併せて800
ページにもなる物語です。16年前の凶事の封印は解けるのか
息をもつかせぬサイコ&ミステリー長編です。       

「星新一ショートショート1001(3)」は星新一の書いた
1001篇のショートショートを全て掲載した大部の本の3冊
目です。1974年から1997年までの文庫13冊分です。
この本には文庫本未収録のショートショート6篇も含んでいま
す。厚さは6cm程、1500ページ余、2段組です。この三
巻目にはごたごた気流、夜のかくれんぼ、おのぞみの結末、た
くさんのタブー、どこかの事件、安全のカード、ご依頼の件、
地球から来た男、ありふれた手法、凶夢など30、どんぐり民
話館、これからの出来事、つねならぬ話、の各短編が収められ
ています。星新一はショートショート以外にも多くの文庫本を
出しています。「気まぐれ指数」「夢魔の標的」「きまぐれ暦
」「にぎやかな部屋」「夜明けあと」などはショートショート
ではないのでこのセットには含まれていません。「星新一ショ
ートショート1001」全3巻はもれなく著者のショートショ
ートを提供しているといった点では評価出来ますが読み進むの
に多大な気力体力を必要とするのでおすすめではありません。
各文庫でおなじみのイラスト、装填などもありません。個別の
文庫本の購入をお勧めします。なお、この三冊セットに収めら
れている実際の短篇は1048篇だそうです。       

三浦瑠麗は国際政治学者ですが『朝まで生テレビ!』に常連と
して出演するなどし辛口のコメンテーターとして知られていま
す。著者は政治分野だけでなく色々なテーマについて多くの新
書を上梓していますが、『シビリアンの戦争・デモクラシーが
攻撃的になるとき』はそんな著者の究極の専門分野についての
著作です。著者が取得した博士論文の原文となる論説の様です。
戦争は軍人によって始められるだけでなく、近代デモクラシー
国家としては文民統制(シビリアンコントロール)により軍人
の暴走を止めなければならないというテーゼに対して、シビリ
アンが戦争を始めたり拡大させたりするケースがあるというこ
とを過去の様々な紛争を丹念に調査し、検証を加えているもの
です。開戦を導くきっかけとしては政治指導者の使命感や正義
感の達成、政権の損得計算(軍事力の規模、政権の継続、戦争
継続時の人命コストなど)など様々な要因が影響していますが、
軍などによる抑止力やそもそもシビリアンが暴走しないための
仕掛けとして著者は共和国制を挙げています。ここで言う共和
国とは政策決定に対する自由な参加と結果を応分に負担し合う
国家ということですが、具体的には徴兵制の復活や予備役兵制
度の拡充により国防に関する価値観を多くの国民が共有するこ
ととしています。しかし、政治指導者の権力は突出しており、
デモクラシー社会ではありませんが現に今起こっているロシア
によるウクライナ侵攻でもロシア国内での民間のコメントはロ
シア国内での虚偽報道にもよりますが、ウクライナへの介入(
戦争)賛成派が多数いるようで、プーチン大統領も民間の声も
抑止が効かないのが実状です。              
この本は本文230ページ、用語解説20ページ、引用参考文
献20ページ、注50ページほどから成っていてこれらを丹念
に追っていると結構大変です。本文だけを一気に読んでしまっ
た方が論旨が理解しやすいと思われます。         

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界5」読了です。第5
巻は17篇の剣客短編集から成る「隠し剣孤影抄」と「隠し剣
秋風抄」が対象です。「武士の一分」に掛けて通貨制度として
の一分についても説明が設けられています。藤沢周平の文庫本
を読んでいるだけでは読み過ごしてしまう17種類の隠し剣の
分析などもしっかりとされています。           

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界4」読了です。第4
巻は短編集の「たそがれ清兵衛」が対象です。この巻では武士
の刑罰(叱責、遠慮、慎み、逼塞、蟄居、閉門、預り、流罪、
改易、切腹など)の紹介や庄内三湯の紹介なども行われていま
す。                          

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界3」読了です。第3
巻は「三屋清左衛門残日録」です。この本のストーリーマップ
を見ながら文春文庫の「三屋清左衛門残日録」を読むと一層、
ストーリーがよく判ると思います。小説に登場する小料理屋の
料理などが紹介されていたり、隠居制度に関する考察や鳥刺し
の解説、時の刻み方など小説に関係した歴史的な事柄について
も興味が沸くような構成となっています。         

朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界2」を読了しました。
2006年に週間で発売されたもので一冊が40ページ程から
なる小冊子のシリーズです。第二巻は用心棒日月抄シリーズで
す。対象となる文庫本は「用心棒日月抄」「孤剣」「刺客」「
凶刃」の4冊です。藤沢周平の凄いところはストーリーそのも
のの構成だけでは無く小説を元にストーリーマップが詳細に組
み立てられる程、完璧に舞台構成をしていることです。本スト
ーリーでも各登場人物の屋敷の場所から事件の起こった場所、
掘り割りを含めた街路の詳細までが地図として掲載されていま
す。用心棒日月抄はお家騒動の騒ぎによって脱藩して浪人とな
った主人公、青江又八郎の物語ですがその脇で忠臣蔵の討ち入
り事件が進行しており著者の描く忠臣蔵解釈も興味を引きます。
この「藤沢周平の世界2」では忠臣蔵に関する資料説明も多く
掲載されています。                   

