兼題 秋風 団栗 椋鳥 席題 落とし水 |
東人 落し水落ちて太郎の川太る 団栗の落ちて山湖の閉ざさるる 二文字に減る肩書や秋の風 秋深し研磨のつづく糸切歯 椋鳥の影団々と夕日喰む 千恵子 喧噪に膨らむ一樹椋鳥の群 夕暮の砂場どんぐり埋めてあり 胸に手を組んで寝る癖おけら鳴く 水引の花に一粒づつの雨 秋風を聞いてゐる貌牧の馬 箏円 秋の夜や平家を語る女人琵琶 団栗や洗濯機なかひとり独楽 秋の風諸行無常を声音する 笛の音や秋風にまがふ子守唄 椋鳥や幼稚園児の遊戯の輪 笙 穂から穂へ重さ伝へて黄金波 身の丈に合はぬ袴の小団栗 秋風を蹴つて子鷺の初飛行 高みから一気呵成に落し水 椋鳥の群かしましく野を渡る |
希覯子 千枚田天の田よりの落し水 大役を了へたる水音落し水 森羅万象色なき風を迎へけり 竹楊枝団栗独楽の心棒に 椋鳥の群れ茜の空を暗くして 白美 団栗の地蔵の供華に一つ落つ 秋風や長持にねむr婚衣裳 むく鳥や駅に座したる高校生 秋の雲カーテン全て取りかへる 落し水溝の埋まる印ばかり 翠月 ひとすぢの光を曳いて落し水 団栗の独楽の思ひ出てのひらに 椋鳥の大樹に騒ぎ雨報らす 汚れなきことこそ誇れ白桔梗 秋風に着物姿の渋き色 正 放射能届かぬ高み椋鳥渡る 遣り直しきかぬ老後や鰯雲 更ける夜のしじまを破る落し水 団栗や爆ぜてはやがて燃え尽きぬ なほ残る腰の痛みや秋の風 |
美子 秋風とそぞろの神と乗り合はす 椋鳥止まる街の電線撓ませて 遡る鮭の隣のすずこ売り 団栗や欠けたる者の無き家系 若夫婦出足揃はぬ落とし水 武甲 椋鳥に挑みて跳ねる子猫かな 運休の朱の字の増えて秋の風 秋の夜の母娘の交す長電話 団栗や子の掌中の宝物 作柄に顔綻ばせ水落す |