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* * * 読書雑記(2025年) * * *
河治和香の2025年11月初出の「旅行屋さん」は実業之日本
社からの出版です。明治時代に駅での立ち売り弁当販売販売を初
めて開始した南信太郎と、その息子である新助が初めて開始した
団体旅行を史実を元にして描いたフィクション仕立ての小説です。
当時の実際の旅行案内なども掲載して解説している所などは完全
にノンフィクションです。読み応えのある歴史書、旅行記として
上質な小説に仕上がっています。
百田尚樹「風の中のマリア」を読み終えました。この著者にして
は変わったテーマの小説です。主人公マリアはオオスズメバチの
ワーカー(メス)です。オオスズメバチの生態についての科学的
な知見を十分に盛り込んだ上で小説仕立てにするという趣向は他
でも類を見ません。昆虫好きの読者にとっては格好の読み物とな
っています。ニホンミツバチ、セイヨウミツバチとの関係性を始
めワーカーの寿命や生態、毒液成分や噴出の動態、アリの生態と
の類似性、ワーカー同士の遺伝子濃度の関係性、女王蜂の生態、
オスバチ(弟と甥)のゲノム共有率など専門書に見られるような
内容まで盛り込まれています。著者がなぜこの本を執筆したのか
は判りませんが巻末には学術的な補足説明と参考文献、虫の大家
である養老孟司の解説まで付いていて至れり尽くせりの内容です。
PHP新書「新型コロナは人工物か?」を読了しました。本書は
2024年8月に出された新刊です。著者は昨年まで京都大学に
勤務されていたというウイルス学の専門家である宮沢孝幸氏です。
『新型コロナウイルスが人工である』ということを公言すると職
を失う可能性があるという医学界の風潮がある中で、衝撃的な研
究成果を我々素人にもある程度理解出来る様に平易に解説した貴
重な書籍です。異常な状況については、報道で『武漢ウイルス』
と騒がれた発生当時だけに留まらず、大流行したオミクロン株に
ついて更に詳しく述べています。オミクロン株については人工的
でなければ絶対に説明が出来ないという塩基配列での非同義置換
箇所が30箇所もある上に、途中段階の変異体が無いという異常
さです。この本を読めばおそらく誰でもが著者の言い分に納得が
いくと思われますが、不可解なのはこの様な重大な告発が研究者
の間で完全に無視されている上に、マスコミもまったく取り上げ
ないという事です。この書籍での言い分が正しいのであればこれ
は世界的なテロ事件です。逆にもしもこの書籍での言い分が陰謀
論やトンデモ本だというのであれば関係者(学会や報道期間)は
それを明らかにする責任があると私は考えますが、現状はタブー
視して著者以外には誰も触れたがらないというのが現状の様です。
マスコミの正義はどこにあるのか改めて問われる案件です。
新興医学出版社「クマ外傷」は2025年5月末に出版された最
新刊です。今年のクマ被害を受けて専門家的な内容を一般人でも
ある程度理解出来るように平易に書かれた啓発的な図書です。但
し、内容は具体的で凄惨な写真も多数掲載されているので閲覧に
は注意が必要です。クマ被害の報道で「意識はある」「会話は出
来る」などという言葉を聞いてそれがどんな状況なのかずっと疑
問に思っている方の疑念を一気に解決してくれる本です。個人的
には多くの方に一読をお勧めしたい一冊ですが、僅か90ページ
程の小冊子で税込み4000円近い言ってみれば専門書ですので
図書館などに置いてあればそこでの閲覧がお勧めです。因みに現
時点(2025年11月末)での全国のクマ被害は230名、死
亡者は13名、クマ捕獲数は9867頭でいずれも過去最多だそ
うです。
養老孟司「生きものを甘く見るな」は地域と生物の繋がり、自然
と人間の関わりなどについて広範に論じたエッセイ集です。僅か
200ページ程の中に70編程もの話題が収められています。一
読の価値あるテーマが盛り沢山です。この本の良い所は、何より
読みやすく色々な物の見方に気付かせてくれる事です。章テーマ
は、1.地域は「自然」から考えればいい、2.生きものに教え
られること、3.地域で「働く」ということ、4.地域創生の根
本は人口問題、5.見方しだいですべては変わる、6.徒然なる
ままに社会について考えた、7.私にとって地域とは鎌倉の7章
