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* * * 読書雑記(2023年) * * *
「サバキスタン(3)」を読了しました。完結編だそうです。
巻末に訳者の解説が付いていますがなかなか単純には理解が追
いつかないかの国の一端が表現されているようです。第1巻目
では「同志相棒」と呼ばれるサバキスタン指導者の意思と同志
達との間で考える理想と現実とのギャップが描かれています。
第2巻目では全体主義体制だけではない出自の異なる同志の排
除の様子や、統一的に語ることの出来ないかの国の一面を上手
に描き出しています。第3巻目では主人公の弁護士からの視点
を通して名ばかりの裁判の実態を描き出しています。「不自由
の中の幸せ」「自由の中の不幸せ」をテーマに織り込み最後に
は自らの判断で法律という知識に基づいて決断していかなけれ
ばいけない事を示唆しているようです。
馬渕睦夫の近刊「ウクライナ戦争の欺瞞」を読了しました。こ
の本には「馬渕睦夫が語りかける腑に落ちる話」と「戦後民主
主義の正体」という2つのサブタイトルが付いています。元駐
ウクライナ兼モルドバ大使である著者はマスコミの語る表面の
状況解説に留まらない歴史の裏面を説得力のある言葉で描き出
してくれます。1章から3章まではウクライナ戦争の舞台裏の
解説です。堕落した民主主義は共産主義に向かうという指摘は
一聴の価値があります。第4章の「ネオコンが世界に戦争をま
き散らす」というのも重要な指摘です。第5章〜第7章ではケ
ネディ大統領暗殺事件の不可解や中国巨大市場の行方、朝鮮半
島の動向、戦後レジュームからの脱却などがテーマとして取り
上げられています。この著者による既刊「ディープステート・
世界を操るのは誰か」も併せて読むことをお勧めします。
「サバキスタン(1)」「サバキスタン(2)」を読了しまし
た。著者はロシアの漫画家ビタリー・テルレツキーです。かの
国の漫画家が犬が主人公とはいえ、自国のあからさまな風刺漫
画を描ける事に正直吃驚です。漫画の技術としては決して高い
とは思えませんが一読の価値あるこの漫画を読まない手はあり
ません。
「青瓜不動・三島屋変調百物語九之続」は宮部みゆき創作の百
物語シリーズの第九弾です。本タイトルのメインの作品の他に
「だんだん人形」「自在の筆」「針雨の里」の3作が納められ
ています。百の物語に達するのはまだまだ先のようです。主役
は三島屋の小旦那である富次郎ですが、今回の作品は前任の聞
き役であるおちかが子どもを産む前後の4つの話が収められて
います。暗い話が多いとのレビューが多いですが確かにその通
りかなあと思います。ともあれ手練れの筆者の描く時代物は気
軽に読めて、なおかつ安心して読み進められます。
ジェフ・ホワイト著「ラザルス」は世界最強の北朝鮮のハッカ
ー集団の実態に迫る意欲作です。破綻国家である北朝鮮が何故
核開発を進められるのか、偵察衛星打ち上げを成功させる程の
技術と資金はどのように調達しているのか、この本を読むとそ
の一端が理解出来ます。高品質の偽造100ドル札製造、ソニ
ー・ピクチャーズ社の内部データ流出事件、バングラデシュ中
央銀行のハッキングによる10億ドルの資金強奪計画、ランサ
ムウェア拡散によるロンドンの複数の病院を含む世界150ヶ
国にある約23万台への大規模サイバー攻撃・データのスクラ
ンブル化、ビットコイン・暗号資産などの強奪・マネーロンダ
リングなど様々な事件の裏には北朝鮮のエリート・ハッカー集
団が関係していると著者は語ります。因みに北朝鮮のハッカー
集団はこの一つだけではなく「キムスキー」「ビーグルボーイ
ズ」などの集団などが知られているそうです。一読の価値ある
レポートとなっています。
百田尚樹「人間の業(ごう)」を読み終えました。新潮新書で
220ページ程の小冊子です。2021年から2022年まで
のメルマガを纏めたものだそうです。世の中に溢れているしょ
うも無い犯罪や行動などについて著者の持論、コメントが述べ
られています。頷けるものが大半ですが、それはどうかという
ものも無くはありません。ともあれこの様な本がシリーズとし
て4冊も発行されているという事は何とも残念な世の中という
事です。因みに既刊3作は『偽善者たちへ』『バカの国』『ア
ホか。』です。個人的には3冊とも既に読んでいます。
北野勇作「100文字SF」は著者の既作品2000篇の中か
ら200篇を厳選して纏めた一冊だそうです。1つが約100
文字(1ページ)で完結するので非常に読みやすい一冊です。
著者は似たような本を何冊か出していますが、読んだ事の無い
方は「100文字SF」がどんなものか判りにくいと思います
ので、以下に私が気に入った一話だけ参考に載せておきます。
『夏が終わっていろんなものが死んでいく。彼らにとっての夏
の終わりは自分の終わりで、同時に世界の終わりでもあるのだ。
一方、死んだように眠って世界の終わりをやり過ごす者たちも
いて、我々はそちらを選ぶらしい。』
武田了円「死にゆく日本眠ったままの日本人」は所謂トンデモ
本だろうと個人的には思っていますが、なかなか説得力のある
内容もあってかなり楽しめる一冊です。色々な物事を見る際に
少しは疑うことも必要であるという知見を与えてくれる面もあ
るので全てを信じるのではなく、そういう見方もあるのだろう
という取捨選択が必要です。内容は選挙システム、阪神大震災
、オウム事件(松本サリン、坂本ビデオ問題、地下鉄サリン、
警察庁長官狙撃事件、村井秀夫刺殺事件)、青島東京都知事選
挙、横山ノック大阪府知事選挙などから成ります。因みにこの
著者による「悪魔の邪望」は最近亡くなった創価学会の支配者
である池田大作氏について丹念に解読した大作です。
ハン角斉著「67歳の新人・ハン角斉短編集」はヒコロヒーが
書評で絶賛していた本です。早速、購入して読んでみました。
6話から成る210ページ程の短篇マンガ集です。上手いのか
下手なのか判らない特異な描法ですが、ストーリーの方はそれ
に反して独特な発想と展開が異彩を放ちます。例えば第五話の
「案山子峠」は『案山子の精霊に人生をかける母親の物語』で
すがその発想自体がユニークで不条理で特異性が光っています。
養老孟司の新刊「老い方、死に方」を読了しました。PHP新
書で220ページ程です。禅僧、ゲノム研究者、地域エコノミ
スト、小説家の4名との対談集です。養老孟司が聞き役に回っ
ている事が多く、どちらかというと対談相手の主張が主に紹介
されている感じです。主な内容は以下の通りです。第一章の禅
僧との対談テーマはキリスト教と僧侶の修行、諸行無常、死の
受容などです。第二章のゲノム研究者との対談テーマは寿命の
壁、老化のメカニズム、AIやメタバースと不死など、第三章
の地域エコノミストとの対談テーマは里山資本主義、少子化、
過疎、昆虫の減少などです。第四章の小説家、阿川佐和子との
対談テーマは老衰、日本社会に合った介護、認知症などです。
色々な見方や基礎情報を知るのに良い入門書だと思います。
岩谷テンホー「大盛!!みこすり半劇場2023秋」読了しま
した。このシリーズは最近は春、秋の年2回発行となっていま
す。300ページ余で1ページに概ね2話の四コマ漫画が掲載
されていて税込み572円なので1話が約1円と格安の値段で
下ネタお笑い四コマ漫画が楽しめます。駄洒落も随所にちりば
められていますが、今回は秀逸な駄洒落が少なかった様です。
P292の「父の仇」が一番笑えましたが、リバイバルで掲載
されていたP147の「パシュート」には遠く及びません。
ハート出版「國民禮法・復刻版」を読了しました。動物行動学
研究家の竹内久美子が自著で紹介していた本です。米国GHQ
が日本を占領していた時に廃止した「修身」の教科書である『
国民礼法』の小学校3年生から6年生までのものを現代仮名遣
いで復刻したものです。お行儀、お客様のお見送り、近所に対
する心えから神社の参拝の仕方、座り方、国歌に対する礼法、
戸や障子、ふすまの開閉、公衆衛生の心得、訪問、応接、服装
、贈物などの心がけや仕方など日本人としてあるべき礼法や所
作、心がけなどが分かり易く書かれています。最近は「道徳教
育」の復活が言われていますが、『国民礼法』を現代の生活様
式に合わせて焼き直しても十分有用だろうと思われます。読ん
でみる価値のある一冊だと思います。
コリン・デクスターの有名な推理小説の一つである「カインの
娘たち」を読み終えました。ハヤカワミステリです。主役のモ
ース主任警部が殺人事件の容疑者をあぶり出していく課程は二
転三転してどこに着地点があるのかわくわく感は最後まで楽し
めますが、ジェフリー・ディーヴァーの推理小説などと比べる
と科学捜査の観点はほぼ無視されて、モース警部の感だけが突
出し過ぎている点で内容を混乱させているような気がします。
本書のP233には、『エジプト人は”5961、6480、
8161”についてすべてを知っていた』という三平方の定理
についての記述がありますが、わざと誤ったのか誤植なのかこ
れは誤っています。紀元前1800年ごろのバビロニアの粘土
板にピタゴラス数を示す記述としてあるのは、3辺の長さの表
(例えば 4961、6480、8161 のようなもの)であ
り最初の数は4961です。実際に計算してみれば判りますが
4961の二乗+6480の二乗=8161の二乗となります。
なお、私が読んだのは1995年初版です。
竹内久美子の2023年6月初版発行の「なぜモテるのか、さ
っぱりわからない男がやたらモテるワケ」を読み終えました。
最近の著者の発言はますます過激になって来たなというのが、
この本を読み終えた時に感じた最初の印象です。以前は動物行
動学のあれこれを要約して簡潔に我々に提示してくれる生物好
きにはとても楽しく為になる本を毎回提供してくれる著者だと
いう印象でしたが、その作風を「科学者では無い」などネット
