<秋(三)>
とうろう
「あまた賜ぶ盆燈篭のかなしけれ」角川源義
とんぼ
「とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな」中村汀女
なし
「炊出しの外竈築き梨出荷」加藤爽暁
のちのつき
「みちのくの如く寒しや十三夜」山口青邨
のわき
「舟虫の畳をはしる野分かな」久保田万太郎
はぎ
「萩にふり芒にそゝぐ雨とこそ」久保田万太郎
はぜ
「鯊焼くや深川晴れて川ばかり」長谷川春草
はつあらし
「なんの湯か沸かして忘れ初嵐」石川桂郎
はつしお
「初潮にものを棄てたる娼家かな」日野草城
はなぞの
「花圃に水汲める見てをり手術前」石田波郷
はなの
「高山の中に日暮るゝ花野かな」大須賀乙字
ばしょう
「芭蕉葉は何になれとや秋の風」路通
ひぐらし
「日ぐらしや急に明るき湖の方」一茶
ひややか
「紫陽花に秋冷いたる信濃かな」杉田久女
ぶどう
「葡萄一粒一粒の弾力と雲」富沢赤黄男
ぼん
「盆ごころ夕がほ汁に定まれり」暁台
まつむし
「ききそめて松虫のまだ幼な鳴き」富安風生
まつよい
「待宵や女主に女客」蕉村
みにしむ
「さり気なく聞いて身にしむ話かな」富安風生
みみずなく
「蚯蚓鳴く六波羅蜜寺しんのやみ」川端茅舎
むくげ
「秋あつき日を追うて咲く木槿かな」几董
むし
「其中に金鈴をふる虫一つ」高浜虚子
めいげつ
「名月や君かねてより寝ぬ病」太祇
もず
「かなしめば鵙金色の日を負ひ来」加藤楸邨
もみじ
「強き灯の照らすところの紅葉かな」日野草城
もものみ
「桃冷やす水しろがねにうごきけり」百合山羽公
やなぎちる
「柳散るや風に後れて二葉三葉」鈴木花蓑
ややさむ
「ややさむく人をうかがふ鼠かな」乙州
やれはす
「蓮破る雨に力の加はりて」阿波野青畝
やればしょう
「横に破れ縦に破れし芭蕉かな」高浜虚子
ゆくあき
「行秋や博多の帯の解け易き」夏目漱石
ゆず
「柚子打つや遠き群嶺も香にまみれ」飯田龍太
よさむ
「しばたたく夜寒の翳を睫毛にし」大野林火
よなが
「みちのくの夜長の汽車や長停り」阿波野青畝
らん
「山に蘭渓に石得て戻りけり」青木月斗
りっしゅう
「秋立つや鷹のとや毛のさしのこり」浪化
りんご
「星空へ店より林檎あふれをり」橋本多佳子
わせ
「早稲の香や分入る右は有磯海」芭蕉
わたりどり
「鳥わたるこきこきこきと罐切れば」秋元不死男
わらづか
「山国の藁塚木菟に似て脚もてる」松本たかし
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