第11回原宿句会
平成3年8月23日

   
兼題 生身霊 精霊舟 稲の花
席題 秋刀魚


  東人
口癖のともに似てゆく生身魂
曵かれゆく精霊舟や山上湖
稲の花穂割れてはらりと風纏ふ
釣られては背骨くねらす秋刀魚かな

  美子
真二ツに秋刀魚斬る刃を濁らせて
押し遣りし精霊舟の退りゆく
魚の眼を染めし火の彩精霊流し
野兎を下げる手付きで秋刀魚二匹

  利孟
仄暗し白磁の皿の秋刀魚鮓
稲の花駄菓子屋までの遠き道
精霊舟暴走族の奇声かな
稲の花うごもつ土に足汚し

  白美
生身魂主の席の緋座布団
尾と頭秋刀魚飛び出す店の皿
稲の花さわさわさわと風遊ぶ
生身魂身をほぐしたる祝い鯛

  玄髪
秋刀魚焼く庫裡の外には下駄の音
悪童の飛礫の的は精霊船
頬赤き童女のお下げ稲の花
子にかえりこごと聞きおり生身魂

  千尋
生身魂油揚の所望をし
あけぼのに銀照り返し秋刀魚舟
プルプルと雫をふくみ稲の花
精霊舟青くけぶって暮れ六ツ

  京子
かがまりて稲の花見る老母の背中
亡き父も集ひたかろう生身魂
夢幻なり北の海ゆく精霊舟
卓袱台を囲み取り合う秋刀魚かな

  内人
山裾へつづく畦まで稲の花
記念日に鬢白き夫秋刀魚焼く
精霊の寄り添ひ流る白き河
エシャレットつまむ呑助生身魂

  香里
一面に風で波打つ稲の花
ゆふかぜに押されて流る精霊舟
鼻歌で秋刀魚反して待つ夕げ
精霊舟じっと見つめる灯の行方

  健次
松浦の精霊流しに炭鉱はなく
骨のみの秋刀魚睨んでお替わりし
たどりつけ母に供えし精霊舟
不孝者生身魂でも印求め