石川達三の文庫本は殆どすべてを購入していますが毛色の変わ
った本書「最後の共和国」は当時は読む気もせずに、購入しな
い内に絶版となってしまい、それから30年以上も経ってから
古本で購入しました。所謂ユートピア小説です。舞台は紀元2
026年4度の世界大戦を経た世界で、ロボットの活躍により
人類は一日3時間だけ仕事を行えば良く、衣食住すべてが提供
されている為貨幣経済も不要となっています。その代わりに法
律の条文は増加の一途を辿り生活は制限されています。ロボッ
トの反逆や組合の結成、有色人種と白人の対立構造、同性愛問
題など様々な論点を含む特異な小説です。偏見ともとらわれか
ねない発言満載であり現在新刊では発行出来そうに無い著作で
す。現時点においては、著者の描く未来社会とは大きく異なっ
た社会となっていますが、それでも著者の投げかけた社会風刺
を含むこの小説は読む価値が薄れてはいないと思います。  

桜井よしこ「GHQ作成の情報操作書「真相箱」の呪縛を解く」
を読了しました。戦後GHQが占領政策の一環としてNHKラ
ジオで流した「真相箱」の放送内容とそれに対する筆者の思い
のこもったコメントがこの本に込められています。「真相箱」
は今に尾を引く日本人洗脳政策の一環です。商品解説には『歴
史の真実に巧妙に虚偽を散りばめながら日本の“犯罪”を日本
のお茶の間に告発し続け“帝国主義の悪が民主主義の正義に屈
した”という観念を植え付けた。』とあります。戦後70年以
上に亘って日本人にいまだに誤った歴史観を植え付け続けてい
る元凶の一つです。もちろん洗脳政策に最も寄与したのは占領
軍が押しつけたWGIP(ウォー・ギルト・インフォメーショ
ン・プログラム)と占領軍作成の日本国憲法です。いずれにし
ても日本国民が一切の批判的言論封鎖をされている中で三年に
も亘って、日本を否定し明らかな嘘や、真実の中に巧妙に仕組
まれた嘘を織り交ぜたプロパカンダを国民放送であるNHKラ
ジオを通じて流し続けた事には罪深いものがあります。所々に
著者のコメントが付いていますが、「真相箱」の言い分のみを
記載している箇所もあるので真偽については各自が他の著作な
どもよく読んで内容の判断をする必要があります。     

岩谷テンホーの4コマ漫画「大盛!!みこすり半劇場・202
2春」読了です。このお笑いは心のオアシスです。個人的には
思わず笑ってしまう駄洒落が大好きです。1話1円以下という
コストパフォーマンスの良さも大いに褒められる点です。品切
れになる前に忘れずに購入しておきましょう。       

サンリオ文庫「フレドリック・ブラウン傑作集」は古本で入手
したものです。昨年読んだフレドリック・ブラウン「闘技場」
と内容が重複するところはありますが、面白く読むことが出来
ました。この本は向井敏の書評集「本のなかの本」で紹介され
ていた本の中でまだ読んでいなかった数少ない本の一冊です。
因みに読んでいない本は150冊中の30冊です。いずれも既
に絶版、品切れとなってしまっていて入手が難しいものです。
古本でも最近は稀少本だと異常に高額で入手がしづらく、逆に
汚れがひどかったりすると安いがそこまでして読みたいと思え
ないというジレンマがあります。未入手30冊中の主なものは
「拾遺亦楽」「風の書評」「白昼の白想」「ヒトラー・ジョー
ク」「戯作論」「文学にみる広告風物詩」「古都好日」「ドガ
に就いて」「鼎談書評」などです。復刊して欲しいものです。
因みに「鼎談書評」は続編の「鼎談書評(三人で本を読む)」や
「鼎談書評(固い本やわらかい本)」は入手済みであり既読です。

ダイヤモンド社「ニッポン文庫大全」は名前とは裏腹の分厚で
重厚な一冊です。絶版・品切れの文庫目録カタログを掲載した
り、各種の文庫の特徴や表紙の形態などを紹介したり、文庫に
纏わる貴重な数々のコラムの紹介などがあり思わずのめり込ん
で読んでしまいました。どのような経緯でこの本を購入したの
か忘れましたが書評での紹介本だったっかも知れません。各種
コラムについては読書通好みの内容となっています。一見する
と本屋でただで貰える文庫解説カタログや新潮文庫の100冊
などを大規模にした大判のハードカバーの様に見えますがじっ
くり読んでみると文庫に対する思い入れに溢れた貴重な一冊で
あることが判ります。このような熱い思いを持って拡張してい
たこの本の母体となる「ふるほん文庫やさん」は残念なことに
大手による本のネット販売の拡大その他の理由によって40万
冊の文庫を残したまま2012年に社長が失踪したとのことで
残念な末路を迎えているようです。            

谷沢永一「向学心」は新潮選書の一冊です。タイトルが先にあ
りきで著名人の成功に至る前の学問に打ち込んだ軌跡を書誌学
的にかいつまんで並べたといった体裁の本です。個人的には著
者にしては珍しい失敗作の様な気がします。この本には32名
の財界人、実業家、作家、数学者、学者などが取り上げられて
います。どの一人でもよいので立ち読みしてみれば、それが読
者の参考にならないケースが殆どであることが見て取れるかと
思われます。                      

