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* * * 読書雑記(2024年) * * *
原田マハ「FORTUNE BOOK 明日につながる120の
言葉」はよくある人生の名言や格言と言えるような言葉120個
を空白ページを挟んで1ページおきに記した書籍です。「孤独は
、ときに人を賢明にする。」「自分の心の声に耳をすませて。」
「今日は昨日の明日である。」などどこかで聞いた事のあるよう
などちらかといえばゆるい言葉が並んでいます。空白ページに自
分で植物の彩色画でも書けば愛着のある自分だけの一冊が出来上
がるのではないかと思います。個人的には空白ページにはもっと
尖った言葉や独特な言葉を埋め込んで独自の一冊に仕上げたいと
思っています。別にそれを売り出す訳でもないので気に入った用
語を探して自由に書いてみたいと思います。例えばあるページに
は、●2024年に史上最大の素数発見とのニュース:2の1億
3627万9841乗から1を引いた数(4102万4320桁
)●「π(パイ)の神秘」という本にはパイの小数点以下100万
桁が記載されているという事だが誤植があっても誰も判らない●
今私が欲しい物。変身立体、素数モノサシ、世界最速サイコロ、
MAGIC METAL、自在置物、などなど●2045年はシ
ンギュラリティ(技術的特異点)。技術が人間を越えるって本当
??●ダンバー数って何●魑魅魍魎を書けますか。などという、
もしかしたら気になる言葉を書いてみたいと思います。
百田尚樹/有本香「日本保守党・日本を豊かに、強く。」は飛鳥
新社から発行されている近刊本です。まさかこの2人が本当に日
本保守党を立ち上げるとは思わずに購入した本です。衆院選が終
わった今頃になって読んでいます。立党の契機や重点政策項目も
詳しく判ります。第11章に応援する人達のコメントにもありま
したが、原発稼働による安定的エネルギーの確保についても明確
に綱領に載せて欲しかったと思います。今の自民党がもはや保守
ではなく言うなればリベラルであり、自民党擁護者は仕方なしに
消去法で自民党に投票していたという言葉は自民党には痛すぎる
言葉ではないかと思います。日本保守党の目指す政策がどの様な
ものなのかもっと周知されると自民票が大量に流れていくのでは
ないかと案じられます。皇統を巡る話題、憲法改正、自衛隊法、
スパイ防止法、外国による不動産購入問題、LGBT法案改正、
減税、再エネ賦課金廃止、EV補助金廃止、日本学術会議の中国
対応の偏向是正、米国に対する原爆の国際法違反の指摘、中国に
対する南京大虐殺発言の否定、ロシアに対する抑留の非道、韓国
に対する慰安婦像の撤去要求など外交を含めた対応についてもま
ともな政治が日本保守党には期待出来ます。期待したい所です。
「遺体鑑定医加賀谷千夏の解剖リスト・溺れる熱帯魚」は現役の
解剖技官にして作家である小松亜由美の令和6年11月末発行の
角川文庫書き下ろしの新作です。シリーズ2作目です。この本に
は4作品が収められています。住職の扼殺・切断事件、熱帯魚の
入れ墨を入れた遺体の解剖で明らかになる事件、メッタ刺しの遺
体解剖、火災により焼け残った左腕だけの遺体から明らかになる
真実とは何か、それぞれの事件が解剖によって明確になっていき
ます。圧倒的な臨場感のある法医学ミステリーです。
養老孟司と田原総一朗の対談「老人の知恵」が2024年10月
に発行されました。この本の手柄は普段はあまり明確に自身の考
えを必ずしも明らかにしていない養老さんの本音を田原氏が引き
出していることだと思います。例えば、官庁関係では平気で文書
を改竄するとの発言をはじめ、集団登校批判とも取れる発言、学
校の先生をはじめ偉い人の発言、社会、ジャーナリズムも信用し
ないとの発言、ハマス(パレスチナ)には同情的である、小国も
含めて世界各国はそれぞれ自立していくべき、他国の批判をする
のは「ヘイト」と同根、環境破壊への私見、政治資金規正法など
金の問題で政治家を批判するのは本来筋では無い、ジェンダーギ
ャップ指数118位への批判、多神教では寛容であれという必要
は無い、世の中は神の視点で物を言う見方が増えている、世界中
の人間は皆、神(宗教)を必要としている、虫が減った事と少子
化は同根では無いか、自殺の一番の原因は社会では無く本人にあ
る、などなど興味深い発言を知ることが出来ます。
小松亜由美「イシュタムの手 法医学教授・上杉永久子」は本格
的法医学ミステリーです。主人公はタイトルにある法医学教授と
その教授の元で学ぶ医科大学博士課程1年の南雲瞬平です。この
文庫は約300ページに5話が収められています。著者は実際に
解剖技官を務め多くの異常死体の解剖に携わって来たという経歴
があり、解剖シーンは超リアルです。この文庫では、火災現場で
発見された2体の焼死体に関わる事件、3名の中毒死事件、虐待
の疑いのある乳児の死亡事件、夏祭りで発生した集団不審死など
が扱われています。因みにタイトルになっている『イシュタム』
はマヤ神話で自殺を司り、死者を楽園に導く女神だそうで第四話
でその内容が明かされます。
小川洋子著「不時着する流星たち」を読み終えました。角川文庫
で270ページ程ですが、その中に10話の短篇が納められてい
ます。不思議な味わいの掌編です。因みに第三話までのタイトル
は、誘拐の女王、散歩同盟会長への手紙、カタツムリの結婚式で
す。これを見ただけでも何か普通と違うということが伺えます。
実際、作者がこれらの作品を上梓するきっかけを与えている作品
があって各物語の後に簡略に解説が加えられています。第一話で
はヘンリー・ダーガー「非現実を生きる」、第二話では「ローベ
ルト・ヴァルザー作品集」、第三話ではパトリシア・ハイスミス
という作家が紹介されています。いずれも私には初見の作品、人
です。この作品集については本の最後にある解説7ページが的確
にその位置づけや内容を紹介していますので書店でこの部分を少
し読んでから購入するかどうか決めるのもよいかと思います。
ダニエル・スミス「絶対に行けない世界の非公開区域99」は宮
部みゆきが『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本
2015〜2019』で紹介していた本の一冊です。なかなか興
味深いトンデモ本のような本です。ビンラディンの隠れ家やチェ
ルノブイリ原発立ち入り禁止区域、DARPA、エリア51、ペ
ンタゴンをはじめとした軍事関連施設、銀行、核関連施設などそ
の内容は多岐に亘っています。カラー写真満載なのですぐに読み
終えるかと思っていましたが、説明文が細かく読み終えるまでに
2週間も掛かってしまいました。写真を見ているだけでも楽しい
一冊です。
半年間待った「大盛!!みこすり半劇場 2024秋」がやっと
出ました。岩谷テンホーによる4コマ漫画です。過去の旧作も含
まれますが新作もかなり笑えるものが多く満足の一冊です。言葉
遊びの単なる駄洒落や思いつきもしない様な下ネタなど笑えるこ
と請け合いです。
養老孟司/小檜山賢二の組み合わせは『象虫』という写真集で既
に目にしていますが今回は「養老孟司と小檜山賢二「虫本」」と
いう写真集です。190ページ程の小型の変形版写真集ですが虫
はこれほどまでに繊細で豪華な作りをしているのかと一目で納得
させる強烈なインパクトを持った本です。その仕掛けは写真家の
小檜山賢二が駆使するマイクロプレゼンスの思想と深度合成とい
うデジタル画像技術です。昆虫といえば昆虫図鑑しか見たことが
ない方はぜひ一度この手の本を手に取って見て欲しいものです。
早川いくを著「へんな生きものへんな生きざま」は宮部みゆきが
『宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015〜
2019』で紹介していた本の一冊です。大判フルカラー230
ページ余の豪華本です。ただ単に貴重な生物写真を撮ったという
本ではありません。稀少な生物をベストアングルで超美麗に写し
た写真集です。解説も適切でほっこり笑えたりします。暗闇に浮
ぶザトウムシ、水面堺のカツオノエボシ、飛行中のウマノオバチ
の尾までの鮮明な映像、叫んでいるのが聞こえそうなトビヤモリ
から最強生物クマムシの顔面アップの写真までこれまでに見た事
の無い様な映像満載で楽しめます。これぞ生物多様性。
太刀川英輔「進化思考 生き残るコンセプトをつくる「変異と適
応」」はハードカバー300ページ程もある大部の本です。著者
の本業はデザイナーの様ですが分野を超えて次世代エネルギー、
伝統産業、科学コミュニケーション、SDGsなど数々の最先端
