番外 桜の通り抜け吟行句会 |
雄 三 桜見て桜見て過ぐ通り抜け 桜には桜の叫び通り抜け 花の雨造幣局をひた濡らす 麻 紀 久闊や花の重さの通り抜け 花万朶火宅の雨の通り抜け 東 人 腰かがめ抜ける楊貴妃ざくらかな 緋毛氈片付けてゐる桜守 寄り添へば甘さかをらす花の雨 紫 野 通り抜け招待状に花の印 花雫一滴加へ立見酒 千恵子 咲き満つる花に重たき夜の雨 佇つ人の青ずむまでの花明かり 傘畳む手にも桜の雨しとど 敬 新 局長は福耳花は福禄寿 傘右へ左へ花の通り抜け |
満寿枝 花影泛く旧淀川や夕あかり 花散らす雨も一会や通り抜け 順 子 ガス燈に雨の桜のけぶりたる 花衣濡れてつやめく通り抜け 桜見し後に手にする姫小判 享 子 花冷えや天井高き貴賓室 花に色染めたるしべの赤さかな 輝 子 花の客送りつつ雨詫びにけり 絢 子 散り初めし花が雨呼ぶ通り抜け 花びらを叩く雨粒通り抜け 百態の花見てゐたり通り抜け 希覯子 人容るる隙なきテント花の雨 恙なく養老桜咲きにけり 江戸種の浪速に根付く福禄寿 |
綾 子 べらぼうめ此の土砂降りを花見かな 青ざめし欝金桜や旅鞄 通り抜け荒き川波花越しに 利 孟 前夜より燈の入る露店通り抜け 突き当り花の中へと戻りけり 成 子 受付に名を告げてゐる花の雨 もやひある小舟の桶に花筏 美奈美 手当てさる雨の桜も八分咲き 桜蕊降りて荒れたる通り抜け 灯に浮ける城や下りの花見舟 山 河 いつの間にか歩幅の揃ひ通り抜け 雨避けし手廂に乗る花一片 ぼんぼりを背の温もりに花の中 白 美 手量りに手毬桜のなほこぼる 雨粒を房にいだきて八重桜 |
やす子 花びらを床机に浮かせ雨走る 早々と店片付けて花の雨 隆 楊貴妃に隠れて一重桜かな 麒麟とも普賢とも言へ花蕾 梅 艸 夜目遠目花の内なる君なりき 紅時雨幹黒々と通り抜け 大蔵が財務となる日の桜かな 浩 史 由来説く人に集まり観桜会 希和子 傘傾げ納まる写真花の冷え 花雪洞の灯りてよりの人出かな 杜 子 灯の入りて花の下影さらに濃き ほろほろと車窓を滑る春の雨 |
滋 也 悠久の川流れゐて桜満つ 雨降れば雨も又よし通り抜け 誠二郎 雨激し欝金桜の薄緑 花の道知らぬ同志の笑み交す 新 子 弧をゑがく下枝重たし花の雨 花見人造幣せんべいおみやげに 笙 咲き重り雫の重き菊桜 露帯びて小枝に重き菊桜 美恵子 観桜会傘の雫を抜けてゆく 琴の音を俯きて聞く八重桜 |