145回原宿句会
平成13年7月4日


   
兼題:落し文・花ユッカ・夏痩せ 席題:半夏生


 東人
色に色重ねて白し半夏生
落し文もとより宛名などあらず
葉のまるく刈られてありぬ花ユッカ

 利孟
夏痩せやいささか強く眉描いて
半夏生枕一つを置く畳
目の前の臍の息する夏電車

 希覯子
石門を残す廃校ユッカ咲く
夏痩せを晒し健康診査済む
喜捨箱を置く無住寺半夏生
標札に助産婦とありユッカ咲く
六義園柳澤殿が落し文

 千恵子
情死譚伝へる渕や半夏生
夏痩せて愈々腕白坊主の目
ユッカ咲く明日閉鎖の診療所
鱧を食ふ祇園裏町木履行く
落し文宝のやうに持ち帰る

 美穂子
香を聞く手に湿りあり半夏生
転がりて恋の道行き落し文
チャペル立つ学舎の静寂ユッカ咲く
銀鱗の屋根の波打ち梅雨月夜
夏痩せの腕の覚えし怠け癖

 和博
グラバーの庭見下ろしてユッカ咲く
落し文虫喰ひ跡の巻もあり
物言わぬ一日を終へビール飲む
夏痩せや肋に浮きし手術痕

 古川明
水攻めの堤いづくに半夏生
言の葉を切なく結び落し文
穴一つ空けて夏痩せ悟りけり

  筝円

半夏生離れは重き瓦屋根
修復すピサの斜塔やユッカ咲く
落し文別荘の窓閉ぢしまま
夏痩せや白きあとある薬指
 正
逝きし人螢となりて帰る夜か
役人は面従腹背半夏生
花ユッカ下僚は生涯上を見ず
夏痩せやベルトの穴の二つ三つ

 武甲
花ユッカ思考のしぼむ微熱かな
夏痩せを見越して服を新調す
肝試し終へて眼下の落し文

 翠月
落し文いつも笑顔の石佛

 白美
夏痩せの兆しを頸に蝋人形