事業、プロジェクトの関わっている様です。論理的思考に優れた
頭の良い方のようです。東京都の防災計画や大阪万博日本館の基
本構想などにも関わっており、数々の賞も受賞しているようです。
本著書では論理的な創造を進化論の軸から体系的に解析して実戦
に繋げる手法を5章に亘って描いています。各セクション毎に実
践ワークが付いており得るところの多い本だと思います。因みに
章やセクションのタイトルを羅列してみると以下の様です。『創
造とは何か、進化の思考の構造、変異、変量、擬態、欠失、増殖、
転移、交換、分離、逆転、融合、適応、解剖、系統、生態、予測、
コンセプト、創造性の進化』。「進化思考とは何か」について著
者は「変異と適応の往復によって、私たちは創造性を発生させら
れるという考え方」であると言っています。この本は2021年
4月初版発行の本ですが、2023年12月にはこの本の後継版
なのか、「生き残るコンセプトをつくる「変異と選択」」という
サブタイトルの付いた更に大部の558ページという本が出版さ
れているようです。有益な本だとは思いますが、気になるのは本
の最終章で自画自賛の上で本の拡販のお願いまでしていることや
良く見ると著者紹介も生年月日の記載も無く著者の宣伝だけに特
化した様な記述にも見えます。気になってウィキペディアで著者
を検索してみましたが、ここでも記載内容にコメントが付いてい
て、『この記事は広告・宣伝活動のような記述内容になっていま
す。 ウィキペディアの方針に沿った中立的な観点の記述内容に、
この記事を修正してください。』と書かれています。誰が書いた
のか判りませんが、中立的な立場からの記載では無く著者の賛同
者による記事だと類推されます。更にこの本の出版社である「海
士の風」自体がこの本自体の出版の為に作られた出版社である点
や、そもそも「進化思考」という考え方に対して「進化思考批判
集 デザインと進化学の観点から」という本が出されていなど、
どうも「はてな」と思わせる様な点が多く個人的にはお勧めから
は外しておきます。
豊田有恒/川口マーン惠美の対談「ドイツ見習え論が日本を滅ぼ
す」を読み終えました。章タイトルを上げればおよそ本書の内容
を把握出来ると思います。参考までに以下に列記しておきます。
1.似て非なる国・日本とドイツ、2.「メルケル」後の行方、
3.ドイツを襲う「平和ボケ」、4.「戦争責任」という呪縛、
5.「後進国」だった海洋国家と大陸国家、6.日本の反面教師
移民・難民大国、7.亡国のカーボンニュートラル。以上です。
著者の豊田氏は2023年11月末に亡くなられた様ですがその
経歴はなかなか多岐に亘り興味あるものです。古い世代の人なら
多くが知っている『エイトマン』の脚本や『鉄腕アトム』『ジャ
ングル大帝』のアニメのシナリオを手がけたり、『宇宙戦艦ヤマ
トシリーズ』の原案、設定にも携わるなど錚々たる実績を上げて
います。また、日本SF作家クラブの名誉会員となる程SF界で
も成果を残し、原子力発電にも詳しく反原発への反発や反天皇制
への言及、成田国際空港反対、親中国、反北朝鮮、など特異な言
説を残しています。本書ではカーボンニュートラルへの真っ当な
意見を述べています。また、ドイツとは無関係かと思われる様な
経歴からは想像も付かないような有益な対談となっており1章か
ら6章までも読み応えがあります。有益な一冊です。川口マーン
惠美氏は原発に関する著作が多くありますが、豊田有恒氏にも「
日本の原発技術が世界を変える」という2010年に上梓された
本があるようです。わが国の原発技術が世界最高の水準にあるこ
とをリポートした一冊のようです。
ワニ文庫「愛国論」は所謂保守の論客である百田尚樹と所謂左翼
ジャーナリストの田原総一朗の対談という珍しく読み応えのある
一冊です。対談内容は『永遠の0』、大東亜戦争、自虐史観、韓
国、中国、朝日新聞、愛国というまさに直球勝負の話題です。面
白くない訳がありません。2017年初版なので7年前の本です
が決して古びていません。事実確認を含めて歴史の真実を突き詰
めそれぞれの主張をしているところは評価出来ますが、どうも田
原氏の論理の着地点がすっきりしていないように思えます。百田
氏があとがきでも指摘していますが、左翼側に偏向している今の
報道についての田原氏の擁護の態度と、似たような論点ずらしの
論調が本書の後半各所に見られます。ちょっと残念です。
荒川洋治「文庫の読書」は2023年4月末に中公文庫オリジナ
ルとして発行された近刊です。中公文庫創刊50周年記念企画だ
そうです。いわゆる古典と言われる国内、国外作品(それも文庫
本)100冊を再評価して紹介しようという企画による文庫です。
文庫だけの書評というのは珍しい取り組みです。三浦哲郎「盆土
産と十七の短篇」、与謝野晶子「私の生い立ち」、正宗白鳥「白
鳥評論」、薄田泣菫「独楽園」などが気になりましたが半分は現
在入手不可となっています。因みに荒川洋治「文庫の読書」は昨
年2023年4月初版の近刊です。
岸本佐知子の本職は翻訳者ですが、この著者のエッセイ、著作に
は独特の味があります。「死ぬまでに行きたい海」は2020年
に著わされた近作です。自称出不精という著者が気の向くままに
出掛けた各地の風景や思い出を綴った一冊ですが、この本にも著
者独特な視点や表現が様々に展開されています。訪ねている場所
は、赤坂見附、多摩川、四ッ谷、横浜、麹町、初台など何気ない
場所が殆どですが、読み飽きない一冊です。
壇蜜さんの各分野専門家との対談とエッセイ「壇蜜的人間学。」
を読み終えました。しばらく壇蜜さんの新刊を見掛けなかったと
思っていたらどうも2023年は体調を壊されて入院生活をされ
ていた様です。壇蜜さん的な独特な物の見方と当意即妙な受け答
えは相変わらず健在で読み応えはありますが、対談相手が各界の
権威(医学、異文化コミュニケーション、生命科学、美術評論、
占星術、史料編纂、情報学、宗教学など)のためか対談ではソツ
が無さ過ぎて、我々読者が期待している壇蜜さん本来の上品だが
ちょっとアクのある感じの良さが少し薄れてしまっているように
感じられます。心身共に早く全快して生きの良いエッセイを提供
してくれることを期待したいと思います。
百田尚樹「百田百言」を読み終えました。著者自身がこれまでに
出版した14の小説から名言と言えるものを選りすぐって100
の名言集として纏めたもので、名言と解説のセットで楽しめます。
運命・人生、愛・男と女、成功・幸運、勝負、小説と小説家、世
の中、人間・心、皮肉という8つのカテゴリーに分かれて解説が
されています。名言の元となった小説を思わず読んでみたくさせ
る書籍です。私がこれまでに読んだのは14冊の内の2冊のみで
した。
宮部みゆきの初のSF作品集「さよならの儀式」を読み終えまし
た。解説にもある様に『初のSF』と言われると意外な感が拭え
ません。SFの定義がどうなのかは知りませんが、『蒲生邸事件
』『ドリームバスター』などはどうみてもSFそのものですし、
その他にも超能力物の作品も多数あります。400ページ余の本
文庫本には、「母の法律」「戦闘員」「わたしとワタシ」「さよ
ならの儀式」「星に願いを」「聖痕」「海神の裔」「保安官の明
日」の8つの短篇が掲載されています。「聖痕」では殺傷事件を
起こした少年Aのその後についての予期せぬ展開を描いていたり
「戦闘員」では街角の防犯カメラを題材にしていたりするなど、
現代社会の問題点を別の角度から捉えてSF風にアレンジしてい
る様にもみえます。読み応えのある一冊です。
動物行動学研究科である竹内久美子「女が男を誘いたいとき」を
読み終えました。以前は動物行動学の理論に基づいた男女の行動
に違いなどを主に解説して来た著者ですが、最近は世間で話題に
なっているあれこれについて幅広く鋭い突っ込みを入れることが
多くなっており、この本でも同様に多彩な問題提起を行っていま
す。一歩間違えると炎上するか、後から刺されるかしそうに思え
る様な反対意見が多く出そうな見解も多く提示していますがその
論理を補強するためにかなり幅広く調査を行っている様です。本
著では人では大谷翔平、水原一平、松本人志、市川猿之助、松川
るい、三浦瑠麗、ジャニーズ、DJ SODA、ミス日本グラン
プリ、石田ゆり子、市川沙央、広末涼子、斉藤由貴、藤澤五月な
どが取り上げられていますが、確かにそれっておかしくない?と
言うような事件や騒動になったケースも多数あって著者に無条件
で賛同出来る話題も多くあります。ニュース報道が表面的で毎日
もやもやが溜まっている人は一読の上で、更に自身で情報を得た
上で実際はどうなっているのか判断していく必要があるのかなあ
