第20回原宿句会
平成4年3月19日

   
兼題 入学 彼岸 草餅
席題 飯蛸


  東 人
チッキ荷の蒲団受け取り入学す
ペン胼胝の凹む親指蓬餅
飯蛸や跼んで煮たすアルミ鍋
伝言を手紙で貰ふ彼岸過ぎ

  希 覯 子
餌に飽きて木にとまる鳩彼岸寺
駅名と同じ学園入学す
草餅の接待ありと句座予告
飯蛸や架橋で繋ぐ中四国

  千 恵 子
よもぎ餅農婦の爪の薄き泥
飯蛸の眠る鍋底妻仮寝
善き人に善き言葉あり春彼岸
列乱す子も叱られず入学式

  美 子
草餅や人差指のふっくらと
網の束湖岸に掛けて彼岸西風
草餅に草の色濃し姉妹
入学の娘の真っ直ぐに長き脚

  玄 髪
姿見の腹に気兼の蓬餅
縄のれん払えば壁に飯蛸煮
遠縁の見知らぬ人と彼岸の會
角帽や今は昔の入学式

  利 孟
担ぎ屋の臙脂の足袋や蓬餅
彼岸會や経帖を繰る僧の指
飯蛸の鉢の絹莢味薄し
引き菓子の小さな箱や入学す

  京 子
草餅の切り口あふれ試食皿
海光りただ三人の新入生
肌も目も照り輝やきて入学す

  白 美
対岸の小舟揺らいで草だんご
パステルカラーのコートを羽織る彼岸かな
入学式「はい」の声のみ響きけり
飯蛸や鉤に乗りたる大僧正

  武 甲
飯蛸や安芸の地酒の舌鼓
背伸びして我が子目で追う入学式
草餅を搗く音の弾む鄙の里
秩父路に香の満ちて来る彼岸かな

  千 尋
飯蛸の煮〆加減や古女房
遠き鐘吾が音と聞きぬ入学式
彼岸會の弱日地蔵の肩円し
白抜きに草餅の竿日の高し

  健 次
陽を浴びて草餅を食ふ茣蓙の上
乳呑み子と思ひし末子入学す
山の寺山門明るき彼岸の會
卒塔婆建て煙目に滲む彼岸の會