伊与原新「月まで三キロ」を読了しました。短篇6篇からなる
350ページ程の文庫です。新田次郎文学賞や未来屋小説大賞
第一位などを受賞しているようです。「いわた書店」の一万円
選書で選んで戴いた一冊です。巻末の対談にあるように「科学
をトリックのネタに使うのではなく、科学の世界と人間ドラマ
を融合させた」小説と言った意味で特異な小説だと思います。
「月は一年に3.8センチずつ地球から離れていっている。」
「アンモナイトは〜分類学的にはイカやタコの仲間である。」
「パソコンは〜クオークとレプトンで出来ている。」「その少
し前に流れ出たのが〜座禅岩溶岩。」などなど高度な科学的知
識を上手く小説に取り入れて違和感がありません。     

橋本治「桃尻語訳枕草子(上)」を読了しました。河出文庫で
す。奇才の翻訳なだけあって第一段の有名な出だしから違いま
す。『春って曙よ!だんだん白くなってく山の上の空が少し明
るくなって、紫っぽい雲が細くたなびいてんの!』こんな調子
で上巻は第八十二段まで続きます。本文だけであればこれで3
00ページ余にもなることは決してありませんが、いろんな所
に適宜、清少納言自らの注釈が入っているため大幅に膨らんで
います。たとえば叙位、白馬の節会、左衛門の陣、舎人、五節
句、招婿婚、旧暦、除目、国守、直衣、襲の色目、などなどで
す。説明だけで判りにくそうなものについては絵や系図まで付
いています。例えば薬玉、卯槌、狩衣、藤原氏系図、大内裏、
官位表などです。無茶苦茶勉強になります。        

櫻井よしこ「日本の未来」は2015年分の時事コラムが3年
後の2018年に文庫となったものですので内容としては既に
7年程が経過しています。それでも気になる点に付箋紙を貼っ
ていたら付箋紙だらけになってしまいました。どこの新聞でも
テレビ番組でも良いですが、このような重要な情報を日々伝え
てくれる報道があったらどんなに多くの人への思考、判断への
手助けになるか知れません。この本では中国の人権問題や覇権
問題、オバマ外交の失敗、原発問題、平和安全法制、米中の動
向などが中心に語られています。特に大きな点はオバマ外交の
失敗により世界秩序が大幅に後退したことです(IS等テロ勢
力の拡大、ロシアによるクリミア併合、中国の南シナ海への侵
略急拡大)。国の基盤は経済と軍事力であることを明確にした
上で、安全保障問題になると思考停止状態になる政治家を指摘
し、中国、ロシア、インドを中心に高速増殖炉の開発が急速に
進んでいることを明確にした上で、国内原発の安全性を高める
のでは無く、原発停止にばかり向かう勢力(非科学的な原子力
規制委員会、民主党、偏見と無知により判断を下す司法)への
痛烈な指摘、批判を下すといった箇所は多くの人に読んで欲し
い所です。中国関連で特に気になった点は、中国が言う新型大
国関係の構築では核心的利益の相互尊重が大切であり、それを
国連中心の世界秩序で守るとの主張であるとのことですがその
意味するところは戦後70年ファシスト勢力の一員であった日
本を非難する常套句であるとの指摘です。因みに中国の言う核
心的利益とはチベット、ウイグル、台湾、南シナ海、尖閣諸島
とのことです。中国の場合、漢民族は人口の90%を占め、少
数民族は8%に過ぎないにも関わらず、領土の60%、草原の
90%、森林の40%、水資源の50%強、鉱物資源の殆どは
本来少数民族が有している場所である事から、この資源を漢民
族が手放す事はありえないと指摘しています。かつて西洋諸国
が行っていた侵略、略奪の歴史と重なります。       

週間新潮の名物コラム「変幻自在」の最新刊「習近平は日本語
で脅す」を読み終えました。著者は高山正之です。恐れ気も無
く各国、各国要人をここまであからさまに正面から批評する文
章や発言には滅多にお目にかかれません。正論こそ言いにくい
ものであるからこそ、ウクライナに侵攻しているロシアに対し
てもあからさまな批判を出来ない日本の政治家に爪の垢でも飲
ませて猛省を促したい所です。百田尚樹が解説で言っている様
に僅か4ページ程の文章に恐ろしいほどの情報と歴史の不条理
が詰め込まれており誰にも真似の出来ない鋭い批評の文章とな
っています。かつての名コラムニスト山本夏彦氏の寸鉄人を刺
す名言と返す刀でそれまで笑っていた我々読者をも見事に切り
捨てる名刀の切れ味は伝説的でしたが、オブラートに包まれて
世の中は嫌な物だとの人生訓を少しの苦笑いを含んで伝えてく
れていました。高山正之氏のコラムはもっと情け容赦なく西洋
社会、アメリカ、ロシア等の民族の行動、歴史的事実に対して
鋭い眼を向けています。歴史の流れを大局で見つめるのに役立
つ貴重なコラムの数々がそこにあります。         