と思います。それにしてもマスコミからの情報提供は過不足が多
い上に偏った報道が多いなあと感じられます。
山と溪谷社「タモ網1本ではじめられる魚とり・実践テクニック
と生き物図鑑」はその名の通り、タモ1本で水辺の生き物(主に
魚)を取る為のテクニックと様々な魚種の解説を行っている有用
な本です。魚類99種とその他の水辺の生き物54種が掲載され
ているようです。豊富な写真で似たような形態の魚の見分け方を
明示してくれています。ヨシノボリ類、ウキゴリ、ドンコ、カワ
アナゴ、チチブ、ハゼ類などの区別がし易くなる図鑑として活用
出来ます。同じ魚でも大きさや生息地域、季節によって色彩や形
態が変わる様子も判り、よく考えられて作られたお勧め本です。
山正之/川口マーン惠美の対談「日・米・独ー10年後に生き
残っている国はどこだ」を読み終えました。2016年10月が
初版なので2024年現在、既にほぼ8年が経っていることにな
ります。たった8年なのに世界は変わってしまいました。ロシア
がウクライナに侵攻したことをきっかけに、日本はロシアとの蜜
月関係が終了し、ロシアはあろうことか北朝鮮に接近し東西分裂
が進み世界は一層きな臭くなりました。そもそもロシアがウクラ
イナに侵攻する最後の歯止めを外したのはアメリカのバイデン大
統領だと思っていますが、この本を読むとそのアメリカ民主党は
いつの時代でも意図的に世界各地に紛争を起こしている様に思え
ます。世界情勢に詳しい山正之氏とドイツの政治情勢やエネル
ギー政策に詳しい川口マーン惠美の対談は誠に傾聴すべき内容に
溢れています。多くの人に読んで欲しい一冊です。日本や米国の
マスコミの左傾化についても分かり易く解説されています。
角田光代「今日もごちそうさまでした」新潮文庫を読み終えまし
た。角田氏といえば源氏物語の訳者としても知られていますが、
こんな一面もあるということで少し意外でした。食に関するエッ
セイですが、異常とも言える程の偏食と、食べず嫌いが”食に開
眼”したといった文章が冒頭から最後の頁まで続いています。何
しろ”山菜は野草”という認識であり山菜に目覚めたのは41歳
の時だっただの、ホワイトアスパラは缶詰で「美味しくない」と
同義だの、ニンジンは土臭かったしクセがあった、キュウリはも
っと青い味がした、トマトはもっと酸っぱかっただの言いたい放
題です。現在、野菜が苦手という人には最適な読み物かも知れま
せん。文章には定評のある作者の食べ物エッセイが面白くない訳
がありません。文庫なので本屋さんで気軽にパラパラと頁をめく
ってみることをお薦めします。
恩田侑布子の2023年9月発行の近刊「星を見る人」を読み終
えました。本書は2013年から10年分の著者の各種評論を自
選して纏めたものだそうです。草間彌生、久保田万太郎の俳句、
飯田蛇笏、三橋敏雄、黒田杏子、中村草田男をはじめ、現代俳句
時評など全250頁に及ぶハードカバーです。特に久保田万太郎
については著者が「久保田万太郎俳句集」を出しているだけあっ
て情を込めて詳しく解説されています。黒田杏子についても著者
選の五十一句が掲載されていたり、俳句表現史上の位置付けにつ
いて四T(中村汀女、星野立子、橋本多佳子、三橋鷹女)との比
較を通して分析していたりして詳しく解説がされています。著者
の評論で気になる点は、俳人は皆反骨精神や時代批判、反戦思想
などの精神を持った人が多いように見受けられるので突出してい
る訳ではないと思いますが、先の大戦については完全に日本罪悪
史観(WGIP)にずっぽりと嵌り込んでしまっているようで残
念です。気になる記述の例としては第五章の「戦争の愚昧と悲惨
」を照射したと喝破する三橋敏雄論の中で「過去の日本の過ち」
と記すなど定型的思考に陥ってしまっているのが見て取れます。
俳句的な発想、批評眼は図抜けていますが、現実を見る眼や歴史
認識はアメリカが戦後日本人に刷り込んだ史観のただ中にいるよ
うです。
リディア・デイヴィス「サミュエル・ジョンソンが怒っている」
は訳者である岸本佐知子の激押しがあった故に読んだ本ですが、
正直あまり刺さることはありませんでした。56もの掌編を含み
短篇集と言って良いと思いますが、たった1行のものやQ&Aで
構成されたもの、しゃっくりで中断された口述筆記といったもの
まであり、かなり挑戦的な文体の訳者冥利に尽きる文章なのかも
知れません。警句風のものもありますが、ちょっとぬるい警句と
いった感じで個人的な好みからするとこの作者の作品はこれだけ
で十分かなあという所です。白水社Uブックスからはこの著者の
翻訳もののすべて(4冊)が出版されているそうなので気になる
方は手に取ってみて下さい。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界25」読了しました。
藤沢周平作品の新潮文庫「密謀」(上・下)のダイジェスト版と
いった僅か35ページの小冊子です。上杉謙信の後継者である上
杉景勝と、知将直江兼続の主従を主人公とした物語です。歴史に
もしもがあったならば徳川家康を倒しその後の世の中が変わって
いたのではないかと言われる上杉家の戦国時代と米沢に移封され
た後の国づくりの様子が描かれています。本冊子では人物相関図
や「密謀」のあらすじ、ストーリーマップ、抄録、絵で見る聚楽
第など良いとこ取りで内容が纏められています。
川口マーン惠美「左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起
こっているか」を読了しました。2022年8月第1刷発行の近
刊です。ドイツのエネルギー政策である「エネルギー転換」が実
は、理念に先導されたかなり非現実的なものであることを具体的
な数値を上げて丁寧に解説しています。ドイツの太陽光発電の設
備利用率は11%だそうですが、安定的な発電に不向きな太陽光
発電を補助するためには安定的な発電を行う原発やガス、石炭、
褐炭の活用が必要となりますが、脱炭素と脱原発を推進する国の
政策とは全く相容れません。結果として、ドイツの電気代はEU
内で断トツで高くなり、しかもCO2は全然減らないという結果
に陥ってしまっています。世界の中でドイツのエネルギー政策を
評価し後追いしているのは日本くらいな様で、ドイツ紙や外国の
メデイアでも現在「ドイツのエネルギー転換政策は世界で唯一の
災厄」「世界で一番馬鹿げたエネルギー政策」と指摘されている
様です。ドイツの今の災厄の元凶はどうもメルケル前政権にある
ようで、正当な理由もなく原発、ガソリン車やディーゼル車、火
力発電所を停止するなど自由市場の原則を踏みにじった結果が今
に繋がっている様です。更に、難民対策やギリシャの不良債権で
傾いた銀行の救済、コロナに対する補助金などでメルケル政権は
巨額の補助金、給付金を拠出しましたが、現政権もこの流れを継
承している様です。大多数の国民が納めている所得税、消費税、
ガソリン税などの税金が、高い電気自動車を買える金持ちや、メ
ガソーラーの投資家である大金持ちに渡る仕組みが出来上がって
いる実態を著者は指摘していますが、日本もよく似ているなあと
思います。電気自動車を買えるのは確かにお金持ちだし、景観を
損ねるほど野原を潰して太陽光発電を推進した結果が電気代高騰
にしか繋がっていないのが今の日本の実態です。
養老孟司/奥本大三郎「ファーブルと日本人」を読了しました。
ファーブル昆虫館館長であり「完訳ファーブル昆虫記」全20巻
を上梓(翻訳+α)している奥本氏と主に象虫を長年採集、研究
している養老氏の対談が面白くない訳がありません。全6章から
成る本書は「ファーブル昆虫記と現代」「ファーブルと日本人」
「ファーブルという生き方」などから構成されていますが、もの
の考え方、教育、生き方、日本人、文化、環境問題、科学につい
てまで話が広がっています。僅か2日で読み終えてしまい物足り
ない気分です。
岸本佐知子の久々の新刊「わからない」が2024年6月に発行
されました。単行本未収録のエッセイを集約したものの様です。
本書は大きく分けて、エッセイ、書評、日記の3部構成といった
区分けとなっています。本編随所に鏤められた言葉遊び的な記載
には相変わらず著者の面目躍如たる才覚が存分に発揮されていて
必見です。書評の類いはそれなりに面白いのですが、これを見て
読みたくなった本は残念ながら殆どありませんでした。2000
年から8年分の日記抜粋(約100頁)は著者の読書やDVD鑑
賞や演劇、行動面すべてがマニアック過ぎて、読んでいてもこち
らがそこまで、のめり込めず読み通すのはかなり苦痛でした。
百田尚樹/安倍晋三対談集「日本よ、咲き誇れ」読了しました。
