第131回原宿句会
成12年5月9日

   
兼題 竹皮を脱ぐ 朝焼け 芝刈る
席題 立夏


  東人
檣頭に風の輝ふ立夏かな
朝焼けやホテルの窓の指の文字
竹の皮脱ぐやこまかく竹誘ひ
身のどこか細りて竹の皮を脱ぐ
芝を刈る朝の雫を地に還し

  千恵子
灯ともせるままに朝焼け摩天楼
開け放つ蕎麦屋の座敷初燕
帽白き父の写真や夏来たる
脱ぎ切れぬ皮腰の辺に竹伸びる
刈り終へて闇より芝の匂ひけり

  正
夏に入る庭に椅子置くレストラン
朝焼のキリマンジャロに象の列
公僕は受難の時代芝を刈る
竹皮を脱ぐや少女は家を出づ
藤の雨宇治十帖の昔より

  利孟
皮を脱ぎ光の生るる姫の竹
朝焼けや魚を仕分けの戻り船
Tシャツに白を増やして更衣
西瓜苗売るやその味請け合ひて
鬼ごつこするかの二台芝刈り機

  希覯子
皮脱ぐを待ちて竿師の竹選び
沓脱ぎに童下駄あり芝を刈る
神宮は鴉の天下夏に入る
朝焼や濯ぎの手巾風に乗る
芝刈機立てたるままに小休止

  翠月
夏来たる一羽に続く鳩の群
芝刈りの工夫のあとの縞模様
たけ皮を脱ぎて若さの深みどり
朝焼けや海に黄金の潮の絵図
花冷えや「ファイト」和唱のランニング

  武甲
竹の皮脱ぎて若さを競ひけり
サミットに余念なき島夏来たる
芝刈りの慣れぬ嫁女の白頭巾
朝焼や初航海の波高し
渋滞で時機を逃して潮干狩

  白美
大股で歩きはじめし立夏かな
重版の決まりし本や今年竹
朝焼けや包丁の音とんとんと
毛並み良きコリー寝そべる芝を刈る
若葉風猫背深まる君を愛しむ

  箏円
埋蔵金守りて竹は皮を脱ぐ
夏立ちぬ硝子の扉閉ぢられて
女子大のチャペルの塔や芝を刈る
朝焼けや常より遅き鳥の声
片恋のジンクスの池ボート漕ぐ

  美穂子
芝刈るや子も真似て持つ花鋏
竹皮を脱ぎ柔肌に光満つ
夏立つや絵を添へてくる旅日記
巫女二人髪梳かし合ふ立夏かな
朝焼けや天辺より湧くビルの群

  和博
朝焼けに浮かぶ比叡の立姿
芍薬の辺りの緑睥睨す
竹の皮脱ぎてすつくと空を向く
芝刈りのふと手を止めて蟻睨む
公園の緑色変り夏来たる