千恵子 沓脱ぎに桐下駄二足明易し 五月闇仁王の目玉浮いてをり 綾取りをしつつ下校の夏帽子 如露の水撒けばざはめく花宇宙 正 煉瓦藏並ぶ波止場の明易し 曲家の井戸にブリキの大如露 地上げ後踊子草の群れてをり 美女の名を知りてまた見る薔薇かな 笛の音の聞ゆる加賀の五月闇 希覯子 五月闇墓石でんと黒御影 如露の吐く水虹色をつくりけり 露台菜園如露一杯の水で足る 猫の墓踊子草の良く育つ 武甲 子の真似る振り子打法や踊子草 節水の如露で濯ぎし理髪店 短夜や安否情報定まらず 古傷の治らぬ焦り五月闇 水難の救助訓練梅雨に入る |
翠月 語り部にのこる訛りや五月闇 寝台の列車の窓や明易し 如露もつ若き二人の遊び撒き 白美 短夜や柱に止める旅便り 五月闇巻きて時計の刻直す 路地裏に如露も並ぶ植木棚 マスカラの睫毛に厚し踊子草 美穂子 約束の少し重くて五月闇 二年を臥す母のあり踊子草 路地に軒連ねどの家も如露持つ 和博 短夜や「ぶらぶら節」を読み耽る 五月闇路地足早に通り抜け |