からなります。
アガサ・クリスティ「火曜クラブ」はミス・マープルが秀逸な推
理力によって難事件を解決していく短篇集です。ハヤカワ文庫の
著者の数多くの名作集の一冊です。450ページ程の冊子の中に
13の短篇が納められています。謎解きが少し分かりにくい所も
ありますが構成も様々で楽しめる一冊となっています。
百田尚樹/有本香「放送禁止。「あさ8」で知るニュースの真相
」を読み終えました。著者はともに日本保守党のメンバーです。
テレビが報じないニュースの裏側を克明に紹介、解説してくれて
います。第一章では再エネ利権問題として上海電力、岩国メガソ
ーラー、風力発電、中国製パネルの問題点などを取り上げていま
す。第二章ではLGBT法、ジェンダー問題、それに絡む皇位継
承権などを論じ、第三章では自民党の正体として体制の問題を論
じています。第四章では裏金、中国・パチンコ業界、第五章では
政治不信に元凶について論じ、第六章では財務省と経団連の罠と
して今話題のガソリン減税、大学無償化、消費税増税、保守とは
何かなどを論じています。一読しておくべき本です。
朝日文庫「マイメロディの『論語』」はヴィレッジヴァンガード
で安く購入したシリーズ本の一冊です。まだ他にも何冊か購入し
ようと思っていたら、一番近くのヴィレヴァンが閉店してしまい
ました。困りものです。
KKベストセラーズ「リベラルの自滅」は「日本再発見」講座3
というサブタイトルの付いた馬渕睦夫の2017年の著書です。
「日本再発見」講座1は「和の国・日本の民主主義」、講座2は
「グローバリズムの終焉」です。著者は一貫して「リベラル」や
「グローバリズム」の問題点を指摘してきており、「愛国主義」
「ナショナリズム」など保守路線の主張をしています。本書でも
リベラル思想、ポリティカル・コネクトネス、偏向報道、言葉狩
りの問題、国連の正体、グローバル経済、親中勢力、メディア、
北朝鮮の存在、ウオーターゲート事件、トランプおろし、安倍お
ろし、天皇譲位、女性宮家問題、などの切り口からこれらの深掘
りをしています。一読する価値ある一冊です。
海野弘「366日絵のなかの部屋をめぐる旅」は366日毎日楽
しめる室内をテーマとした絵画集です。1ページ1枚、簡単な解
説と共にカラーの絵画が掲載されています。絵の大きさは12c
m×14cm程あるのでかなり詳しく雰囲気を味わう事が出来ま
す。月ごとにテーマが決められていてリビングルーム、ダイニン
グルーム、ベランダ、テラス、子ども部屋、女性の部屋、書斎、
寝室、温室、窓辺の情景などに分かれています。絵画のタイトル
、作者、制作年、絵画サイズ、展示場所などの基礎情報も掲載さ
れています。
芸人ヒコロヒーの最初のエッセイ「きれはし」を読了しました。
全160ページ弱の冊子ですが収録されている17編の内7編が
書き下ろしの様です。容易に推測されるように、ヒコロヒーのエ
ッセイなので高邁な思想や深遠な真理が述べられているわけでは
ありませんが、斜に構えた物の見方や特異な考え方の一端が言葉
の端々に現れて納得出来るエッセイとなっています。著者の著書
である「黙って喋って」が最近、第31回島清恋愛文学賞に選考
されたというニュースを見ましたが、恋愛を巡る18の短篇集と
いうことでこれも機会があれば読んでみたいと思います。
馬渕睦夫の近刊「ディープ・ステートの残滓が集まる日本でいい
はずがない」を読み終えました。前章と後章の2つのパートに分
れていますが、全170ページの内、130ページ程を占める前
章では主にトランプ大統領の発言そのものを個別に解説していま
す。タイトルは『世界の潮流から逆行する日本』です。日本のメ
ディアが日々発信している情報の真偽が深く問われています。後
章では『日本に蔓延るプロパガンダの残滓』というタイトルで、
以下に示す10項目について解説しています。@トランプは暗殺
されるAトランプはディープ・ステートと妥協するBプーチンは
失脚するC第三次世界大戦が起こるD台湾有事が起こるE中東戦
争が全面化するFアサドは終わったG正義はゼレンスキーにある
Hウクライナが消滅するIEUが団結する。多くは納得出来る内
容ですが、Gだけは疑問が残ります。ロシアの侵攻のきっかけが
ウクライナ内でのロシア人の迫害にあったとしても結果的にロシ