などでかなり批判されたりした様で、その反動なのか最近は世
間に溢れている各種の言動(特に反日勢力)に対しての批判と
も取れる発言が目立ちます。たとえば作家の島田雅彦氏が本年
4月に安倍元首相の暗殺事件に対して発言した「いままで何ら
一矢報いることができなかったリベラル市民として言えばね、
せめて『暗殺が成功して良かったな』と。まあそれしか言えな
い」に対しての顛末、批判を本文P62から延々6ページにも
亘って行っています。また、村上春樹氏は未来永劫ノーベル文
学賞を受賞しないという小見出しでの記載では、村上氏の著作
『騎士団長殺し』の中での登場人物のセリフとして『「南京事
件」について、犠牲者が四十万人とも十万人とも言われる大虐
殺事件だった』と言わせている点を取り上げて指摘しています。
確かに史実では無いプロパガンダを再拡大するような村上氏の
文中でのセリフには疑念が付き纏います。竹内久美子の近年の
著作では話題が昔に比べて相当広範囲になって現代社会風俗に
も及ぶようになった事も一つの特徴です。いずれの話題も事実
を踏まえた上で、動物行動学的にはどの様に判断出来るかとい
う視点での論考なので、それはそれで十分読み応えはあるもの
と個人的には感じています。養老孟司が解剖学的手法を用いて
現代社会、風俗、歴史を斬る手法と基本的には同じです。
百田尚樹「雑談力」読了しました。PHP文庫で280ページ
ほどの小冊子ですが「相手の心をつかみ、楽しませるネタと技
術」を伝える内容は必要十分で、即効性がある内容となってい
ます。本当に面白い話は『相手が興味を持っている話題』では
なくて『話し手が一番興味のある話題』であるなどは判り易い
箴言です。この本は21万部のベストセラーだそうです。
「世界がさばく東京裁判・改訂版」を読み終えました。サブタ
イトルは「85人の外国人識者が語る連合国批判」です。東京
裁判開廷五十周年に当る1995年に刊行された書籍の改訂版
です。刊行から既に30年近くが経っていますが、依然として
我が国には東京裁判史観に捕われた国民意識が蔓延している様
に思われます。本書では外国人識者の多くが東京裁判の違法性
や連合国の戦争責任を追及する声を上げていますが、残念乍ら
国内での機運は盛り上がらないまま現在に経っています。分か
り易く論点が纏められていますので憂国の徒は是非とも本書を
一読戴きたいと思います。本書の序には以下のように記載され
ていますが同感です。『我が国民は戦勝国の世論操作によって
洗脳され、いまだに裁判の真相を理解していない。これを是正
せぬ限りわが民族の精神的独立は回復しがたい。』
原田マハ「リボルバー」読了です。幻冬舎文庫350ページ程
の小説です。著者は史実を踏まえた創作に定評がありますが、
「ゴッホが自殺した時に使われたリボルバー」をめぐるアート
史上最大の謎に迫る本書は、正にその手腕が十分に発揮された
一冊と言えると思います。誰が引き金を引いたのか、使われた
拳銃はどこにあるのか、犯行の動機は何かなど美術評論家とし
ての経歴を踏まえた上で、作家としての原田マハがミステリ仕
立ての推理を展開していきます。手練れ作家による逸品です。
竹田恒泰/呉善花「日本のどこが好きですか」読了です。とは
言っても良く見たらこの本は「日本人て、なんですか?」とい
う本を改題、改定した本なので実は10年ほど前に読んだ事の
ある本です。本書では多岐に亘る対談が行われています。本の
帯にある内容一覧の一部を以下に示します。『日本の天皇、韓
国の大統領/女の霊力と女神信仰/権威への崇敬と権力への服
従/物を生き物のように扱う日本人/ここが違う韓国と日本の
礼儀正しさ/軸は一つの韓国、一つの軸にとらわれない日本/
もてなしとホスピタリティはどこが違うか/結果よりもプロセ
スを大事にするのはなぜか』
櫻井よしこ/ケント・ギルバートによる「憲法を今すぐ改正せ
よ」はビジネス社から2022年11月に刊行された近著です。
戦後レジームから未だに脱却出来ていない我が国に対する先学
者2名による警告の書です。覇権政策を続ける中国に加え未だ
に憲法のしがらみに捕われている我が国は、防衛対策が不十分
なまま、年々地政学的危機が高まりつつあります。この本では
平和憲法について、核兵器の脅威について、悪の枢軸国、政教
分離の解釈について、公職追放の影響、占領政策について、神
道指令、男系男子、小沢政治の終焉、岸田政権など広範な論点
について議論がされています。傾聴すべき内容満載です。
丸谷才一(編)「作家の証言・四畳半襖の下張裁判・完全版」
読了です。永井荷風作とされる有名な「四畳半襖の下張」につ
いて猥褻とは何かが法廷で真剣に争われた記録です。被告人で
ある野坂昭如、特別弁護人の丸谷才一をはじめ五木寛之、井上
ひさし、吉行淳之介、開高健、中村光夫、金井恵美子、石川淳
、田村隆一、有吉佐和子など著名な作家や評論家が証人となっ
て弁護に当たっています。判り易く真摯に「四畳半襖の下張」
が猥褻に当たるのかどうかを様々な観点で語っています。勿論
巻頭には金阜山人戯作「四畳半襖の下張」も掲載されています。
本書は弁護人の証言が主体で構成されていますが、後半には参
考資料という形で細かい字で50ページ余に亘って供述調書や
起訴状、検察側の陳述書、判決文などが掲載されています。大
いに残念なのは弁護側の主張に対して検察側が殆ど真摯に回答
することを避けて、昭和25年の「四畳半襖の下張」裁判判決
や昭和32年の「チャタレイ」裁判などの判例を引き合いに出
すに留め、昭和51年〜54年の一審、二審裁判時点において
「猥褻」とは何かという事について判断基準を殆ど示していな
いことです。被告人側は上告しましたが昭和55年に最高裁が
これを棄却したので、「四畳半襖の下張」は現時点でも猥褻文
書扱いのままです。なお、有名な「チャタレイ夫人の恋人」も
昭和32年に最高裁で上告が棄却されていますが、1973年
に講談社文庫から削除部分の無い完訳が刊行されています。
「二十歳に還りたい。」は同名の映画の公式ガイドブックです。
幸福の科学が作っている映画なので宗教色は拭いきれないでし
ょうが映画にも期待したいと思います。因みに私は個人的には
党員でも無く、信者でもありません。ガイドブックにはストー
リー紹介に加えて登場人物の紹介、出演者へのインタビューな
どが記載されています。
薬丸岳の夏目信人シリーズに嵌って第一弾、第二弾に引き続き
第三弾の「刑事の約束」を読み終えました。短篇5編で構成さ
れています。無戸籍児童に絡む殺人事件を扱う物語、自殺未遂
の後遺症で眠り続ける婚約者の復讐劇を扱う物語、殺人容疑者
の最後のダイイングメッセージから真実を暴き出す物語、ケア
マネージャーを階段から突き落とした老人の真の心根を説き明
かす物語、拒食症の娘の母親の他殺事件に絡む物語など幅広い
題材が扱われています。物語の最後では夏目刑事の娘が植物状
態から復活する姿もみえて、事件だけで無いシリーズ物語の醍
醐味も味わえます。
薬丸岳の夏目信人シリーズのミステリ「その鏡は嘘をつく」を
読み終えました。本書は「刑事のまなざし」に続く第二弾で初
の長編です。テレビドラマ「必殺仕事人」の主役ではありませ
んが、昼行灯とまでは行かないが刑事らしくない刑事である主
人公の夏目刑事に加えて、切れ者の志藤検事が登場して事件解
決に本領を発揮します。本書は殺人事件、暴行事件、通り魔事
件、痴漢捜査などの捜査軸を追い事件解決に向かう側面で外科
医のスキャンダルに端を発する医療のあり方を問う告発小説と
いう側面も描き出すという極めて重層的な構成となっています。
正調社会派ミステリです。
薬丸岳の「刑事のまなざし」は講談社文庫から発売されている
夏目信人シリーズのミステリ短編集です。全7編が収録されて
います。通り魔によって幼い娘を植物状態にされた主人公夏目
は、法務技官の仕事をしていたがこの事件をきっかけに三十歳
で刑事に転職した異色の経歴の持ち主です。本書では刑事らし
く見えない主人公が「ちょっとした違和感を捉える洞察力」を
発揮して事件を解決していく掌編が楽しめます。
ヴァネッサ・スプリンゴラ著「同意」を読了しました。本書は
2020年1月に刊行された、フランス文学界並びにフランス
では著名な作家ガブリエル・マツネフ(本書中での通称”G”
)告発の書です。小児性愛者の被害者が後年、その体験を告発
するという内容も衝撃的ですが、何と言ってもGの快楽主義的
な振る舞いやその著作を礼賛、擁護して来たフランス文学界に
一石を投じた波紋がフランス文学界を震撼させた影響は大きか
った様で、本書が出版されるや否やマツネフの書籍販売を中止
しパリ検察庁が未成年者に対するレイプ罪の疑いでマツネフへ
の捜査を開始するなどの事態に発展した様です。日本ではマツ
ネフの翻訳書は出版されていない様で、この本が話題となる様
な事はなさそうですが、ジャニーさんの性加害問題がマスコミ
で連日取り沙汰される風潮の中で、文学書として日本でこの本
が翻訳刊行された事を奇貨として一読してみる価値はあるかと
思います。
フランス文学者である奥本大三郎が勢力を傾けて書いた「ラン
ボーはなぜ詩を棄てたのか」は新書260ページ程の小冊子で
す。昔、新潮文庫で「ランボー詩集」を読みましたが、やはり
この著作でもランボーの言っている意味を捉える事は出来ませ
んでした。難解過ぎて完敗です。「ランボーはなぜ詩を棄てた
のか」と「ランボー詩集」とを比べてみてみるとその翻訳の違
いが相当に大きい事が判ります。翻訳が悪かったから昔の「ラ
ンボー詩集」が理解出来なかったのかと思いたかったのですが
ランボーは難解なので理解しようとしてはいけず、感じるだけ
で良いという意見もあるそうです。奥本大三郎が描く本著では
ランボーとランボーの崇拝するボードレールの著作とを比較し
て解説している部分が多くあります。例えば『ここまで引用し