第1章は『Will』2012年10月号に掲載された「安倍晋
三再登板待望論」に初めて答えると題した2人の対談です。第2
章は『Will』2013年10月号に掲載された「取り戻すべ
き日本とは何か」と題された2人の対談です。第3章も同時期の
もので百田尚樹の著作について触れたものです。第4章は百田氏
の安倍晋三待望論、第5章は色々な会合や式典、雑誌などで安倍
さんが語った主張の数々です。安倍晋三元総理大臣が何を目指し
て政治を行っていたのかの一端がよく判る一冊です。
2024年3月に発行された原田マハ新作「板上に咲く」を読み
終えました。本の帯には3年ぶりの長編アート小説とあります。
サブタイトルに『MUNAKATA:Beyond Van G
ogh』とあるようにゴッホに憧れて新しい版画の世界を開拓し
世界のムナカタとなった棟方志功の生涯を描いた史実に基づいた
物語です。時代は柳宗悦が率いる民芸の時代ですが、棟方志功も
時代に見いだされて独自の世界を発展させました。原田マハの美
術関連の小説は定評通り外れの作品がありません。安心して読む
ことが出来ます。棟方版画集なども機会があれば見てみたいなぁ
と思わせてくれるそんな一冊に仕上がっています。
西尾幹二/呉善花の対談「日韓悲劇の深層」読了です。西尾幹二
氏は文芸、教育、政治、国際問題を巡る幅広い分野で言論活動を
展開している評論家だそうです。2015年10月初版の著書で
あり内容としては朴槿恵の反日が主要なテーマとして世間に喧伝
されていた時期の著作です。韓国にとっては永遠に反日が愛国、
親日が売国の烙印を押され続けるその真相、深層に韓国を深く知
る呉善花が迫ります。第一章から三章までは韓国、翻って第四章
では日本の非イデオロギー性、第五章では韓国に根付く親北朝鮮
史観について貴重な発言が満載の一冊です。西尾幹二氏の幅広い
見識には一見の価値があります。
「日本の歪み」は養老孟司/茂木健一郎/東浩紀という共に東大
卒業という知的エリートの対談です。解剖学者、脳科学者、批評
家・作家という分野の違う三者対談なので「日本の歪み」という
テーマを様々な観点で深掘りしているので啓発される点が多いと
思います。先の大戦、維新と敗戦、憲法、天皇、税金、地震など
色々なテーマ毎に歪みの原因分析、提言などをしています。お勧
めしたい本ですが、気になるのは先の大戦や現在に続く戦後処理
、その影響などについての史観が米国が撒き散らした連合国正義
日本悪者論に傾きすぎていることが気になります。特に養老孟司
はこの方面については実体験の影響が強過ぎて勉強不足の感が否
めません。残念な事です。逆に評価出来るのは社会リベラルであ
る茂木健一郎が少しだけ立ち位置を変えているように思えるいく
つかの発言です。この鼎談で一番傾聴すべきは東氏の数々の発言
だと思います。以下には気になった3名のいくつかの発言を示し
ておきます。「政治的な正しさという言葉は、かなり問題のある
概念である」「戦争自体が犯罪だという言い方が問題とされる」
「感染症予防学もおそろしく政治的な学問である」「糖尿病とか
高血圧とか、新しい病気を発明するたびにもの凄く儲かる」「少
子高齢化をマイナスの意味でしか捉えていないのが時代遅れ」「
民主主義の形がどの国でも同じであるはずがない。政教分離の形
もフェミニズムのあり方もすべて違うはず」
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界24」を読み終えまし
た。全30巻の中の24巻目です。本巻で取り上げられている文
庫本は藤沢周平著『雲奔る(小説・雲井龍雄)』です。主人公は
幕末に実在した詩人で、かつ尊皇の志士として活動した米沢藩士
である雲井龍雄(本名、小島龍三郎)です。僅か30頁程の小冊
子ですが内容は充実しています。物語のあらずじ、人物相関図、
ストーリーマップ、物語の要所となる箇所の抄録、主人公が生ま
れた米沢城下町のイラストマップ、作品の舞台となる場所の紹介
などからなります。
原田マハ「黒い絵」を読了しました。2023年10月発行の近
刊です。淫靡で過激で背徳的な描写がこれまでにない著者の著作
として怪しく発光しています。7編から成る短篇集はゴーギャン
、サンタ・キアラ聖堂、オフィーリア、ゴッホなどを題材に取り
入れたアートに関連したものが多いですが単純に妖しい小説もあ
って様々に楽しめます。
渡辺惣樹著「誰が第二次世界大戦を起こしたのか」は草思社文庫
250ページ弱の一冊ですが、歴史の授業では決して教えてくれ
ない先の大戦の開戦となった要因が明白に示されています。また
それが歴史教科書にも載らず、テレビや新聞などでも公にされな
い理由についても一読判る内容です。中国や韓国がいまだに歪曲
した歴史観で日本叩きを行う事になっているすべての原因は米国
にあることも明確にされています。間違った歴史認識を作る事に
よって未だに多くの日本人の気概を奪っている米国という国の真
相に気付かせてくれる一冊です。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界23」読了しました。
2007年に購入したもので、今頃になって読んでいます。既に
新刊でも古本でも入手は困難となっていますので購入していたの
は正解です。本書で取り上げられている藤沢周平の本は「日暮れ
竹河岸」「喜多川歌麿女絵双紙」の2冊です。ともに文春文庫で
す。例によって登場人物の人物相関図、ストーリー・マップ、山
場の抄録に加えて、今回は版元である蔦屋重三郎と歌麿、写楽に
ついての解説、文中に登場する浮世絵19点が掲載されています。
金ぴかの女性の肖像や「接吻」の絵で有名なクリムトの大判の図
集「グスタフ・クリムトの世界」は定価3200円+税と比較的
安価な金額で購入出来ます。380ページ程もあります。クリム
トの作品だけで230点、関連するウイーン分離派・工房の作品
約200点が収録されています。勿論、表紙は金ぴかです。黄金
の絵だけが人口に膾炙していますが、ウイーン大学の3つの天井
画(哲学、医学、法学)、美術史美術館の装飾画、女性の肖像画
、風景画、デザイン画などクリムトの絵の多様性と凄さがよく判
る一冊です。お勧めです。
山正之「安倍晋三を葬ったのは誰か」は2023年12月発行
の新刊です。しかし初出は雑誌「週間新潮」2021年11月〜
2022年9月なので激動のこの時代にあっては残念乍ら取り上
げている題材が既に時事テーマとしては古いと感じられるものも
あります。主題である「安倍晋三を葬ったのは誰か」にしても時
代は既に「自民党の裏金問題」「政治資金規正法」の問題に移り
それに絡めて「東京都知事選挙」の話題へとシフトしようとして
います。それでもこの変見自在シリーズは必見です。難しい時事
問題を一話僅か4ページ程で簡潔に解説してくれます。またその
密度が半端ではありません。たとえば『「唯一の被爆国」こそ持
つべき核兵器』というコラムでは黒澤明監督の「七人の侍」での
野伏せりへの違和感からウエストファリア条約、米国の「サンド
クリーク」、広島・長崎への原爆投下、トータルウオー、非核三
原則、ウクライナ侵攻と話は続き、最終的に「唯一の被爆国」で
ある日本がとるべき方策へと収斂していきます。このコラムも僅
か4ページですが理路整然と腑に落ちる説得力のある内容です。
川口マーン惠美/福井義高著「優しい日本人が気づかない残酷な
世界の本音」は2024年1月初版の新刊です。川口マーン惠美
はドイツの経済、政治、原発問題などの著書でエネルギーフォー
ラム賞などを受賞しているベストセラー作家、福井義高は大学で
国際マネジメントなどを研究している研究者だそうです。本書で
はヨーロッパの勢力図を政治、経済、歴史などから解析した序章
から始まり、民族追放の歴史、ベルリンの壁崩壊の背景、メルケ
ル首相の東ドイツ時代、中東情勢、ドイツで急接近する極右と極
左の関係、ドイツと巨大環境NGOとの関係、移民・難民問題な
ど主にドイツを中心とした世界の最新情勢が語られています。国
家間の歴史の背景などに疎い私のような素人には議論について行
くのも至難の業です。それでも得るところは多い本です。以下に
は気になったポイントのいくつかを抜粋しておきます。リベラル
・デモクラシーはなぜ共産主義に似るのかというサブタイトルで
は、共産主義の場合は革命的に、リベラル・デモクラシーの場合
は徐々に進化的に、過去から継続する階層、習慣、伝統を払拭し
清算することを人々に強います。特に敵視されるのが、宗教、慣
習、国、古典的形而上学、道徳的保守主義、家族等だそうです。
国際環境NGOと癒着するドイツ政府というサブタイトルでは、
