第119回原宿句会
平成11年5月12日

   


     東人 
柿若葉窓に手摺の無き二階
畑ごとに穂丈の揃ひ麦の秋
豆腐買ふ矢車草の境越し
沖に出て障子の灯る船遊び
筆擱いて半身のメロン喰ひにけり

     希覯子 
柿若葉医家三代の赤瓦
メロン切る佛の舟とわが舟と
小ぶりなる木綿座布団舟遊び
船頭の料理自慢や舟遊び
矢車草鉄砲垣の隙粗き

     利孟 
つばくらや出島三棟の砂糖蔵
よく熟れしものに啄み痕さくらんぼ
前掛けに戻す蝦蟇口メロン市
舫綱解く腕のTattooや船遊び
香木に滲める泡や矢車草

     美子 
矢車草挿して内助を自画自賛
ころころと陽を転がして柿若葉
独りの夜メロンの皮のよく匂ふ
湖の臍で休らふ船遊び
進物にメロンの世代往く昭和

     法弘 
メロン切る遠きペルシアの靴に似せ
仏壇から一つ拝借柏餅
柿若葉戀唄ばかり作る友
汐差して来し逆波や船遊び
矢車草はにかみし子を忘れ得ず

     正  
生ハムにメロンを添へて誕生日
矢車草咲く野原より富本銭
婚約を告げる便りや柿若葉
ヴェネチアにカンツォーネ聴く船遊び
再婚の噂を聞く夜遠蛙

     笙  
吹けば回るやうな顔して矢車草
網の目の白き迷路やメロン切る
新校舎目がけて馳せる青嵐
滑走路脇にちつちやなげんげ畑
若者に貸し切られゆく遊山船

      千恵子 
どこまでも蹤きくる魚や舟遊び
メロン切り老いの食卓華やげり
植ゑ了へし田隅に深き足の跡
理髪屋の開店案内柿若葉
追伸の長き手紙や矢車草

     白美 
柿若葉ズック干される竿の先
ひと揺れにどよめきあひて船遊び
昏るるほど匂ひの甘き花うつぎ
メロン熟れ銀のフォークに銀の皿
漫画本読みふける児や矢車草

     武甲 
マウンテンバイクの群れて柿若葉
食べ頃を匂ひではかりメロン割る
名の由来けげんに尋ね矢車草
ブルネイ人もてなす夕べ船遊び
味噌あんの余韻を残し柏餅

     翆月 
風に陽に何時もまぶしき柿若葉
二匹して」屋根駆け巡る恋の猫
船遊び急流越えの艪の軋み
ブランデーのメロン丼味の酔
矢車草摘まれ少女の夢拓く