第21回原宿句会
平成4年4月15日

   
兼題 鳥交る 桜蘂 朧
席題 しやぼん玉


            東 人
運び込む新の机や桜蕊
木道のずゐまで朽ちて鳥交る
吹き初めはてのひらに乗せ石鹸玉
朧夜や地下の茶房の色硝子

            利 孟
尊徳の石の書へと桜蕊
鳥交る弁当箱の蓋の汗
セーラー服の紺のネクタイ桜蕊
湖朧酌婦の話す昔かな

            玄 髪
引っ越しの雨疎ましや桜蕊
鼻先を濡らして消えしシャボン玉
奥秩父吊り橋搖れて鳥の声
下駄穿いて湯の町小径朧月

            武 甲
友寝入る夜汽車の窓の朧かな
禁猟区わがもの顔の鳥の恋
桜蕊笑み満面の園児行く


            希 覯 子
櫻蕊つけて新車の祓はるる
シャボン玉吹いて客寄す露店かな
階上と階下世帯異なる朧かな
ぎこちなくあどけなくして鳥交る

            千 恵 子
シャボン玉音信途絶えし友のこと
新しき恋語る老妓や桜蕊
をみな等の声美しく鳥交る
朧夜に橋の擬宝珠の在り所

            京 子
朧月中天にあり坂の町
鳥交る異国の街の石畳
桜蕊残んの紅と共に搖れ


            白 美
児の顔の風神となり石鹸玉
連子窓日差し溢れて鳥の恋
衣冠にも桜蕊降る根津神社
神々も聞こし召したか朧月

            内 人
シャボン玉消え去る音のあるやなし
朧月美濃焼の藍確かなり
酒蔵の静かに眠る朧かな
嫁ぐ日の紅うっすらと桜蕊

            香 里
酔ひさましもう一まわり朧月
鳥交るささと葉が搖れ立ち留まる
星朧都庁の光だぶりけり
吹く息で大きさ競ふ石鹸玉

            健 次
親子して大きさ比べの石鹸玉
朧夜の城址に浮かぶ天守閣
朝シャンの香り濶歩し鳥交る
熱燗のうまし宴や桜蕊

            英 樹
桜しべ降る北口に待ちわびて
リヤカーの花屋が路地に鳥交る
しゃぼん玉眼鏡のレンズとれやすき
朧夜のひとり来ている霧笛橋

            外 人
彼の君の横顔暗し朧月
子らの声追われて逃げるしゃぼん玉
しゃぼん玉青と緑の君の顔
葉に止まる動くなさわぐなしゃぼん玉
朧月酒と涙と青い海
消えるのをじっとがまんのしゃぼん玉

            重 孝
鳥交る軒下借りて雨宿り
朧夜や遠く隔たる我が家路
筵にも賑ひいくつ桜蕊
いつまでもこわれずにいて石鹸玉

            千 尋
シャボン玉受くるてのひら血のかよふ
鳥交る影ふくらみし綿カーテン
櫻蕊紅き線描二重八重
朧月狐狸の茵のつと覗き