兼題 大根引き 北窓塞ぐ 炉開き 席題 刈田 |
東人 北窓を塞ぎ神童として老いる 少年が火を消しに来る刈田かな 前任者蒔きて行きたる大根引く 霜月の湖に蹤く影つかぬ影 炉開きや爪弾き落とす膝の尉 千恵子 古物屋に錆浮く鏡秋の行く ミニ囲炉裏開きてマンション暮しかな 大根引く三浦三崎は風の中 物食へば内耳コキコキ鳴る夜寒 北窓を塞ぎ今宵の早寝かな 美子 北窓を塞ぎ女の村となる 痩せ大根曲げ大根引く借り畑 炉開の無事口々に亥の子餅 切株の根方に風の滲む刈田 北塞ぐ四分の一の耳塞ぐ 笙 北窓を塞ぐ離れに拾得図 空移す水の輪おちこち刈田かな 襟がみをしかと把んで大根引く ぷるぷると色もさやかな新豆腐 唐金の火箸の軽し炉を開く |
法弘 炉開きや老猫すでに座を占めて 石がきの高麗の荒畑大根引く 林道を閉ざすと聞くも冬めける 竹の実や自慢息子の無心状 目貼りして嫁にも行かず婿も来ず 正 色恋も遠くなりけり烏瓜 北窓を塞ぎ青春遠ざかる ひろびろと空見ゆ峡の刈田かな 炉開きの初心に返る点前かな 新人の選手指名や大根引き 美穂子 北窓を塞げば円し言葉じり 密やかに母の居合いの炉を開く 振り向けど風も音なき刈田かな 木道の果てにゆらりと草紅葉 極まりてつとはじかれて大根引き 武甲 炉を開くとき沈黙の流るるよ 水攻めの災禍の後の刈田かな 北窓を塞ぎて部屋の模様替 急行の止まらぬ駅の夜寒かな 上げ初めの前髪揺らし大根引く |
箏円 大根引くムンクの叫び地に残し 目貼する官舎の雨戸桟荒き 行秋や大脳の襞香をきく 背を丸め俄ひよつとこ炉を開く 刈小田の郵便局の昼さがり 白美 かざしたる手のひらの間秋高し 北窓を塞ぎし里に野犬吠ゆ 妖刀も虎徹も太し大根引き 炉開にひとり二つの和菓子かな 水満てる川ゆるゆると刈田かな 翆月 大根を抜く青首の艶ひかる 北窓を塞ぎ明るさ増す灯かな 炭立てて重き火箸や地炉開く 目配せで神輿の曲る村の辻 まだ上を向きし案山子の刈田かな 希覯子 炉を開く主人の席に座椅子おき 大根引く補聴器などは要らぬはず 北窓を塞ぐやもめの暮しぶり 「参道」といふ汁粉屋に秋蚊くる 銀杏を拾ふ童にかぶれ説く |