スティーヴン・ジェイ・グールドの連載科学エッセイの選りす
ぐりを集めた「干し草のなかの恐竜(下)」を読み終えました。
訳者のあとがきによれば書名は、見つかる当ての無いものを探
して無駄骨を折るという意味の「干し草の中から針を探す」と
いう慣用句から取られているそうで、『どのようなデータを集
めれば良いかを教えるのが理論の役割であるという、科学理論
と証拠との理想的な関係を論じた12章のタイトルから取られ
ている。』とのことです。下巻のエッセイは17章から34章
までで構成されており、恐竜ブーム、系統樹、優生学、進化理
論、クジラ類の進化段階の化石についての考察、造物主の本質
についての論考での「甲虫に対する途方も無い肩入れ」などな
ど、この本も進化論を題材にした著者の面目躍如たる一冊であ
ることは間違いありません。あとがきには科学における「公表
のバイアス」の問題についても触れられていますがこれは現在
でも、様々な点でみられます。例えば「地球温暖化」という研
究には膨大な研究費が回って来ても、「地球寒冷化」という研
究には研究費が回らず、研究者も減って研究も縮小され結果的
に温暖化ばかりがもてはやされ空気を作っていくということに
なります。また、「進化=進歩」ではないという長年に亘るグ
ールドの啓蒙活動もなかなか効果を上げていないことを憂いて
います。                        

江戸川乱歩「一人の芭蕉の問題」は乱歩による探偵小説、推理
小説に関する論考を集大成したものです。国内、海外の翻訳も
含めて戦前から戦後の動乱期にかけての探偵小説、推理小説の
文学界における位置づけや関係する作者などの全貌がよく判る
貴重な証言となっています。鯉釣りの待ち時間を有効に使って
やっと読み終えました。                 

木内昇の連作風短編集「茗荷谷の猫」を面白く読みました。こ
の本は「いわた書店」が選んでくれた一万円選書の一冊です。
読みやすい文庫本で満足の一冊です。著者が弱冠41歳にして
関東大震災から戦後の闇市時代までの市井の様々な人達の生活
を流麗に描いた意欲作です。尤も弱冠という形容は通常、男性
に対して使う用語の様なので、「不惑」「強仕」と言った方が
よいのかも知れませんが、当時の雰囲気を良く伝えると共にそ
こに生きる名も無き人々の思いが伝わって来ます。物語に登場
する偏奇館という古本屋も一層興を添えています。本書の内容
を上手く伝えてくれるのは巻末の解説です。『取るに足らない
庶民の切実さや偏執は遍く世間に偏在し、そのようなものがふ
としたことで今を生きる者の思いに陰影を与える。そうした淡
い真実を書き尽くした所に本書の素晴らしさがある。』(一部
要約)と解説しています。『日常を「かけがえのないもの」と
して尊重することの意味を、我々は改めて考えさせられる。』
という貴重な短編集です。                

岩波新書「発掘を科学する」を読了しました。田中琢/佐原真
編集ですが著者は分野毎に分かれていて全部で16名います。
初版から27年以上も経っているので現在はもっとスキルは上
がっているものと思われますが、この本でも十分に我々一般人
が知らない発掘に関する様々な技術が判ります。遺跡から見つ
かった焼けた細かい鮭の骨から縄文時代の食生活を推測したり、
脂肪酸の分析からナウマン象の分解に使った石器の特定をした
り、遺構後から出土した炭化クッキーから当時の保存食の成分
分析が出来たり、藤原京跡の土に含まれる寄生虫卵の分析によ
り当時の食生活や病気の状態まで推測が出来たり、トイレ遺構
跡から見つかる種子の種や花粉からの食生活の推測、埋没植物
の年輪測定による地震などの災害年代の特定、肉眼で見えない
イネ科の植物の葉が持つガラス質(プラント・オパール)の土
壌からの抽出・分析から水田跡の特定、稲作開始時期の推定、
発掘された人骨の分析による古代家族構成の推定、漆のルーツ
の探索、地震考古学など色々な方面で発掘に関する科学的アプ
ローチが語られています。                

北海道にある「いわた書店」では一万円選書という取り組みを
行っています。昨年10月に申し込んだ2021年度分の一万
円選書の2月抽選分に見事当選し、提出したカルテを元にこの
たび選んで戴いた10冊が届きました。応募は何と3701通
もあったそうなので相当な幸運と言うことのようです。書店主
は一人一人のカルテをみて選書しているようなので大変なご苦
労ですが、この幸運をじっくり味合わせて戴こうと思います。
他の人の参考にはならないかも知れませんが、一応書名を上げ
ておくと以下の通りです。エンド・オブ・ライフ、もう年はと
れない、同志少女よ・敵を撃て、人質の朗読会、モンテレッジ
ォ・小さな村の旅する本屋の物語、茗荷谷の猫、ふたり・皇后
美智子と石牟礼道子、生きるとか死ぬとか父親とか、猫といっ
しょにいるだけで、月まで三キロ。これから徐々に読んでいこ
うと思います。                     

スティーヴン・ジェイ・グールドの科学読み物「干し草のなか
の恐竜(上)」を読了しました。絶版となっていて古本でしか
入手出来ません。一応、コレクター商品で未読本と謳っている
バイヤーからAmazonでネット購入したので、少し高額で
すが、確かに既読感はなく満足です。あまり拘っても結局は私
が読んでしまった後は単なる古本なので殆ど意味が無いですが
一応、多少のこだわりです。内容は予想通り密度の濃いもので
す。序章のミレニアム問題だけでも一読の価値はありますが、
最終章の生物における左右対称問題についての考察も著者なら
ではの文献検索と論理の進め方などに参考にすべき点が多くあ
ることに驚かされます。左巻きの巻き貝、右巻きの巻き貝から
説き起こす問題点の深掘りはこの著者の特徴を良く表していま
す。著者が逆提言しているシオマネキのハサミの左右非対称性
について誰か検証をした人がいないか気になる所です。   