たボードレールの詩によって明らかなように、彼の「飲む」と
いう語は、ほとんど常に眼と対になって使われており、詩人は
女の眼の中に「飲む」。』や『ボードレールの「髪」の中のひ
さごやオアシスの比喩は、「放浪者メルモス」のそれをそのま
ま引き継いだものという気がする。』など延々と説明がされて
いますが結局よく理解が出来ないままです。それでも興味のあ
る方はぱらぱらとページをめくってみて下さい。世の中には理
解出来る人や感じ取れる人が少なからずいるからこそランボー
の詩が未だに評価されているのだろうと思います。
渡部昇一/山正之の対談「渡部昇一の世界史最終講義」を読
み終えました。既に安倍首相は凶弾に倒れ、トランプさんは訴
追されるという時代に様変わりしていますが、この本はまだお
二人が意気盛んで論客の渡部昇一先生もご健在だった2017
年以前の対談です。世界情勢、それも主として米国の思惑を大
局から俯瞰して、日本の将来を考えるために必要な冷静なアド
バイスを与えてくれる、憂国の徒にとっては必読の書と感じま
した。元々、歯に衣着せない物言いの2人ですが、この書籍で
は特に米国、中国に対する忖度の無い直球勝負の言説が目立ち
ます。「最終講義」というタイトルに恥じない数多くの提言が
なされています。グローバリズム、ユダヤ人問題、難民問題、
人種問題など広範な視点を持ち得ていない我々一般人にとって
は講義内容に理解が追いついていかない部分も多くありますが
大凡の言い分は理解出来る様にも思います。多くの人の目に触
れることで啓蒙を与えてくれる本だと思います。本論も勿論読
み応え十分ですが、山氏による終章(あとがき相当)も朝日
、NHK、GHQなどの関係性や問題点が要約されており判り
易い内容となっておりお薦めです。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界20」を読了しまし
た。内容は藤沢周平『霧の果て・神谷玄次郎捕物控』のガイド
ブックです。全35ページという小冊子ですが登場人物の相関
図、ストーリーマップ、名場面の抄録、主人公の仕事である「
定町廻り同心」の解説、「ウンスンカルタ」の説明など要点を
押さえた編集となっていて過不足はありません。この様な解説
書(ビジュアル小冊子)は発売当時に全冊購入しておかないと
後から入手することは困難ですが、このような有用なガイドブ
ックは品切れにせずに是非ともいつでも購入出来るようにして
欲しい所です。
スティーヴン・J・グールド「個体発生と系統発生」を読了し
ました。本書はハードカバー大判649ページ程もありますが
ぎっしりと詰まった本文560ページに加えて更に細かい原注
20ページ余などから成っており読み進めるのは大変です。日
本語版が出てからも既に35年以上も経っており進化発生生物
学も進化しているため内容に古びた所もありますが、発生と進
化の歴史を丹念に解説した本書自体の価値が落ちることはあり
ません。本書は内容も含めて決して読みやすくはありません。
理解仕切れない様な難解な部分も多いですが、生物進化に興味
のある方には是非手に取ってみて戴きたい一冊です。
佐々涼子「エンド・オブ・ライフ」は「いわた書店」が選んで
くれた一万円選書10冊の中で唯一未読だった最後の一冊です。
終末期のありかたを考える際に参考となりうるようなノンフィ
クションの物語です。300ページ余の本ですが読み進めるの
に苦にはなりません。この本の良いところは著者の主観を読者
に押しつけないことです。ありのままを読んで、我々がどの様
に感じて終末期を考える一助とするかが委ねられています。我
々の様な年寄りだけでなく、感心のある若者が読んでも得る所
のある本だと思います。
著者の佐々涼子が昨年2022年11月に悪性の脳腫瘍と診断
され、3回の手術を受けたことを今年8月末の新聞記事で知り
ました。まだ55歳です。「エンド・オブ・ライフ」を読んだ
直後のこのニュースは衝撃的でした。改めてこの本を推薦して
おきます。
大月書店刊「ユートピアとしての本屋・暗闇のなかの確かな場
所」は毎日新聞の書評を見て購入した本です。著者は差別やヘ
イトを助長する本や歴史修正主義に加担する本は置かないこと
をポリシーとした本屋を営んでいるそうです。その考え方の根
底として「人権を尊重する」ことや「表現の自由」を上げてい
ます。それだけ聞くと極めて真っ当な考えのもとに頑張ってい
る本屋の様にもみえますが、著者の言う歴史修正主義とはどう
みても極めて偏狭な考えに基づいたものであり、現在ではそれ
自体が多くの証拠や証言によって「歪曲された歴史」である事
がほぼ立証されている「南京大虐殺」やいわゆる「従軍慰安婦」
などを、実際にあった歴史的事実とまで言い切っています。こ
のような著者の描くユートピアとはどのようなものなのか判り
ませんが、古い人間としては「地上の楽園」と呼ばれた北朝鮮
や、ジョージ・オーウェルの描いたディストピア小説「198
4年」などを思い浮かべてしまいました。現実には決して存在
しない理想的な社会を掲げ現実社会と対峙させ、現実への批判
を行うというユートピアの一定義からすれば、この本のタイト
ルは間違っていないのかも知れません。しかし残念ながらこの
本では、何が定まった歴史なのかの言及は一切無く、更にはど
の様な本の品揃えをするのかについても詳しい説明はせずに「
考え方は個人の自由」と本書中の各所で言及しています。「ユ
ートピア」の一面としては格差がない代わりに人間の個性を否
定した非人間的な管理社会といった色彩もあって、決して自由
主義的では無いという一面もあります。特に本書中で気になる
発言としては、たとえば「私たちの生活が苦しいのは私たちの
怠慢や無能のせいではなく、政治/環境の不具合が原因」「日
本の社会全体が搾取の構造になっている」「日本社会全体が差
別・支配・搾取構造で成り立っている」「差別やヘイトに関わ
る問題においては中立=正しいではない」といった箇所です。
いずれも誰かの政治的発言で聞いたような言葉です。個人的に
はどんな人がどんな理念で本屋を運営しようと、その本を評価
して評論をする人も個人の自由で勝手ですが、解せないのはそ
れだけ偏った思想の書評を大新聞である毎日新聞が書評として
取り上げて紹介している点です。明らかに誘導の意図がある様
に思えてしまうのは私だけでしょうか。この本に対する書評を
ネットでも探してみましたが否定的意見が1件だけでした。
原田マハ「原田マハ、アートの達人に会いにいく」読了です。
33名にも上るアート関係者との対談内容が綴られています。
作家やマスコミに登場するような有名人物、例えば美輪明宏、
ドナルド・キーン、鹿島茂、池田理代子、藤森照信、山田洋次
安藤忠雄などについては名前だけは判っても、美術との関わり
についてはこの本で初めて知ることが殆どです。また、東京都
写真美術館館長やら国立西洋美術館長、大原美術館理事長、兵
庫県立美術館館長、冷泉家常務理事、京都国立博物館館長、ポ
ーラ美術振興財団理事長などなどについては聞いてみて初めて
その経歴なり、業績なり、美術との関わり、考え方などが判り
興味深い内容が満載です。様々な美術的考え方を持った錚々た
るメンバーに対して的確な受け答え、対談を卒無くこなす著者
には賛辞を送りたいと思います。キュレータとして活躍されて
いた著者の知識、ノウハウが半端な量では無い事が窺えます。
おそらくこの著者でなければなしえない貴重な対談集だろうと
思われます。
北野勇作「納戸のスナイパー」はネコノス文庫から発行されて
いる僅か200ページ程、一話100文字程の所謂SFです。
とは言っても個人的にはSFっぽくは無いなあとは思っていま
す。星新一のショートショート風な味わいも多少感じられます
が、それとも一線を画しています。表題作もなかなか味わい深
いですが、この一冊には狸が主役となった掌編が多く納められ
ています。作品を生み出すのは大変だと思いますが、一冊千百
円(税別)という値段は大分高いです。
変見自在セレクション「新聞は偉そうに嘘をつく」を読了しま
した。著者は産経新聞ジャーナリストの高山正之です。本書は
変見自在シリーズの2005年〜2020年のコラムの中から
テーマに沿った30編程を編んだものです。章立ては「わが青
春の社会部記者時代」「ヒコーキ記者の矜持」「特派員の目で
見た世界と日本」「やっぱり朝日の記事は奥が深い」の4章か
ら成っており、内容がぎゅっと詰まった一冊です。
北野勇作「ありふれた金庫」は新聞の書評を見て購入した文庫
です。100字シリーズだそうで、一話が100字程度で出来
ている変わった本です。確かに俳句のような短い文芸もあるの
で100字あれば十分かも知れません。著者はSF風のものを
纏めた本だと言っている様ですが、SFだとすればかなり広義
のSFです。個人的には『100字による思想の実験』なので
はないかと感じました。シリーズ物ということで他にも既に何
冊か同様の本が刊行されているようです。
宮部みゆき「ぼんぼん彩句」を読み終えました。著者の仕事仲
間を通じた俳句の会で生まれた俳句をタイトルにして原稿用紙
30〜40枚程度の短編小説を書くというアイデアから生まれ
た一冊だそうです。12編の俳句とその句を生かした短篇12
編が納められています。ほのぼのとしたストーリーだったり、
推理小説的な物だったり、現代の風俗を織り込んだものや、ホ
ラーめいたもの、怪談風なもの、情緒豊かなお話、怖い絵本を
小説にした様なもの、ショートショート風な味わいを持ったも
のなど様々なバリエーションの小説が楽しめます。
中野信子「脳の闇」読了です。商品解説には『ブレない人、正
しい人と言われたい、他人に認められたい――集団の中で、人
は常に承認欲求と無縁ではいられない。ともすれば無意識の情
動に流され、あいまいで不安な状態を嫌う脳の仕組みは、深淵
にして実にやっかいなのだ――自身の人生と脳科学の知見を通
