「文学横浜の会」
エッセー
6月「仕事について」
8月「自然災害」
2000年9月
「海外旅行」 九月の声を聞いてもまだまだ残暑で蒸し暑い日が続く。 これからゆっくりと夏期休暇を取ろうとする者もいるだろうが、 本格的な景気回復とはいかないまでも、例年通りと言うか夏休みを利用して多くの日本人が 海外旅行に出掛けた。不景気だ不景気だと言われながら真に結構な事である。 私も何年か前にリックを背に、安宿を泊まる旅をした。 アジアの国の中には日本では考えられない程の安さで泊まれる宿がある。それこそ百円とか二百円で 泊まれる安宿だ。もっと安い宿もあると言う。それは貨幣価値の違いであり、経済力の違いであり、 国力の違いからくる。無論、そうした国にも外国人旅行者用としてそれなりの宿もあるが、 若い旅行者には現地人と同じ料金で安宿に泊まりながら旅をするのが魅力なのだ。 そういう宿に泊まるにはそれなりの覚悟と勇気も必要だ。 汚い・異臭などは当り前で、部屋にガタガタ廻る扇風機があればまだいい方だ。 トラブルもある。汚い格好をしているとは言え、海外旅行をする者は現地の者には金持に見える。 旅行者にとって千円・二千円はたいした金額ではないが、現地人には一月・二月の給与に相当する。 それで旅行中にトラブルに巻き込まれる者もいる。 だいたい詐欺師とか旅行者狙いの犯罪者は、やたらに親切で片言の日本語や英語で近づいてくる。 それが女である場合もある。私も何回か騙され引っかかった。 中には本当に親切な現地人もいるから、判断が難しい。 でも実感から言うと向うから話し掛けてくるのは百%そうした手合いだと思った方がいい。 お金を取られるぐらいならまだいい。 中には命まで危険な目に遭う場合もあり、単独行には十分な注意が必要だ。 日本の安全に慣れ、緊張感のない生活をしている若者にはそういう旅行もいいかも知れない。 でも命だけは落とさないように。そうした危険には近づかないに越した事はないが、 向うから近づいてくるのだから、危険を察したらあらゆる知恵を働かせて逃れる手立てを考える。 それしかあるまい。そして国の豊かさとは何か、国力とは何か、 国が安全であるとはどう言う事なのかを考える。 海外旅行とは各国の名所旧跡を巡り、異文化の中に身を晒し、 歴史上の場所に身を置く楽しみと同時にそうした事も考えてみる旅にしたい。 (KK) |
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