アの侵攻を正当化することは非正義だと思います。現代において
超大国であるロシアが政治的解決ではなく武力攻撃による解決を
することが許されるようであれば、どの国が何をしても誰も止め
る事は出来なくなります。ましてやロシア、アメリカ、ウクライ
ナの間にはウクライナが核を手放すことになったブダペスト覚書
きがあります。今となっては単なる紙切れに過ぎないかも知れま
せんが、ロシア侵攻時のアメリカの容認にも強い怒りを覚えます。
哲学者である土屋賢二氏の描くエッセイ「記憶にありません。記
憶力もありません。」は文春文庫の最新版です。一話3ページ程
の短いエッセイなので読みやすいです。物事の見方や話術の妙を
教えてくれる一冊です。為になるかどうかは判りませんが著者の
本を読んだことの無い方には一読の価値ある内容です。
下村敦史「ガウディの遺言」を読み終えました。PHP研究所か
ら発行されている約300ページのハードカバーです。著者は第
60回江戸川乱歩賞受賞作家であり、この本も上質な本格長編ミ
ステリとなっています。サグラダ・ファミリアで発生した殺人事
件をきっかけに主人公の石工親娘がトラブルの渦中に、更にはこ
の未完の建物を巡る陰謀が明らかになっていきます。初版第一刷
にはありがちですが、謎解きが盛り上がって来る後半214ペー
ジで肝心のキーワードである「石板」→「石版」の誤植をみつけ
てしまい少し我に返ってしまったのが唯一の敗因でしたが楽しく
読めました。
河治和香著/杉井ギサブロー絵「よりぬきお江戸じょんのび便り
」を読み終えました。新潟日報連載10年記念出版だそうです。
著者に関係する人々や物事についてのエッセイ集です。100話
が約200ページに収められています。毎話、杉井ギサブローの
絵が文章に彩りを添えています。これまであまり意識していませ
んでしたが杉井ギサブローは虫プロの設立にも参加したようなア
ニメーターだそうで、「鉄腕アトム」「銀河鉄道の夜」「タッチ
」「まんが日本昔ばなし」などの監督も務めているそうです。
山正之「変見自在、中国は2020年で終わる」を読了しまし
た。「週刊新潮」の名物連載コラム2018年8月から2019
年8月までの分を纏めたものです。このシリーズの第14弾だそ
うです。一話が4ページ弱という短いコラムですが内容は重たい
です。多くの良識ある国民が是非とも読むべき本の筆頭です。
川口マーン惠美「メルケル仮面の裏側」はなかなか読み応えのあ
るメルケル論となっています。PHP新書で280ページ程の小
冊子ですが中身は濃いので読むのにかなり時間が掛かりました。
16年間という長期に亘りドイツの首相として活躍したメルケル
氏はEUにも大きな影響を与え続けました。一般には民主主義の
守護者、難民などに対する人権の擁護者、環境保護者といった印
象の強いメルケル氏ですが、著者の深掘りによって果たしてそれ
らの印象が正しいのか、鋭い考察を加えています。脱原発、同性
婚合法化、難民受け入れなどを独裁的手法で次々と実現していっ
た実績を冷静にみれば、その政策は決して保守ではなく全体主義
か社会主義的な雰囲気が拭いきれません。是非、ご一読戴きたい
一冊です。
養老孟司「日本が心配」は4つのテーマについて各分野の専門家
と対談したものです。テーマは(1)2038年頃と予測されて
いる南海トラフ地震(2)被災のシミュレーションと復興ビジョ
ン(3)巨大地震後の日本経済(4)復興後、自然環境はどう変
化するのかの4つです。巨大地震に関連する色々な貴重な情報を
知ることが出来てコンパクトな新書ながら有意義な一冊です。浅
い場所で発生した過去の巨大地震の地図、日本の河川と世界の河
川の急流の程度の状況、70万年前からの氷期と間氷期のグラフ、
中央構造線の南側には活断層が無いという実態、阪神淡路大震災
や東日本大震災の予測が政治的に無かった事にされた経緯、大震
災と復興後の生物相との関連など興味深い内容が満載です。
呉善花「なぜ「日本人がブランド価値」なのか」を読み終えまし
た。この本はいつもの本屋サイトでは入手出来ずたまたま見掛け
たAmazonサイトで新品を購入したものです。平成28年の
初版ですが、内容的には今読んでもさほど古びた感じはありませ
ん。日本人の美意識や日本語の特殊性、韓国人から見た日本感、
日本文化(漫画、アニメ、キャラクターなど)などの内容から成