「星新一ショートショート1001(2)」は星新一の書いた
1001篇のショートショートを全て掲載した大部の本の2冊
目です。1968年から1973年までの文庫13冊分です。
これも厚さは6cm程もあって1600ページ余もあります。
この二巻目には午後の恐竜、白い服の男、ひとにぎりの未来、
おみそれ社会、だれかさんの悪夢、未来イソップ、なりそこな
い王子、さまざまな迷路、ちぐはぐな部品、おかしな先祖、殿
さまの日、城のなかの人、かぼちゃの馬車の各短編が収められ
ています。「殿さまの日」だけ文庫で未読でした。これは新潮
文庫が多分20年以上も品切れが続いているためです。現在、
ネットで検索してみるとオンデマンドブックが売り出されてい
ますが、文庫1冊分なのに4070円という高額の金額です。

幸福の科学出版「メシアの法」読了です。最新の法典だそうで
す。中国の覇権問題、温暖化問題、メディアを初めとした世論
を形成する圧力団体の問題など信者でなくても大事な話題が豊
富に載せられています。残念な事は話題が豊富な分、結論に至
る前提や説明が少ない為に色々な話題についての前提知識が少
ない場合に真偽の程が個人に判断出来ない事や、信者以外にと
ってはUFOや宗教の話が渾然一体となった政治や社会への批
評が「トンデモ発言」と捉えられかねない事です。私は信者で
はありませんが個人的にはお勧め本です。後半部分は経典に相
応しい信仰や霊界、宗教に関する話となっています。    

原田マハ/ヤマザキマリの対談本「妄想美術館」を読み終えま
した。美術に造詣の深い二人の対談なので読み応え満点です。
美術の見方について様々な観点を与えてくれる貴重な対談本で
す。二人の美術に対する偏愛が対談にも良い影響を与えてくれ
ているように思えます。我々一般人にとっては海外の諸美術館
に出掛けることについては依然として敷居が高いですが、この
本を読んで是非行ってみたいと思える美術館が多いことに改め
て気付きました。出掛ける事は叶わなくても、国内で催される
海外作品展には機会があればできる限り見に行きたいと思いま
す。この本の後半には、作家/漫画家として作品作りの構想の
方法、美術との関連についても様々に言及されていて興味深い
一冊です。                       

久々にまちづくり関連の本を手に取りました。我々が山北町で
NPO活動を始めた2000年頃に出版された田村明著「まち
づくりの実践」岩波新書です。まちづくりのアイデアや各地の
実例、取り組み方法など様々な観点で示唆を与えてくれます。
我々のNPO活動も今一度、原点に戻って再始動させたいと思
います。地域の宝探しで20の宝を発見した話や「木を植えた
男」の逸話、”まちづくり”には5人の馬鹿がいる。と言った
市民活動のヒントなど傾聴すべき話題が豊富です。     

養老孟司「ヒトの壁」を読了しました。色々な話題についての
エッセイです。章タイトルは以下の通りです。「人生は不要不
急か」「新しい宗教が生まれる」「ヒトはAIに似てきている」
「人生とはそんなもの」「自殺する人とどう接するか」「なせ
ばなる日本」「コロナ下の日常」「ヒト、猫を飼う」コロナの
話題、嘱託殺人の話、現代人の「科学信仰」「AI信仰」、五
輪開催についての話題などに絡み、最近の世相に対する示唆に
富む言論があちこちに見られます。著者も指摘しているように
我が国の最大の問題はエネルギーであり、それは戦争中も同様
であり、エネルギーがなぜ必要かといえば「意識という秩序活
動」が要求するからだと論理展開しています。興味を引く言説
は各所にありますが、「生物は過去から未来に向かう方向にし
か生きられない。しかし、物理学の方程式からは時間は正負の
両方の値を取り得る。但し、熱力学の第二方程式ではエントロ
ピーは増大するので時間は一方向である。よって生物はその方
向でしか生きられない。」などはその筆頭です。参考文献とし
て「時間は存在しない」を上げています。気になる所です。 

池田清彦「「現代優生学」の脅威」読了です。優生学的な考え
方に対する著者の見解がよく判る新書です。ナチスの行った優
生政策、我が国のハンセン病対応、出生前遺伝子検査、津久井
やまゆり園での殺傷事件、コロナや学歴に絡む差別問題、安楽
死に関する問題など幅広いテーマに関連する話題に触れて議論
を展開しています。傾聴すべき点の多い著作です。但、読んで
いて著者の見解がかなり極論に走っていると思われる点も多く
賛同出来ない箇所も沢山あります。これは以前に読んだ著者の
「脳死臓器移植は正しいか」でも感じた違和感とも一致します。
具体的には以下のような点です。本書では日本や欧米の言説や
事件等に関しては容赦なきまでに批評を加えていますが、この
テーマでは言及があってもよいと思われる中国に関する言及が
一切無い点がまずあります。公権力に対する過剰ともいえる見
方にも著者の特徴が現れていますが、例えば「福祉国家化する
過程で公権力による優生政策が進展する可能性がある」「役に
立つ、役に立たないの線引きはその時代の状況によって極めて
恣意的に、そして差別的になされて来た」「優生保護法もまた
ナチスの遺伝病子孫予防法をまねた戦前の国民優生法の考えを
引き継いだ」「人類が犯してきた見えない病気におびえた差別
偏見の歴史」「管前首相の目指す社会像は自助、共助、公助、
そして絆という発言に対して、過度な自己責任を押しつける社
会への変革との発言」「人間の命を生産性という一面で測る考
えが政治的・社会的な広がりをみせている」「社会全体が安楽
死を容認する方向に傾きつつある」「AIが大部分の労働を代
替するような時代になれば、資本主義的な観点から見てほとん
どの労働者は役立たずの人間になる」「現代的な消極的優生学
を示す現象として、年金・医療・介護といった社会保障の切り
捨てとなる」「病原菌の感染者を大勢で誹謗中傷する状況は現
代においても変わらない」「無症状の感染者を社会が正当に扱
うことができない」「公衆の健康のためには、公衆衛生局は、
個人の権利や所有権にまで踏み込むことが出来る」などなど自
分の個人的見解を病的なまでに社会的な風潮にすり替えて発言
して煽っています。よくある団体や思想家が恣意的の論理を誘
導する常套手段と酷似しています。要注意です。なお、著者の
「人間には死の自己決定権がない」「臓器移植反対」などの著
者自身の主張そのものは極端な発言に見えますが、それはそれ
で尊重すべきと考えます。                
 
