= 実験工房 = 次世代?のヴァイオリンは・・ |
ブリッジもデザイン・制作 | 変形ヴァイオリンだけに、つきなみな普通品は使いたくない! |
いよいよ完成 | さあ、できばえと音色は? |
本体が本体だけに、つくり手としては、駒ひとつにしてもこだわりたい。
ニスを乾かしている間、いろいろと考えてみた。立てかけてある駒の右側から、少し古いタイプの駒。
白く大きいのが、普通のフランス製Aubertの未加工・新品。
3番目は、普通タイプのものから、振動の伝達に関わりない(と筆者が考えている)
装飾的な出っり部分や不用部分を極限まで削り取ったもの。
いちばん左端は、3番目と同様の形のまま、中央部の切り抜きデザインを変えるもの。
水滴を逆にしたような、少し大きめな流線型の穴、それに、左右に二つの穴をくり抜くつもり。
下の2枚は、固く、軽そうなカエデ材の端材から切り出し、
ヴァイオリン型でも、チェロ型でもない、独自にデザインしたものをこれからつくろうとするもの。
従来型の駒は、なぜか上からの弦の圧力をそのまま、直接的にではなく、
駒の中をあたかもSの字を描くように、振動経路が設定されている。
つまり、中央のハート型のくり抜きにしても、左右から食い込んでいる丸にしても、
弦の位置から、両方の脚に向かって線を引いてみると、決してまっすぐではないことが分かる。
・ もし、それを直接的な線として通してしまうと、ギスギスした音になるのか?
・ やわらかい、やさしい音が出しにくくなってしまうためなのか?
・ そのために、昔から、わざわざ遠回りさせていることだって考えられなくもない。
それをあえて、右下のカエデ材に描いた図のように、振動の伝達速度を重視した考えで、
できるだけ短い距離で伝達できる構造を考えて見た。
各弦の位置から、それぞれの脚の重心(筆者は、駒の脚の重心は、駒上部の曲線、
それに表板のアーチングなどから、それぞれの脚の中心ではなく、内側2/5程度ぐらいのところにくるものと思っている)
に向かって直線を引き、
穴を空ける際には、その通過経路を避ける位置に設定した。
その方が反応がよく、声量も大きくなると仮定しての実験である。
◇ いよいよ完成
指板を削りながら、ナットやサドルも普通通りにつくり、あとはニス仕上げを待つのみ。
C字孔でも、ストップ(正しいブリッジ)の位置にはほんの少しだけノッチ(切り込み)を入れた。
ボディ全体が、見かけがふっくらしているので、ボタン(ネックの付け根・裏板側の丸く出っ張らせた突起)
部分は直径22mmと、普通よりほんの少しだけ、大きめとった。
ペグやテールピース、スポアーなどのフィッティング用品はローズウッド製、弦は、ドミナントを張った。
魂柱も標準の6mm径のものだが、やや標準位置でOK。
はじめて音を出してみて、いままで自分がつくったどれよりも、声量があり、別の弦で開放弦の音程を弾いたとき、
その開放弦への共鳴も大きく感じられた。実に嬉しい!
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上の写真でお分かりのように、 |
ニスが仕上がったスクロール?も決して悪くない! |
完成・全体図 |
次のレッスンには本器をたずさえて行き、第三者としてお師匠さんに試奏をお願いし、評価してもらった。
レッスン前にニューモデルを出したら、先生、 『うわぁ〜、なんとなく、C字孔が猫の顔に見えてかわいい!』。
先生も、中年(失礼!)とはいってもやはり女性、視点が違う。
確かに、逆さにして見ると、眠っている猫の顔に見えなくもない。
『音は?』と聞いたら、いろいろと試奏してから 、
『家具にたとえると、ゴテゴテといかつく飾り立てたもののようではなく、すっきりと明るい感じ?・・・でしょうか』との評価。
また、『この駒も、この楽器にはユニークで合っているわね』・・・と。
声量はあるものの、先生のオールドから比べると、やはり、それは熟成していない新作の音なのか。
「すっきりと明るい音」という表現は、「よく通る透明感のある音」と捉えたのか、今回は、あまりしつこいつっ込みは入れなかった。
以前にも似たような論評を受けたことがあり、『明るい音というは、軽い音ということでしょうか』とのつっこみの質問に対し、
『そういう意味ではありませんよ』、という答えをもらった経緯があるからだ。
それに、自分の中ではある意味での仮説が立証されたり、想像の世界が具現化したことなど、
満足感が大きかったこともあり、くどくど聞く必要がないと思ったからだ。
なお、この指板は、だいぶ前に外しておいた量坂品の塗り物の指板をサンプルして、
うっかり切り出したため普通の長さより1センチほど短かかったもの。
そのことと、わずかにネックが太目だったことをめざとく指摘された。
『指板と駒との間が、少し広く空いていてヴィオラみたいに見える・・』と。
その、うっかりと計らずに身近なサンプルで切り出した経緯を説明し、
『ボクの段階では、どうせそんなハイポジは使いませんから、そのまま使っちゃいました』と弁明。
自分でも、まだ、なんとなくネックが少し太いように感じていたものだが、
早く音を出してみたいという欲望が先走り、完成を先行させたこともあって、まだまだ、多少の手直しは必要。
レッスンや練習に使いながら、これから、じっくりと修整していくつもり・・・。(05. 6/19)