して、現代社会の病理と私たち人間の脳に備わる深い闇を鮮や
かに解き明かす。五年にわたる思索のエッセンスを一冊に凝縮
した、衝撃の人間論!』とあります。著者が読者受けではなく
本音で書いた一冊の様です。章タイトルは、承認欲求と不安、
脳は自由を嫌う、正義中毒、健康という病、ポジティブとネガ
ティブのあいだ、やっかいな「私」などです。個人的に気にな
った言葉は以下のような箇所です。『あいまいにしておくとい
う解決法を持っておくのは極めて重要なことである。』『たと
えば護憲という言葉は美しく誰もが正しいと一見感じてしまい
そうな響きを持っている。だが、だからこそこれが一種の思考
停止装置として機能して適切な議論が行われなくなってしまう
という事態が生じかねない。』『カニッツァの三角形の例え』
奥本大三郎の近刊「箱の中の羊」を読了しました。著者にして
は珍しいフィクション(小説)3篇です。書籍のタイトルにも
なっている「箱の中の羊」は歳をとってから授かった双子を巡
る子育て日記といった体で書かれたものですが、著者本人の実
話なのでは無いかと思われる様な状況設定がされていて、思わ
ずネットで著者の家族に双子がいないかなどを検索してしまい
ました。2話目は「虫ムシ詐欺」というタイトルですが、これ
も主人公の設定が著者に非常に似通った部分があり、思わず実
話かと思わせられる様な興味を引く物語です。3話目は「忘れ
得ぬ人々」です。某際学フランス文学科のゼミ室が舞台の物語
です。どうしても著者に重ねて読んでしまう所があります。
画家の東山魁夷の随想「風景との対話」は新潮選書からの発行
です。どこかの番組で原田マハが推薦していた本です。画家と
して認識されるようになってから20年ほどの期間における活
動の記録というよりは自然との対話についての記録が綴られて
います。関連する作品も章扉などに掲載されていますが、サイ
ズが小さくてモノクロなので本当は実際の作品の載った絵画集
などを手元に置いて眺めたい所です。おだやかな気持ちで読む
ことが出来ました。
百田尚樹「成功は時間が10割」は新潮文庫200ページ程の
小冊子です。コンパクトに纏まっているので時間の大切さが章
を追っていくだけで良く判ります。著者の主張で面白いなと感
じた点はいくつかありますが、例えば『窃盗犯の量刑は、単純
に金額の多寡で決めるのではなく、被害者の資産、あるいは稼
ぐ力によって決められるべきなのです。』といった被害者視点
の論点です。殺人などの凶悪犯に対する量刑についても昔に比
べて相対的に軽くなっているという指摘を著者はしています。
永山基準によって2人以下の殺人では死刑にはならず、被害者
は一生を奪われたにも関わらず、犯罪者は恵まれた刑務所環境
の中で終身刑もなく有期だと通常は最長でも20年の懲役とい
うことになっていますが、明治40年に現行の刑法が出来た時
の日本人の平均寿命は44歳だそうでその時の刑期からみれば
罪を犯した後は、ほぼ終身刑務所で暮らすということになって
いましたが、現在のように寿命が80歳を超えていたら殺人者
には刑期を終えてもまだ十分に長い人生が残っていることにな
ります。一般人の量刑に関する違和感の解消の一手段として裁
判員制度が導入されましたが、これも単純に2審で判決が覆さ
れる例が多く現行の裁判制度に対するモヤモヤは解消されてい
ません。そんな論点に着目してこの本を眺めてみればより一層
この本が役立つものと思われます。
結城彩雨「人妻と飢狼」を読み終えました。フランス書院文庫
のアダルトシリーズ物です。挿画は楡畑雄二です。個人的には
挿絵画家としては笠間しろう押しでこの著者の描く絵画は文藝
だとの認識ですが、一体どこまでが芸術でどこからが猥褻なの
か未だにその基準がよく判りません。同じフランス書院文庫の
シリーズの中にも笠間しろうが挿絵を描いているものもありま
す。写真集などでも葉月里緒奈の写真集を皮切りにヘア露出物
でも猥褻扱いではなく近年では芸術扱いです。また少し古いで
すが荒木経惟の写真集や芸術論などは文藝扱いされています。
そう言った意味で、丸谷才一編集「作家の証言・四畳半襖の下
張裁判完全版」などはいずれ読んでみたいと思っています。
養老孟司/名越康文「ニホンという病」は2023年5末発行
の新刊です。養老孟司の本は対談が非常に多いですが、養老氏
の良さを引き出せている対談が少ない印象があります。この本
でも対談相手の精神科医の名越氏と進行役が持論を展開するだ
けで養老氏の話を深掘り出来ていなかったり、話がそれた先に
養老氏の独自性が発揮されるような場で、話を本筋に強引に戻
してしまったりして話の腰が折れるような場面が見られます。
そのため全体的に話がポキポキ折れてしまっているような印象
がします。この本で一番楽しめた箇所は各章末にあるコラムで
す。特に第3章末にある『富士山麓昆虫調査』は興味深い内容
でした。酒匂川の沖積地には普通にいる虫がいなかったり忍野
八海にある神社では周りと違う昆虫が捕れるというような他愛
もない話ですが、虫の定着スピードとプレートの動きによる地
層の出来方とがどこかでリンクしているのではないかという仮
説は面白いなと思いました。
読みたいと思って購入しても分厚すぎて、後で読もうと本棚に
置いたままでそのまま眠ってしまっている本がかなりあります。
スティーヴン・J・グールドの「個体発生と系統発生」649
ページ、同「進化理論の構造1・2」806+1098ページ、
春日井邦夫「情報と謀略・上下」468ページ+579ページ、
「野村胡堂伝奇幻想小説集成」507ページ、ミハイル・S・
ヴォスレンスキー「ノーメンクラツーラ・ソヴィエトの支配階
級新訂・増補」744ページ、馬場金太郎「昆虫採集学・新版」
812ページなどなどです。今回、やっと重い腰を上げスティ
ーヴン・J・グールドの名著「個体発生と系統発生」を読み始
めました。日本語版が出てからも既に35年以上も経っており
進化発生生物学も進化しているため内容に古びた所もあります
が、発生と進化の歴史を丹念に解説した本書自体の価値が落ち
ることはありません。小さい字も多く余白も少なくびっしりと
書かれている本書は内容も含めて決して読みやすくはありませ
んが進化に興味のある方は是非手に取ってみて下さい。
会社勤めをしていた頃の仲間から「文豪たちの悪口本」が面白
いと勧められて早速読んでみました。昔の文士はアクが強くて
個性的です。本書には太宰治、志賀直哉、夏目漱石、芥川龍之
介、菊池寛、永井荷風、宮武外骨、谷崎潤一郎、佐藤春夫など
錚々たるメンバーに纏わる悪口の数々が登場します。文壇に少
しでも興味のある人であれば面白くない訳がありません。この
文壇の時代は自伝や私小説も流行で生活そのものを執筆した文
学も多くあからさまな言動も飛び交って赤裸々な言葉が今に伝
わっています。この本はそんなあれやこれやを当事者双方から
拾い集めて一層際立たせたもので出色の出来です。更に書簡な
や日記などを掘り起こしたり関係者の作品を読み込めば面白さ
も倍増するのではないかと思われます。今の文壇では蔭で悪口
の言い合いはしたとしても、表だって私小説ではないですがそ
れを作品として公表することはまず無いと思いますが昔は公然
と言い合いが出来る土壌があったということで冷静に考えれば
今より精神上はるかに健全だったのではないかと思われます。
今ならすぐに名誉毀損やら業務妨害やらで訴訟沙汰になる様な
第三者からみれば楽しい悪口の数々がこの本では楽しめます。
「いい加減に目を覚まさんかい、日本人!」は百田尚樹/ケン
ト・ギルバートの対談です。新品扱いのアウトレットブックな
ので定価1500円のものが740円と格安でした。内容は現
代日本が抱えている多くの社会問題、国際問題に2人が切り込
んだものです。言論弾圧、逆差別、憲法九条、北朝鮮、韓国の
反日問題、在日コリアン、慰安婦像、領土問題、中国人留学生、
尖閣問題、侵略国家・中国、メディアの問題点(朝日、毎日、
NHK他)、自虐史観教育、国体の問題、自衛隊、憲法改正な
ど様々な論点で熱い議論を戦わせています。読んでおくべき一
冊です。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界19」を読み終えま
した。特集テーマは「闇の傀儡師」です。主人公である100
俵取りの御家人の嫡男である鶴見源次郎が老中首座が使う公儀
隠密と老中田沼意次が操る闇の集団、八獄党らとの権力争いに
巻き込まれる物語です。藤沢周平唯一の伝奇小説であるだけに
留まらず武家生活、不倫、恋愛模様、政治、権力闘争、剣術な
ど様々な要素が複雑に絡み合って重厚な読み物となっています。
本小冊子では例によって人物相関図、ストーリーマップを始め
読みどころに加え、田沼意次、公儀隠密についての解説が付い
ています。
泡坂妻夫「折鶴」は待望の復刻版ともいうべき30年ぶりに文
庫で刊行された一冊で、生誕90周年出版記念第二弾で創元推
理文庫が手がけているものです。ミステリ作家、紋章上絵師、
奇術師という特異な才能を併せ持った著者の良さがよく反映さ
れた4篇の短篇が納められています。三味線を弾きながらの新
内流しとトリックを融合した「忍火山恋唄」、悉皆屋の職人が
引き起こす「駆落」、漆工が主人公の心理サスペンスともいう
べき「角館にて」、伝統工芸と人情、男女の恋愛を軸にしたミ
ステリの「折鶴」の各編です。いずれも伏線を持った上質な味
わい深いミステリ群です。いずれの作品も直木賞候補に上がっ
たものだったり泉鏡花文学賞を受賞した様な一級品の集まりで
す。
養老孟司/下重暁子の対談「老いてはネコに従え」は宝島社新
書での刊行です。猫を介在した穏やかな対談となっています。
下重氏の話の向け方が上手で対談では養老氏の生の声が良く引
き出されている好著です。もっとも内容はネコの話と虫の話が
中心ですので両者に興味の無い人には食いつきにくいかも知れ