環境NGO(非政府組織)が、実は世界的ネットワークを持ち、
政治の中枢に浸透し、強力な権力と潤沢な資金で政治を動かして
いることや、多くの公金がNGOに注ぎ込まれていることを解説
しています。また、ドイツの脱原発のコストは年間1.3兆円と
いうサブタイトルでは、脱原発や脱石油を推進するグループが再
生可能エネルギーに誘導することによってビジネスが拡大し儲か
れば良いと思っていることを示しています。核廃棄物の問題は我
が国でも問題になっていますが、フィンランドが進める核廃棄物
の最終処分場「オンカロ」が100万年先も安定稼働できる事を
解説しています。また、LGBTへの反撃というサブタイトルで
は、今アメリカで問題になっている思春期の白人女性が自分は本
当は男ではないかと悩む例が急増している背景を解説しています。
もともと性同一性障害は1万人に一人もいなかったものが最近で
は社会的影響のせいか高校生の2%がトランスジェンダーと自認
するようになっていると言います。
山正之/馬渕睦夫著「洗脳支配の正体」読了です。2017年
5月出版なので既に7年が経っています。時事問題なので対談時
の見通しと現実では大きく状況が異なっているケースがあります
がメディアが語らない歴史の背景が実に良く判る一級資料です。
「トランプ現象」、米露接近のカギを握る安倍首相、ポストプー
チン、反グローバリズムを牽制した習近平の嘘、アメリカファー
スト、映画「沈黙」などが話題に上がる時代における書籍ですが
時宜を得た評論には、現時点においても傾聴すべき内容は多数含
まれています。一読の価値はあります。気になった内容の一端を
以下に抜粋しておきます。(1)グローバリズムへの警鐘として
は、その利権に乗るような報道姿勢について特に産経新聞の役割
を強調しています。(2)日本の世論を親米にするための手段と
してのフルブライト留学制度について語っています。(3)グロ
ーバリズムの本質を、世界経済を1つの市場に統一することにあ
ると喝破し、その手段を持って世界統一を目指すイデオロギーで
あると論じています。(4)安全保障理事会にチベットやウイグ
ルを侵害している侵略者である中国が入っていることの矛盾を指
摘しています。(5)R2P(保護する責任)は国連を無視して
軍事行動を取るための口実であることを詳しく解説しています。
機能していない国連安全保障理事会に変わる手段ですが実質は、
「人道的介入」という名の下に大国が軍事介入している実態を明
確にしています。
小松亜由美の2冊目の書き下ろし小説「遺体鑑定医加賀谷千夏の
解剖リスト」を読み終えました。角川文庫です。著者は解剖技官
という本業の傍ら小説を書いている様です。この本にはエクソシ
ズム、梟首(きょうしゅ)、紅い墓標、腐乱と凍結という4つの
短篇が納められています。亡くなった女性は悪魔払いの名目で母
親から虐待されていたのか?『滴下痕』と『飛沫痕』が飛び散っ
ている現場に首の無い遺体が発見されたがその事件の真相は?真
っ赤なペデュキュアを付けた両足だけの遺体が大学構内の裏山で
発見されるが被害者は、そして犯人は誰か?精肉店で腐乱遺体と
頭蓋骨が陥没している凍結遺体が同時に見つかるという異常な事
件が発生したがその真相は?これらの事件を法医解剖医である主
人公の加賀谷千夏が遺体の解剖を通じて明らかにしていきます。
テレビドラマの科捜研を遙かに超えた迫力満点の現実感で描き出
し真相に辿り着く著者の着想、描写力、ストーリー展開には驚く
しかありません。今回はかなり特殊な状況の事件が多かったです
が、もっと普通の事件においても十分に堪能できるのではないか
と思います。多くの新作に期待したい所です。
株主優待生活で有名な棋士である桐谷広人の最近の著作「一番売
れてる月刊マネー誌ZAiと作った桐谷さんの株入門」を読み終
えました。ダイヤモンド・ザイ編集部編です。入門編なので株運
用について万遍なく書かれています。著者である桐谷さんの現在
の保有資産額は5億円間近とのことですが、40年間の株運用で
は4000万円からスタートして2億→9千万→3億→5千万→
5億と紆余曲折を繰り返しています。我々素人への教訓としては
ここが肝だと勝手に思っています。NISA活用、選ぶ銘柄の選
定方法、優待と配当、分散投資、長期保有のメリット、証券会社
の選び方、アウトレットなどを活用した優待の更なる運用、業績
の見方、チャートの見方、グループ会社間でも異なる優待+配当
利回りなどなど見るべきポイントは沢山あります。全編が分かり
易い解説と多くの図表、マンガから成っていますので読みやすい
内容となっています。
ニア・グールド「21匹のネコがさっくり教えるアート史」を読
み終えました。簡単なポンチ絵で勉強できる美術史です。21匹
というのは、美術史の区分で古代エジプト、ビザンティン、ルネ
サンス、ロココ、印象派、後期印象派、点描画法、印象主義、フ
ォーヴィスム、キュビズム、ダダイズム、アール・デコ、シュー
ルレアリスム、ポップアート、グラフィティなどです。ひとつの
美術史区分について4ページで説明していますが、例えば古代エ
ジプトについていえば、特徴的な絵を示した上で、その特徴とし
て、入念に描かれた目、6つの色、睡蓮の花、黄金、宝石の首飾
り、象形文字、さまざまな視点を上げています。それぞれの項目
について簡潔な説明が付いていてとても分かり易い内容です。
馬渕睦夫「国際ニュースの読み方」は2020年8月発行の書籍
です。「香港国家安全維持法」施行直前に発行された書籍なので
民主活動家の周庭さん逮捕という話題は含まれず、新型コロナウ
イルスを「武漢ウイルス」と呼称し、トランプ大統領は再選する
だろうと著者が見ていた時代の著作です。当然、ロシアの一方的
なウクライナへの侵攻も、またロシアが国際社会から制裁を受け
中国にすり寄る構図も描けていない時代です。図らずも、この著
者にしても見通せていない程の激動のこの4年を感じさせる著作
になっています。それでもこの本は読む価値があります。理由と
なる記載のいくつかを以下に示します。(1)連邦準備制度理事
会(FRB)は100%私有銀行でロスチャイルド系、ロックフ
ェラー系銀行をはじめとする英米の国際金融資本か達がFRBの
株主です。FRB創設によりアメリカの「金融」がディープ・ス
テートの手に落ちました。即ち、通貨「ドル」の発行にアメリカ
政府は何の権限も持っていません。(2)アメリカ連邦最高裁判
所の判事9名の内、ディープ・ステートの息のかかった判事が4
人おり、今やFBIもディープ・ステートの牙城と言えます。
(3)共産主義を推進していた革命勢力と、グローバリズムを推
進しているディープ・ステートは根が一つです。(4)対中輸出
がゼロになっても我が国のGDPは6%下がるだけです。(5)
中国は「国」ではなく「市場」である。(6)ペリー来航当時の
「開国」とは、欧米先進国の立場から言えば「他国を植民地にし
て自分たちの市場にする」という意味です。(7)共産主義と社
会主義とは学問的には意味が異なりますが、その本質は「国際主
義」つまり「グローバリズム」です。国際金融資本家や中国国民
は自分が儲かりさえすれば、アメリカや中国という国自体がどう
なろうとも構わないといった点で非常によく似ています。(8)
ウイルソン大統領からルーズベルト大統領に至るアメリカはソ連
の友好国だった。
スティーヴン・J・グールド著「八匹の子豚(下)」読了です。
この下巻には17章から31章に亘り種の起源や進化を巡る省察
がぎっしりと詰まっています。章ごとに完結しているので一話が
平均20ページ程しかないですが、900文字/ページ程ありま
すので結構読み出があります。十分な基礎情報に基づいた緻密な
考察には一見の価値があります。初版が1996年なのですでに
25年以上も経っていますが進化論に関する考察としては未だに
一級品の価値があります。再版、重版もされず文庫本でも購入が
出来ないのは誠に残念です。
養老孟司/伊集院光の「世間とズレちゃうのはしょうがない」が
PHP文庫として2024年4月に発売されました。対談によれ
ば2人とも世間とずれて生きているという自覚があるそうですが
養老孟司は世間という塀の外から内側を眺めて評論を加えており
一方の伊集院光は世間という塀の内側に留まって冷静に世間を眺
めているといった違いがあるそうです。そんな2人の対談であれ
ばこその面白さがこの対談にはあります。死生観、空気の読み方
世間との折り合い、昆虫の話など様々な話題で盛り上がります。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界22」読了しました。