宝島社刊「SDGsの不都合な真実」には『「脱炭素」が世界
を救うの大嘘」』というサブタイトルが付いています。この本
を読むと『世界は壮大な陰謀で出来ている』といった感を強く
するのではないかと思います。一読お勧めの一冊です。今一度
(1)そもそも地球温暖化は本当なのか。(2)脱炭素は正し
いのか。(3)急速なEV自動車へのシフトは現実的なのか。
(4)SDGsタグ付けに見合った行動を本当に行っているの
か。(5)新型コロナ起源は本当に自然由来なのか。(6)水
素エネルギーは本当にエコなのか。(7)科学者の合意は本当
か等について本書を元に考え直して見ることは大事です。この
本は色々な情報と啓示を与えてくれます。正義の人ほど上記の
ような事柄に単純に賛同してしまう傾向があるように思えます
が、世界はそんなに単純でも正義でもありません。環境原理主
義、気候産業複合体、環境活動家、ロビイスト、メディア、再
生可能エネルギー事業や研究者への補助金や研究資金、各国の
国益による政策推進などが様々に関連した活動が上記の(1)
から(7)の根底にあることが判ります。日本の国益に叶った
行動は何なのかを冷静に見極めて行くことが大事です。   
この本には面白い一節があります。以下引用です。     
<「環境活動家はスイカである」という「なぞかけ」がある。
その心は「外側は緑だが中は赤い」。環境原理主義の一面の本
質を突いた評言である。>説明は書籍をご参照下さい。   

「星新一ショートショート1001」は星新一の書いたショー
トショート全1001篇を3分冊に纏めた大部の本です。昨年
から2冊目に取り掛かっていますが、1600ページ余もある
のでなかなか読み終えません。文庫本で13冊分が納められて
いるので平均して130ページが文庫1冊分に当ります。現在
1400ページ程まで読み進んでいるので今月中には読み終え
そうです。                       

新潮社「亡国の危機」は日本を憂える櫻井よしこの近作です。
2020/4から2021/4頃までの『週刊新潮』連載コラ
ムに加筆し単行本化したものだそうです。時節柄、中国関連の
コラムが増えています。中国政府の言うWin−Winの関係
というのは中国が二度勝つという意味だとの記述がありました
が、深く納得です。世界で最も信用できない言論の国ですが、
真っ黒を真っ白だと言い張ることを易々と出来る世界で最も戦
略に長けた国でもあるようです。世界がコロナで苦しむ中、他
国を如何にコロナを武器に跪かせる事を常に考える事の出来る
特異な国です。我が国も少しはこの手法を見習った方が良いか
も知れません。櫻井よしこのコラムは我々素人にも判りやすく
解説してくれる所が最大の長所です。例えばバイデン大統領が
2020年11月に管首相に「インド・太平洋戦略」について
語った際に「安全で繁栄するインド・太平洋」という表現をし
たそうですが、「安全で繁栄する」は中国が使う表現であり、
安倍首相、トランプ大統領両氏がインド・太平洋戦略で冠した
形容詞は「自由で開かれた」ということを明示した上でバイデ
ン氏の対中感に疑問符を呈しています。また、管首相が日本学
術会議の会員の内、6名を任命しなかった報道は我々には判り
にくかったですが、そもそも日本学術会議の会員は日本の学術
会議を代表している訳でもなく、占領軍の政策を引きずったも
のであることから現在に至るまでの学術会議が日本に及ぼした
負の活動の数々を明示してくれています。これを読むと日本の
発展を阻害するとの意図で任命しなかった総理の意図は明瞭に
判ります。マスコミ(新聞、ニュース)ももっと判り易く説明
してくれれば良いのですが、多くのマスコミが未だに戦後史観
に捕われたままの状況では、櫻井よしこのような明確な説明は
期待すべくもないのでしょう。残念なことです。      

手島圭三郎の版画絵本「はしれはるのゆきうさぎ」を読み終え
ました。この著者の本を読むのはこれで2冊目です。ずいぶん
早いですが、来年の干支の年賀状作成の参考にしようと思って
買ったものです。残念ながら私の作りたい版画とは趣が違うの
で使えそうもありません。ウサギはトラと違って模様や形態の
特徴が平凡なためやはり版画にしにくい素材のようです。絵本
としての内容は淡々としたものでこちらも特段のコメントはあ
りません。本書は作者の様々な作品シリーズの中の「いきるよ
ろこびシリーズ」の一作品です。             

