第126回原宿句会
平成11年12月7日

   
 兼題 餅搗き 葱鮪 竹馬


     東人 
杵にはや湯気のからまり餅を搗く
遠ざかる白き喇麻塔枯れ野の天
ぶつ切りといふこともよし葱鮪汁
竹馬の片足けんけん石はじく
鰭酒の鰭に炎の痕歯形痕

     法弘 
冬薔薇奨学資金完済す
たとふれば還俗の味葱鮪汁
竹馬の敷居高きに躓けり
安曇野の佛に見ゆ初氷
文久の頃よりの臼餅を搗く

     利孟 
余り菜を加へ葱鮪の猫まんま
竹馬や靴にソックス丸め込み
売り立てを眉で落として年詰まる
殻爆ぜて牡蠣小屋の火の盛るかな
粉まみれとも白髪とも餅を搗く

     希覯子 
賃餅をとりあへず置く仕立て台
餅搗きのねぎらひ酒や大湯呑
子の客か竹馬二騎が格子戸に
葱鮪鍋益子の瀬戸が一揃ひ
初時雨修学旅行の子等と会ふ

     美子 
餅搗の練り節搗き節仕上げ節
旋盤に踏鞴に井戸に供へ餅
竹馬の出来競ひ合ふ兄二人
打ち揃ひ家長の搗きし餅をのす
旧友の再婚祝ふ葱鮪鍋

     千恵子 
分限を守る暮らしや葱鮪汁
飛び入りの意外に上手餅を搗く
竹馬の兄に手を拍つ妹よ
手袋の青さ目に染む別れかな
厳かに冬田を歩む烏かな

     箏円 
九十九折斜陽一刻山紅葉
竹馬や愛犬の名は鈴之助
唐桟の袢纏の藍葱鮪喰ふ
剥れたる臼と杵好し餅搗けり
バレリーナとなり銀杏黄葉落つ

     正 
オホーツクの風呑む鮭のしばれ干し
餅つきや園児の杵の揚らざる
退院の夜にほかほかと葱鮪鍋
竹馬の昔に帰るクラス会
男女行く恋の径ある枯野かな

     美穂子 
柚子を売る無人小屋より来る日暮れ
竹馬の子の口確と一文字
捏取の妻のリズムで餅を搗く
葱鮪汁老母一日を持て余す
冬紅葉ここで終ひの女坂

     白美 
ねぎま鍋手振りで語る妻のこと
手袋やひもで繋げる右左
竹馬や縦笛で行く敵の陣
もちつきや五指を拡げて媼笑む
極月や口数少なき人の群

     翆月 
鳥威しこだま幾重の棚田かな
餅搗きの音に若さや老夫婦
終電車帰宅に熱き葱鮪汁
湯豆腐の誕生祝ひ幸の夜
竹馬に一心不乱瞳の光

     萩宏 
初孫や白地食み出す餅筵
竹馬と見紛ふ厚き靴の底
濃い口に亡き祖父思ふ葱鮪汁
竹馬や幼き頃の指の傷
葱鮪汁謂れ聞きつつ箸のばし