底本は藤沢周平著「義民が駆ける」です。徳川家斉と老中の策動
で決まった三方国替えに対して庄内地方の農民が幕命を覆そうと
直訴団を組織して江戸を目指し、結果的には国替えが取り止めに
なったという史実に則った小説です。「藤沢周平の世界22」で
は人物相関図、ストーリーマップをはじめとして、「義民が駆け
る」の名場面を取り上げて解説しています。また、江戸時代に7
回行われたという国替えの背景についての解説もされています。
また、「義民が駆ける」で描かれた領地国替え反対一揆について
はその顛末が「夢の浮橋」という詳細な絵巻に描かれているそう
で、10枚以上もの絵巻を元に各場面の解説がされています。こ
の朝日ビジュアルシリーズは藤沢文学を読み解くのに大いに役立
ちます。重版などを期待したい所です。
百田尚樹「カエルの楽園2020」を読み終えました。新潮文庫
版です。タイトル通り新型コロナが猖獗を極めていた2020年
に書かれたいわゆる寓話です。とは言っても判り易い例えとなっ
ていて、たとえば、舞台となるナパージュはJAPAN(日本)
の逆読みで三戒は憲法9条、水仙の花はマスク、集団免疫の話な
どを説くディーアールはDR(医者)、ツーステップは二階さん
といった具合です。ネット検索してみると前作の「カエルの楽園
」も同様ですが書評などでは殆ど取り上げられていないようで、
加えて政治的な偏った発言だというお決まりの厳しい評価も多い
様ですが、そろそろ多くの素直な日本人もコロナ禍のような国難
とも言えるような異常事態が発生した時くらいは、為政者の言う
ことをちょっと立ち止まって眉に唾して、正しいのかどうかを良
く考えてみた方が良いと思います。そう言ったきっかけとして本
書の果たす役割は大きいと思います。
スティーヴン・J・グールド著「八匹の子豚(上)」読了です。
主に種の絶滅と進化をめぐる省察をテーマとした科学的読み物で
す。320ページ程のハードカバーで全16章から成りますが各
ページには空白は殆ど無く、読み出があります。第1章は陸貝に
ついてのラマルク流およびダーウィン流という異なる二種類の適
応方式についてその他の話題です。カタツムリのスープを味わい
たいという理由だけで、貴重な陸貝の宝庫が壊滅していく件は涙
無しには読めません。お役所のやる仕事はどこでも駄目だという
見本がここにもあります。第4章では哺乳類の中耳骨の起源の話
では、爬虫類の上顎の方形骨と哺乳類の砧骨との相同についての
記載があります。第9章には、進化論の議論でよく見掛ける時計
仕掛けや、悪魔に仕える牧師、見えざる手などというフレーズが
出て来ます。第11章では海の水が塩辛いのは元々淡水だった海
が河川から流れ出した塩類が流れ込むことで次第に塩辛くなった
のかという議論で、川が流れ込むだけで一切海に流れ出していな
い海盆は、時間と共にどんどん塩辛くなっていくのかという主張
に適合する4つの湖(カスピ海、死海、チチカカ湖ほか)を取り
上げて議論を展開させています。グールドの書いたこのシリーズ
は確かに古いですが、いずれの論考も科学的な見方が十分されて
おり、内容的には全く古びていません。せめて文庫本ではシリー
ズすべての本を絶版にしないで本屋さんの棚に並べて欲しい所で
す。
岩谷テンホー「大盛!!みこすり半劇場・2024春」読了しま
した。この春の新作です。相変わらずくすっと笑えます。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界21」を読み終えまし
た。35頁程しか無いA4サイズほどのパンフレットです。藤沢
周平の小説『回天の門』を紹介した本です。幕末に尊皇攘夷運動
に奔走し、新撰組の母体となる浪士組を誕生させ34歳で暗殺さ
れるという悲運の生涯を送った清河八郎が主役の物語です。この
本では物語のあらすじ、人物相関図、ストーリーマップ、ハイラ
イトとなるポイントの紹介、郷氏であった清河八郎が国事に奔走
するきっかけとなった桜田門外の変の紹介などがコンパクトに纏
められています。良いシリーズの本ですが、現在このシリーズが
購入出来ないことはとても残念です。
小松亜由美「誰そ彼の殺人」は「宮部みゆきが「本よみうり堂」
でおすすめした本」で紹介された本の一冊です。著者は法医学教
室で解剖技官を務めるという異色の作家で、この本は著者の鮮烈
なデビュー作です。「科捜研」を超える解剖の描写は圧巻です。
著者の分身とおぼしき主人公の解剖技官「梨木楓」の上司である
准教授「今宮」が解剖を通じて鮮やかに犯人をあぶり出していく
展開は見事としか言い様がありません。およそ300頁の文庫本
に4篇の物語が収められていますが、最後の掌編はその名の通り
安楽椅子探偵物の交通事故犯人捜しとなっています。既に2作目
が発売されているようなので早速購入して読みたいと思います。
宮部みゆき「悲嘆の門(下)」を読了しました。連続殺人事件が
解決していき、終章ではもう一つの事件であるいじめ問題が再度
浮上していきます。そして主人公は事件の現場を経て、悲嘆の門
へと向かっていきます。やはりここでの情景はダンテ『神曲』を
彷彿とさせる描写となっていますが、言葉だけでは情景を想像出
来難い部分も多く、残念ながら迫力に欠けているような気がしま
した。初出「サンデー毎日」ではどうだったか判りませんが挿絵
のいくつかでも欲しい所です。河出書房新社の『神曲(完全版)』
に掲載されている程の挿絵があったらもっと興味深く読めるのに
と思うと少し残念です。
宮部みゆき「悲嘆の門(上)」は2015年1月の発売ですが、
9年ほど経った2024年4月になってやっと読み始めました。
「英雄の書」の続編のような位置づけの本なのでさっさと読んで
おいても良かったのですが、上下巻合わせて800ページもある
大部の本なので、本棚に置かれたままになっていました。サイバ
ーパトロールに関わるアルバイト学生が主役の物語ですが猟奇殺
人やその名の通りの”怪物”や異世界が織り成す著者ならではの
ジャンルの枠を超えた特異なストーリーです。この本に通底する
テーマは物語の功罪、言葉の功罪を問う壮大な構想の物語です。
読み始めるとなかなか途中で止められず読まずにはいられない尾
を引くストーリー展開となっています。後半が楽しみです。書評
では、ダンテ『神曲』の<この門をくぐる者は一切の希望を捨て
よ>を引用して「悲嘆の門」を評し、著者の言葉として本書が描
く「主人公が業の川を遡っていく地獄巡りの話」はコンラッドの
『闇の奥』に触発された部分があると紹介しています。
「宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本」を読了し
ました。著者である宮部みゆきが2015年から2019年ま
でに書評した本128冊を2ページ/一刷ペースで紹介してい
ます。紹介されていた本の中で私が読んだ事のある本は須田桃
子「捏造の科学者」と原ォ「それまでの明日」の僅か2冊だけ
でした。それでも気になった本は10冊ほどあったので今後購
入して読んでみようと思います。こうやってどんどん未読本が
溜まっていきます。困りものです。
I.カルヴィーノ著「見えない都市」は240ページ程の河出
文庫の小冊子です。本の解説には以下の様にあります。『マル
コ・ポーロがフビライ汗の寵臣となって、様々な空想都市の奇
妙で不思議な報告を行う』という幻想小説です。京都=大阪も
登場します。一話ずつが短いので読みやすいですが解説を読む
と章構成、タイトル番号含めてかなり面倒くさい作りを包含し
ている様です。描かれる各都市についても時間、空間を超越し
た本当に様々な手法が駆使されておりそういった意味でも一読
してみる価値はあります。
佐々木良著「愛するよりも愛されたい」は万葉社から令和4年
に出版された『奈良弁で訳した万葉集@』です。前書きによる
と万葉集には4500首以上の和歌が納められているそうです
が、この本ではその中から90首あまりを取り上げて意訳して
います。必ずしも正確な訳というよりは雰囲気を捉えたイメー
ジ訳という感じです。そのあたりは橋本治訳の『桃尻語訳・枕
草子』みたいな感じです。”令和”は万葉集・巻五 梅花の歌
32首序文の『……初春の令月にして、気淑く風和ぐ……』か
ら来ているそうですが、その解説も記載されています。
「ヒトの幸福とはなにか」は「生きるとはどういうことか」と
共に2023年11月に出版された養老孟司の新刊です。この
本は、2003年以降に発行された新聞・雑誌・印刷物所載の
エッセイから単行書籍未収録作品を選りすぐって掲載したもの
だそうです。主に3〜5ページ程のエッセイが収録されていま