ません。
内田洋子「モンテレッジォ・小さな村の旅する本屋の物語」は
「いわた書店」が選んでくれた一万円選書の一冊です。この本
はイタリアの権威ある書店賞発祥の地である山奥のモンテレッ
ジォ村に居を構え取材した著者による歴史ノン・フィクション
です。ニュース本屋大賞2018(ノンフィクション本大賞)
にノミネートされるなど書店員からの熱い応援を得ているロン
グセラーということでなるほど渾身の作で他に類を見ない作品
となっています。トスカーナの山奥にあるモンテレッジォでは
何世紀にもわたり村の人が本の行商で生計を立て、籠いっぱい
の本を担いでイタリアじゅうを旅した。その歴史が背景になっ
て各地に書店が生まれ、「読む」ということが広まった。著者
はわずかに生存している子孫たちを追いかけ、消えゆく話を聞
き歩き、歴史の積み重なりを感じながら、突き動かされるよう
にこの物語を書いた様です。奇跡のノンフィクションと呼ばれ
る所以です。これで選んで戴いた10冊の本の内で、未読本は
あと『エンド・オブ・ライフ』の1冊だけになりました。
武田了円「日銀券は悪魔の隠し絵」を鯉釣りの待ち時間に読み
終えました。最近はどうも不調で釣れないことが多いので逆に
読書が進みます。この本は勿論トンデモ本の一つですが、見方
によってはなかなか楽しめます。章立ては旧5円札の隠し絵、
旧10円札の隠し絵、夏目漱石の1000円札の隠し絵、新渡
戸稲造の5000円札の隠し絵、福沢諭吉の10000円札の
隠し絵、日銀硬貨(1円、5円、10円、50円、100円、
500円)の隠し絵、記念硬貨などに対する隠し絵などに分け
て詳しくデザインや隠し絵の意味などを解説しています。古本
でしか入手することが出来ませんが興味のある方は是非手に取
ってみて下さい。
恩田侑布子の俳句論集「余白の祭」を読み終えました。凄い本
です。この本の凄さは表紙のクリムト作『アデーレ・ブロッホ
=バウアーの肖像T』が象徴的に現わしているような気がしま
す。多くの人に読まれて良い本だと思います。400ページ余
の各種俳句論は重厚で読み出があります。季語論、切れについ
ての論考、現代俳句評論、名句の解析、桑原武夫「第二芸術論
」の解説、攝津幸彦論序説など幅広い論考が展開されています。
名句の解説では例えば、齋藤慎爾の「逃げ水を追いゆく/死後
の長さほど」で深い『切れ』の存在意義を指摘した上で、死後
の長さという人間の想像力の限界をどうとらえるかについて、
相対性原理から量子力学の不確定性原理、「シュレディンガー
の猫」に象徴される観測者効果にまで言及が進みます。普通の
俳句論ではそこまでの論究は決して見られないと思われます。
俳句の基本については五七五定型と切れと季語の3つの柱を明
示した上で俳句の本質論に迫ります。お勧めの一冊です。にも
関わらず残念な事は私には内容の半分も理解出来ない事です。
著者は私と同世代人の様ですが1000歩も先で華麗な俳句論
を展開し続けています。
「不倫と正義」は中野信子/三浦瑠麗によるタイトルテーマに
沿った対談です。両者とも聡明、博識であり対談は様々な論点
について判りやすく話を進めているのですっきりと内容が頭に
入って来ます。現代では巷でも不倫は珍しくなくなって来てお
り基本的には個人の問題であるにも関わらず、有名人が不倫騒
動を起こすとマスコミと多くの善良な市民はバッシングを繰り
返し、時には芸能人としての仕事や政治生命をも脅かすほどに
炎上してしまう事態がよく見られますがそれは何が原因でそう
なってしまうのかなど見落としてしまいがちな視点での議論が
飛び交います。なかなか興味深い対談なので一読してみる価値
はあるかと思います。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界18」を読了しまし
た。取り上げられている書籍は「決闘の辻」です。この本には
実在した五人の剣客(宮本武蔵他)を扱った5つの短篇集が紹
介されています。この小冊子では例によってあらすじ、人物相
関図、ストーリーマップに加えて武蔵の「五輪の書」の紹介や
柳生の兵法などが要領よく纏められています。
東京新聞出版局「山岳遭難の構図」という本を購入しました。
山岳遭難事故の分析、発生メカニズム、その特徴、ヒューマン
エラーの分析、道迷い事故を減らす為の提案、PLP法とは、
藪には入るな、道に迷った場合は上に登れは正しいか、など為
になる情報が多いですが、このような本に興味を示す人が少な
いのか、購入した本は2007年1月初版のままです。
岩谷テンホーの新刊「大盛!!みこすり半劇場2023春」を
読み終えました。4コマ漫画です。いつものように笑える4コ
マ漫画ですが、今回は大笑い出来る漫画が少なかったのが物足
りない思いです。しかし300ページ余、1コマ1円程度であ
ることを考えればとってもお安い買い物です。笑いの足りてい
ない方にはお勧めです。是非手に取ってみて下さい。
武田了円の「悪魔の邪望・創価学会の支配者から日本の独裁者
へ」を読み終えました。1994年第一刷なので約30年ほど
前の著作ということになります。個人的には武田了円の既刊5
冊はいずれも第一級のトンデモ本として認識していますが残念
な事にいずれも古本でしか入手が出来ません。以下には本の帯
にある説明を転載しておきます。これらが内容を良く示してい
ます。『このままでは日本は池田創価学会に乗っ取られる!■
小選挙区制で学会票の威力は3倍になる■惜敗率は学会流犯罪
選挙を有利にする■公費助成は公明党を救済するため■一番危
険なのは記号式投票方式だ』
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界17」を読了しまし
た。取り上げられている書籍は武家物の短篇です。具体的には
直木賞受賞作である「暗殺の年輪」に加えて「又蔵の火」「花
のあと」「竹光始末」「玄鳥」が対象となっています。今回の
特集ではお家騒動の事例が取り上げられている他、南部家の総
勢650名にも上る大名行列の隊列が紹介されていたりして興
味深いものがあります。
川口マーン惠美「復興の日本人論・誰も書かなかった福島」を
読み終えました。なかなか書きにくいテーマに正面から取り組
んで事実を伝えてくれる好著です。どうしたら良いのか、我々
に何が出来るのかなどを考えるための基礎資料として多くの方
が読むべき一冊かと思います。特に殆どメディアでは報じられ
ない原発関連で住民に支払われている賠償金、補償金による住
民の分断や復興に与える影響などは傾聴すべき内容です。また
風評被害や福島の不幸を喧伝するメディアなどについても他で
は聞くことの出来ない内容が多く明白となっています。更には
原発を巡る政府や原子力規制委員会のあり方など読むべき内容
は満載です。
養老孟司/藻谷浩介の対談「日本の進む道・成長とは何だった
のか」は2023年3月発行の新刊です。感覚的には藻谷浩介
の独特の論理の一方的主張が8割、養老孟司の里山論他が2割
といった内容で、養老孟司が単にうなずいている箇所が目立ち
ます。何だろうと思って藻谷氏の紹介をみると東大法学部卒の
弁の立つ論客の様です。折角の対談なのに養老さんの良い箇所
を引き出す気もない一方的な弁舌の内容にも結構違和感を覚え
ます。博覧強記ぶりは一見して判りますが、何か一般庶民の感
覚とあちこちずれているような気がします。残念な一冊です。
そんな中でも、養老さんの発言でちょっと目を引いたのが以下
のような箇所です。『日本は30年も経済成長していない。今
や成長といえばエネルギーを使う事と同義であるので、日本は
成長しなかった分の二酸化炭素を余分に出しても良いのではな
いか』『「ウクライナ戦争」とは政治と経済のぶつかり合い』
杉浦日向子「風流江戸雀/呑々まんが」がちくま文庫から今月
発行されました。1983年初出の「風流江戸雀」、1982
年初出の「古川柳つま楊枝」に加えて、一話を5〜7コマでの
びのびとユーモラスに描いた1984年初出の「呑々まんが」
全56篇を文庫初収録したというほんわかした笑いを誘うマン
ガが詰まった一冊です。癒やされます。
ジェフリー・ディーヴァー「カッティング・エッジ(下)」を
読み終えました。最後までどんでん返しの連続です。真の狙い
はどこにあるのか?ダイヤの原石の行方は?地震・火災・ガス
爆発の真相は何か?麻薬事件とはどのように関係しているのか
?本当の黒幕は?下巻は展開が早すぎてついつい読み進めてし
まうこと確実です。私は遅読の方ですが僅か2日で完読です。
養老孟司/山極寿一の「虫とゴリラ」を読了しました。ゴリラ
学者と虫学者の対談と言った所ですがまるで禅問答か哲学論議
をしている様です。言っている内容は判りやすいですが奥が深
い議論が詰まっています。事例の一つをあげると『たとえば太
っている人は腸内細菌のせいだということで、抗生物質を入れ
て腸内環境を変えてやったら、その人が「痩せた人」になった。
そこまでは良いが、そうしたら今度は「今出来た、その痩せた
人って何だ?」っていう疑問が生まれませんか。』『そうです
ね、実在って話だね。』という問答に端的に表れています。
ジェフリー・ディーヴァー「カッティング・エッジ(上)」を
読み終えました。文春文庫版の最新刊です。相変わらず読み応
え満点の推理小説です。宝石加工に纏わるシンプルな事件かと
思っていたら、頻発する地震や火災によるガス爆発、麻薬事件
までがオーバーラップして事件が重層化していき雰囲気が盛り
上がって来たと思ったら上巻終了です。すぐに下巻に取り掛か
らないといけません。
「66歳、動物行動学研究家。ようやく「自分」という動物の
ことがわかってきた。」は竹内久美子の最新刊です。挫折だら
けだった人生、授業を全く聞かずオール3の通信簿、常にいじ
めの標的にされていた学生時代という内容で始まる第1章です
が、養老孟司の生い立ちと一緒で単なる自慢話です。平均的な