星新一「きまぐれ暦」を読了しました。新潮文庫版は長らく品
切れとなっていますが新潮社(オンデマンドブック)が出てい
るのを見つけ購入しました。税別2500円と割高ですが仕方
ありません。ショートショートでは無くエッセイの類いです。
著者の素顔の一端が窺い知れてこれはこれで楽しめます。  

週間新潮「変幻自在」の名コラムニストとして知られているジ
ャーナリストの高山正之と元ウクライナ大使、元防衛大学校教
授などの肩書きを持つ馬渕睦夫による「世界を破壊するものた
ちの正体」は衝撃的な警告の書です。対談形式で内容は個々の
タイトルで小分けされているので読みやすいものとなっていま
す。タイトルの例は以下のようなものです。分断のアメリカ、
非合法な政権奪取、歴史は語り繰り返す、ケネディ暗殺、連邦
準備制度理事会、プロパカンダ、東欧のカラー革命、国際協調、
縛られる日本、主権国家たれ、日本学術会議、フェイクニュー
ス、陰謀論と歴史修正主義、トランプの退任演説、他民族国家
の罠。残念な事は内容が凝縮されているため、その背景などを
知らない我々素人にとっては言っていることの真意や真偽が把
握しにくいものが少なからずあるということです。即ちこれを
読んで全てが著者らの言う通りかどうかを検証するのは至難で
あり、見方によっては「トンデモ本」と見分けがたい内容が満
載ということです。                   

與謝野晶子訳「全訳源氏物語下巻」を読了しました。角川文庫
です。上巻658頁、中巻644頁、下巻673頁、合計する
と2000頁にも及ぶ大作です。文献初出は1008年という
ことですので何と1000年も前の作品ということになります
が、主人公の光源氏を通して、恋愛、栄光と没落、政治的欲望
と権力闘争など、平安時代の貴族社会を描いた壮大な物語は今
でも十分に読み応えのある王朝物語となっています。そのため
多くの和歌が男女のやりとりに出て来ますが、その数はなんと
800首にも及ぶそうです。今回読み終えた下巻は主人公だっ
た光源氏が亡くなった後の物語で主人公は光源氏の子どもの薫
です。源氏物語にはご存じのように膨大な論考や関連する芸術
がありますが、なかなか本文全文を読み通している人は少ない
かと思います。私もこれまでに「源氏物語五十四帖」や「輝く
日の宮」などを読んでいますが「源氏物語」を読んだのは今回
が初めてです。源氏物語はこれまで色々な人により翻訳されて
いますが発行部数順にみると近年では田辺聖子訳、瀬戸内寂聴
訳、与謝野晶子訳の順になっているそうです。誰の訳で読むか
もポイントの一つだろうと思います。コミック版も入門用とし
ては良いかも知れません。ご興味のある方は是非一度手に取っ
てみて下さい。                     

講談社α文庫「つい誰かに話したくなる雑学の本」を読了しま
した。9章の章立ては、物知り雑学、身の回りのおもしろ雑学、
心とからだの雑学、年中行事・身近な習慣のびっくり雑学、歴
史のはなし、科学・気象がよくわかる雑学、食べ物のはなし、
スポーツ・ギャンブルの意外な雑学、動物・植物のびっくり雑
学から成っています。蘊蓄満載ですが初出が1981年6月と
いうことで40年以上も経った現在からみるとかなり古い雑学
です。一例を上げると本書では恐竜絶滅の原因の筆頭に「超新
星の爆発による宇宙線により酸化窒素が発生しオゾン層の破壊
をもたらした」事をあげていますが、2022年時点での最有
力説は「直径10Km程の隕石がユカタン半島付近に落下した」
というものです。本書のような雑学、物知りの本は沢山出てい
るので、似たような本で新しい物もあると思います。    

「歴史の読み方人間の読み方」は歴史を俯瞰してみる達人達が
集まって応仁の乱から信長、秀吉、明治維新、司馬史観、日清
日露戦争、論語、孫子、三国志、十八史略などを題材に歴史の
見方や、人間の読み方を語ったものです。歴史の解析あるいは
人生の指南書とも言える一冊です。内容は主著者の谷沢永一の
論考に加えて司馬遼太郎/会田雄次/渡部昇一らとの対談から
成っています。内容が広範多岐に亘っているので我々素人には
表面的な一部しか理解が届きませんが、歴史に詳しい人に取っ
ては程度に応じてより深く理解する事が出来るのではないかと
思われます。著者のあとがきによれば「差し迫った近未来の厳
しい時代に、個人個人がどのような覚悟をもって臨むべきか、
その難問に対する示唆が、本書の一貫した主題である」と言っ
ています。                       

漫画家である秋竜山のエッセイ集「おとぼけ読書絵日記」をバ
ーゲンブックで購入しました。いわゆるB本(ゾッキ本)です。
一般にゾッキ本は定価より安く売られるのが普通ですが稀覯本
については高く売られることもあります。この本はあまり品質
が良くないにも関わらず購入当時の定価1500円の所、売価
は2200円と割高です。今回は新刊本屋併設のバーゲンブッ
クで偶々見掛けたので衝動買いしてしまいましたが、ネットで
調べてみると今現時点では更に良い品質のものを郵送料込みで
1000円以下で購入することが出来ます。この本を読むと秋
竜山が単なる漫画家では無く、手練れのエッセイストである事
がよく判ります。古本でも読んでみる価値のある一冊です。著
者のこだわりは「笑い」にあり、笑いに関係した様々な本を取
り上げて「笑い」に関する評論を展開しています。     

