兼題 雪囲い 鴨 毛糸編む 席題 木枯し |
東 人 日を散らす四国三郎浮寝鳥 扱ぐ藁の藁のしなりや雪圍ひ 木枯しや川を隔てて藍屋敷 扉の奥は不動明王毛糸編む 利 孟 吊さるゝ鴨のやはらな瞼かな 棕櫚縄の飾り結びや雪圍ひ 凩や肩突き出してセロケース 鴨すきや「ここ禁猟の湖やさき」 希覯子 雪圍ひ家それぞれの砦なす 凩や灯一つの摩天楼 鬨を擧ぐ所作なく鴨の陣構へ 小言妻齢隠せず毛糸編む 千 尋 鴨鍋の出汁の熱きに目うるむ 木枯しや母子添ひ寝の垣の外 毛糸編む祖母の指根の古ダイヤ 毛糸編む朋友の下髪鐘に搖る 内 人 茶柱の浮き立つ朝や雪圍ひ 三回忌なんとはなしに毛糸編む 雪圍ひ笑ひさざめく影法師 凩や裾乱し来る通ひ妻 |
千惠子 雪圍ひして寝る村の小ささよ 雪圍ひ昼なほ暗き家となりぬ 鴨眠る葦原襖深ぶかと 毛糸編む思ひ出の母若かりき 白 美 なにほどの木も無き庭の雪圍ひ 凩やバスの尾燈の遠のけり 焙じ茶を啜りて古き毛糸編む ここを瀬とコンクリ岸に鴨の群 美 子 凩に新月は目を細めたる 遠方に鴨あり北の丸警護 雪囲する隣人の声高に 記者が訪ふ大魔刻に毛糸編む 健 次 木枯しや自転車ハンドル素手のまま 湯気浴びて直に伸びたる毛糸編む 多摩川の水面乱して鴨眠る 薄化粧大地の面と雪圍ひ 香 里 目をあわせほどいてまいて毛糸編み 手をこすり窓からのぞく雪囲い 父のぞく娘の手もと毛糸編み |
玄 髪 初孫の一歳大きめ毛糸編む 湯けむりの中ギャルのロケ雪圍ひ 陸奥の名も無き沼に鴨満てり 武 甲 出稼ぎの父思ひつつ雪圍ひ 毛糸編む妻を横目にひとり酒 ため池に群れを離れし鴨一羽 木枯しにどっとよろめくわが子かな 京 子 鴨鍋や肩寄せ合ひつ分け合ひつ 雪吊りを破れ蛇の目に姫小松 鴨の恋味なへだたり動かざる ヌーヴォーを賞でて千鳥の木枯しや 重 孝 朝靄の遠方にある鴨の声 嫋やかに傘さしたるか雪圍ひ 凩や熱き二人を寄り添はす 毛糸編みひと恋しさに頬ずりす |