っています。漠然と感じている日本の良さがより一層実感出来る
一冊です。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界30」やっと全巻読了
しました。2006年から2007年頃に掛けて毎週発行されて
いたガイドブックですが、20年も経つともう藤沢周平を知らな
い若者も多くなっているのではないかと思います。しかし藤沢氏
の数々の小説は時を超えて今読んでも十分読み応えがあります。
若者にも読んで欲しいものです。この解説ガイドの最終巻では氏
の絶筆となった「漆の実のみのる国(上・下)」を紹介していま
す。主人公は上杉鷹山です。史実に基づく歴史小説です。
「養老先生、がんになる」は養老孟司/中川恵一両氏ほかによる
養老孟司のがん治療の顛末をまとめたものです。色々な気づきや
注意すべき点などが判って為になります。養老氏の著作について
は単行本化されたものについては相当数読んでいますが、まだま
だ長生きして欲しいものです。
「原田マハのポスト印象派物語」は2025年3月末に発行され
た原田マハの最新刊です。僅か120ページほどの小冊子ですが
5編の短篇連作が収められています。ポスト印象派とは何かにつ
いても解説と系統図が示されていて助かります。物語と共に掲載
されている絵画はすべてカラー図版です。この本で主に取り上げ
られている画家はエミール、ゴッホ、ゴーギャン、セリュジエ、
ルドン、セザンヌなどですが新印象派、ポン・タヴェン派、ナビ
派、フォービズム、キュビズム、など色々な技法の絵画や画家も
登場します。コンパクトに纏まった興味深い本です。
百田尚樹/渡部昇一「ゼロ戦と日本刀」読了しました。PHP文
庫で230ページほどの小冊子です。学生時代に社会科で近現代
の歴史は試験に出ないので覚える必要は無いと言われて碌な教育
を受けなかった戦後世代が読んでおくべき大東亜戦争関連の貴重
な資料がこの一冊にぎゅっと詰まっています。もちろんこの本は
戦争賛美の本ではありませんし、単に歴史をなぞったものでもあ
りません。彼我の国民性まで丹念に浮き彫りにして現代の我々が
どの様にエネルギー問題に向き合っていったら良いのかの提言ま
でしています。本書の主なタイトルをざっと上げてみると以下の
様です。ゼロ戦:世界最高なのになぜ負けた?、戦艦大和はなぜ
出撃しなかったのか、日本には「盾」の思想がない、資源の無い
国が人を大事にしなかった、アメリカの宣伝に騙されるな、勝ち
負けはわずかなことで決まる、失敗を不問に付す組織・失敗を生
かす組織、誰が日米戦争を望んだのか、公務員天国は亡国の道、
奇跡のような復興の背景、原発事故とメディアの情報操作。
岩谷テンホー「大盛!!みこすり半劇場 2025春」を読了し
ました。ぶんか社発行の4コマ漫画で、このシリーズの最新刊で
す。無条件で笑えます。しょうもない男の生態を4コマの笑いで
みごとに描き出しています。300ページ以上あって1ページに
2話ほど描かれているので600話程収録されている勘定ですが
税込み僅か690円はお得です。笑いが足りていないと感じてい
る特に男性にお勧めです。
養老孟司/久石譲「脳は耳で感動する」読了しました。現代音楽
の作曲家である久石氏との対談ということで本書の内容は音楽や
音について語られる事が多く、いつもの養老氏のフレーズとは一
線を画した独特の見解が多く語られていて新鮮です。章タイトル
や小タイトルのキーワードをざっと挙げてみると、脳の邪魔をし
ないのが名曲?、メロディーは時空の記憶装置、創作の二面性、
モーツァルト効果の眉唾、効果音も肉声で、絶対音感、和音が人
の心を豊かにする、人間はみな芸術家、いい音楽とは何か、など
など音楽関係に寄り添ったテーマが並んでいます。気にいった言
葉は「自分の一生というのは、たとえ汚い安いキャンバスと絵の
具しかなかったとしても、それで描ける最大限の作品なんです」
という箇所です。
海野弘「366日物語のある絵画」を読了しました。大判サイズ
(23×18×3cm程)全編カラーで1枚/頁でギリシャ神話
、聖書物語、中世伝説物語、妖精などをテーマとした絵画が1年
366日分、紹介されています。有名な「ヴィーナスの誕生」や
「バベルの塔」「オフィーリア」などを始めとして各種絵画が楽
