第101回原宿句会
平成9年10月31日 新幸橋ビル

   
兼題 初霜 黄落 杜鵑草
席題 文化の日


  東人
履歴書に紙を貼り足し文化の日
初霜や子の靴裏の渦の跡
ネオンの灯左右にながれ寒波来る
花に花重ね地を這ひ杜鵑草
黄落や磐を祀りし奥の院

  美子
掌の皺も啜りし菊膾
高鳴きの鳥の声にも黄落す
楚々として鬼の形相杜鵑草
初霜や受刑更正展の家具
皆といていつしか独り紅葉狩

  白美
黄落や国会議事堂白寿越ゆ
文化の日旧町名は蓬莱町
湖碧し受難碑に添ふ杜鵑草
黄落や背中に響くチターの音
初霜やますます固きフランスパン

  武甲
黄落や秘話伝説を刻む塚
日章旗掲ぐ木戸あり文化の日
初霜や始発列車のなじみ顔
初霜や子に老ひ隠す母の古希

  千恵子
尼寺に留守の貼り紙杜鵑草
初霜やぬるめの白湯で飲む薬
黄落や老人ホームで聞く唱歌
文化の日祖父の形見の袴かな
土葬した後の土盛り雁の棹

  利孟
初霜の畑へ炎音の熱気球
日の丸の白の際立ち文化の日
戸惑ひの鎌上げきれず枯れ蟷螂
黄落や顔に目のなき着せマヌカン
月に晒す消防ホース杜鵑草

  希覯子
街中に農学部有り黄落期
鎧戸の絵解きをするや文化の日
自転車の荷籠の中へ銀杏散る
杜鵑草恒春園に近く住む
初霜や枕木無垢に通学路

  正
これよりは女人禁制杜鵑草
今日もまたどろんこ遊び文化の日
黄落やアルルの道は一色に
初霜や休耕田も装へり
マーラーの天に昇るや神の留守

  箏円
草刈りの音近づきぬ杜鵑草
黄葉のからから遊ぶ石畳
黄落や女優気取りて並木道
秋の雲舞ひし天女の衣に似て
初霜や老ひたる母の寝息きく

  笙
火祭りのたいまつ締める槌の音
初霜や眉光らせて捨案山子
鰭酒やその日その日の燗具合
黄落を肩に降らせて登校時
木道に身を支へゐる杜鵑草

  健一
黄落のベンチに遊ぶ人の影
寺裏の群に日を呼ぶななかまど
杜鵑草ほのかに群れて渓に色
初霜のフェンスにきらら都市の景

  龍堂
黄落やブロードウェイのロングラン
初霜や砂に箒の目の立てり
初霜の光る間もあればこそ消ゆれ
文化の日不平不満の笑顔かな
杜鵑草祖母を訪ねし日のありき