兼題 赤蜻蛉 水澄む 芋 席題 新米 |
東 人 搖れるたび銀の底みせ芋の露 水澄むや寺の噴井の底に銭 風止みてカレーの匂ひ今年米 風あれば上へ上へと赤蜻蛉 玄 髪 水澄みて退院の日の薄化粧 芋を剥く童女らの眉くっきりと 新米を磨ぐ娘のうなじ母に似て 雲はらう風の広さや赤とんぼ 内 人 赤とんぼ群れ飛ぶ先の大伽藍 双の手に新米盛りて知る重さ 一人寝のふと起き出して芋茹でる それぞれに色も形も小芋かな 千 惠 子 新米を食んで瑞穂の人の幸 新米のキララに飢ゑの時遠く 新米の水加減は母の教えしこと 寝静まる里に水澄む月夜哉 赤とんぼ中空風を恣いまま あかとんぼこんな昔もあったよな 故郷のある人羨まし芋の月 茫々の祖母のことなど衣かつぎ 水澄んで月天心に動き初む |
白 美 尾を筆に水の輪作る赤とんぼ 八つ頭嬰児も眠る藁莚 水澄みて投打石の二段飛び 登校の子の列乱す赤とんぼ 美 子 今年米水控え目に電気釜 うかうかと芋のぬめりを吹き零す まず二キロ新米を買う暮しぶり 赤とんぼ交る稜線翅の音 利 孟 衣被指先ちろと舐りたり 水澄むや木道来る声のあり 塩粒の形確かに芋喰らふ 新米や夫還える刻炊き始む 京 子 今年米「ひとめ惚れ」よと呼ばれ初め 赤とんぼねらいて動かぬちさき指 かろき身の陽に透きとおり赤とんぼ 小芋湯葉炊く手さばきの小気味よさ 香 里 皮むきて滑りころげる芋いっぱい 水澄て柄杓をとりて茶を点てる 新米をそっととぐ手のうれしさや 味しみる芋の匂ひや御裾分け |
健 次 訪れし田舎みやげの今年米 水澄みて光直線に水底に ふうふうと大鍋囲み芋喰らふ 夕焼けのなかの竹垣赤とんぼ 希 覯 子 百選の名水にして水澄める 新米や錦と名乗る米どころ から松の揃ひ樹齢や秋茜 衣被衣が纏へる浪の花 明 義 刈り芝に夕陽砕けて赤蜻蛉 赤トンボ二匹の舞に高笑い 影法師長く延びゆき赤蜻蛉 従兄弟来て昔に還える今年米 外 人 夕暮れに行先き気ままな赤トンボ 白い雲ススキゆらゆら赤とんぼ パター打つラインの上の赤トンボ |