しめます。途中には物語を巡る人物相関図(トロイア戦争、ペル
セウス、テセウス、オリュンポスの神々など)の解説などもあっ
て絵画を見る際の参考になります。お勧めしたい一冊です。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界29」を読み終えまし
た。この冊子では藤沢周平の小説『白き瓶』を紹介しています。
小説家であり歌人でもあった長塚節の生涯の事実を辿ったもので
す。関係の深かった正岡子規、伊藤左千夫などとの関係性を示す
人物相関図や抄録に加え、この本の読みどころを作家の出久根達
郎が解説しています。
昭和17年発行の全國高等女学校長協会編「女子禮法要項」の復
刻版「【復刻版】女子禮法要項」を読み終えました。竹内久美子
の解説です。日本人としての礼儀や常識を教えてくれる一冊です。
日常一般の心得から姿勢、言葉遣い、起居、神社の参拝、国旗の
上げ方、食事の仕方、接待、慶弔、服飾、近隣との付き合いから
公共での振る舞いまで様々な作法や常識を教えてくれています。
我々の親世代や祖父母世代の一般教養書ですが、令和の現代でも
大いに参考になる一冊です。
朝日文庫「ポムポムプリンの『パンセ』」はこのシリーズ第四弾
の文庫本です。名著パンセのいくつかの格言に分かり易い解説と
キーワードを付けた入門書となっています。ページの1/3程が
ポムポムプリンの絵になっていて手に取りやすい一冊となってい
ます。この本には1件/ページで126件が収められています。
「週間新潮」連載の山正之の名物コラム傑作選第18弾「変見
自在 ヒットラーは生きている」を読み終えました。2024年
12月に発行された最新版です。掲載されているコラムは50篇
程で週刊誌初出は2022年9月〜2023年9月の一年ほどで
す。世の中にコラムは沢山ありますがこれほど真実を突いた内容
の濃い辛口コラムは滅多に見られません。著者には社会部記者、
特派員などの経験に裏付けされた確かな見る目があります。それ
にしてもよくこれだけ悪口を書いても刺されないものだと思う程
見る人によっては殆ど名指しで悪行が指摘されています。私の好
きな作家に山本夏彦がいますが、この作家の場合には世間の不条
理を鋭く指摘しつつ返す刀で読者である我々をもばっさり切るよ
うな一刀両断の話芸で世の中のいやらしさを鋭く突いていました
が、山氏の場合は世界の大国ぶった国々に蔓延る選民思想や各
地の紛争で高笑いしている勢力、マスコミの嘘、最近の風潮など
に対して徹底的に指摘して筆誅を加えています。最近話題となっ
ているLGBTに対しても歴史を踏まえた確かな見解を披露して
います。良い勉強になります。
津村記久子著「浮遊霊ブラジル」は文春文庫180ページほどの
小冊子です。7篇の短篇から成ります。私は読むのは早い方では
ありませんが、この本は鯉釣りをしている内に読み終えてしまい
ました。11時〜17時まで鯉の魚信がまったく無かった事が、
逆に幸いして実質3時間半ほどで読み終えた勘定です。鯉釣りは
吸い込み釣りを行っているので、一投すると2時間程はそのまま
放置して待つという向こう合わせの釣りです。魚信があれば釣り
上げて、また餌を交換して次の魚信を待つことになるので忙しい
ですが、今や釣り場である酒匂川は多くの場所が平坦化して砂地
になってしまっている上に本流は増水していて鯉釣りに適した溜
まり場が減っており、なかなか釣りにくくなっています。本読み
をのんびりするには最適です。この本の解説をするのは難しいで
すが、本の帯には『口うるさいうどん屋を訪れる客/再婚したウ
ルグアイ人サッカー選手とその妻/どんなときでも必ず道を訊か
れる人/憧れの海外旅行を前に急逝し、憑霊しながら旅する私/
というようなおかしな内容の要約が載っています。親父らしさの
にじみ出た様な話や、ほっこりするような話もあります。
石川達三「花の浮草」をやっと読み終えました。文春文庫500
ページ程の長編小説です。社会性の濃い風俗小説の先駆者と言わ
れていますが、亡くなってから既に50年程も経ってしまい今や
この著者の名前を知っている人は相当な年配者だけかと思われま
す。「花の浮草」の主人公である伊沢春江は作家としての能力は
高くは無かったが女性としての独特の魅力によって有名男性作家
と次々に関係を持ち女性作家としての地位を築きますが、その奔