す。分類タイトルとしては幸福、風景、虫の楽しみ、健康、文
化・伝統、犬と猫、教育などに分かれています。初出一覧が巻
末にありますがそれを見るといかに様々な媒体に著者のエッセ
イが掲載されているかが判ります。例えば「旅」「東京人」「
ジパング倶楽部」「婦人画報」「群像」などなどです。この様
な本を読んでいると、色々な他の本へのつながりなども書かれ
ていてなるほどと思うことも多々あります。例えば「ネコと虫
と」という掌編では丸谷才一『文章読本』(中公文庫)に引用
されている井伏鱒二の文章で現代人の言語能力の退化について
コメントしていますが、『文章読本』P173〜180にある
井伏鱒二の『中込君の雀』を実際に読んでみるとなるほどと深
く納得がいきます。また、「ネコと虫と」の次ページP197
にはラマチャンドランの『脳の中の幽霊』を引用して「意識」
は身体のほんの一角だということを簡潔に示唆していますが、
『脳の中の幽霊』を読んでいるとすんなりとその説明が判りま
す。このような所は色々な本を読んでいて楽しいなと思える所
ですね。
ようろうたけし「「じぶん」のはなし」を読了しました。この
著者にしては珍しく絵本です。2022年6月第一刷です。自
然はみんな自分につながっているという30ページ程の絵本で
す。文中には特に説明がありませんがさりげなく50種類以上
の生き物たちが絵の中に登場しています。どのような生き物な
のかは表紙裏や裏表紙に絵と名前が対になって紹介されていま
す。
本屋さんで「毒と薬の蒐集譚」という本を見掛け、気になって
即刻購入しました。2023年9月初版発行ということなので
新刊です。著者は「医療系雑貨生みたて卵屋」という聞いた事
の無い巫山戯て付けたとしか思われない名前です。内容は昔の
世界旅行記のような夢と冒険と怪しげで珍奇な品々が交差する
他に類を見ないようなストーリーがぎっしりと詰め込まれてお
り期待を裏切らない内容となっています。勿論、本のタイトル
通り117種もの薬用原料(植物、鉱物、動物)の紹介や六芒
星のコインや錬金術や占星術に関わるペンダントや魔女に関係
する書物、天使メタトロンの立方体、四大精霊、薔薇十字団な
ど怪しげな内容に溢れています。プロビデンスの目、カドゥケ
ウスの杖、アスクレピオスの杖など普段目にすることも無い様
な更に怪しげな用語も満載です。因みに世界紀行記として読む
場合も多種多様な風景、動植物、アイテムなどの挿絵が一杯で
十二分に楽しめること請け合いです。本体2800円とちょっ
と高いですが、これだけの内容を詰め込んでカラー図版満載と
いうことを鑑みれば決して高い買い物ではないと思います。
「生きるとはどういうことか」は2023年11月初版の養老
孟司の新刊です。2003年以降に発行された新聞・雑誌・印
刷物所載のエッセイから単行書籍未収録作品を選りすぐって一
冊に編んだものだそうです。主に3〜5ページ程のエッセイが
収録されています。分類タイトルとしては人生、環境、思考、
脳・意識、世間、身体、教養などに纏められています。養老孟
司の本を沢山見てきた人にとってはどこかで聞いた事のある様
な内容があちこちに散見されますが、著者の本を余り見ていな
い人にとっては養老孟司のエッセイの概要がこれ一冊で俯瞰出
来るような集大成となっているのでお勧めです。同時期に出版
されている「ヒトの幸福とはなにか」と併せて単行書籍未収録
作品のすべての分野をカバーしているようです。
馬渕睦夫は今一番お勧めしたい作家です。約2年前に出版され
た近刊「日本を蝕む新・共産主義」を読み終えました。元駐ウ
クライナ大使である著者の世界を見る眼は広くて深く、歴史、
民族性、宗教などがすべて見通されていてまるで大口径の広角
レンズの様です。現在起こっている世界各国の紛争や事件など
を表面的に批評するコメンテーターはメデイアに溢れています
が、俯瞰して語れる人は多くありません。但し、この本の章立
てやセクションのタイトルをみると、第一章では「惟神の道」
第二章では「ユダヤ普遍主義とグローバリズム」、第三章では
「キューバ危機と東西冷戦の不都合な真実」、「GHQと敗戦
利得者」、第四章では「世界の左傾化とその対策を唱えない衆
院選」「女性宮家という”からごころ”」などという多様な見
出しが溢れておりそれだけを見ると捉えるのが難しい内容とな
っているように感じられます。しかし実際に読んでみると納得
出来る判り易い内容です。現代の共産主義とは主義思想の名前
ではなく、社会を変革する事にあると指摘します。それがポリ
テイカル・コレクトネスであり、グローバリズムであり、気候
変動問題であり、人権問題であり、SDGsといった形で私た
ちの伝統や習慣、産業に入り込んでいると喝破します。”日本
は世界から遅れている”というのも常套句であり、その特徴は
現在を否定し出来もしない理想を掲げ未来だけを考えることだ
といいます。これらの考えや行動は結局は誰も救えないと著者
は指摘します。確かに起きてもいない問題、些末な事象をメデ
ィアは緊急事態の様に叫び、恐怖を煽る煽動、論点をずらした
印象操作を繰り返しているという印象は拭えません。著者が言
うように人権も環境も”世界のため”なので違和感を抱いても
反論しづらく、反論した途端に誹謗中傷に晒されるという言葉
狩りが行われるというのも大いに頷ける所です。一読お勧めの
一冊です。
土屋賢二の新刊「急がば転ぶ日々」を読み終えました。220
ページ程の文春文庫ですが最近、笑いの足りていないという人
にはお勧めです。一話が3ページ程なのでこの著者の作品未読
という方は先ずは本屋さんでの立ち読みをお勧めします。笑え
ること確実です。
高山正之/石平著「核大国は氏素性の悪さを競う」読了です。
2022年10月発行の新刊です。ロシア問題、ウクライナ問
題、中国問題、台湾問題などの時事問題に正面から切り込んだ
対談となっています。手練れのジャーナリストと評論家の議論
は単なる対談に留まらず、これらの出来事に関連する国々の宗
教、歴史、地政学、民族的な由来など多角的な見方を背景に我
々はそれらの問題をどのように捉え考えていくべきなのかの指
針を与えてくれます。この本の帯には以下のようにあります。
---------中国人は日本への核攻撃をためらわない!---------
・「タタールの軛(くびき)」がプーチンを狂わせた
・ロシアも中国も典型的な「負け組国家」である
・アメリカがいま日本の改憲を推す本当の理由
・「中華民国」は中国人の精神的ごまかし勝利法
・中国のネットに乱舞するプーチン賛美の狂気
・「中国包囲網」を作った安倍元総理の世界史的功績
僅か1000円弱で教科書、マスコミ(新聞、ネット)では教
えてくれない正に『現代』の生きた歴史の見方が学べます。
養老孟司の自伝ともいえる様な本が2023年末に発売されま
した。タイトルは「なるようになる。僕はこんなふうに生きて
きた」です。これまでにも色々な書籍で自分の来歴の断片は述
べられていますが、それらを一気通貫に纏めて示したものとい
っても良いと思います。章立ては1.幼年時代と戦争、2.昆
虫少年、医学部へ、3.解剖学者の奮闘、4.『バカの壁』と
”まる”との出会い、5.養老先生への50の質問の様になっ
ています。当然、『バカの壁』のエッセンスも要約されていて
分かり易く示されています。脳への入力をx、反応をyとした
場合y=axでその関係式が現わされますが、aが好き嫌い、
興味関心などのバイアス(偏り)で、係数が0つまり無関心だ
と何を入力しても無反応となります。逆に係数aが大きすぎる
と原理主義に陥っていくという関係になります。つまり、自分
が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまっ
ており一種の『バカの壁』が発生します。『バカの壁』という
のはある種、一元論に起因するという面があります。バカにと
っては壁の内側だけが世界で、向こう側が見えない。向こう側
が存在しているということさえ判っていなかったりします。
ジェフリー・ディーヴァーの文庫最新刊「ネヴァー・ゲーム」
(上・下)を読了しました。新しいシリーズの主人公コルター
・ショウ初登場です。人捜しの懸賞金ハンターという仕事は実
際にあるようです。ゲームのストーリーに沿った連続誘拐犯を
追う主人公の能力が随所で発揮され犯人を追い詰めていきます
が、遂に殺人事件が発生します。熱狂的なゲームマニアの犯罪
かと思われた事件はフェイクニュースの配信を巡る利害や国政
選挙に与える影響など予期もしなかった点にまで関係を広げて
いきます。事件に並行して主人公ショウの生い立ちや不審死を