子どもは頑張って先生の言うことを聞いていても通信簿は3だ
ということが著者には判っていないようです。優秀なるが故に
先生が論理立てて教えてくれないことに反発してボイコットし
た為に一時的に通信簿が低かった(それでも世間の標準)だけ
で、結局勉強すれば京大に入れて大学院博士課程まで難なく進
めるだけの天才児な訳です。これまで著者の書いてきた著作は
殆ど読んで来ましたが、出来としてはこの本が最悪です。著者
も66歳になってこの様な自慢話を衒いも無く書けるようにな
ったということは、少し惚けて来たのかも知れません。少し残
念な一冊です。それでも動物行動学の知識は随所に披露されて
いますので、それなりに楽しむことは出来ます。
武田了円「世界の支配者は本当にユダヤか」をやっと読み終え
ました。読むのが大変という訳ではありません。鯉釣りの待ち
時間にだけ読んでいる本なのでそもそも釣りに行かなければ読
書が進みません。一般的な分類でいえばトンデモ本の類いです
がなかなか読み応えがあります。主調は世界を支配しているの
は実は宇宙人だというものです。それに操られた各種勢力がダ
ミーとなって我々の目に見えているようです。バーコードに秘
められた謎や数字に込められた謎など様々な解釈が興味を引き
ます。もちろんユダヤ陰謀説やロックフェラーなど定番の登場
人物、団体との関係などについても色々解説されています。
小川洋子『人質の朗読会』は「いわた書店」が選んでくれた一
万円選書の一冊です。選んでくれた10冊の本の内で、未読本
はあと『エンド・オブ・ライフ』、『モンテレッジォ・小さな
村の旅する本屋の物語』の2冊になりました。因みにこれまで
読んだ一万円選書は以下の8冊です。『人質の朗読会』、『生
きるとか死ぬとか父親とか』、『猫といっしょにいるだけで』、
『もう年はとれない』、『ふたり・皇后美智子と石牟礼道子』
『同志少女よ・敵を撃て』、『月まで三キロ』、『茗荷谷の猫』
『人質の朗読会』は人質事件に巻き込まれた8人の人々が語り
明かした8日間にわたる朗読会の録音テープを紹介したものと
いうことですが、それぞれの人が辿ってきた人生の一端が淡々
と紹介される中にしみじみとした味わいが感じられます。手練
れの作者による独特の世界が構築されています。
櫻井よしこ「問答無用」は週刊新潮連載記事(2017年1月
から2018年7月)を一冊に纏めたもので2019年1月に
出版された本です。このシリーズ本としては最新刊ではありま
せんが読みどころ満載です。文科省が日本の歴史から「聖徳太
子」や維新を支えた英雄である坂本龍馬や吉田松陰、高杉晋作
などを消そうとしていたことや教科書作成に影響を及ぼす教員
らからなる民間団体によって「従軍慰安婦」や「南京大虐殺」
などの歴史上存在しなかった言葉が教科書に載せられたりする
事態が発生したこと、軍艦島の問題点、日本の国防問題、日欧
EPA、TPP問題、NHKの不明朗な資産保有、北朝鮮の核
開発問題、韓国・中国との付き合い方、憲法改正に絡む野党や
メディアの向き合い方など重要な問題を論じています。読んで
役立つ一冊です。
「渡部昇一の昭和史」を読み終えました。WAC文庫で340
ページ程とコンパクトですが中身はぎっしりと詰まっています。
明治維新、明治憲法制定の意義、日清・日露戦争の意義、なぜ
先の戦争に至ったのか、東京裁判史観、シナ事変の真相、南京
大虐殺の幻、日本外交のミスなどが主な題材です。該博な知識
や識見をもとに的確な文明批評、歴史解説を行ってくれていま
す。正しい近現代史の認識を得たい方にはうってつけの一冊で
す。朝鮮戦争を経験したマッカーサーに「先の大戦は概ね日本
の自衛のためだった」と言わせるほど朝鮮半島の赤化がいかに
日本にとっての国家的課題だったかが判りますが、戦前の日本
がいかに戦争を回避しようと懸命な努力をしていたかという事
や南京入城時の様子など貴重な情報が満載です。お勧めの一冊
です。
マイク・ハンセル著「建築する動物たち」読了です。300頁
ほどのハードカバーですが、1ページの文字数はぎっしり詰ま
っていて800文字以上もあるので読み通すのはかなり大変で
す。サブタイトルは「ビーバーの水上邸宅からシロアリの超高
層ビルまで」となっていて一見するとビーバーやシロアリの建
築物を単に紹介しているだけの自然科学の本かと思いますが、
そう単純ではありません。第3章のタイトルは「つくり手に脳
はいらない」ですが、紹介されているのは単細胞生物であるあ
る種のアメーバが砂粒で作る複雑な携帯式の家です。そこには
建築するのには、必ずしも高度な脳の進化や社会性昆虫による
集団行動が必要という訳ではなく、何かはるかに簡単な方法が
あるのかも知れないと思わせるものを示唆しています。更に、
この本で著者はドーキンス博士の提唱した『延長された表現型
』に再三言及しています。遺伝子の発現結果が、遺伝子自体の
持ち主である個体とは離れた、置き換えられた位置からも作用
しているのか著者の探求は続きます。議論の中にはオッカムの
剃刀(ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定す
るべきでない」とする指針)なども登場しなかなか深い洞察が
随所に鏤められた「動物の建築」に関する読み物です。
泡坂妻夫の「ダイヤル7をまわす時」を読み終えました。著者
生誕90年の記念出版第1弾だそうです。創元推理文庫の英断
により読みたかった絶版本が何冊か復活しそうです。この本は
300頁程の中に7編の短篇が収められています。1979年
から1985年に書かれた多種類の謎解き短篇が納められてい
て楽しめます。
「韓国への絶縁状」は高山正之の名物コラム「変見自在」シリ
ーズから韓国に関するコラムを選んで一冊としたセレクション
です。韓国の行動や言動に対する多くの疑問符について腑に落
ちる答えをこの本が提供してくれます。我々は韓国に対してど
のように付き合っていったら良いのか、付き合うのもほどほど
にした方が良いのかなど貴重な示唆を与えてくれることは確実
です。
高山正之/宮崎正弘による「世界を震撼させた歴史の国日本」
を読了しました。旧題「日本に外交はなかった」(2016年
)に大幅加筆・修正、改題したものだそうです。日本の古代か
ら明治維新、大東亜戦争、戦後政治と歴代首相関連の歴史的な
事件を外交という視点で俯瞰し評論した一冊です。聖徳太子の
外交に始まり、菅原道真、朝鮮通信使、鎖国、キリスト教追放
、五箇条の御誓文、日清戦争、日米開戦、吉田外交、慰安婦問
題における外務省の行動、ユネスコの世界遺産になった南京事
件などにおける我々の知らない歴史の真相がこれでもかと綴ら
れています。惜しむらくは読む側がそれほど広い知見を持って
いない為に論理展開について行けないケースが多々あることで
す。読むべき内容は多々ありますが、その中で特に記憶に残っ
たコメントをいくつか掲載しておきます。修辞(レトリック)、
煽動(アジテーション)、衒学的(ペダンティック)、政治宣
伝(プロパガンダ)、偽造(フェイク)。いずれも真実を直視
しないで、美辞麗句を無造作に並べるのも外交文書の特徴です。
「日本を取り巻く無法国家のあしらい方」によれば「国際政治
とは仁義なきヤクザの攻防戦」であり、中国=ヤクザ、北朝鮮
=チンピラ、ロシア=マフィア、韓国=ストーカーと規定した。
天智天皇の治世には毎年のように2000人規模の多数の船と
唐人が来日しており、200年の間に渤海からの遣日使は33
回、反対に日本からは13回の遣唐使が派遣されているそうで
文化的優位がどちらにあるのかは小学生でもわかる。キリシタ
ン大名は非キリスト教徒だという理由だけで、相手の領民を捕
虜にして、その捕虜を奴隷として外国に売った。ペリーの野望
は支那との交易のため、日本を拠点化することで鯨油というの
は口実。マッカーサーは日本をぶち壊す押しつけ憲法発布をわ
ざわざ11月3日の明治節にぶつけ「文化の日」と名付けた。
ジェイミー・ウォード著「カエルの声はなぜ青いのか?」を読
み終えました。共感覚についての最新の知見が詰まった一冊で
す。但し、色々な観点で共感覚について解析を加えているため
と、結論がある訳では無い考察も多いため決して読みやすい本
とはなっていません。入門編とは言えない内容なので既に他の
本で共感覚についてのある程度の知識を持った前提で読むのに
適した本のような気がします。判り易い共感覚の事例としては
共感覚者の43%がアルファベットのAを赤と見ており、58
%がBを青か茶に、29%がCを黄に、そして49%がOを白
と考えていると言うような記述です。πの桁の中で一番有名な
第762位〜767位までの数字999999(ファインマン
ポイント)についての共感覚者としてのイメージを捉えるのに
理解し易い箇所かと思います。
百田尚樹著「橋下徹の研究」を読み終えました。良くない本で
す。寝る前にちょっとずつ読もうと思って読み始めましたが、
止められず結局二日で読み終えてしまい寝不足です。橋下徹氏
はテレビにも良く出ていてウクライナへのロシア侵略について
もコメントしています。ロシアは当初、東部のドンバス地域で
迫害されているロシア人を解放する目的のはずだったものがい
きなり首都キーウに攻め込みウクライナを丸ごと乗っ取ろうと
し、挙句茶番の住民投票で東部他4州を勝手にロシアに併合し
た事は世界中で周知の事実ですが、橋下徹はそんなロシアを丸
ごと擁護する様な妥協案を提言していたのをテレビで見て何か
橋本さんの言い分はおかしくないかとなあと思っていましたが
この本をみて納得がいきました。本書「橋下徹の研究」の素晴
らしい所は我々の様なド素人にも判るように編集を加えずに橋
本氏の発言をそのまま提示し、適切なコメントを加えてくれて
いる所です。非常に判り易いです。私はどちらかというとこれ
まで維新の会の政策を評価しており、橋本氏の手腕も買ってい