放な性格や金銭に対するルーズさなどから哀れな最期を迎える事
になります。その生涯と心理描写を第三者の視点から描いた小説
ですが、この小説には実在のモデルがあります。主人公の伊沢春
江は女流作家の真杉静枝、主要登場人物としては、古林篤麿(武
者小路実篤)、片岡治郎(中村地平)、荒木忠行(中山義秀)、
佐々木俊雄(小林秀雄)、坂田安雄(坂口安吾)、名村斉次郎(
田村泰次郎)、日比野亜平(火野葦平)、多田茂雄(田辺茂一)
、吉岡則子(吉屋信子)、若林文子(林芙美子)、高木八郎(広
津和郎)、浮田千恵子(宇野千代)など超有名作家が軒を並べて
います。このような対比付けをしなくても十分に内容は楽しめま
すが、実在の人物を思い浮かべて読むのもまた一興です。なお、
この本は現在は新本では入手は困難な様です。
馬渕睦夫「馬渕睦夫が読み解く2025年世界の真実」を読了し
ました。この著者の本はどうも説明不足なのか判りにくいです。
サブタイトルに「ディープステートはトランプに敗れ、ついに自
壊へ!」とありますが、最後まで読み通してもトランプに本当に
敗れたのか、自壊に向かっているのかその根拠は曖昧です。更に
内容的にも、第一章で十七条の憲法や五箇条の御誓文、教育勅語
などを説明し、第二章では歌会始のお題やガーター勲章授与、第
三章では芥川龍之介の「奉教人の死」の中の「神神の微笑」を取
り上げ題記のテーマの裏付けとして解説を加えていますが、冷静
に見てこじつけが過ぎるような気がします。この本が腑に落ちる
という人は逆に少しヤバいような気がします。また、この著者を
含めて何人かの中立寄りと思える論者がロシア擁護論を掲げてい
ますが、そこにも違和感があります。この本のP85では『プー
チン氏は一方的に侵略したのではなく、ロシア攻撃の前線基地化
したウクライナからの軍事攻撃が迫っていたので、自衛の視点か
らウクライナの軍事基地を無力化するために特別軍事作戦を断行
したのです。』とありますが、一般人の認識では(1)ロシア侵
攻当時、弱小ウクライナが大国ロシアを軍事攻撃するような無謀
なことをする気配は微塵も感じられなかった(2)ロシアは事も
あろうに同盟国であるベラルーシと組んでウクライナの軍事拠点
では無くウクライナを丸ごと侵略しようとした(3)攻撃対象は
ウクライナの軍事拠点や軍隊ではなく一般人を見境無く殺傷した
上に一部は完全に焼却したり、子どもまで含めて誘拐しシベリア
送りまでした(4)先の大戦から80年近くも経っていて国際法
も常識となっている現在、大国が一方的に国境を侵して侵略する
事などあってはならない(5)況してや『ブタペスト覚書き』の
当事国が核で恫喝した上でウクライナを侵略することは許されな
いし、侵略当時やはり当事国であるアメリカがロシア侵略を許す
様な静観の態度をとるなど許される事ではありません。そう言っ
た意味ではアメリカも同罪です。大統領はバイデンからトランプ
に変わったと言っても偉そうにトランプ大統領がゼレンスキー大
統領を停戦調停で恫喝する様な茶番は最低の態度です。我々の様
な一般市民であってもそれほどバカではありません。政治家や解
説者は責任を持ってしっかりと説明する必要があります。
朝日ビジュアルシリーズ「週刊藤沢周平の世界28」を読了しま
した。この冊子で解説されているのは小説「春秋山伏記」です。
「春秋山伏記」は「験試し」「狐の足あと」「火の家」「安蔵の
嫁」「人攫い」の5編から成り、この小説では江戸時代後期の山
伏の仕事や里山での人々の暮らし振りが描かれています。小説で
は村一番のガキ大将だった男が山伏となって地元に戻って来る様
子を描いていますが、「藤沢周平の世界」ではこの主人公の特徴
的な言葉の端々を抄録の形で取り上げるとともに、ストーリーマ
ップ、山伏の生活や装束の紹介、山伏が治癒する対象となる憑き
ものの紹介、小説の舞台となる地域の紹介など関連する情報を余
さず盛り込んでいます。オールカラー、大判、30ページほどの
小冊子です。
宇野亞喜良/横尾忠則「海の小娘(絵本)」復刻版を読み終えま
した。文章は梶祐輔です。前半部分のイラストが横尾忠則、後半
部分のイラストが宇野亞喜良で途中でクロスしています。付属の
赤・青のセロファンを重ねるとどちらかの絵と文字が消え、他方
が浮かび上がるという実験的なデザインの絵本です。内容は地図