遂げた父や、事件以来行方不明の兄、関係者らの動静などにつ
いても徐々に明確化されていきます。シリーズ全体に亘るもう
一つの謎解きのテーマとなっていくようです。いつもながら著
者の推理物は寝不足を誘います。これが唯一の難点です。
ジェフリー・ディーヴァー「ブラック・スクリーム(下)」を
読み終えました。連続誘拐殺人未遂の犯人とみられるコンポー
ザーをイタリアで追う捜査チームは、たまたまイタリアの司法
当局に暴行容疑で拘束されているアメリカ人の捜査協力の要請
を受け、並行した捜査が進められます。そんな捜査が大詰めと
なり犯人確保という段階で予測もしなかった大どんでん返しが
発生します。果たして真相はどこにあるのか、結論はどこに向
かって収束していくのか二転三転する急テンポな展開に目が離
せません。今回の捜査の立役者の一人である森林警備隊巡査に
も思わぬ結末が待ち構えています。
ジェフリー・ディーヴァー「ブラック・スクリーム(上)」は
2021年末に文春文庫から発行された近刊です。本の題名の
「ブラック・スクリーム」の日本語訳は「漆黒の絶叫」です。
音楽に魅入られたサイコパス(猟奇犯)による犯行はその舞台
をニューヨークからイタリアへと移して続きます。ライムらは
その後を追って現地警察、検察との軋轢を抱えながらも真相に
迫っていきます。いつものように緻密でテンポの良いストーリ
ーに裏打ちされたサスペンスは読み応え満点です。
ケント・ギルバート「日本が消失する」を読了しました。この
本は2023年4月に書かれた新書です。安倍元首相が発言し
た「台湾有事は日本有事につながる」という言葉について具体
的にはどのような状況にあって、我々はどのように考え、行動
したら良いのか多大な情報と指針を与えてくれます。全方位的
に書かれた国防論です。我が国を憂うる全ての国民必読の書で
す。
倉阪鬼一郎「怖い俳句」読了しました。幻冬舎新書240頁程
の冊子ですが、なかなか読み応えがあります。表題の通りの内
容で「怖い俳句」の集成ですが、怖さは各人各様なのでどこで
怖いと感じるかは読み手次第です。章立ての構成は芭蕉から子
規まで、虚子からホトトギス系、戦前戦後前衛俳句、実存観念
系、女流俳句、自由律と現代川柳、昭和生まれの俳人などに別
れています。取り上げられている俳人は200人程に上ります。
反対に怖い俳句というテーマでは一句も取れなかった俳人もい
るそうで、水原秋桜子、渡辺水巴、久保田万太郎、芝不器男、
川端茅舎などは俳句美学があまりにも円満すぎて本書の対象外
となったそうです。直接的な怖さと言うよりはちょっと斜から
みて怖さが沁みてくるような俳句を数編上げておきます。
「草二本だけ生えてゐる 時間」 富澤赤黄男
「あやかしの時刻夕顔十余り」 横山房子
「音もなく轢かれつづける汝が影よ」 沼尻巳津子
「あじさゐに死顔ひとつまぎれをり」 酒井破天
「深秋やすぐ裏返る魔除札」 小泉八重子
「階段を濡らして昼が来てゐたり」 攝津幸彦
「もう誰もいない地球に望の月」 山ア十生
「かあさんはぼくのぬけがらななかまど」 佐藤成之
「木と生まれ俎板となる地獄かな」 山田耕司
スティーブン・ムーア、アーサー・B・ラッファー著「トラン
プ経済革命・側近ブレーンたちの証言」は幸福の科学出版から
出されている「トランポノミクス」に続く、トランプ前大統領
の経済政策を側近の経済学者達が解説した著作です。依拠して
いるのはケインズ政策ではなく、サプライサイド経済学です。
基本は減税、規制の廃止、自由貿易、通貨の安定、政府支出の
削減です。消費増税で政界、官界、財界、学界、メディア界が
大同団結する日本では、こうした考え方が「不都合な真実」で
あることがサプライサイド経済学が日本で認知されていない理
由ではないかと思われます。
池田清彦「バカにつける薬はない」を読了しました。220ペ
ージ程の新書です。本書は著者のメルマガ(2021/1から
2022/4)配信分から抜粋、再構成、加筆、編集を行った
ものだそうです。そのため内容はSDGs、ウクライナ紛争、
温暖化、生物の話、コロナ、人生論など多岐に亘っています。
著者の専門分野については概ね納得出来る内容が多いですが、
専門外の政治、歴史認識などについてはその結論に至った経緯
の説明もなくていきなり持論を言い張っているとしか思えない
発言も多く、信憑性に欠ける論究とも言えない独断の様に感じ
られます。
開高健「日本三文オペラ」読了しました。ハードカバー初版が
昭和34年なので既に65年程も経っている古典殿堂入りとも
いえる作品です。著者の代表作の一つであるこの作品は、大阪
の旧陸軍工廠の35万坪もある広大な敷地に転がっている大砲
戦車、起重機、鉄骨などの残骸に目を付けた泥棒集団”、通称
アパッチ族”の活動の描写を通した宿命的な人々のさが(性)
を描いた快作です。終戦後の一時期、一地域の渾沌さをユーモ
アを持って描き出した好著です。
原田マハの2023年11月新作「お帰りキネマの神様」を読
み終えました。「キネマの神様」の映画化台本を元に再度小説
として書き下ろしたものです。映画化に当たって大幅に手を加
えられたストーリーが原作となるという変わった一冊です。私
は映画を見ていませんが、このような「キネマの神様」もあり
かなと思わせるストーリー、ドラマになっています。セットで
原作、映画、本作をみるともっと感動できそうです。
エルド吉水著「龍子1」を読了しました。本の帯によるとフラ
ンス、イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、スペイン、ア
ルゼンチン、台湾、セルビア、コロンビア、メキシコなどの諸
外国で次々と出版されているという話題の漫画です。書評で初
めてこの本の存在を知りましたが、その評によればこの本に魅
了された3つの理由を以下のように指摘しています。(1)マ
ンガ表現としてのインパクト(2)懐かしさと新しさが一緒に
押し寄せてくる読後感(3)特異な流通経路。通常のマンガで
あれば日本発祥で各国に広がっていくパターンが多いですが、
この本は外国でまず流行ってからやっと日本に逆輸入された格
好になっています。読んでみて確かに評者の指摘は当たってい
ると思いましたが、個人的にはそこまでの素晴らしさは感じら
れませんでした。
高階秀爾「カラー版名画を見る眼2印象派からピカソまで」も
なかなか良かったです。本の帯には「新たな参考図版59点と
ともに、名画を大きく、すべてカラーで紹介。」とあるように
新書にしては多くのカラー図版と関連図版によって説明内容が
すんなりと理解出来ます。この本で紹介されている画家は以下
の通りです。モネ、ルノワール、セザンヌ、ファン・ゴッホ、
ゴーギャン、スーラ、ロートレック、ルソー、ムンク、マティ
ス、ピカソ、シャガール、カンディンスキー、モンドリアン。
高階秀爾「カラー版名画を見る眼1油彩画誕生からマネまで」
は岩波新書の2023年の新刊です。分かり易い内容です。こ
の本では500年以上前の絵画から150年程前の絵画までの
15名程の画家について解説を行っています。元々は55年程
前に刊行された本のカラー版という事ですが、参考画像も紹介
されていて、より判り易い内容となっています。この本で紹介
されている画家は以下の通りです。ファン・アイク、ボッティ
チェルリ、レオナルド、ラファエルロ、デューラー、バレスケ
ス、レンブラント、プーサン、フェルメール、ワトー、ゴヤ、
ドラクロワ、ターナー、クールベ、マネ。
百田尚樹「大常識」を読了しました。本書は「バカの国」「偽
善者たちへ」「大放言」「アホか。」「人間の業」などの流れ
をくむ、世間の様々な事件や言論に対して著者の突っ込みや怒
りや提言などを歯に衣着せず発言した記事の集成です。世間の
常識はどこまでまともなのか改めて考えさせられる一冊です。
百田尚樹/有本香による『「日本国紀」の天皇論』読了です。
既刊「日本国紀」で良い足りなかった「天皇論」についてその
時の編集者である有本香氏と対談したものが本書となります。
今また政府が提言している皇室の継承問題についてもまともな
指摘をしています。日本の歴史上、一度も絶えなかった「万世
一系」をほんの一政権という短期間に変えようとする傲慢さに
警鐘を鳴らしています。世界のグローバル化についてもコメン
トしていますが、自由と平等は相反するものでありグローバル
化が進むと世界規模の格差社会を生み出すと指摘しています。
読んで損はない一冊です。
2024年は80冊の本を読むことが出来ました。
気に入った本があったら読んでみて下さい。
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