る方でしたが、この本を読んで目から鱗では無いですが認識を
新たにしました。皆さんも是非読んでみて下さい。
週間新潮の名物コラム変見自在シリーズの第16弾となる山
正之「バイデンは赤い」を読み終えました。シリーズ最新刊で
す。2020年から2021年に掛けての社会事象に関する辛
口コラムがぎゅっと押し詰まって提供されています。一話が4
頁程のコラムですが、その短いコラムの中に更に関連する歴史
や事件、話題がこれでもかと登場して来るので読む側としても
過去の話題を知らなかったりすると消化不良を起こし理解が追
いつかない部分があります。社会の表面のみを見慣れている人
はたまにはこのようなコラムを読んで自分の考えが合っている
のか見直してみる事も大事かと思います。
「反日種族主義・日韓危機の根源」は韓国経済史研究で博士号
の学位を取得しソウル大学で教授職を勤めたのち李承晩学堂の
校長として活躍している李栄薫(イ・ヨンフン)編著による渾
身の韓国憂国の書です。韓国で出版されたものを文藝春秋社が
2019年末に国内で翻訳出版したものです。韓国人の作家と
しては既に日本に帰化している呉善花が韓国社会の問題点や風
習など様々紹介していますが、反日韓国内ではその著作は殆ど
理解されていない様なので、「反日種族主義」は韓国内でも大
きな反響があった様でこれからの韓国の動静が気になる所です。
この本では植民地時代の韓国の農業生産、韓国教科書の歴史歪
曲、強制労働の実態、朝鮮人の賃金格差の実態、請求権協定、
独島、親日清算、慰安婦問題(韓国軍、民間、米軍、日本軍)
など様々な問題について一々、詳細な歴史資料を提示しながら
従来の通説を論破、解説しています。350ページ程もある大
部の本なので読み通すのは大変ですが一読の価値はあります。
宮部みゆき「〈完本〉初ものがたり」を読み終えました。PH
P文庫です。私は最初に出た『初ものがたり』を読んだあとに
「糸吉の恋」が追加された『愛蔵版・初ものがたり』を購入し
ていますが、今回の『〈完本〉初ものがたり』ではこの「糸吉
の恋」の他に「寿の毒」「鬼は外」の2編も加えた完全版とな
っています。「初ものがたり」は茂七親分が主人公の捕物帖で
事件毎の短篇連作のような形になっています。各編の顛末の他
に稲荷寿司屋の親父の謎が全編を通じた共通のテーマとなって
いますが、実はこのシリーズの完本でもこの謎は解かれないま
まどこかのシリーズに引き継がれる様です。宮部みゆきのこの
捕物帖は過去の捕物帖の系譜を継ぐ正統な捕物帖の中でも人情
味を色濃くしたやさしい語り口が特徴です。
哲学者である土屋賢二とコラムニスト石原壮一郎による書簡集
「哲学を疑え!笑う哲学往復書簡」を読み終えました。土屋賢
二のお笑いエッセイについてはほとんど読んでいますが、気付
いた時には既に入手出来なくなっていたこの書簡集は古本で買
ったものです。石原壮一郎の著作では初期の「大人養成講座」
ものを3冊ほど読んだきりで最近のものには手を出していませ
んが斜に構えたお笑いでは土屋賢二に劣らぬ力量を発揮してい
る手練れの作家です。そんな2人の書簡集が面白くない訳があ
りません。内容はタイトル通り哲学とは何かという変わらぬ謎
を一般人に成り代わってコラムニスト石原壮一郎が哲学者に問
うという体ですが、その掛け合いはどう見てもお笑いそのもの
です。結局、最後まで哲学とは何か、哲学の意味は何かという
様な聞きたいことははぐらかされてしっかり答えてくれていな
いような気もしますが、少しは判った様な気もします。
鴨長明「漫画方丈記・日本最古の災害文学」を読了しました。
僅か150頁ほどの漫画なのですぐに読めます。養老孟司が解
説をしているということで本屋で手に取ってみて購入した本で
す。巻末には方丈記の原文全6ページがふりがな付きで付いて
いますので漫画を読んだ後にみると良く理解できます。『ゆく
河の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶ
うたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまりたるためしな
し。』で始まる方丈記の出だしは良く知られていますが全文は
なかなか読むことが出来ていないと思われます。このマンガで
は方丈記全文のストーリーに沿って、イベント毎に全11章に
分けて内容が描かれています。2章から6章までは1177年
から1185年にかけて起こった安元の大火、旋風、福原遷都、
養和の飢饉、元暦の大地震が描かれるなど現代にも通じる様な
不安定な当時の世相や人心のあり方などが描かれています。
原田マハの「20CONTACTS・消えない星々との短い接
触」を読み終えました。本書は2019年9月に清水寺で開催
されたICOM京都大会(『CONTACTつなぐ・むすぶ・
日本と世界のアート展』)の開催にあわせて書き下ろした短編
小説だそうです。なお、この展覧会自体がキュレーターとして
のキャリアをもつ小説家・原田マハが、自ら発起人となり総合
ディレクターを務めた企画とのことです。出品作家はマティス、
棟方志功、宮沢賢治、手塚治虫、川端康成などなど書籍で紹介
された20名の作品が展覧会でも展示されたようです。一週間
開催された展示会では原田マハと竹中直人や山田洋次監督など
とのトークイベントも行われた様で大規模なイベントとなって
います。原田マハの新たな挑戦です。著作の方も美術に造形の
深い手練れの作家による短篇集で十分に楽しめます。
つり人社・渓流編集部編「日曜日の狩猟採集生活」を読み終え
ました。カブトムシ採り、タガメ採取、ハチの子採り(スガレ
追い)、ザザムシ(川虫)採り、山菜採り、キノコ狩り、渓流
での魚釣り(テンカラ釣り)、野宿の手引き、カジカ釣り、チ
ャン鉄砲、アサリ穫り、マテガイ穫り、アナジャコ穫り、素潜
り漁(一日漁師証)、ホタルイカ掬い、などなど大人のための
楽しい狩猟採集手引きです。カラー写真や実際の採取風景、道
具などの説明も興味を引くもの満載です。2017年夏の刊行
ですが、誤字や間違いも満載です。200頁弱の本ですがP6
でいきなりミヤマクワガタをノコギリクワガタと紹介している
写真掲載には吃驚です。
養老孟司の新刊「ものがわかるということ」を読了しました。
ものが判るとはどういうことなのか、著者一流の答えがそこに
あります。判りやすい内容なので物足りない思いをする方もい
るかも知れませんが、丁寧に書き綴った一読価値ある一冊です。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界16」をやっと読み
終えました。僅か35頁程の小冊子なので読み始めればすぐで
すが置いたままになっていました。このガイドは藤沢周平短篇
の中で市井ものと呼ばれる7冊が取り上げられています。『暁
のひかり』『神隠し』『時雨のあと』『時雨みち』『驟り雨』
『闇の梯子』『龍を見た男』の7つの短篇集です。著者の市井
もの短篇集としてはこの他にも『霜の朝』『闇の穴』『夜消え
る』『夜の橋』などがあり勿論これらの短篇集自体を読んだ方
が良いですが、入門用としてこのガイドは興味を引くのに十分
です。あらすじや人物相関図ストーリーマップ、名作品のさわ
りの部分の紹介など内容は濃いです。
岩村暢子「家族の勝手でしょ!」を読了しました。書評で紹介
されていた本です。サブタイトル『写真274枚で見る食卓の
喜劇』でも推察されるように一般人の食卓風景を2003年か
ら2008年までの6年分のデータを写真と共に様々な角度か
ら紹介、考察を加えたものです。対象は120家庭、3食分、
一週間分の食事です。父親がいる時といない時、お菓子化する
食事とその理由、消える味噌汁、明暗を分ける実家の差し入れ、
省略される皿、加工食品尽くしの食卓、主食重ね、幼稚園弁当
の奇妙な指導、子どもの好き嫌いと親の対応、子どもの習い事
で壊れる食、空腹で待てない子ども達、主婦のランチと夫の昼
食、揃ってもバラバラ食、などなど食への警告が様々な形で提
示されています。食に関心のある人は読むべき一冊です。
泡坂妻夫「黒き舞楽」は鯉釣りでの待ち時間に読んでいる本で
すが、昨年10月末に読み始めてからずっと鯉釣りに出掛けて
いなかった為にそのままになっていました。2月も中旬を過ぎ
てやっと暖かくなって来たので2月18日に久々に鯉釣りに出
掛け無事に読み終える事が出来ました。読み終えてしまったと
いうことは鯉が釣れずに暇だったという事で良いのか悪いのか
判りません。著者は謎解きものの大家ですが、この本は本格推
理物ではなく、目岩人形という操り人形に絡む人物とその由来
を巡る愛憎絡みの物語となっています。本書は品切れのまま復
刻もされていないので、読んだ本は1990年刊の古本です。
なお、泡坂妻夫の本は基本、すべて読みたいと思っていますが
まだ読めていない本(過去に出版されたが今は品切れとなって
いる本)がまだ20冊くらいはあります。最近、創元推理文庫
から『ダイヤル7をまわす時』が33年振りに文庫新刊として
出版されました。今後も『折鶴』『蔭桔梗』などが出版される
様で楽しみです。『蔭桔梗』はオンデマンドブックで2020
年に読んでいるので、今後の期待としては『ゆきなだれ』『砂
のアラベスク』『弓形の月』『花嫁は二度眠る』『猫女』『雨
女』など現在入手出来ない本を出して欲しいところです。
アイザック・アシモフの古典的名作「われはロボット決定版」
を読み終えました。ハヤカワ文庫SFです。日本語版の原作は
1983年刊行なので既に40年が経っています。ロボットが
必ず守るべきかの有名な「ロボット工学の3原則」を生み出し
た名著です。本の解説ではロボット開発史を謳っていますが、
実際はロボット3原則を逆手に取った推理短篇連作集とみる事
も出来る小説です。序章を含め10篇から成るアシモフの初期