にもない外国の港町の祭の日の出来事で、白いヨットに乗って現
れた少女と主人公と船長の物語です。
養老孟司/名越康文の対談「虫坊主と心坊主が説く・生きる仕組
み」を読み終えました。養老孟司の「らしい」発言が随所に見ら
れます。例えば以下の様な内容です。「やりたいことっていうの
は仕事ではない」「人の評価は意味が無い」「人が作ったものに
は興味が無い」「管理が出来ないものを危機という」「関東大震
災が日本を戦争に突き進めた」「公共事業を減らしたからGDP
が下がった」240ページ程の冊子で読みやすいので、気になる
方は本屋でぜひ手に取ってみて下さい。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界27」読了しました。
新井白石を描いた藤沢周平の「市塵」をベースに描かれた解説書
です。物語のあらすじ、人物相関図、関連マップ、抄録に加えて
新井白石の合理精神についての概説、生類憐れみの令の解説、落
書についてなど僅か35ページ程の中に関連項目がぎゅっと詰ま
っています。この様な良書が一過性のシリーズとしてしか発売さ
れずに消えてしまうのは何とも惜しいです。
海野弘解説・監修の「366日風景画をめぐる旅」は1年間毎日
1ページずつ季節に合った絵画を載せて簡単な解説を加えた絵画
集です。絵画の作者に加えて描かれた場所、主なモチーフ、制作
年、サイズなどの基礎情報も記載しています。素敵な絵画が14
×14cmほどのオールカラーで楽しめます。このシリーズ本に
はあと3冊(物語のある絵画、部屋を巡る旅、ファッション誌)
あって購入済みなのでおいおい読んでいきたいと思います。
講談社新書「フォン・ノイマンの哲学」読了です。著者は論理学
・科学哲学の研究者である高橋昌一郎氏です。本書の内容は「マ
ンハッタン計画」の原爆開発の中心的指導者であり、かつコンピ
ュータの基礎概念である「ノイマン型」計算機を開発したことで
も知られるノイマンの生涯を解説したものです。分かり易く纏ま
った良書だと思います。但し問題は例えばこの本のP185に記
されている以下の様な記述です。『戦没兵士の60%以上は、補
給をまったく考慮しない大本営の無謀な作戦によって殺害された
。ナチス・ドイツはユダヤ人を「大量虐殺」したが、当時の日本
の戦争犯罪者は、日本人を「大量虐殺」したのである。……もし
日本がもっと早く降伏していれば、多くの「餓死」は防げたし、
アメリカは原爆を投下できなかっただろう。』このような自虐史
観に染まったかのような極めて偏った考え方を持った著者が日本
の大学で教えている事が大きな問題です。世界の常識でもナチス
の犯罪と日本の戦争とは一線を画している状況で、敢えて同一視
するような記述は意図的に悪意をもって日本を貶めるものです。
また、ハミルトン・フィッシュ著『ルーズベルトの開戦責任』な
ど多数の米国人の著述によっても、先の戦争の開戦責任は米国側
にあるというのが現在の常識です。当時の国際法に照らし合わせ
ても原爆投下による無辜の一般市民の「虐殺」は明確な国際法違
反であり、日本側が降伏しなかった事が原爆投下に繋がったかの
ような記述には日本人に対する悪意が明確に現れています。著者
は長く外国で学んで来たようなのでアメリカに毒されているのか
も知れませんが残念なことです。
養老孟司「わからないので面白い」を読み終えました。2024
年11月初版ですが、実は過去に出版された本から22編のエッ
セイを選んで再編集したものだそうで、底本は以下の4冊です。
『毒にも薬にもなる話』『まともな人』『こまった人』『ぼちぼ
ち結論』。因みに私は既に上記の4冊は読了ずみです。なお、本
書の最後には二十年後のQ&Aと題して2024年8月にされた
編集部と養老孟司氏の対談が20ページ程掲載されています。
川口マーン惠美「老後の誤算日本とドイツ」は2018年11月
初版のドイツと日本の介護・医療制度の国際比較ルポルタージュ
です。今から6年半程前のものなので数値が古くなっている部分
があるかも知れませんが状況比較としてはこの本でも十分有効だ
と思います。格差の大きいドイツに比べ日本の介護保険医療制度
はよく機能しているという印象を受けます。ドイツでは庶民は老
人ホームに入る事は難しい事や、介護費用は最後には子どもが負