フレドリック・ブラウンはSFの大家ですがどちらかというと
星新一に連なるショートショートの先駆けといった方が適切だ
と思います。「闘技場」はそんな短編集です。440ページ程
の本に14の物語が収められていますが長いものは70ページ
程もあり、短いものは6ページ程の長さです。星新一訳で楽し
める一冊です。                     

「やっぱり食べに行こう。」は原田マハの文庫新刊です。著者
の食遍歴を綴ったエッセイです。おいしそうな料理、グルメが
満載です。しかし残念なのはその多くが我々一般庶民とは縁が
少ない外国の店舗だったり、国内であっても隠れ家的な名店だ
ったりするため、実際に行ける店は少なそうです。確かに折角
自分だけが気に入っているお気に入り店舗が多くの人の訪問に
よって荒らされてしまうのを避けたい気持ちはよく判りますが
美味しそうな料理を文章の達人が美味しそうに描いて見せられ
るだけというのはこちらとしても欲求不満が溜まります。この
本は名店ガイドブックでは無く、美味しそうな料理を筆の名人
が美味しそうに見せる芸を楽しむためのものと割り切ってみる
方が健全かもしれません。うらやましいのは外国でもバリバリ
仕事が出来て各国に仕事で出掛ける傍ら料理も楽しめ、国内で
も広範な交友によって隠れた名店などにも出掛けられるような
著者の才能と交流の広さです。              

三浦小太郎著「なぜ秀吉はバテレンを追放したのか」は我々が
知らなかったバテレン追放令の本当の理由を明らかにするもの
です。歴史で習うザビエルなどの宣教師は単にキリスト教を布
教するために日本に来ていたのではなく、突き詰めれば世界制
覇、日本侵略を目的としたものであったことが数々の歴史書か
ら明らかにされます。当時の日本の統治者が賢明にもそのよう
な西洋諸国の企みを見抜き、鎖国の道へと歩んだ歴史がこれま
でよりもクリアに見えることと思います。江戸時代265年と
その後の明治、大正、昭和、平成、令和に至るまでそのような
歴史の真実を隠しているものこそがおそらくは戦後のアメリカ
による日本統治政策による呪縛だろうと思います。つまりは欧
米は戦後に初期の目的をやっと果たしたと言えるのではないか
と思います。良く言えばグローバル化ですが、日米地位協定ひ
とつを取ってみても日本の主権は侵されたままです。偏見と思
われるのを覚悟して敢えて言えば、思うに世界の一神教の多く
は他宗派の排撃、侵略という思想を根本に含んでいるのではな
いかと疑われます。日本の八百万の神の国では仏教やキリスト
教も含めて他宗教を排撃するという思想は含んでいないように
思えます。日本的な寛容の精神、思想こそがグローバル化には
有効の様な気がするのは僻目かも知れませんが提言しておく価
値はあるかと思います。一読お勧めの一冊です。      

2022年版の各種ミステリランキングで軒並み1位を獲得し
ている米澤穂信の「黒牢城」は歴史に詳しくない人でも実に興
味深く読めて、読み応えのある歴史ミステリに仕上がっていま
す。信長に叛旗を翻し有岡城に立てこもった城主の荒木村重が
主人公ですが、重要な脇役に織田方の名軍師である黒田官兵衛
がいます。城内で次々に湧き上がる難事件を解決していく末に
遂に各種事件の裏に潜む全貌が明らかになります。しかしその
結末でさえも二転三転し歴史をどう見るかがが各人に問われま
す。史実を大きく踏まえた着想は秀逸です。読後にはネットで
「荒木村重」の歴史を読んでみると一層興味が沸くと思います。

原田マハの最新刊「丘の上の賢人・旅屋おかえり」読了しまし
た。元、旅番組のレギュラーだったタレントの丘えりかは降板
後、ひょんなきっかけから旅の代理人として活動することにな
ります。そして各地で出会った人々に笑顔を与える、そんなス
トーリーで感動を与えた『旅屋おかえり』未収録作品を収めた
本書も感動を与えてくれること必至です。希代のストーリーテ
ラーである表題作に加え旅屋デビュー前の様子を描いた漫画、
自称『フーテンのマハ』の旅に関するエッセイも付いています。

昨年末から読んでいた「英国人記者が見抜いた戦後史の正体」
を読了しました。著者は英国人記者のヘンリー・S.ストーク
スです。アメリカが仕掛けた日米開戦、東京裁判という名の茶
番劇、サンフランシスコ講和条約、GHQによる極秘プレスコ
ード、アジア植民地時代、公正な歴史観、正しい外交姿勢、日
米不平等条約、悪しきプロパガンダなど最低限の歴史認識を得
るのに必須の事柄がコンパクトに纏められています。日本の行
方を憂う心ある日本人に向けた啓発の書です。       

2021年は140冊を越す本を読むことができました。今年
も楽しめる本を1冊でも多く紹介出来れば良いと思います。 

気に入った本があったら読んでみて下さい。

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