ロボット小説集です。因みにロボット工学3原則は簡潔に言え
ば「ロボットは人間に危害を加えてはならない」「ロボットは
人間に与えられた命令に服従しなければならない」「前2項に
反するおそれの無い限り自己を守らなければならない」という
ものです。この本を読んでいて時代を感じるのは巨匠アシモフ
でさえ1944年に書いた「野うさぎを追って」という短篇で
はロボットの部品数を1500個のコンデンサ、2万個の電気
回路、500個の真空管、1000個のリレー回路などと記載
している事です。真空管も既に過去の遺物ですが現在スマホに
使われている部品でさえも真空管に相当するトランジスタに換
算すると100億個以上に上ると言われています。時代の進化
は恐ろしいものです。
薬丸岳の名前は新聞の書評で見たのではないかとと思います。
今回初めて読んだ「刑事の怒り」は刑事・夏目信人シリーズ第
4弾だそうです。「黄昏」「生贄」「異邦人」「刑事の怒り」
の4篇からなる短篇集です。本書ではパラサイト問題、レイプ
被害、外国人留学生・労働者に対する我々の不寛容さ、意識が
戻らない家族への思い、など様々な問題に対してどの様に対応
していったら良いのか、主人公の苦悩、事件の本当の動機はど
こにあるのかなど上質なミステリとして読み応えがあります。
今日はここまでにしておこうと思って読み始めてもどうしても
結論まで読みたくなってしまう一冊です。
門田隆将「新・階級闘争論」読了しました。些細な問題に「差
異」を強調し”差別被害者”を生み出して世間の「不満」を利
用し、本来はあり得ない一種の「階級闘争」に持ち込む新しい
闘い方を著者は新・階級闘争と呼んでいます。「気に入らない
相手の些細な非を大きく報道し、悪者に仕立てるという手法が
これに当たります。大手マスコミやそれに同調し煽るSNSや
団体などの行動が異常です。正義の主張をする人々や企業もそ
こに加担しています。常識の欠如した官僚裁判官、日弁連、朝
日新聞を始めとする反日メディアやジャーナリストたちへの厳
しい指摘がされています。
川口マーン惠美「世界「新」経済戦争」は2020年7月初版
の近刊です。かつての電話機が携帯電話へ、そしてスマホへと
変化していった様に、ガソリン車やジーゼル車からハイブリッ
ド車そして電気自動車(EV)、水素自動車へと移行しつつあ
る自動車業界ですが、この本ではかつての自動車王国ドイツ在
住の作家が自動車産業の歴史、電気自動車シフトの裏側事情、
ITシフトした市場経済の俯瞰までを一気に語っています。今
のスマホには膨大な数の半導体が使われコンピュータやGPS
などIT技術の集結となっていますが、エンジンを使わずモー
ターと電池と自動運転などのIT技術の集結である新自動車産
業を誰が制覇するのかは今後の全世界の産業界の動向に大きな
影響を与えます。規制強化によってガソリン車だけでなくハイ
ブリッド車までを閉め出す政策を図るEU、現在電気自動車シ
ェア世界一の中国、ITシフトした米国、ハイブリッド車売上
げで世界を制覇する日本、かつての車王国ドイツそれぞれの国
の経済戦略、覇権戦略が激突しつつあります。また自動車業界
のみならずIT業界(アメリカのGAFAに対する中国のBA
TH:バイドゥ・アリババ・テンセント・ファーウェイ)によ
るビッグデータの掌握がEVを制するのかはまだ不透明です。
AI技術を利用したオンデマンド交通(ユーザーの要求に応じ
て提供される交通手段)として既にMaaSが活用され始め、
東京モーターショーではCASEが話題にるなど自動車革命は
既に始まっています。CASE:Connected(つなが
る)・Autonomous(自動)・Shared(シェア
)・Electric(電気)の4つの頭文字であり次世代の
自動車の特質を示す言葉です。
呉善花の「謙虚で美しい日本語のヒミツ」を読了しました。著
者は言語学者ではありませんが、出身の韓国の言語との比較を
ベースに、日本に長くいる経験と各種資料の渉猟を加えて著者
なりの日本語認識を展開しています。我々ネイティブの日本人
でも殆ど知らないような言葉のルーツに迫っており勉強になり
ます。例えば『結ぶ』について論じた章では、飾り結びの紹介
から始め、万葉集なども引用して「結ぶ」という言葉には「結
わえる」という意味だけでなく、「中に込める」というニュア
ンスや「まとめる」「形作る」「完成させる」などの意味が込
められていることを示し、大嘗祭での「糸結び」や古代の「結
縄」を論じ、更には古事記での神様の名前にも「むすひ」が含
まれていることにまで話が及びます。第一章では日本語と韓国
語の語順の類似や、日本語では受動態を多用する言い回しが多
いことなど日韓の比較を行っています。第二章では日韓の謝罪
や感謝のニュアンスの相違を示し、第三章ではハングルと漢字
の話題、第四章では古典にみる日本語の魅力、第五章では日韓
で異なる言い回しとことわざについて論じています。個人的な
感触ではこの本と、先に紹介済みの呉善花「反目する日本人と
韓国人」「韓国「反日民族主義」の奈落」の3冊を読めば日韓
について知りたいことの大部分が判るのではないかと思われま
す。
ジェーン・スー「生きるとか死ぬとか父親とか」を読み終えま
した。著者が父親との奇妙な交流について綴った日記コラム風
の読み物です。この本は「いわた書店」が選んでくれた一万円
選書の一冊です。激変した著者一家の生活環境を越えた親子の
言葉のやりとりの面白さの興味は尽きませんが、この本で一番
良かったのは中江有里の解説です。的確な指摘と文章の上手さ
が際立っています。
呉善花「反目する日本人と韓国人」読了です。著者は韓国出身
で日本国籍を取得している作家、評論家、大学教授です。これ
までに多くの著書で日本と韓国の国民性の違いを論じています
が、この本はその総集編とでも言って良い様な2021年12
月に刊行された近著です。北朝鮮との関係、人間関係における
間の取り方、謝罪や感謝でのニュアンスの違い、美に関する感
性の差異、男と女と家族の在り方、韓国独自の歴史感などが非
常に判りやすく纏められています。これから韓国とビジネスで
関係する方や、国際結婚を考えている人のみに留まらず、観光
で韓国に行こうと思っている方や韓流ドラマにはまっている方
まで全ての人に有意義な一冊であることは間違いありません。
原田マハ「<あの絵>のまえで」を読了しました。190頁程
の文庫の短篇集です。各地の美術館所蔵の絵画をモチーフにし
た感動の物語がそこにあります。作品に登場する美術館と作品
は以下の通りです。ひろしま美術館「ドービニーの庭」ゴッホ、
大原美術館「窓辺の小鳥たち」ピカソ、ポーラ美術館「檸檬」
セザンヌ、豊田市美術館「オイゲニア・プリマフェージの肖像
」クリムト、長野県立美術館「白馬の森」東山魁夷、地中美術
館「さざなみ」モネ。
恩田侑布子の最新の句集「句集・はだかむし」が発売されまし
た。陶芸家という経歴も持つ著者の評論は独特の感性に裏打ち
されていて一見の価値があります。著者の俳句も見てみたいと
思ってネット検索してみましたが、第一句集から第四句集まで
すべて品切れで入手出来ません。Amazonなどではコレク
ターズ商品のみならず新品でさえも高額の値段が付いています。
幸いに2022年11月末に売り出された最新の第五句集はま
だ入手出来ますので、今から買い溜めしておくと数年後にはネ
ットで高く売れるかも知れません。句集なので内容を解説する
ことも出来ませんが、出来れば解釈の一端でも誰かが述べてく
れたら良いのになあと思っていたら2022年末の新聞の片隅
に『淡交をあの世この世に年暮るる』の句について俳人の坪内
捻典が僅か数行ですがコメントを加えていました。曰く『私も
あの世この世に淡い交わりを結んで年の瀬を迎えた。…云々』
そもそも著者の恩田侑布子が評論集で言っているように『自句
自解ほど危ういものはない。そもそも自句を散文で述べられる
なら、最初から俳句をつくる必要などない。』とあるように俳
句の解釈は単一的ではないので各人がどの様に内容を掬い上げ
て解釈したり、感性で受け止めたりするしか出来ない様です。
因みに書名の「はだかむし」ですが、当然この言葉を含む俳句
も掲載されていますが、著者あとがきには「はだかむし」とい
う書名が『大戴礼記』に拠るもので、人間は毛も羽も甲羅も鱗
もないはだかんぼうの虫だが、陰陽のまじりけのない精を受け
て生まれるという解説が付け加えられています。
恩田侑布子「渾沌の恋人・北斎の波、芭蕉の興」は新聞の書評
を見て購入した俳句の評論集です。俳人でもあり評論家でもあ
る著者の8年間にわたる文芸評論の集成です。内容は重層的で
あり俳句、短歌に留まらずクリムト、鳥獣戯画、屏風、絵巻、
青井戸茶碗、茶の湯にまで論考が及びます。この本を読むと物
の見方が少し変わるかも知れません。内容は決して易しくはあ
りませんが一読お勧めです。俳句に関して言えば「季語と興(
きょう)」、「俳句の切れによる多層構造」「俳句とアニミズ
ム」などについて深く論考を行っています。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界15」を読み終えま
した。解説対象書籍は『天保悪党伝』です。本解説ガイドは僅
か35頁程の小冊子なので読み始めればすぐですが置いたまま
になっていました。藤沢周平の『天保悪党伝』の原話になった
物語が幕末の講談「天保六歌撰」であり主人公は悪人の親玉で
ある河内山宗俊です。5人の悪党と紅一点の花魁三千歳が織り
成す悪と色の人間模様が描かれています。もちろん六歌撰は王
朝の六歌仙のもじりであることは自明です。在原業平、僧正遍
昭、喜撰法師、大伴黒主、文屋康秀、そして紅一点がご存じの
小野小町です。
気に入った本があったら読んでみて下さい。
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