担させることなど知らなかった事は多数あります。どの様な福祉
制度が日本の国民にとって良いのか考えさせられる一冊です。認
知症、介護福祉士不足、延命治療の問題なども論じられます。
養老孟司「考える。生きるために、考える。」はリベラル文庫の
2024年9月新刊ということでネットで購入しましたが、20
年ほど前に出版された「あなたの脳にはクセがある」を再編集し
て改題したものだということが、読み終わって最終ページを開い
てやっと判りました。しかし20年も前の本だと読んでいても既
に内容はほとんど忘れてしまっているので新鮮な気持ちで読めま
した。この本の内容は多岐に亘っていて、人間が考えた事は必ず
実現するといった第一章から始まって、情報社会の人間の幸福、
子ども達の未来、少子化問題、歳を取るとはどういう事か、都市
と田舎、歴史問題、現代医学、倫理、オウム事件、都市型犯罪、
政治について、言葉についてなど傾聴すべき内容が詰まっていま
す。僅か350ページ程の小冊子ですがお勧めの一冊です。
ちくま文庫「千夜一夜物語E」読了です。この文庫はバートン版
ですが、バートン版は「千夜一夜物語」の中で最も官能的と言わ
れるバージョンだそうです。全11巻なので残り5冊です。
ちくま文庫「千夜一夜物語E」を年初から読んでいますが、まだ
読み終えません。内容が難しい訳ではありませんが600ページ
を越す本の分厚さと、本文の文字より更に小さな注釈がたくさん
あって読むのに時間が掛かっています。この巻では千夜一夜物語
の第397夜から第536夜までが掲載されています。1001
夜のちょうど半分程まで来たといった所です。この巻の特徴は第
436夜から第462夜の約100ページ程の「アブ・アル・フ
スンと奴隷娘のタワッズド」で描かれている文章学、詩歌、法律
、教典釈義、哲学、宗教、算数、幾何学、教典、医学、修辞学な
どの教えが詳しく述べられているところです。また、第482夜
から第536夜に及ぶ物語は50ページにも及ぶ冒険譚となって
います。なかなか読み応えがあります。
主婦と生活社「積ん読の本」は書評で見て購入した本です。凡そ
本読みの人の多くは未読本を抱えているものと思っていますが、
私もご多分に漏れず未読本を多数抱えておりこの本で皆さんが積
ん読をどう考えているか知りたいなと思っていました。この本で
は12名の本読みが「積ん読」に対する私見や蘊蓄を傾けていま
すが色々な見方があって面白いです。加えてこの本では各評者の
自宅本棚の写真がたくさん掲載されていてどんな本を読んでいる
のかの一端が窺えて興味深いです。何なら著名人の本棚の写真だ
けを纏めて一冊の写真集の様な本にしてくれても良いとまで思っ
ているので楽しんで読む事が出来ました。なお、積ん読の内容に
ついては実際に本屋で本を手に取って眺めて確認して下さい。
朝日ビジュアルシリーズ「藤沢周平の世界26」読了しました。
文庫「闇の歯車」の解説書です。35ページという薄い冊子です
が人物相関図、あらすじストーリー・マップ、抄録、読みどころ
などがコンパクトに纏められています。江戸の市井を舞台にした
作品であることから、江戸の「粋」についての解説や江戸時代の
一般的な飲み屋風景、逢魔が時の解説など原作に絡んだ民俗学的
風物の解説など至れり尽くせりです。私が「闇の歯車」を読んだ
のはもう20年程も前ですが、この解説書を読んでもう一度原作
を読んでみたくなりました。
三浦哲郎著「盆土産と十七の短篇」を読み終えました。中公文庫
2020年の新刊です。掲載されている18の短篇の多くが教科
書に採用されているということで、編集後記によれば12編ほど
が使われているようです。作品には濃淡の差はありますが、それ
ぞれ独特の死生観が漂っています。著者によれば自分の気に入っ
た書き出しさえ思いつけばあとは楽しんで短篇をものに出来ると
いっていて、確かに各短篇はそれぞれ独自の世界観を自由に表現
しているように思えます。タイトルもなかなか味わいがあります。
盆土産、金色の朝、ジャスミンと恋文、春は夜汽車の窓から、お
おるり、鳥寄せ、睡蓮、じねんじょなどなど独特です。
2025年は色々あって46冊しか本を読むことが出来ました。
気に入った本があったら読んでみて下さい。
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